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3・4月の歌舞伎座で活躍! 中村米吉インタビュー

『傾城反魂香』「近江国高嶋館の場」銀杏の前(中村米吉)

ベテランから花形、子役まで幅広い世代の歌舞伎俳優が一堂に会し、多彩なラインナップが並んだ歌舞伎座の「三月大歌舞伎」。

『雷船頭』と『弁天娘女男白浪』で役替わりがあるほか、松本白鸚が30年ぶりに浮世又平を演じる『傾城反魂香』では、歌舞伎座では初めて「近江国高嶋館」「館外竹藪」の珍しい場面が上演されることでも話題となっている。この2つの場面では、松本幸四郎が絵師・狩野四郎二郎元信役、若手花形の中村米吉が元信を慕う銀杏の前役として、それぞれの持ち味を発揮して好演している。

初日の幕が開いてから数日後、「高嶋館」「竹藪」の出番を終えたばかりの中村米吉に話を伺った。

腰元に化けているお姫様、その演じ分けの工夫と面白さ

──「高嶋館」「館外竹藪」はこれまで片手で数えられるほどしか上演のない場面ですが、銀杏の前を演じるにあたって。

明治座(2012年11月)で上演された際に一座していましたので、大まかな筋は知っていました。型などが決まっているものではないので、補綴として入られている石川耕士さんや、元信役の(松本)幸四郎のお兄さんとご相談しながら、ところどころに自分の工夫をさせて頂きました。

──工夫というのは、具体的には?

“お姫様が腰元に化けている”という部分をどうするのか、ですね。ネタばらしもすぐなので、そんなに大げさにやらなくてもいいと思っていますが、腰元に化けているなかで、元信に見惚れてつい手がお姫様らしい仕草に戻ってしまうところや、腰元に手を引かせて上座に納まるところでしょうか。実はお姫様とはいえ、腰元が腰元の手を引くというアンバランスな構造が面白いのではと思って、そうさせて頂きました。

──衣裳など見た目も腰元とは違うのに、「普通の腰元です」という体で出てくるところが、歌舞伎らしい面白さです。

普通わかりますよね(笑)。私の演じる銀杏の前の存在は、「高嶋館」から「吃又(土佐将監閑居の場)」を繋ぐパーツのひとつであり、芝居における彩りではないでしょうか。今回のように「吃又」に前の部分がつくことで、絵師同士の争いがあって…ということがはっきりします。その意味で、お姫様は世界観を提供する存在なのかもしれませんね。

──すごく大事な役割です。

そうですね。「お姫様がお姫様として存在する」、それこそがこの銀杏の前の、作品における役割だと思っています。初めは少しテンポを出してやっていたのですが、そうすると軽くなるからと父(中村歌六)が指摘してくれたので、少したっぷりやるように心がけています。腰元からお姫様に戻る変化も、二重人格ではないので(笑)、そこまで劇的に変わるのではなく、その役の空気感を出せるようにしたいと思っています。

──今日拝見していたのですが、「あ、ここで変わったな」というのをはっきり感じました。

ありがとうございます、それなら安心しました。お姫様ひとつ、腰元ひとつとっても、その役のセリフの言い方、身体の使い方、衣裳の着方など、「そのお役らしく見せる方法」があります。言わば、その「公式」を覚えることが、まず大切になります。それを覚えて初めて、我々はこれから様々な「問題に答える」ことができます。リアルな部分がありつつも、やはり時代物ですし、義太夫も入ってきますので、そういう基本的なことは大切にしなければいけないと思っています。そうやって腰元やお姫様の公式がわかれば、他のお役を勤める際に応用が利くとは思いますが、それはあくまでも応用が利くだけで、その問題に答えられるかどうかは、その人次第でしょうし、僕もまだ公式を覚えている段階です。それをきちんと習得した上で、しっかりと他に応用できるようにならないといけませんね。

──もう一役、夜の部の『盛綱陣屋』の四天王にご出演です。米吉さんも十分お若いですが、今回はさらに年若い勘太郎さんが小四郎、眞秀さんが小三郎で出演しています。

二人とも可愛いですよね。勘太郎ちゃんは、子どもなんだけど子どもじゃないような顔をします。とっても大人なんです。楽屋での雰囲気もとても大人びていて。中日を過ぎて慣れてきたこともあり、少しずつ打ち解けて楽しくお話しています。うちも親類ではありますが、今月はお父さん(中村勘九郎)やおじさん(中村七之助)といった身近な方も出ていないなかで、心細いだろうに、毎日一生懸命、真面目に、真摯に舞台を勤めています。僕があの年ぐらいの時なんて、楽屋で遊ぶのがメインで、あんなに真剣ではなかった気がします(笑)。

──眞秀さんはいかがですか?

ひと言で言えば、天真爛漫です(笑)。この春から小学校ということですし、頑是ない部分があります。「なんでなんで?」ばっかりです(笑)。そこがまた人懐っこいし、可愛いですね。やはり眞秀君のやっている小三郎の役とは、一緒に揚幕に居る時間が長いので、お話したり遊んだりしています。来月もご一緒するので、親交をさらに深めたいと思います(笑)。

来月の葵御前は気品や位取りの高さを大切に 

──ちょうどお話が出ましたが、米吉さんは来月の歌舞伎座「四月大歌舞伎」にも出演しますね。

昼の部には、山城屋のおじ様(坂田藤十郎)の米寿を祝う『寿栄藤末廣 鶴亀』に出させて頂きます。それから夜の部では、『源平布引滝 実盛物語』で葵御前のお役を頂戴し、まさか仁左衛門のおじ様の『実盛物語』でさせて頂けるとは思っていなかったので、大変ありがたく思っています。

──葵御前は、初めて演じられる役ですよね? 

すべては義賢の子を産む葵御前のため、というのがみんなの根底にありますから、それに値する葵御前でなくてはなりません。気品や位取りの高さというのは一朝一夕でできることではないと思いますが、そこを目指して精一杯勤めたいと思います。葵御前のお役は、(片岡)孝太郎の兄さんに教えて頂きます。仁左衛門のおじ様が実盛をなさる時に葵御前をさせて頂けることが、どれだけありがたいことかを噛みしめながら、物語の中心にいる人物であるという役割を意識して、間違ったことをせず、やるべきことをしっかり勤めたいと思います。

──『寿栄藤末廣 鶴亀』での米寿のお祝いの舞踊についてはいかがですか?

本当におめでたいことです。今年の1月に大阪松竹座で上演された時は、親子三代、ご家族でなさったものですよね。今回は、歌舞伎座で上演するにあたって演出が変わるということで、私も出させて頂けることになり、とてもありがたいです。神妙に、おめでたいという気持ちを第一に品良く勤めたいです。おじ様とご一緒させて頂ける機会はあまりありませんでしたので、大先輩と同じ舞台の上に立ち、その場で空気を感じられるのはありがたいことだと思っています。

なかむらよねきち○1993年生まれ。中村歌六の長男。叔父に中村又五郎、従兄弟に中村歌昇、中村種之助。2000年7月歌舞伎座『宇和島騒動』の武右衛門倅武之助で五代目中村米吉を襲名し初舞台。2011年から本格的に女方を目指す。2016年10月、2017年3月国立劇場奨励賞。

【公演情報】

「三月大歌舞伎」
[昼の部] 11:00~  『女鳴神』 『傀儡師』 『傾城反魂香』
[夜の部] 16:30~  『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』 『雷船頭』 『弁天娘女男白浪』
出演◇松本白鸚 片岡仁左衛門 中村雀右衛門 中村鴈治郎 片岡孝太郎 松本幸四郎 市川猿之助 坂東彌十郎 中村歌六 片岡秀太郎 市川左團次 ほか
●3/3~27◎歌舞伎座
〈料金〉1等席18,000円 2等席14,000円 3階A席6,000円 3階B席4,000円 1階桟敷席20,000円(全席指定・税込)

「四月大歌舞伎」
[昼の部] 11:00~  『平成代名残絵巻』『新版歌祭文』『寿栄藤末廣』『御存 鈴ヶ森』
[夜の部] 16:30~  『実盛物語』『黒塚』『二人夕霧』
出演◇坂田藤十郎 尾上菊五郎 中村吉右衛門 片岡仁左衛門 中村時蔵 中村雀右衛門 中村鴈治郎 中村福助 市川猿之助 ほか
●4/2~26◎歌舞伎座
〈料金〉1等席18,000円 2等席14,000円 3階A席6,000円 3階B席4,000円 1階桟敷席20,000円(全席指定・税込)

〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または03-6745-0888

https://www.kabuki-bito.jp/sp/

 

【取材・文・撮影/内河 文 舞台写真提供/松竹】

 

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