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1970年の日本と夫婦の愛を描く名作『流れ星』田中美佐子・宅間孝行 インタビュー

タクフェスの第7弾は10年ぶりの上演となる感動の名作『流れ星』が10月17日の足利公演を皮切りに全国公演をスタートする。(以後、仙台,札幌、福岡、名古屋、大阪、東京と巡演。※10/12の新潟公演は台風のため中止)

本作『流れ星』は06年に初演、09年に再演した東京セレソンデラックス時代の代表作。
東京の片隅にある古びた下宿屋「徳秀館」を営む夫婦、謙作と夏子。ある日突然謙作が亡くなり、夏子は夫と出会った1970年にタイムスリップする。大阪万博や学生運動、よど号事件、東大爆破騒ぎなど、激しく揺れる世相に翻弄されながら、日本中が力強く生きていたあの時代。愚直な、不器用な、古き良き日本人の姿に、「愛とは何か」「幸せとは何か」を追い求め、真っすぐな「思い」を描き出す。
この作品でタクフェス初登場となる田中美佐子とその夫役を演じる宅間孝行が、作品世界を語り合った「えんぶ10月号」のインタビューをご紹介する。

文化も社会も揺れ動いた70年代

──この作品は三演目で10年ぶりです。田中美佐子さんは物語の主人公・夏子に扮します。

宅間 夏子役は美佐子さんしかいないと思ってました。ベストです。この方はちゃんとしているようで色々おもしろい方で、そういう魅力がこの役にぴったりなんです。

田中 それ褒めてるんですか?

宅間 もちろん! しかも30年前から芝居を作っていたというすごい方です。

田中 いえいえ(笑)。欽ちゃん(萩本欽一)とテレビでご一緒して、その流れで欽ちゃん劇団ができたとき参加したのですが、欽ちゃんが卒業したあと、なぜか私が演出もやることになって。でも舞台のこと全然わかってないんです。欽ちゃんに教えてもらったことしか知らないから。舞台のルールとか。

宅間 うちもそういうのないから大丈夫です(笑)。

──『流れ星』は宅間さんには珍しいタイムスリップものです。夏子が戻る時代を1970年に設定したのは?

宅間 この作品を書く前に『歌姫』で50年代をやって、『夕─ゆう─』で80年代を書いたのですが、書きながら70年代って色々なことが起きていたんだなと。万博とかよど号事件とかあったり、学生運動の真っ只中で、アングラ劇団とかラブ&ピースとか文化も社会も激動の時代で、それに1970年は僕が生まれた年なんです。

田中 そうなの?!私は生まれてましたけど、まだ子供だったのでおぼろげにしか記憶にないんです。でも物語に出てくる「下宿」とか地元にもあったし、当時の色々な出来事もニュースなどで知ってます。この作品の中にもヒッピーが出て来たり、学生運動家もいるし、登場人物の1人1人がその時代の代表なのが面白いですよね。

ふとしたボタンの掛け違いで夫婦仲が

──ストーリーにはどんな印象を持ちましたか?

田中 思わず「これいつ頃書いたの?」と言いたくなるほど、現代にもあるリアルな話だなと。夫婦ってある年齢になると、ほとんどの方が、「この人となんで夫婦になったんだろう」とか、「こうなる前に戻ってみたい」とか思ったりするのではないかと。でも、夏子もそうですけど、確かに愛し合ったから一緒になったわけで、今はその頃の感情を忘れているだけで。そういう、夫婦が通る道というか人間が通ってきた道を、この作品はとてもうまく表現しているなと思いました。

──夏子の夫の謙作は宅間さんが演じます。

田中 私読んでて、この人ずっと良い人なのに、なんで夏子は嫌になっちゃったんだろうって。良い人じゃない?

宅間 (笑)そうだね。たぶんボタンの掛け違いみたいなことなんだと思います。謙作が流れ星のかけらを集めている話が出てくるんですけど、山に毎週毎週登って集めているのはある目的があるからで。でも妻から見ると遊びに出かけてるようにしか見えない。

田中 意味のないことしてる、としか思わないのよね。

宅間 本当は妻のためなんだけど、言わないからすれ違うんだよね。

田中 そこ読みながら、宅間さんってすごくロマンチストだなと思った。それに天使のマリーちゃんが出てくるのにもびっくり!(笑)

宅間 ファンタジーだからね(笑)。

田中 リアルな現実に彼女が入ってくることで、すごく夢がある話になってて、さすがだなと思いました。

美佐子さんは飾らない気どらない素の人間性が魅力

──俳優としての宅間さんについてはいかがですか?

田中 ドラマでは共演していて、意外にナチュラルなお芝居をされる方だなと。演技に余計な尾ひれはひれをつけない。舞台の宅間さんは、いつもいいとこ取りで(笑)、でもそこへさりげなく持っていくのがうまいんですよね。他の俳優を立てて、持ち上げて、最後は自分がさらっていく(笑)。

宅間 ははは(笑)。

田中 そして全員をよく見ていて、1人1人が舞台でちゃんと生きるように作る。すごいなと思いました。

──宅間さんから見た田中さんは?

宅間 俳優という仕事を長く続けるには、やっぱり人間性によるところが大きいと思うんです。その意味で美佐子さんは素の人間性に魅力があって、飾ってないし気どらないところが素敵だなと。若い女優さんとか見ていて思うんですが、もっとバーンと自分を開いてしまえばラクにできるのになと。どうしても「女優」という意識でバリアを張ってしまう。それは若い男優も同じですけど。美佐子さんにはそういう構えたところがまったくない。今回共演する若手たちには、美佐子さんのそういうところを見てほしいですね。

──タクフェスでの田中美佐子さんが楽しみです。最後に意気込みをぜひ。

田中 私は今年還暦になるのですが、良い台本と出会ったなと。欽ちゃん劇団を観てくださっていたお客様にも、この作品でがんばっている私をぜひ観ていただきたいです。そして私くらいの年齢で夫婦の問題で悩んでいる方には、この作品を観て、もう一度自分の人生を見つめ直していただければ。

宅間 今回10年ぶりで、次にこの作品を上演するとしてもまた10年ぐらい先なので、僕が若い時代の謙作を演じるのは、年齢的にも最後かもしれません。ですから今回を『流れ星』の決定版にしたいなと。色々な地方で公演しますので、ぜひ会場へお運びください。

宅間孝行 田中美佐子

たなかみさこ○島根県出身。1981年TBS『想い出づくり』でTVデビュー。82年には映画初出演にして、初主演の映画『ダイヤモンドは傷つかない』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。その後も映画、ドラマ、舞台などで活躍中。近年の作品は、日本テレビ系『獣になれない私たち』、映画『寝ても覚めても』、テレビ東京『きのう何食べた?』などに出演。

たくまたかゆき○東京都出身。タクフェス主宰。俳優・脚本家・演出家。97年、劇団「東京セレソン」を旗揚げ。01年「東京セレソンデラックス」と改名するのを機に、主宰・作・演出・主演として活動。12年12月に劇団を解散。13年、「タクフェス」を立ち上げる。役者としてドラマや映画に多数出演する一方、脚本・演出家としても活動。主な脚本作品には『花より男子』シリーズ(05/07/08/TBS)、『スマイル』(09/TBS)などの脚本を手掛ける。また、劇団作品の映像化としては、ドラマ『歌姫』(07/TBS)、映画『くちづけ』など。2008年『同窓会』では初監督・脚本・主演を務め、映画『全員、片想い』内の短編『サムシングブルー』(16)、『あいあい傘』(18)、『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』(19)では監督・脚本を務めた。

【公演情報】
タクフェス第7弾
『流れ星』
作・演出◇宅間孝行
出演◇田中美佐子 飯豊まりえ/柳 美稀 富田 翔  三津谷 亮  冨森ジャスティン/川村エミコ(たんぽぽ) 近藤くみこ(ニッチェ)/ 松村 優  越村友一 遠藤瑠美子 若林元太/ダンカン/宅間孝行 ほか
●11/13~24◎東京 サンシャイン劇場
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~18:00)
●10/12◎りゅーとぴあ・劇場
●10/17◎足利市民プラザ・文化ホール
●10/26◎仙台電力ホール
●11/3・4◎道新ホール
●11/9◎ももちパレス 大ホール
●11/28~12/1◎ウインクあいち
●12/4~8◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
http://takufes.jp/nagareboshi/

 

【取材・文/宮田華子 撮影/岩田えり】

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