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ミュージカル『カラフル』間もなく開幕! 鈴木福・川平慈英インタビュー

「寛容」なエネルギーに溢れたミュージカルに!

直木賞作家・森絵都のベストセラー小説を原作とした新作ミュージカル『カラフル』が、この夏上演される。

これまでアニメ化や実写化もされるなど、世代を問わず多くの共感を呼んできた作品を、世田谷パブリックシアター初登場となる小林香の脚本・作詞・演出で、子どもも大人も楽しめるオリジナルミュージカルとして立ち上げる。

今作に挑む思いを、主人公〈ぼく〉役の鈴木福と、ガイド役の天使・プラプラ役の川平慈英に聞いた「えんぶ8月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

お互いにあのときと何も変わっていない 

──おふたりは2017年のミュージカル『ビッグ・フィッシュ』で初共演。当時12歳だった鈴木さんは19歳になりましたが、川平さんから見て、久しぶりに再会した鈴木さんの印象はいかがですか。

川平 いや、何にも変わってないです。もちろんあのときと今では背丈も違うし、考え方も変化があったと思いますけど、僕が福くんから受けるバイブレーションはあのときのままですね。僕と福くんは親子の役だったんですが、僕に送りかけてくる目線が「ああ、変わってないな」と思いました。この年齢になってくると、大体のことは目でわかりますから。

──鈴木さんは、久しぶりに川平さんとお会いになってどう感じましたか。

鈴木 今作のビジュアル撮影で再会したときに、すごく安心感がありました。あの頃と変わらず「あ、お父さん!」って感じでしたね(笑)。

──『ビッグ・フィッシュ』の公演で思い出に残っているエピソードを教えてください。

川平 やっぱり福くんが千秋楽に号泣したことは忘れられないんですよ。「これで終わっちゃうんだよね、いやだ~!」っていう感じで目を潤ませていて、やっぱりそれだけこの舞台に心を注いでいたんだな、と彼の一貫したエネルギーを感じました。自分に与えられたタスクを全身全霊で全うしようという福くんから、僕もエネルギーをいただきましたね。

──鈴木さんは『ビッグ・フィッシュ』が初舞台でした。

鈴木 そうなんです。千秋楽のことは、いまだに景色まで覚えています。ラストは慈英さんの歌う姿にグッときて、その直後に出番があったんですけど、笑顔でいなきゃいけないのに目はウルウルしてしまって。でも、本当に楽しかったです。

──初舞台が楽しかったというのは、良い経験になりましたね。

鈴木 そんなに出番の多い役ではなかったというのも、逆に良かったのかもしれないなと思います。だから今回、ミュージカルでずっと出ずっぱりというのは初めてなので、不安なところもありますが、とても楽しみです。

──川平さんがご一緒なのも心強いですね。

鈴木 本当にそうなんです! (加藤)梨里香さんも『ビッグ・フィッシュ』でご一緒しているので、知っている方がいてくださるのはありがたいですね。

本番は力を入れ過ぎない方がうまくいく

──今作の原作と上演台本を読んだ感想をお聞かせください。

川平 結構人間のダークサイドな部分も描かれている作品なので、ミュージカル化することで作品のメッセージをエンターテイメントとしてお客さんに届けるのは、ものすごくチャレンジだし覚悟のいることだな、といい意味でのプレッシャーも感じています。見終えた帰り道に気持ちが少し軽くなったり、温かい気持ちになって何かを持ち帰ってくれたらいいな、と思います。

鈴木 台本を読んだら、ミュージカルなので原作よりも少しトーンが明るくなっているというか、お客さんに届けやすいものになっていると感じたので、すごく楽しそうな作品だな、という気持ちと同時に、新しい形で届けられるように、僕の中でもここからいろいろ模索していかなきゃいけないな、と思っています。

──台本中に何度か出てくる「カラフルな色が混ざり合うと黒になってしまう」という言葉が、多様性のあり方を示唆していて非常に印象に残りました。

川平 今という時代が生きにくい世界になっていると感じる人もいるだろうし、これまで生きにくさを感じていた人たちが生きやすい世界にもなっているだろうし、これは自分がどの立ち位置にいるかということで、理解の仕方が全く変わってくる問題だと思います。僕は「寛容」という言葉が好きなので、この作品を見終えた後に少しでも人に対して優しくなれたり、自分に対して優しくなれたり、そういう「寛容」なエネルギーに満ち溢れたミュージカルになればいいなと思っています。

鈴木 僕が歌う曲の中にもありますが、いくつもの角度から見るということが大切なのかな、と思います。僕は物事を考えるとき、見えている部分だけではなく、いろいろな面から多角的に考えるようにしています。一色じゃなくていろんな色があるんだ、ということを認めて混ぜすぎないことが大切なんじゃないかな、と思いますね。

──オリジナル楽曲も楽しみの一つですが、今作は曲数が非常に多いですよね。

川平 福くんは十何曲も歌うんですよ。だから喉のコンディションは気を付けないとね。

鈴木 はい、気を付けます! お芝居もしながら歌わないといけないので、ミュージカル1本通せる体力をしっかり身につけないとな、と思っています。特に2回公演の日は途中で力尽きないように頑張りたいと思います(笑)。

川平 本番が始まったら基本的には稽古場で構築したものを提示するだけだからね。今日は誰かが来たからうまくやろう、なんて考えると絶対こける。僕はもう100万回そういう経験があるからね!

鈴木 (爆笑)。

川平 不思議なんだけど、ちょっと調子が悪いときの方が「今日よかったよ」って言われたりするんですよ。「お稽古は本番のように、本番はお稽古のように」という言葉があって、要するに、本番は力を入れ過ぎない方がうまくいく、ってことなんだけど、僕は未だにそれができません(笑)。

──舞台の場合は特に体調管理や気持ちを保つことが大事になってくると思いますが、何か秘訣はあるのでしょうか。

川平 作品自体がエネルギーをくれることがあるんですよ。舞台をやればやるほど生きるエネルギーをもらえる、というところまで持って行けたら、多分疲れ知らずだと思います。『ビッグ・フィッシュ』のときは、カーテンコールのたびにものすごいエネルギーが充満して「ありがとう! 明日も元気にいける!」って思っていました。

鈴木 うわぁ、それは楽しみですね。そうなれたらいいな。

川平 そうなれたらこっちのもんだし、多分お客さんも相当心揺さぶられると思うよ。劇場が一体化して高揚感に包まれるようなところまで持っていきたいですね。

【プロフィール】

すずきふく○東京都出身。1歳の時にTV番組「いないいないばあっ!」に出演し芸能界デビュー。2007年『君がくれた夏 ~がんばれば、幸せになれるよ~』で子役としてドラマデビューを果たす。11年『マルモのおきて』に出演、「薫と友樹、たまにムック。」名義で同作の主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」で歌手デビュー。以降、映画、TV、舞台、CM など多岐にわたり活動を続けている。最近はニュースなどの情報番組やラジオ・ナレーションなど仕事の幅を広げ、自身のSNSを活用し情報を配信している。

かびらじえい○沖縄県出身。1986年、ミュージカル『MONKEY』で俳優デビュー。以降、舞台を中心にドラマや CM、映画と多数出演。97年ミュージカル『雨に歌えば』で第4回読売演劇大賞男優賞を受賞。近年の主な出演舞台は、『スラムドッグ$ミリオネア』(瀬戸山美咲演出)、『Forever Plaid』(板垣恭一演出)、NODA・MAP『THE BEE』『フェイクスピア』(ともに野田秀樹演出)、『藪原検校』(杉原邦夫演出)、『ビッグ・フィッシュ』(白井晃演出/第45回菊田一夫演劇賞受賞)、『ショーガール』(三谷幸喜脚本・作詞・演出)など。

【公演情報】
せたがやこどもプロジェクト2023
アミューズ×世田谷パブリックシアター
ミュージカル『カラフル』
原作:森絵都「カラフル」(文春文庫)
脚本・作詞・演出:小林香
作曲・編曲:大嵜慶子
出演:鈴木福 加藤梨里香 百名ヒロキ 石橋陽彩
菊池和澄 彩乃かなみ 川久保拓司/川平慈英 ほか
●7/22~8/6◎世田谷パブリックシアター、
●8月◎ツアー公演/兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、茨城・水戸芸術館 ACM劇場、愛知・春日井市民会館

https://setagaya-pt.jp/stage/

【インタビュー・文/久田絢子 撮影/岩田えり】

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