エンターティメントのパワーにあふれるステージ!MEIJIZA presents Special Musical Concert『NEW YEAR’S Dream』上演中!
オリジナルミュージカルの作・演出・振付をこなし、自身が日本を代表するタップダンサーでもある玉野和紀による構成・脚本・演出・振付・出演のMEIJIZA presents Special Musical Concert『NEW YEAR’S Dream』が、浜町の明治座で上演中だ(11日まで)。
明治座の初春を飾るこのSpecial Musical Concert『NEW YEAR’S Dream』は、2019年8月に上演して好評を博した『Summer Night’s Dream』の第二弾。玉野和紀をはじめ、大野拓朗、新納慎也、吉野圭吾、渡辺大輔、咲妃みゆ、平野綾、北翔海莉という、新年を寿ぐに相応しい豪華なキャスト陣が、得意のミュージカルナンバーはもちろん、ジャズ、シャンソン、歌謡曲など多彩な選曲による、贅沢なステージを展開している。
華やかなオーバーチュアと共に幕が上がると、全員が緋毛氈の上に板ついているという意表をついた、だからこそ新春らしく、明治座らしい口上からスタート。それぞれの挨拶に早くも個性がにじみ出る。
ここから、まずひとり一人によるミュージカルナンバーのソロコーナーへ。大野拓朗がミュージカル俳優としての進化を証明してみせたばかりの『プロデューサーズ』からのナンバーを歌い踊ったり、平野綾が『モーツァルト!』の、これが聞きたかった!という代表曲のひとつと言えるナンバーを歌うなどの、十八番の披露があるかと思うと、確かな歌唱力と同時に巧みなコミカルさも披露する北翔海莉、頭抜けた表現力を発揮する咲妃みゆ、攻めに出た魅力にあふれる渡辺大輔、この人でこの作品の上演がいつか実現して欲しいという願望ドンピシャリの新納慎也、近年は「快演」から更にパワーアップして「怪演」を観せることも増えた吉野圭吾と、もう冒頭からフルスロットル。こんなに一気に盛り上げて、あとをいったいどうするんだろう…と、いらぬ杞憂を抱いたほどの、大ナンバーの連続に魅了される。
そんな王道の「Special Musical Concert」展開を、軽やかに笑いに転がしていくのが、玉野和紀の作る舞台ならではで、ここから歌謡曲、それも「昭和歌謡」を使ったスケッチ・コメディーへ。あまりにも懐かしいメロディーが明治座の雰囲気にベストマッチしている上に、玉野以下全員が大真面目に歌い、演じるからこその可笑しみが溢れる。名曲中の名曲だけれど、もう新年で……と思うと、ちゃんとシーズン違いにツッコミを入れてくれる等、定番の安心感の醸し出す微笑ましさが、何かと不安の多い時代の心にすーっと染みてくる。若手キャストのファンには逆に新鮮かも知れない選曲も多く、特に北翔や咲妃の宝塚時代をご存知ない方々には「宝塚のトップスター」というイメージが、良い意味で裏切られるかも知れないほど。しかもとことん作り込んでいるのに、非常に早い展開で次から次へと場面が続き、あっと驚かされる大野の持ち場面から、今まであんなに思いっ切りコメディを追求していた人たちが!と思う、美男美女ぶりのコーラスで、潤沢な1幕の幕が下りた。
休憩を挟んだ2幕は、オリジナル・ショートミュージカルから。おとぎ話を基に、時代的には1幕よりも更に遡った「昭和歌謡」を使ったショートミュージカルが展開。女性陣が伝説の三人組アイドルの名曲を歌い踊り、大野、新納、渡辺が、やはり伝説の男性三人組アイドルの、更に伝説のぶっとびソングを歌うなど、ストーリーに即しながら大ヒット曲を巧みに入れ込んでいく玉野の構成がいつもながら楽しい。この世界観にはお馴染みの吉野が身体を張った笑いも見せて、たっぷり新年気分が味わえる。
そこからまた一気にテンションが引き締まって、シャンソンやミュージカルの名曲がたっぷりと。玉野、吉野、咲妃、渡辺、新納と続くソロが、それぞれに一瞬で舞台の世界観を変えていき、楽曲の向こうに作品世界が浮かびあがるミュージカルコンサートの魅力が噴出する。ベテラン陣の素晴らしさはもちろんだが、渡辺がこんな大曲を堂々と歌えるようになったんだという感動や、咲妃のプリンセスぶりと表現力に魅了される。
全員が登場してのトークで和んだあとは、持ち歌コーナーと題してこの組み合わせだから披露できる楽曲も。宝塚歌劇団元星組トップスターの北翔と、元雪組トップ娘役の咲妃とが、実はコンビを組んだ演目がある、と言えば宝塚ファンならすぐにピンとくるだろう懐かしい名曲のデュエットや、平野の主演作の大ナンバーの迫力、大野と渡辺の輝ける共演作品と、初春からこれが聞けるなんて!というまさにお年玉の楽曲が続く。
もうここからはラストに向かって一気呵成。吉野と新納からはじまった黒の衣装でシャープに決めるナンバーでは、これまでダンサーというイメージはあまりなかった大野や渡辺も難易度の高い振付をこなし、女性陣もセンターで大活躍。随所でステージを盛り上げたダンサーの伊藤典子、輝生かなで、神谷玲花、原広実も加わって見事なポーズで決まった時には、時節柄歓声が飛ばせない分、熱い、熱い拍手が湧き起こった。その熱気が残る中で、北翔がたっぷりと歌い、今回の構成では全体に支え役に回ることの多かった玉野の「待ってました!」のタップナンバーで、これぞエンターティメントの舞台は幕を下ろした。
終わってみれば見どころを詰め込めるだけ詰め込んだSpecial stageで、玉野らしい緩急の中で、それぞれの持ち味と得意技はもちろん、新たなチャレンジも随所にあり、この舞台を経験することによって、演者たちにも大きな糧が得られたことだろう。その輝きを静かに受け取った観客もまた、困難な時代に前を向いて歩いていけるパワーをもらえる、エンターティメントかくあるべしの明治座と玉野の気概を感じさせるステージになっている。
【公演情報】
MEIJIZA presents Special Musical Concert
『NEW YEAR’S Dream』
構成・脚本・演出・振付・出演:玉野和紀
出演(男女別・五十音順):
大野拓朗 新納慎也 吉野圭吾 渡辺大輔
咲妃みゆ 平野綾 北翔海莉
ダンサー:伊藤典子 輝生かなで 神谷玲花 原広実
●2021/1/5~11◎明治座
〈料金〉S席 10,000円 A席 8,000円(全席指定・税込)
※6歳以上有料/5歳以下のお子様のご入場不可
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター03-3666-6666
営業時間/10日 11:00~18:00 / 11日 11:00~17:00
〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/info/2021/1/
【取材・文/橘涼香 写真提供/明治座】
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