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約1年ぶりの歌舞伎出演は、超ハード!な舞踊作品「十二月大歌舞伎」尾上松也 取材会レポート

 

映像で大きな活躍をみせた尾上松也が、年の瀬にホームグラウンドの歌舞伎に復活した!

できる限りの感染予防対策を行いつつ、8月の再開場から4ヶ月。歌舞伎座では12月1日に2020年のラストを飾る「十二月大歌舞伎」が開幕。引き続き4部制で、ラインナップは第一部が早替りが大きな見どころの『四変化 弥生の花浅草祭』。第二部は中村七之助×市川中車による新作『心中月夜星野屋』が待望の再演。第三部は、中村勘九郎×市川猿之助が12年ぶりに同じ演目・同じ役で共演する名作『傾城反魂香』。第四部は、坂東玉三郎、尾上菊之助らによるスサノオのオロチ退治を描く『日本振袖始』と、いずれも見逃せない作品が並ぶ。

第一部の舞踊『四変化 弥生の花浅草祭』で、片岡愛之助とともに4役を早替りで勤める尾上松也が、11月中旬に都内で取材会を行った。歌舞伎出演は2020年1月以来、歌舞伎座の舞台に立つのは2019年10月以来と久しぶり。神功皇后・善玉・通人・獅子の精という4役への意気込みや、歌舞伎を離れていた間の活躍などについて語ったインタビューを、公演中の舞台の写真とともにお届けする。

早替りは4役それぞれの色を演じ分けたい

──歌舞伎座は公演再開以来初めて、しかも第一部のトップバッターです。

約1年ぶり、1月以来の歌舞伎出演ですので、久しぶりに歌舞伎の舞台に1ヶ月間立てることをありがたく思います。歌舞伎座の舞台も久しぶりで、『浅草祭』(『四変化 弥生の花浅草祭』)という大曲をさせていただきます。いつか…とは思っていましたが、このタイミングで、しかも第一部からとは思ってもみなかったので、嬉しさはもちろんですが、驚いたというのが正直なところです。「三社祭」は自主公演「挑む」で一度させていただいて、当時は尾上流(の振付)でしたが、今回のお話をいただいた時は「あの時やっておいてよかったな」と思いました。10年前に2日だけの自主公演でしたが、踊り自体は、「三社祭」だけでも非常に大変ですから、その息遣いや感覚が少しでもわかっているという点では覚悟ができます。最初は神功皇后で久しぶりの女方で、歌舞伎座の舞台で舞うのも久しぶりなので、感慨深さもあります。4役それぞれ色があるので、愛之助さんの力をお借りして、演じ分けたいと思います。

──早替りのプレッシャーはありますか?

4役も早替りするのは初めてかもしれません。でもやるしかないですし、良い勉強になるので開き直っています。早替りは本人ももちろんですが周り(後見やスタッフ)が大変です。周りのリズムと手際の良さが非常に大事で、チームワークですから、その辺はしっかり段取りを組めれば大丈夫だと思います。

──自主公演でされたのは、「三社祭」に対する思いがあったから?

いまだにそうですが、自分には手も足も出ないということはわかっていました。それでも選んだのは、当時は大曲の踊りをさせていただいく機会はほとんどありませんでしたし、自分でも踊りが大きな課題の1つだと思っていました。自主公演なので何を選んでも自由ということもあり、半ば無理やり自分を追い込んで、糧にしたいという思いでした。僕はストイックと真逆の人間なので(笑)、だからこそ取り組まなければと思っていた時期であり、演目でした。やってみたら、やりがいもあり、自分では達成感がありました。

──4役それぞれの色というのは?

僕も初めてで、どうなるかはやってみないとわかりませんが、神功皇后は「静」というか、動きも精神も落ち着いたところから始まり、「三社祭」に入って一気にボルテージを一度上げて、皆さんにわっと気持ちを高めていただき、次の通人として出てきた時は、歌舞伎らしいほんわかとした空気感を味わっていただき、最後は歌舞伎舞踊らしい華やかさと格好良さが相まった「石橋」で決めるという感じです。重要なのは「三社祭」と通人ですね。色も違うし、踊っている時間も長いので。裏では(早替りで)慌ただしくしていますが、出た時に自分の切り換えがしっかりできるかどうかがポイントかなと思います。(「三社祭」の)善玉から通人に替わるところは慌ただしく、息も一番上がっているところで、通人らしい空気感をもって出てくる切り換え。その後の「石橋」は、逆に慌ただしさがあったほうがいいので、そこに至るには、中の2つ(善玉と通人)は意識的に切り換えていかなければいけない。体力的には一番キツイので、そこが大変かなと思います。

──通人というと、お父様(六代目尾上松助)のイメージがあります。そこを意識されることはありますか?

父がやっていた『助六』の通人は周りの方からもよく話を聞きますし、僕自身も印象に残っています。頭をよぎりますが、父の持っていた空気感はなかなか出せるものではないので、同じDNAが流れていると信じて、その一片でも自然と出ればいいなとは思います。

──愛之助さんと合わせる予定は?

この状況下なので、僕からすると毎日1回は合わせたいくらいですが、本番まで限られた数で合わせていかなければなりません。愛之助のおにいさんは、これまで何度か『浅草祭』を勤められているので、問題は僕だと思います。とにかく体に(踊りを)しっかり入れて、愛之助さんに後れをとらないようにすることが重要だと思います。

──まずはご自身での稽古を。

そうです。自分の稽古を積むしかないですね。これは普段からですが、コロナ禍では特に合わせる稽古が少ないので、そこは不安要素の1つですがしょうがないですね。

まるで腿上げ、空気椅子? 善玉は超ハード

──歌舞伎を知らない方も観に来られると思いますが、「三社祭」の大変さというのは、具体的には?

観ていただかないとわからないところがありますが、例えばエクササイズだとすると、今回の「三社祭」は四変化のうちの1つなので10分くらいに凝縮されていますが、その間ずっと腿上げしているような感じですね。それも、腿上げしていると思ったら急に止まるとか。日本舞踊の辛さは、ダンスやスポーツとまた違う「耐える」辛さもあるんです。急に動から静になって、止まってギュッと耐える筋肉の使い方。他の日本舞踊も基本的には下半身、太腿あたりがすごく重要で、空気椅子をしているような腿の使い方をする辛さにプラスして腰を落とすので、筋肉としては一番辛いです。そこに腿上げが入るので、息が上がりやすく、さらに後半は面を着けます。そこからがさらにキツくて、腿上げをしつつ、今は稽古中にマスクをしますが、日常生活でもマスクを着けると息苦しいじゃないですか。それに近いかもしれません。ほとんど鼻呼吸しかできない状況でずっと腿上げをして、同時に体全体を使うので、今までキツいと思う踊りも多々ありましたが、一番キツかったのは「三社祭」でした。

──そこからの通人というのはさらに大変?

動き方が全然違いますが、観ていただければわかりますが、通人も地味にきびきびと動くんです(笑)。(同じ舞踊作品の)『乗合船』などの通人ではそこまで大変じゃないので、四段返しならではかもしれません。息が上がった状況と役の切り換えがキツいポイントなので、そこをどう乗り越えられるかが重要だと思います。

──若い頃にされて結構大変で、今も大変だということですが、経験を積んで力が抜けて楽になるということは?

歌舞伎でも歌舞伎以外でも、20代の頃はまず役をやらせていただく機会が少ない。そのなかで出ると、気持ちも昂るし、全部を押し出したくなりますが、先輩方のお芝居を拝見すると、力が抜けたなかでパワーを前に出すという居方で。ふとした時、自分でも「こういうことなのかな」と感じられることが少しずつ増えてきました。「今日はあまり出し切れてなかったな」と思って映像を観てみると力感がなくて良く見えたり、周りの方に「今日は良かった」と言ってもらえたり。それは手を抜いているのでなく、余計な力みがないということかもしれません。意図的にできるようになるには時間がかかると思いますが。

 

エンターテインメントがどれだけ必要とされているか実感

──再開後の状況というのは、お仲間から聞いていますか?

そうですね。歌舞伎座には9月に『かさね』を観に来て、あの時はやはり観ていて非常に胸に来るものはありました。その時、猿之助さんと他のお仕事でご一緒していたので「久しぶりの歌舞伎座はどうですか?」と聞いたら「え?出ちゃったら何も変わんない」と仰って(一同爆笑)。化粧をし始めた時に、思うことはあったようですが(笑)。だから、どう感じるかは僕自身も楽しみです。

──歌舞伎では休みが続きましたが、その間にテレビなどでは大活躍でした。

僕は時間を持て余すのが得意じゃなく、有意義に使うことができないので、再開したなら動かないと落ち着かない。ですからバンバン仕事をさせていただきました。

──猿之助さんに、『半沢直樹』でドラマに出たことが歌舞伎に役立つか聞いたら「何にもない」と。松也さんはいかがですか?

(笑)仰っていることはよくわかります。もちろん世間的な反響は大きいし、僕自身も出させていただいてよかったし、出会いもありました。ただ、演劇人として歌舞伎に影響があるかといわれれば、ないといえばないし、あるといえばある。結局、1つ1つの役が経験となり次に繋がるということでは、ドラマも歌舞伎も同じだと思います。

──これまでの『浅草祭』で印象に残っているものはありますか?

一番残っているのは新橋演舞場(2009年11月、尾上松緑と愛之助による上演)ですかね。僕も他の演目で出ていたのですが、その時に、松緑のおにいさんもまだ30代。ちょうど今の僕と同じ年代で、愛之助さんと最後に毛を振っている時、お互いが競い合うようにされていたり、終わってからもおふたりが「やってやったぜ!」みたいにされているのが、すごく印象に残っています。

──今年最後の公演です。1年を振り返りつつ、来年の展望などは?

毎回、言葉を見つけるのはなかなか難しいですが、今年は特に難しいですね。誰もがコロナのことしか思い浮かばない年になったので、それは大前提として、一個人として、いろんなことに気づけた年ではありました。仕事をしている時は、何も考えず集中してやるだけですが、「何もない」時間だからこそ、自分の体や精神的なメンテナンスは、年齢的にもやはり気にしてあげなきゃいけないと思いました。
それもこの期間中でなければ考えなかったと思います。歌舞伎座に出ている皆さんも、お仕事をされている皆さんも、仕事をすること、人と接することが我々には非常に大事だと改めて気づきましたし、自分が出たからというのもありますが、『半沢直樹』で皆さんがあれだけ喜んでくれた。それ以前から、自粛期間中に有料チャンネルや配信でこぞってみんなが韓流を観たり、そういう話題で持ちきりになるということは、エンターテインメントがどれだけ我々の生活のなかで必要とされているかということ。
だからこそ客席が半分だろうが3分の1だろうが、生で届けられる機会があるなら、ライブという点ではやっていくべきだと思うし、それ以外でも、先輩も後輩も、自分も1度配信をやりましたが、この機会がなければ、みんなが模索する機会もなかった。これからの時代、そういうことを考えていくべきだったと思うので、そういう意味ではプラスになったこともあります。これを全部マイナスにしてしまっては意味がない。
『半沢直樹』の収録が再開したのが6月頭で、リモートで家で何かをする機会はちょくちょくありましたが、お芝居をする機会は『半沢~』が復帰の初め。現場で、スパイラルの大きな窓から空を見上げて、芝居ができるのはこんなに楽しいんだと泣きそうになりましたが、その思いが持続したのが2日ぐらい(笑)。また元に戻ったら結構忘れてしまいそうだなという怖さがありますが、そういう人間の面白さも、これまで経験したことがないからこそ感じられた年だったなと思います。

【公演情報】
「十二月大歌舞伎」
●12/1~26◎歌舞伎座
第一部 11:00開演
『四変化 弥生の花浅草祭』
出演
武内宿彌・悪玉・国侍・獅子の精:片岡愛之助
神功皇后・善玉・通人・獅子の精:尾上松也

第二部 13:30開演
『心中月夜星野屋』
出演
おたか:中村七之助
星野屋照蔵:市川中車
母お熊:市川猿弥
和泉屋藤助:片岡亀蔵
第三部 16:00開演

『傾城反魂香』
出演
浮世又平後に土佐又平光起:中村勘九郎
女房おとく:市川猿之助
狩野雅楽之助:市川團子
土佐修理之助:中村鶴松
将監北の方:中村梅花
土佐将監光信:片岡市蔵

第四部 19:15開演
『日本振袖始 大蛇退治』舞伎
出演
岩長姫実は八岐大蛇:坂東玉三郎
稲田姫:中村梅枝
素盞嗚尊:尾上菊之助

※12月1日~7日までは下記代役にて上演。
岩長姫実は八岐大蛇  尾上菊之助
稲田姫  中村梅枝
素盞嗚尊  坂東彦三郎

〈料金〉1等席8,000円 2等席5,000円 3階席3,000円 1階桟敷席8,000円(全席指定・税込)
※4階幕見席の販売はありません。
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489 または03-6745-0888(10:00~18:00)
〈公式サイト〉https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/695/

 

【文/内河 文 写真提供/松竹】

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