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『A列車に乗っていこう』松風理咲インタビュー

北村想の書き下ろし新作を、劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出するという刺激的な舞台『A列車に乗っていこう』が、7月20日から東京芸術劇場シアターウエストで開幕した。(28日まで。そののち地方公演あり)

登場人物は二人だけで、難病を患っていたらしい少女そら、そして少女の看護師であり個人教師でもある時枝。二人は列車に乗って行くあてのない旅に出る。その旅はひどく破天荒であり、幻想的であり、可笑しく、切なく、明るいものであり、暗闇と光りの射す方を行き来する旅路であった。そして、二人は一体どこにむかうのか―――。

北村想ならではの詩的で哲学的な台詞が散りばめられたこの作品で、初めて舞台に挑む松風理咲。演じるそら役や稽古への取り組みについて語ってもらった。

普通はどのくらいの台詞量かわかってなくて

──まず台本を読んでの印象はいかがでした?

最初に読んだときは、言葉や意味などわからないことばかりでした。そこで、まず出てくる言葉や本や人の名前など1つ1つ調べていって、それが会話の中でどんなふうに繋がっているか理解するところから始めました。

──松風さんは読書が好きだと聞きましたが、それが役に立つ部分もあったのでは?

ありました。文学や哲学などの話が沢山出てきますから、読んだことのある作品でも新しい発見があったり、新しい知識と出会ったりしました。そして何度も読んでいくうちに、台本への理解が自分の中で深まる感じがありました。

──二人だけの芝居なので膨大な台詞量ですが、そこはいかがでした?

私はそもそも舞台に出ることが初めてなので、普通はどのくらいの台詞量なのかわかってなくて(笑)。これ全部覚えられるのかな?と。映像ですと、極端に言えばその日に撮影するぶんだけ覚えていればいいのですが、今回はこの台本1冊を全部覚えないといけないんだと思ったとき、すごく不安はありました。

──舞台そのものへの興味は、前からあったのですか?

いつかは出てみたいと思っていました。もともと観劇は好きなので、事務所の先輩の舞台をはじめ色々な舞台を観に行っていました。

──映像でデビューして4年目ですね。最近、映画とドラマでヒロインを演じた『兄友』でも伸び伸びと演技をしていて好評でしたが、演じるとき緊張したりは?

あまり緊張しないです。でもあの作品はラブコメでしたから、少しオーバーに演技する部分もあって、いつものテンションとは違うので、そこが難しかったです。

──自分の中で演技することに向いているなと思う部分は?

想像することが好きなので、そこは向いているかなと。本を読みながら頭の中で映像化して、こんな雰囲気なのかなとか色々考えるのが好きなんです。ですから台本を読むのも楽しいです。

そらが初めて外に出たときの感覚を大事に

──今回は大先輩の石田ひかりさんと二人だけの芝居ですが、一緒に稽古をしてみていかがですか?

存在というか居方が上品でお綺麗で、素敵な方だなと思います。とても優しく包み込んでくださるので、テレビなどで拝見していた方なのに、へんな緊張がなく、良い意味でリラックスしてお稽古できています。それに時枝さんという役柄は、私の演じるそらを見守る部分があるのですが、石田さんそのままというか自然な包容力を感じます。

──そらはユニークで頭の良い女の子ですが、役柄へのアプローチは?

そらちゃんは色々なことを知っているし知りたい、好奇心が旺盛な子ですので、時枝さんのどの言葉に引っかかって、こういう言葉を言うのかなとか、そらちゃんの好奇心の向きどころを考えることが大事かなと思っています。

──松風さん自身と重なる部分はありますか?

そらちゃんは理屈っぽく喋るんですが、私にもちょっとそういう部分はあります(笑)。それに、私は知らないことがいやで、知りたい知りたいという思いが強いので、そこも、ちょっと似ているかもしれません。

──そらは難病で長い間病院にいたことで、外の世界をほとんど知りませんね。 

そこが一番難しくて、外に出たときの喜びとか、外のことをどんなふうに感じ取っているのかをどう表現したらいいのか、本で読んだことと実際の世の中は違うので。外に出られない生活の中で、そらは色々な本をどう読み解いていたのか、そこを想像することが必要かなと。演出の日澤さんからも、「初めて外に出た人は駅などでどんなことを感じるんだろう」とか、「そらちゃんが外の世界に初めて触れる感覚を大事に」とか、色々なアドバイスをいただいています。

──劇中で列車がトンネルを1つ抜けるたびに新しい景色が広がって行きますね。その光景は、もしかしたら松風さんが15歳で岐阜から東京に出てきたときと通じるものがありますか?

そうですね。本当に毎日が新しいことだらけでした。電車に乗ることから新鮮で、岐阜では移動はほとんど車でしたから、電車に乗るのが楽しくて(笑)。乗り換えも多いし、東京はどれだけ沢山の路線があるんだろうと(笑)。そういう新鮮な感動は、たしかにそらちゃんと重なる気がします。

色々な解釈のできる深くて面白い作品

──日澤さんの演出を受けていて、ドラマとは違う舞台ならではという部分は?

台本をみんなで読んで、その内容などを細かく読み解いていくというのは、ドラマではほぼないことなので大きな違いです。そして演出家の方が作品について考えていることを聞きながら、こちらからも質問や考えを言っていく。そんなふうにコミュニケーションしながら作っていくことで、自分も役を深めていくことができるので、とても大事な時間だなと思います。

──稽古の中では、演出家の指示に応えて変化していくことも必要になってきます。 

それは本当に難しいです。理解していても表現できないといけないわけですから。毎日、考えて考えてやるしかなくて。

──そういうときに石田さんからのアドバイスなどは?

色々言ってくださいます。普段とは違う声の高さで喋ることや、間を置いて言うだけで印象が違ってくることなどを、わかりやすく教えてくださるんです。台詞によって声の幅を広げることや、トーンを変えることは意識するようになりました。

──技術的なアドバイスは演技の引き出しになりますね。この作品に出演したことによって得るものは多いと思いますが、松風さん自身が期待することは?

お芝居ってやはり台本を読み解く力が必要だと思うんです。今までも自分なりに台本を深く読もうとはしていましたが、今回、皆さんと一緒に台本を読んでいて、「あ、こういう読み解き方もあるんだ」と思うことが沢山ありました。1つ1つの台詞がどこから影響を受けて発せられるのか、そこを細かく細かく確認しながら1つの作品を作っていく。それは初めてと言っていい経験なので。それから、「自分のこの台詞に相手がこう反応するためには、ここを立てて言う」とか、そういう演技の基本的なことを教えていただいて、それはこれから映像でも舞台でも生かせる貴重な体験です。舞台ならではの全身の動きや発声方法なども教えていただいて、この長い稽古期間があるからこそ、得るものが沢山あるなと思います。

──長い稽古は舞台ならではの贅沢な時間ですね。

ドラマは短時間で要求された演技をできないといけないのですが、そのためにも舞台のお稽古の中で力をつけていきたいです。

──前向きで意欲的な松風さんのこれからが楽しみです。ではあらためてこの作品への意気込みをいただければ。

ちょっと哲学的だったり文学的だったり、とても情報量の多い作品なので、そういうものがお好きな方はそこに注目していただいて、でも知識があまりない方でも、時枝さんとそらちゃんが会話を楽しんでいる、その雰囲気だけで楽しめるのではないかと思います。そしてこの作品を観ながら「二人は一体どこに行くのか」と考えていただけたら。色々な解釈の仕方がありますし、人それぞれに考えられるとても深くて面白い作品なので、ぜひ色々なことを感じ取っていただければと思います。

まつかぜりさき〇岐阜県出身。中学生の時にスカウトされ。2015年に芸能界デビュー。2016年に連続ドラマ『グッドパートナー 無敵の弁護士』でオーディションにて選ばれ、ドラマ出演。2017年、『トモシビ~銚子電鉄6,4kmの軌跡~』で初主演を果たす。2018年、映画『兄友』、ドラマ『兄友』『グッドドクター』に出演。舞台は本作が初となる。

【公演情報】
トム・プロジェクト プロデュース
『A列車に乗っていこう』
作◇北村想
演出◇日澤雄介
出演◇石田ひかり 松風理咲
●7/20~28◎東京芸術劇場シアターウエスト
〈料金〉一般前売¥4,500 当日¥5,000 U-25(25歳以下)¥2,500 シニア(60歳以上)¥4,000( 全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。要身分証明書。前売当日とも同料金
〈お問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153(平日10:00~18:00)
https://www.tomproject.com/peformance/a.html

〈地方公演〉
※地方公演は各地域の主催事業となります。お問合せは各問合せ先へお願いします。
※公演時間等、決まり次第更新いたします。

●7月31日(水)19:00
岐阜県高山市 こくふ交流センター さくらホール(TEL:0577-34-6550)
●8月3日(土)13:30
山形県大石田町 大石田町町民交流センター
●8月4日(日)15:00
青森県六ヶ所村 六ヶ所村文化交流プラザ(TEL:0175-72-3400)
●8月10日(土)14:00
石川県七尾市 能登演劇堂(TEL:0767-66-2323)
●8月11日(日)14:00
石川県七尾市 能登演劇堂(TEL:0767-66-2323)
●8月17日(土)15:00
兵庫県西宮市 兵庫県立芸術文化センター(TEL:0798-68-0255)
●8月19日(月)18:30
長崎県南島原市 南島原市ありえコレジヨホール
●8月21日(水)19:00
岡山県岡山市 岡山県天神山文化プラザ(TEL:086-226-5005)
●8月23日(金)19:00
福井県坂井市 みくに未来ホール(TEL:0776-82-7200)
●8月25日(日)14:00
兵庫県小野市 小野市うるおい交流館 エクラ(TEL:0794-62-5080)
●8月26日(月)19:00
島根県雲南市 チェリヴァホール(TEL:0854-42-1155)
●8月28日(水)18:30
群馬県前橋市 昌賢学園まえばしホール 小ホール(TEL:027-221-4321)
●8月31日(土)13:30
愛知県小牧市 小牧市市民会館(TEL:0568-71-9700)
●9月1日(日)14:00
三重県紀宝町 紀宝町生涯学習センター

 

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】

 

 

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