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Makino Play 第2弾公演『モンローによろしく』マキノノゾミ インタビュー

※お知らせ  この公演は体調不良者が出ましたため、2/4〜10の公演は中止になっています。それ以降の公演は、公式サイトにてご確認のほどお願いいたします。http://makino-play.net/monroe/

脚本家・演出家のマキノノゾミによる企画、Makino Play の第2弾『モンローによろしく』が、2月3日~13 日、座・高円寺1で上演される。

『モンローによろしく』は、1993 年にマキノ主宰の劇団 M.O.P.にて上演し、同年、東筑紫学園戯曲賞を受賞した作品で、今回は29年ぶりの再演となる。

この舞台でハリウッドの人気スター、キースを演じるのは、時代劇から漫画原作舞台まで幅広く活躍する財木琢磨。女優志望の娘シェリーは、昨年だけでも6作品の舞台に出演している那須凜。そして劇団 M.O.P.の劇団員でもあった三上市朗が映画会社の副社長役で、オーディションで選ばれた出演者と共に脇を固める。

【STORY】
物語は1941年、映画の都ハリウッド。新進気鋭の映画監督ビリーとその親友でもあるスター男優のキースは、これまでの常識を打ち破る野心作の製作にあたり、相応しいヒロイン役の女優が見つからず頭を悩ませている。だがそこへ飛び込んで来た女優志望の娘シェリーの中に輝く才能を発見する二人。二人三脚の映画作りが始まるが、やがて日米開戦。そして終戦後のレッド・パージ(赤狩り)…。世の中がエンターテインメントに望むものも次々に変貌してゆき、映画に賭ける彼らの純粋な想いは容赦なく時代の波に呑み込まれてゆく。

1940~1970 年代のハリウッドを舞台に、映画作りに夢をかける人々と移りゆく時代を描き、現代のエンターテインメント界が抱える問題や、今を生きる人々がどこに向かうべきかを問いかける『モンローによろしく』。
作・演出のマキノノゾミに、この作品に込めた思いや今回の見どころなどを話してもらった。

今書いている戯曲のスタイルの原点

──まず、この作品を今回再演しようと思った理由から伺いたいのですが。

還暦を過ぎてからいろいろ思うところがあって、自分の仕事を整理していこうと思ってこれまで書いた作品を読み直したりしているんですが、もう一度リメイクしたいと思う作品もあって。そのまま死蔵してしまうより、もう一度陽の目を浴びさせてやりたいなと。そういう思いで上演したのが、昨年の『東京原子核クラブ』だったんです。そして次になにをやろうかなと思ったときにこの作品が浮かんできた。この作品は僕が今書いている戯曲のスタイルの原点の1つでもあるので。

──マキノさんの作品の中でも、名作の1つとして知られていますね。

初めて賞をもらったんです、東筑紫学園戯曲賞という誰も知らない賞(笑)。ちょうど劇作家協会ができたばかりで、北九州で行われた劇作家大会で戯曲コンクールがあって、今は劇作家協会には新人戯曲賞というのがあるんですが、その前身みたいな感じのコンクールで、そこに応募したら、優秀賞ではないけれど、ただ落とすのも惜しいってことで特別賞を作ってくれたらしいです(笑)。

──原点とおっしゃる通り、起伏に富んだストーリーの中に、シビアなテーマや人間同士の確執なども描かれていて、マキノ作品ならではのエンターテイメントだなと。

翻訳劇のスタイルでオリジナル作品を書くというのが自分の中では面白いなと思ったんです。芝居というのはどうせ「作り話」だし、そういう構え方というか、スケールの大きなフィクションということを試したかったわけです。書いてみて新しい手応えみたいなものを感じたので、それ以降どんどんそのスタイルで書くようになっていきました。

──描かれている映画界の裏側など、まさにハリウッド映画の世界ですが、そういう映画がお好きだったのですか?

いや、とくにそういうことはなくて、本当はつかこうへいさんの『蒲田行進曲』を誰にも気づかれずにリメイクしてみたかったんです。ハリウッドを舞台にして、男2人と女1人の愛憎のような話にしようと。まあ書いているうちに「赤狩り」の話とか入ってきて、似ても似つかないものになっちゃいました(笑)。

遠い過去ではなく近い未来になってきている

──物語は1941年から始まって1970年代まで描かれます。その中で1950年代に映画界にも吹き荒れたのが「赤狩り」(マッカーシズム)で、かなり詳細に描かれていますね。

「赤狩り」についてはこの作品を書く以前から少しだけ知識があったんです。『ローマの休日』を偽名で書いたシナリオライターのダルトン・トランボをはじめ、映画界から追放されたハリウッド・テンと呼ばれる人たちがいたことなども知っていました。執筆当時、改めてその頃の映画界の資料などを調べているうちに、作品にその話を入れ込んでみようと思ったんです。

──主人公のキースとシェリーは、出会ったときは人気俳優と女優志望の娘だったのが、「赤狩り」を軸に次第に立場が逆転していきます。まさにハリウッドの光と影だなと

いわゆる栄光と挫折の1つのパターンと言ってもいいですよね。『ローマの休日』だって、本来の主人公である大スターのグレゴリー・ペックが新人のオードリー・ヘップバーンに食われてしまって、今じゃオードリーの映画になってしまった。そんなイメージも書いているときどこかにあった気がします。

──物語の後半で、非米活動委員会の聴聞会で、自身の解放と引き換えに仲間を密告させられる話が出て来ます。映画界が分断されていく様子がとてもリアルで怖さを感じます。

書いた当時は、「昔はそういう苛酷なことがあったんだな」という感覚、どこか他人事のような認識でいました。でも気がついたら、それが遠い過去ではなく、いつのまにか近い未来になってきているような感覚が肌身に迫ってきて。それは『東京原子核クラブ』のときにも思っていたことなんですけど。

──そのときのインタビューで、「もう戦後ではなく、すでに戦前なのかもしれない」とおっしゃっていました。

なんかそういう気分がここ20年ぐらいの間に、じょじょに広がってきている気がします。人間がどこかヒステリックになって、集団で誰かを糾弾することが多くなってきている。社会が強張ってくると、「正義を行使する」というかたちで他者を抑圧するということが起きてくる。それも普通の善良そうで真面目そうな人たちがそういうことをする。どんどん不寛容な時代になっているなと。僕はたまたま今よりは寛容な時代に育ってきたせいかもしれないけど、今とても嫌な空気を感じています。

基本はエンターテイメントで楽しい娯楽作品

──出演者のお話も伺います。どの登場人物も面白くて見せ場がありますね。まず映画スターのキース役ですが、演じる財木琢磨さんの魅力は?

キース役は、芝居もしっかり出来なきゃいけないんですけど、その前にスターとしての色気みたいなものが絶対に必要で、財木くんは僕が脚本を書いた舞台『魔界転生』(2021年)に出てくれて、姿も良いし、芝居も素直でいいなと思いましたし。ただキース役はちょっとアップダウンが激しい役なので、自分のこれまでのキャパシティを絶対超えなきゃならなくなる。まあ立っているだけでもじゅうぶん良い男なんだけど、この役を演じきったらもう一段セクシーになると思います。

──シェリー役は那須凜さんです。

那須さんは生命力の高さですね。僕が青年座に書いた『横濱短篇ホテル』という作品にほぼ新人だった頃に出たんですが、それを観て「おお!」と思いました。ダイナミックで、なんか突き抜けたスケールがあって、外国人の役なんかをやったらいいだろうなと。今回のシェリーはぴったりだと思います。

──三上市朗さんは20世紀フォックスの副社長、ダリル・ザナック役ですが、貫禄とか切れ者感とかぴったりですね。

このザナックだけ実在の人物なんです。実は初演のときに三上は出てなかったから、今回、楽しみながら付き合ってくれればいいと思っています。

──一部オーディションという形で決めたそうですね。選ぶときにどんなことを基準に?

ビリーの石川湖太朗くんは、前回の『東京原子核クラブ』にも出演していて、いいなと思っていたので今回も出てもらおうと。オーディションの基準は、僕の場合は声とか雰囲気ですね。登場人物の声が均一にならないようにしたいなと。演技の上手い下手とか、演技の波長が僕と合うかとか、そういうことは1本一緒にやってみないと本当にはわからない。オーディションだけでそこまで見るのは難しいので。こういう声がこの役にはいいなと思う人が残った感じですね。

──それぞれ個性溢れる俳優さんばかりで、公演が楽しみです。では最後に、観にこられる方にメッセージをいただけますか。

僕は基本どんな芝居でも主題は一緒で、硬い言い方でいえば、それは倫理みたいなものだと思います。人間って弱いところも強いところもあるし、醜いところも美しいところもある。でも、できるならば美しいふるまいというものを愛したい、そういうことが僕は好きですよと、そういうことでしかないんですが。いろんな人がいるし、いていいんですが、油断すると人間はすぐ暗闇にひきずり込まれていく。でも美しいものを見続けよう、美しいものへ手を伸ばそう、そういう心持ちでどの芝居も作っています。

──この作品の中でも、映画への熱い思いを捨てない人たちや、エンターテイメントへの夢が描かれていて、とても励まされます

僕の作品は基本的にエンターテイメントですから(笑)。ドタバタ的な笑いもありますし、今回も楽しい娯楽作品ですから、堅苦しく考えずに楽しんでいただきたいと思っています。

まきののぞみ○静岡県出身。劇作家・脚本家・演出家。同志社大学文学部卒業。劇団M.O.P.主宰(1984年旗揚げ~2010年解散)。主な受賞として、01年に『赤シャツ』(作)『黒いハンカチーフ』(作・演出)で第36回紀伊國屋演劇賞個人賞、01年に『怒濤』(演出)で第8回読売演劇大賞優秀演出家賞・作品賞、08年に『殿様と私』(作)で第15回読売演劇大賞作品賞、11年に『ローマの休日』(脚本・演出)で第36回菊田一夫演劇賞受賞など。朝の連続テレビ小説『まんてん』(NHK)、映画『真田十勇士』など映像作品も多数執筆。最近の舞台作品は、 Makino Play vol.1『東京原子核クラブ』(脚本・演出)、文学座『昭和虞美人草』(脚本)、『魔界転生』(脚本)、わらび座創立70周年記念作品 ミュージカル『北斎マンガ』(脚本・演出)、『赤シャツ』(脚本)、メイシアタープロデュース SHOW劇場vol.14『十二人の怒れる男』(演出)。

【公演情報】
Makino Play 第2弾『モンローによろしく』
作・演出:マキノノゾミ
出演:財木琢磨 那須 凜/石川湖太朗 岩男海史 鹿野真央 古河耕史 林 大樹 菊池夏野/三上市朗
●2/3~13◎座・高円寺 1
〈料金〉5,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉座・高円寺チケットボックス  03-3223-7300(10:00~18:00/月曜定休)窓口(10:00~19:00)
https://za-koenji.jp/(無休 24H 受付)
〈公式サイト〉http://makino-play.net/monroe/

 

【取材・文/榊原和子 撮影/中村嘉昭】

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