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不朽の名作ミュージカル『レ・ミゼラブル』2021年公演開幕!

1987年の日本初演以来、常に熱狂を持って迎えられているミュージカル界の金字塔のひとつ『レ・ミゼラブル』が有楽町の帝国劇場で上演中だ(7月26日まで。のち、8月4日~28日福岡・博多座、9月6日~16日大阪・フェスティバルホール、9月28日~10月4日松本・まつもと市民芸術館にて上演)。

ミュージカル『レ・ミゼラブル』は、フランス文学の巨匠ヴィクトル・ユゴーが、自身の体験を基にして、19世紀初頭のフランス動乱期を舞台に、当時の社会情勢や民衆の生活を克明に描いた傑作大河小説をもとに作られた作品。原作で滔々と訴えかけられる「無知と貧困」「愛と信念」「革命と正義」「誇りと尊厳」等々の、人が生きていく中で向き合うべきものを抽出し、全編歌で綴るミュージカル作品として1985年にロンドンで初演。2年後の1987年、当時日本では非常に珍しかった全キャストオーデイションで集結した多彩なキャストにより帝国劇場で日本初演以来、絶大な支持と喝采に包まれた歩みを続けている。

2013年にはロンドン初演25周年を機に、美しい音楽と歌詞はほぼそのままに、舞台装置、照明、音響、衣裳、登場人物のキャラクター描写などの演出面を一新した“新演出版”『レ・ミゼラブル』が登場。8ヶ月間の日本縦断ロングラン公演も実現し、2015年公演で上演回数3.000回を突破。日本初演から30周年となった2017年には歴代キャストが日替りで登場する特別カーテンコールが実施されて、更に熱狂が加速。2019年年公演で、上演回数は3.336回に到達している。

そんな作品は、代々多くのミュージカルスターを輩出してきていて、上演の度に新キャストが注目を集めているが、中でも今回2021年公演の大きな話題は、2017年公演から主人公ジャン・バルジャンに引き取られ、美しく成長した娘コゼットを演じてきた生田絵梨花が、鏡合わせのような薄幸の境遇の中で、信念をもって生き続けるエポニーヌ役にキャストチェンジして登場したこと。全ての人々から命をつなぐ願いを託されるコゼットとその恋人マリウスは、この作品が描き出す明日への祈りと希望の象徴。生田の美しいソプラノとビジュアルは、そんなコゼットを演じる為に生まれたと言っても過言ではないほどのハマり役だっただけに、新たな挑戦には驚きもあったが、マリウスへの報われぬ恋心を秘めた、エポニーヌの献身を見事に描き出した、こちらもまたハマり役と思わせる仕上がりに再び驚かされた。マリウスの言葉やしぐさ一つひとつに一喜一憂し、瞳を輝かせ、また落胆に涙するエポニーヌの心情が切々と伝わり、作品を代表するミュージカルナンバーのひとつ「オン・マイ・オウン」も見事に歌い上げて、出色のエポニーヌデビューとなった。

また、新キャストとして大きな話題を集めたもう一人、エポニーヌの父で、欲得ずくで生き抜くことに欠片のためらいもないテナルディエに扮した六角精児は、本格的なミュージカル作品への初出演、初帝国劇場デビューを『レ・ミゼラブル』で飾るに相応しい、独特の存在感を発揮。ある意味いさぎよく芝居歌に徹していて、作品のコメディリリーフ的側面も担う役柄に、六角精児本人の味わいを巧みにミックスした上で、役柄に欠かせない愛嬌としぶとさがあるのがなんとも魅力的。細かい芝居も面白く目が離せない。帝劇出演は僅かに三回だが、映像の世界でもお馴染みな人だけに、全国の劇場も大いに沸かせるに違いない。

その妻マダム・テナルディエにも初役となる樹里咲穂が登場。連続出演を続けている森公美子の印象が極めて強い役柄に、宝塚歌劇団時代から演技派として知られた樹里の縦横無尽な表現が、独自の味わいのあるマダム・テナルディエを表現して見応えがある。歌声に芯があり、コケティッシュな中に力強さがあるのも生きている。

他にも竹内將人のマリウス、加藤梨里香、敷村珠夕のコゼット、木内健人のアンジョルラスなどの新キャストと、福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀のジャン・バルジャンをはじめとした多くの続投キャストの化学反応にも大きなものがあるだろう。組み合わせにこだわるとどうしていいかわからない、というほど多彩なキャスティングが組まれているなかで、ひたむきに生きること、自身の信念と正義に如何に従うか?が様々な形で描かれていく、いまこそ観て欲しい作品の上演が、帝国劇場から全国公演までつつがなく続いていくことを願ってやまない。

そんな作品の2021年公演の初日を前に、劇場ロビーで囲み取材が行なわれ、福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀、生田絵梨花、六角精児、森公美子が登場。公演への意気込みを語った。

【囲み取材】

福井晶一 
(プレビュー公演で舞台に立った折に)作品を待っていてくれたお客様の圧を全身で感じました。カーテンコールでいただいたありったけの拍手からその熱意が伝わって、作品の力も強く感じました。この一年あまり、みなさんそれぞれ苦しんできて、演劇界も苦しい時間が多かった中で『レ・ミゼラブル』がお客様をお迎えして公演できる。それ自体が演劇界にとって明るいニュースだと思います。僕達にも色々な想いがある中で、なるべく冷静に、作品を忠実に伝えることに集中しました。

吉原光夫 
また帰ってきたな、という感覚がすごくあります。色々あった去年は、不安も渦巻いていましたが、『レ・ミゼラブル』で帝劇に帰ってきてみたら、ずっと変わらずに守られていく。温められながら先に進んでいく舞台が開くということが、日本の日常の中にあるんだなとすごく安心できました。(NHK朝の連続テレビ小説『エール』への出演で大きな話題になって以来、日常に変化はありましたか?と問われて)『エール』は素晴らしい出会いでしたが、僕はもともと声をかけにくいキャラなので(笑)、日常は変わっていません。おふくろが家に来たときに「友人に頼まれたからサインをお願い!」と言われるようになったくらいですね(笑)。

佐藤隆紀
お客様の拍手の圧にすごく感動しました。本当に様々な想いでこの会場まで来てくださったと思うと、こちらも胸がギュっとあたたかくなるような、本当にありがたい気持ちに包まれました。昨年コロナ禍で仕事がなくなったとき、今こそ自分を見つめ直して研鑽を積み、いつか必ず進化した姿をお客様にお届けしなくてはと思いました。『レ・ミゼラブル』が開幕して、それがひとつ実ったような充実感があります。この想いで感染対策をしっかりしながら、安心安全に公演をお届けしたいです。

生田絵梨花
今まで開幕のときは緊張でフワフワした感じだったのですが、今年はすごく地に足を踏みしめている感じがしています。それはエポニーヌという役に力を借りているのかもしれないですし、目の前にある当たり前の光景がいつなくなってしまうかわからないからこそ、今できること一つひとつに集中して、魂を込めて舞台に臨んでいるからかもしれません。これまでずっと「コゼットっぽい」と言っていただくことが多くて、それは本当に光栄なことですが、そのイメージがある分、どんなエポニーヌができるのかという不安はありました。でも今回お稽古でキャストの方々が「エポニーヌもすごくいいね」と言ってくださったり、「最初からエポニーヌやってた?」という声までいだたけるようになって。そのことで「私のエポニーヌはこの方向でいいんだ」と勇気をもらえた気がします。エポニーヌには強いという印象がありますが、傷つかないために弱さを隠して強くあろうとしていたり、もっと言えば生きるためには強くならなければいけなかったんだと思います。そういう色々な強さが混在しているので、そこは皆様にも共感していただけるのではないかと思います。

六角精児 
全てが新鮮でしたね。僕はプレビュー公演で初めて帝劇に立ったんですけど、この大劇場での拍手を体で受け止めたときに感動を味わいました。ミュージカルを全く知らない自分が本格的なミュージカルの舞台に立ったときに、どういう風にミュージカルというものを捉えられるのかということを、体の中で確かめてみたい気持ちがあったんです。来月で59歳になるんですが、還暦を超えたらはたしてそんなことができるだろうかと考えたときに、頭も体もちょっとだけ融通が効くいまのタイミングでと、思い切ってオーディションに挑戦しました。いまは、非日常的な場所を訪ねて気持ちを動かすことは、不要不急などではなく生活の一部だと感じています。誰かの心を動かす役目を持てていることが誇らしいです。

森公美子
(出演歴24年に達することから)みなさんに飽きられないようにと、それだけを祈っています。役どころには毎回マイナーチェンジがありますので、それでまた新しいマダム・テナルディエをお届けできればと思っているのですが、何しろ衣裳がパンパンで(笑)。コロナ禍で自炊が増えてしまったので、これだけがちょっとみなさんにご迷惑をかけているという状況です(笑)。今回はこの状況なのでリハーサルが前回よりもすごく少なくて、5分の1くらいしかなかったんです。全員が揃ってのお稽古もなかったですし、皆マスクで稽古をしてきましたから、本番になってマスクを取った途端に、誰なのか顔がわからないという状態が続いておりました。舞台がはじまってやっとご本人に対面できたという感じでしたね。(新キャストの二人について)生田さんは「前はコゼットだったんだよね!?」と驚いてしまうくらいすれっからしなキャラクターを押し出していますし、六角さんはさすがに舞台経験が豊富なので、稽古の回数が例年より少ないのに、立ち位置が完璧でした!

それぞれが想いを語った囲み取材は、代表して福井から「いよいよ今日『レ・ミゼラブル』2021年の公演がスタートします。このような状況の中で舞台に立てることを本当に嬉しく思います。まだまだ状況はすぐには良くならないと思いますが、明日の舞台に向かって、私たちは準備をしっかりしてそこに挑むだけだと思っています。全国公演も合わせて10月までと長い公演期間になりますが、最後まで完走できるよう頑張りたいと思いますので、ぜひ応援よろしくお願い致します!」との力強い挨拶で締めくくられ、歴史ある大作ミュージカルの開幕への祝意と、新たな歴史への一歩が力強く進むことを願う時間になっていた。

【公演情報】
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
原作◇ヴィクトル・ユゴー
作◇アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク
作詞◇ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作◇キャメロン・マッキントッシュ
演出◇ローレンス・コナー、ジェームズ・パウエル
翻訳◇酒井洋子
訳詞◇岩谷時子
出演◇
ジャン・バルジャン:福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀
ジャベール:川口竜也、上原理生、伊礼彼方
ファンテーヌ:知念里奈、濱田めぐみ、二宮愛、和音美桜
エポニーヌ:唯月ふうか、屋比久知奈、生田絵梨花
マリウス:内藤大希、三浦宏規、竹内將人
コゼット:熊谷彩春、加藤梨里香、敷村珠夕
テナルディエ:駒田一、橋本じゅん、斎藤司、六角精児
マダム・テナルディエ:森公美子、谷口ゆうな、樹里咲穂
アンジョルラス:相葉裕樹、小野田龍之介、木内健人
ほか

●5/21~7/26◎東京公演 帝国劇場
〈料金〉S席 14,500円 A席 9,500円 B席 5,000円(全席指定・税込)
●8/4~28◎福岡公演 博多座
●9/6~9/16◎大阪公演 フェスティバルホール
●9/28~10/4◎松本公演 まつもと市民芸術館
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/lesmiserables/

 

【取材・文/橘涼香】

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