お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

舞台『最後の医者は桜を見上げて君を想う』細貝圭・本西彩希帆・久保田創 インタビュー

二宮敦人の原作で、本読み書店が選ぶ「感動小説」第一位を受賞。50万部突破するなど話題になっている小説の舞台化、『最後の医者は桜を見上げて君を想う』が、9月8日~11日までCBGK シブゲキ!!で上演される。

【あらすじ】
舞台は武蔵野七十字病院。そこに勤める三人の若い医者。三人は同じ医大に通い、共に七十字病院に入った同期である。それぞれに信念を持っている。
一人は副院長の福原雅和(細貝圭)。院長の一人息子で天才外科医。命に限りがある患者に対して、奇跡を信じ、諦めず難病と闘うことを願う。「生」を諦めない医者。
一人は風変わりな医者の桐子修司(山本涼介)。闘病に疲れた患者には無理に延命治療を行わずに、自分らしく余命を過ごすことを勧めることから死神と呼ばれている。「死」を受け入れる医者。
一人は平凡な医者の音山春夫(鳥越裕貴)。二人ほどの信念はないが、患者と一緒に悩み、迷い、寄り添う。
この三人を時に支え、時に自らの野心を燃やすのが神宮寺千佳(本西彩希帆)という看護師。神宮寺は福原の元彼女で、今は福原の指示で桐子を見張るべく助手をしている。
この医者たちの信念が「とある会社員の死」「とある女子大生の死」「とある医者の死」を通して語られていく。

生と死、その選択肢は無数にある。何を大切にして、何を選ぶかはその人次第。三人の医者が病気を通して、人はどう生きていくべきかという問題に向き合っていく作品だ。演出は岡村俊一、脚本は北区つかこうへい劇団出身で俳優としても活躍しながら、『修羅雪姫』など脚本を手掛ける久保田創。その久保田を囲んで、主役の天才外科医・福原雅和に扮する細貝圭と、福原の部下で看護師の神宮寺千佳に扮する本西彩希帆が、この作品への取り組みを語り合ってくれた。

本西彩希帆・細貝圭・久保田創

天才外科医の繊細な内面の部分も考えながら

──久保田さんにまずお聞きします。今回の脚本を手掛けるうえで大事にしたことは?

久保田 小説の舞台化とかドラマ化ということでは、僕が本を読むのが好きなせいか小説がやっぱり一番面白いと思うことがけっこうあるんです。それはどんなに長くなっても細部までちゃんと説明されていたりするからなのですが、舞台化ではどうしても短くしないといけないので、そのカットの仕方が大事だと思っています。そして最初に読んで自分が面白いと思ったところをどう見せていくか。また、僕自身が俳優なので、キャストが取り組みやすいかどうか、その役を演じる俳優がどうしたら輝くかを考えます。今回はキャスティングを聞いたのがわりと遅かったのですが、そこからある程度、演じる人と役のイメージを近づける作業をしました。

──細貝さんが演じるのは、父親が院長の武蔵野七十字病院で副院長をつとめる天才外科医の福原雅和役です。今の時点でどう取り組もうと思っていますか?

細貝 センシティブな題材なので、その中で福原という人間がどう振る舞うかをまず考えました。天才外科医なので、自信に満ちあふれて率先してリーダーシップを取るわけですが、そういう人間の内面は意外と繊細で虚勢を張るという部分があるのかなと。福原のそういう内面の脆さも含めてどう見せていくかを、演出の岡村(俊一)さんとも相談しながら人物像を作っているところです。あとは物語全体の見え方の中で、たとえば患者への向き合い方が違う桐子との対比なども考えながら、いろいろ模索していきたいと思っています。

──脚本を書いた久保田さんから見て、細貝さんの福原役はいかがですか?

久保田 圭ちゃんは役の内面を素直に表現できる役者だと思うんです。だから天才と言われる福原の内面にある努力家のところとか、人に対して責任を持つところとか、優しさとか、そういう部分が、圭ちゃんが演じることで生身の人間として小説よりも伝わりやすくなると思っています。

──本西さんは看護師・神宮寺千佳の役ですが、福原の元恋人です。

本西 神宮寺は、患者さんと向き合うときと医師と向き合うときではベクトルが違うので、最初は立場が掴めなくて、ちょっと迷ったりもしたのですが、岡村さんからこのベクトルで行けばいいんじゃないか、それなら台詞もこう変えようとか、いろいろ提案していただいたので、やりやすくなりました。岡村さんは私が言いにくそうにしていると「言いづらい台詞は変えていいから」と言ってくれるんです。それは私には初めてのことで、脚本家さんが書かれた言葉は一字一句変えてはいけないと思っていたんです。でも変えていいと言われたことで、医師の福原や桐子(修司)に対して神宮寺がどうしたいのかなども見えてきたので、ここからは詰めて追求していくだけだと思っています。

──久保田さん、本西さんの神宮寺はいかがですか?

久保田 神宮寺は小説を読んでいた段階ではクールで大人な感じがして、感情はすぐには出さない、ちょっとミステリアスな女性に思えていたんですが、本読みで本西さんが読んだら逆のイメージだったんです。でも本西さんが演じることで神宮寺の外見とは違う中身の部分が見えてきた。僕自身、脚本化の段階ではまだ神宮寺についてあまり把握できていなかったのですが、本西さんが台詞を読んだことで神宮寺の内面に目が向くようになったんです。そういう意味では神宮寺とはイメージが離れている本西さんだからこそ、面白い人間像になったと思います。

3つの死のエピソードから、それぞれが受け取るもの

──この物語では、「とある会社員の死」「とある女子大生の死」「とある医者の死」というかたちで、3つの「死」のエピソードが綴られていきます。初めに出てくる「とある会社員の死」は、白血病に罹ったサラリーマンの話ですが、その妻の役を今泉佑唯さんが演じるのが新鮮ですね。

久保田 ずーみん(今泉)は、今まで『あずみ』や『修羅雪姫』では主役で、ガンガン先頭に立って進んでいく立場でしたが、今回は1つのエピソードの中で演じる普通の奥さん役なので、人の会話を聞いている時間、受け身の部分が多いと思います。それをどう演じるか楽しみですし、最後のほうで自分の思いを吐き出す台詞があるので、そこでの「女優・今泉」の爆発力は見ごたえがあると思います。

──2つめの「とある女子大生の死」は難病に罹る女子大生の話ですが、本西さんにとっては同世代の女性の話ということで、とくに感じるものがあるのでは?

本西 患者の川澄まりえは、希望に燃えて大学に入ったばかりなのに、目指していた道がいきなり断たれてしまうんですよね。その姿を見ていると、自分ももしこの仕事がいきなり出来なくなったらと考えると、苦しくなったりします。まりえ役を演じる大串有希さんとは、今年5月の『フラガール』でも共演したので、今回も稽古場でいろいろ話し合ったりしています。

──3つめの「とある医者の死」では、福原が友人の病気に向き合うことになります。この作品は、福原とこの病院の二人の医師、桐子修司と音山春夫との友情についても描かれています。

細貝 福原は二人と最初はそんなに仲が良いというわけではなかったんですが、気がついたら根底にあるものは共通している部分があって、この病院に誘ったのも福原なので、二人への思い入れは強いんです。ただ桐子が違う方向へ突き進んでいったときに音山とも離れてしまう。福原は自分の病院を建て直さなくてはならないし、背負っているものがあるので。でもそんな福原が、シンプルに自分にとって大事な人間の生死を目の前にしたとき、そこには本当の気づきがあって、それをどこまでの振り幅で見せられるかが大事かなと思っています。

先頭にいてくれる圭ちゃんが頼もしい

──皆さんは、すでに『フラガール』で共演済みですが、お互いの魅力や素敵なところなどを話していただけますか。まず本西さんについて。

細貝 天真爛漫ですね。

久保田 裸足で草原を走ってるようなイメージ。

本西 なんでだろう?

久保田 あと末っ子的な感じ。

本西 末っ子です(笑)。

久保田 仕事はすごく真面目。それに守備範囲が広い。『フラガール』の稽古で代役をいっぱいやってくれたよね。

細貝 代役でもすぐその役に染まるしね。

久保田 掴むのが早い。仕事好きだよね?

本西 好きです。落ち込むときもありますし、出来ないと家で号泣するんですけど、現場が好きで、他の人のお芝居を見ているのが好きなんです。

久保田 今回は泣いてない?

本西 泣いてません。ハッピーな現場です!

──次は細貝さんについて。

本西 『フラガール』では一緒のシーンがほとんどなかったんです。それで今回ちゃんとご一緒して、最初の印象では恐い方かなと。

細貝 それ最近けっこう言われるんだよね。なんでかな。

本西 でも話してみるとめちゃめちゃ面白くて優しいです。この前、稽古場へ来る途中で後ろから声をかけてくれたのに、イヤホンしていたので全然気がつかなくて(笑)。

細貝 まじでシカトされてるのかと思った(笑)。

本西 追い越してから「なんだイヤホンしてたんだ(笑)」って。優しいですよね。

細貝 でも稽古2日目か3日目に言ったよね。「圭さんってあれですね、天然ですよね」って。

久保田 ははは(笑)。圭ちゃんがいると稽古場の雰囲気が柔らかくなるんだよね。和気藹々とするから、新作を一から作っていくときなどそれが何よりも有り難いんです。そして、真っ直ぐに立っていられる役者なので台詞を任せられるし、その中でちゃんと揺れられる。今まで本当に沢山一緒の作品に出たので、ほとんど分かっているつもりだったんだけど、今回の稽古場で新しい発見があって。今までは先頭ではなく第二ラインあたりにいて、全体を見ているとか和ませるという役割だったけど、今回は福原をやるからなのか先頭にいてくれるんです。すごく頼もしい。

──久保田さんについてはいかがですか?

本西 世の中には優しい人はいっぱいいますが、こんなに1人1人のことを本当に考えてくれて、ちゃんと言ってくれたり、自分も脚本で大変なのに他のみんなに気をつかってくれて、有り難いなと思っています。

細貝 本当に長い付き合いで、僕は『女信長』(09年)が初舞台だったんですが、創くんは僕より先輩で出ていて、岡村さんにはめられて、1人だけ赤フンで出されて真っ赤な顔してたのが忘れられなくて(笑)。

久保田 すっかり騙されて(笑)、まるで僕が勝手にふざけたみたいなことになって。あれから人を信用できなくなりました(笑)。

細貝 そこからの長い付き合いですけど、良い意味でずっと変わらないし、誰にでも分け隔てなく、本当に面倒をみてくれる良い先輩です。

──最後に公演への意気込みをいただけますか。

本西 医療の話でセンシティブな題材ですけど、福原も桐子も音山も医師としてのそれぞれの考え方があって、誰も間違ってないんですよね。人間にはいろいろな考え方があるし、あっていいんだということを、この作品を観て感じていただけたらいいなと思っています。

久保田 誰にとっても自分と向き合うきっかけを貰うような作品だと思うんです。死についても扱っていますが、それも前向きに生きるための良い刺激にして貰えるといいなと。希望を持てるような話にしようと思ってみんなで作っていますので、楽しみに劇場に来ていただければ嬉しいです。

細貝 登場人物全員にストーリーがあって、1人1人に感情移入できる作品だと思います。誰か1人の目線で観て、次にまた違った角度から観たら全然違う響き方をする作品だと思いますから、できれば全員の目線で(笑)、何度も観ていただけるといいなと思います。ぜひ何回も劇場へ足を運んでください。

細貝圭・本西彩希帆・久保田創

■PROFILE■

ほそがいけい○東京都出身。幼少期から14年間米国で生活し、2008年にミュージカル「テニスの王子様」でデビュー。以降、俳優として活躍中。最近の主な出演舞台は、『飛龍伝2020』『グッバイチャーリー』朗読劇『銀ちゃんが逝く』『Equal-イコール-』『イケメン王子 美女と野獣の最後の恋』『熱海殺人事件』ラストレジェンド ~旋律のダブルスタンバイ~『文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳』『修羅雪姫』『BASARA』『修羅雪姫ー復活祭 50th-修羅雪と八人の悪党』『フラガール − dance for smile –』つかこうへい Lonely 13 Blues『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』など。

もとにしさきほ○千葉県出身。エントリー総数5,000人の中から選ばれ、2017年より秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」の劇団員として活動中。近年の出演舞台は、ミュージカル『薄桜鬼風間千景篇』『家庭教師ヒットマンREBORN!』『けものフレンズ JAPARI STAGE!』『暁のヨナ~烽火の祈り編~』『家族と呼ばないで −I can’t say it enough−』『ゾンビランドサガ Stage de ドーン!』『家庭教師ヒットマンREBORN! 未来編』『機動戦士ガンダム00 -破壊による覚醒-Re:(in)novation』『フラガール − dance for smile –』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… THE STAGE』など。

くぼたそう○千葉県出身。北区つかこうへい劇団出身。劇団時代から外部出演でも活躍。最近の出演舞台は、『新・幕末純情伝』FAKE NEWS、『あずみ~戦国編~』『銀幕の果てに』『飛龍伝 2020』、朗読『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』『フラガール – dance for smile – 』つかこうへい Lonely 13 Blues『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』と『初級革命講座 飛龍伝』など。また『修羅雪姫』(2021年)と『修羅雪姫-復活祭50th- 修羅雪と八人の悪党』(2022年)では脚本も手掛けた。

【公演情報】
舞台『最後の医者は桜を見上げて君を想う』
原作:二宮敦人『最後の医者は桜を見上げて君を想う』(TO 文庫刊)
構成演出:岡村俊一
脚本:久保田創
出演:細貝圭 山本涼介 鳥越裕貴 今泉佑唯 本西彩希帆(劇団4 ドル50 セント) 大串有希 濱田和馬 久保田創 河本祐貴 山田良明
●9/8~11◎ CBGK シブゲキ!!
〈料金〉9,000 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉 Mitt 03-6265-3201(平日12:00 ~17:00)
〈公式サイト〉 http://www.tobooks.jp/lastdoctors-stage/index.html

 

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

 

記事を検索

観劇予報の最新記事

草彅剛・主演のシス・カンパニー公演『シラの恋文』ビジュアル公開!
数学ミステリーミュージカル『浜村渚の計算ノート』開幕!
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
 「池袋演劇祭」まもなく開幕!
加藤拓也の最新作『いつぞやは』開幕!

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報