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プリエール プロデュース『マミィ!』再演、間もなく開幕! 熊谷真実インタビュー

 

熊谷真実主演で田村孝裕が作・演出する舞台『マミィ!』が、2023年3月3日~5日に亀戸文化センターカメリアホールで上演される(北海道・神奈川・東北公演あり)。

2021年に初演された本作は、熊谷真実が2020年3月に迎えた還暦を機に、自分の人生を反映させた物語を田村孝裕の手によって作品にしたいと熱望したことで企画・上演された。

物語は、15年前に蒸発した和久(佐藤B作)が自身の母(松金よね子)の危篤を知り、妻の咲(熊谷真実)の還暦祝いの日に家に帰ってきたことで、家族の関係がだんだんと軋み始めていく様子を描いている。

出演は熊谷真実、佐藤B作、松金よね子、三津谷亮、宮﨑香蓮が初演から続投となり、中島愛子が今回新たに加わる。

夫がいなくなった後、義母と2人の子供と暮らす中で常に笑顔を絶やさなかった咲を演じる熊谷真実に、今作に再び挑む思いを聞いた。

「私を主役に書いて欲しい」と初めて思った

──再演が決まったときの、率直な気持ちから教えてください。

この作品は、元々私が言い出したことから始まったものなので、再演できることが本当にありがたいです。世の中には、1回上演したらそれきりで終わってしまうものも多いですから。今回は東京以外の地域でも上演できるので、いい芝居をお届けできるように、みんなで頑張っています。

──熊谷さんが還暦を迎えたことをきっかけに作られた作品ですが、そんな節目の作品でこれまでも「世襲戦隊カゾクマン」シリーズでご一緒してきた田村さんを指名されたのはなぜでしょう。

そんなこと今まで思ったこともなかったのに「私を主役にして、田村さんに書いて欲しい」という“女優欲”みたいなものがムクムクと湧き上がってきたんです。田村さんの作品を見るたびに、涙でぐしゃぐしゃになって、頭の中もぐちゃぐちゃになって帰っていく自分がいつもいて、それが実は心地いいんですよね。もちろん、見るのと実際にやるのとでは違うけれども、その世界に身を置きたい、と思ってしまったんです。

──田村さんに本作の依頼をするときは、どのようなお話しをされたのでしょうか。

私は、田村さんの描く切なくておかしい「せつなおかしい」世界とか、表面は普通の人なのに、実は底が見えないぐらい深いものを抱えていた、というような部分を描くところが好きなので、暗い作品になろうが明るい作品なろうが、どんな作品になろうが構わない、と思って、今作についてはどういう部分を書いてほしいとか、どんな作品にしてほしいとかは何一つ言わないで、田村さんに丸投げしたんです。

──そうして上がってきた台本を読んだときの感想はいかがでしたか。

とにかく嘘がないものを書いてもらいたい、とお願いしたのですが、そうしたら心の傷をえぐられるような台本が上がってきて、初演のときはとにかく稽古がつらかったです(笑)。自分自身を咲さんに投影して、自分の気づいていなかった心の傷を見つけては「私、こんなに傷ついていたんだ」と改めて知る、という繰り返しでした。

──自分を見つめ直す作業ができた、という感じでしょうか。

咲さんという人は、とにかくいつも誰かのために動いている人なんですよ。ケンカが起きたら間に入って収めたりして。私もずっとそうだったんです。仲裁に入ることが多くて「どっちの味方なのよ」とか「自分がない」とかよく言われていました。確かに、咲さんを通して私を知ったようなところはありますね。咲さんが和久さんに「誰かのために動くな」とか「たまには手を抜け」とかいろいろ言われるシーンがあるんですけど、初演の稽古のときはその言葉が心に刺さって、痛すぎて立っていられないぐらいでした。でも、その言葉のとおりに私自身もいくつかやめてみたんです。そうしたら、実際に生きやすくなったんですよ。そういう意味で、『マミィ!』は私の性格までも変えた作品かも知れません。

──お話しをうかがっていると、本作は田村さんから熊谷さんへの素敵なプレゼントになったんだな、ということが伝わってきます。

当時は、なんて意地悪な人だろうと思いましたけどね(笑)。なんでこんなこと書くの、私のこういうところ嫌いなの? なんてふてながら稽古していて、もう最悪でした(笑)。でも、それも含めて感謝しかないですね。本当にギフトですよ。

「いきいきと生きる」ことを伝えたい

──再演のお稽古が始まって、今はどのような心境ですか。

似てる人だけど、自分を分析しながら全然違う人になっていくという作業が大変だな、と思っているところです。例えばこまつ座さんみたいに、時代とか設定とかが実際の自分自身と全然違うと、逆にすんなり役に入れる感じがあるんですけど、今作みたいに自分に近いと、なんだか裸にされているみたいで恥ずかしいですね。田村さんの作品は、意外と負荷がかかるなということを実感しています。

──今回、家族のメンバーが初演と同じキャストが揃いました。

この作品の中で、子どもの存在がすごく大事なんですよ。三津谷亮くんも宮﨑香蓮ちゃんも、2人とも根が明るくていい子だし、役者として根性があるので、また一緒にできるのは本当に嬉しいですね。B作さんとよね子さんはもちろん頼りになりますし、再演とはいえまだまだ稽古の中で探っているところなので、みんなで頑張っていきたいです。

──初演時は、当時の状況と同じく作中もコロナ禍という設定で上演されましたが、今回はその設定を外しての上演となります。

初演時は、コロナ禍だからこその緊張感と、コロナ禍だからこその男と女、そして家族のあり方みたいなものが私の中にはありました。今回コロナ禍という設定をとっぱらって、15年間蒸発していた夫が帰ってきたというシチュエーションとシンプルに向き合ったら、逆に難しくなった感覚があります。考えてみたら、15年って長いんですよ。突然帰ってきた夫を見たときにどうするのか、15年間をどう埋めようか考えているところです。人の人生についてこんなに真剣に悩むなんて、すごいことですよね。そういう意味でも、お芝居って面白いなと思います。

──とても繊細で微妙な心のゆらぎみたいなものをお芝居で立ち上げるとなると、大変な作業になるのだろうなと思います。

物語の着地点はあるけれど、登場人物の心の着地点があるかどうかはわからないという、そこを田村さんはいつも描くんです。この作品はどの役についても、決して“めでたしめでたし”で終わりではなくて、ずっとドラマが続いていく感じがあるんです。つい先日も台本を読んでいて泣いちゃいました。いい話なんですよ。でも、稽古中に咲をやりながら泣いてしまったら、田村さんに「これは喜劇なので泣かないでください」って淡々と言われてしまいました(笑)。確かにそうだよな、と納得はしつつ、役者に気持ちよく芝居をさせてくれないタイプの演出家だなぁ、と(笑)。

──今回は亀戸から公演が始まりますけど、その後北海道、神奈川、そして東北各地といろいろなところを回りますね。

いろいろな土地のお客様に見ていただけるのは本当にありがたく嬉しいです。この作品はまだ赤坂レッドシアターでしかやったことがないので、大きな劇場で演じることにはちょっとドキドキしますが、同じクオリティのものをちゃんと届けたいと思っています。あと、コロナが少し落ち着いてきた今、どういうふうに見てもらえるかなというところも興味があります。

──最後にお客様へのメッセージをお願いします。

自分らしく生きるために、生き方を選んでいいんだよ、というお芝居だと思っています。夫婦のあり方も家族のあり方も、もう1回見直してみようよ、というメッセージもあるんじゃないかな。特に女性の方に、もっといきいきと生きることができるんだ、というところをぜひ見に来てもらいたいです。

■PROFILE■
くまがい まみ○東京都出身。NHK『マー姉ちゃん』で人気者に。明るいキャラクターで愛され、多方面で活躍している。近年の作品【舞台】プリエール『世襲戦隊カゾクマン』シリーズ『マミィ!』、新国立劇場『夢の痂』『夢の裂け目』、さいたま芸術劇場『アントニーとクレオパトラ』こまつ座『頭痛肩こり樋口一葉』『マンザナ、わが町』。【テレビ】『ORANGE』レギュラー 『渡る世間は鬼ばかり』。【映画】『アンダードッグ』『おくれ咲き』。

【公演情報】
プリエールプロデュース『マミィ!』
作・演出:田村孝裕(ONEOR8)
出演:熊谷真実 佐藤B作 松金よね子
三津谷亮 宮﨑香蓮 中島愛子
●3/3~5◎亀戸文化センター カメリアホール
〈料金〉前売5,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈チケット問い合わせ〉プリエール 03-5942-9025(平日11-18時)
https://priere.jp/

 

【取材・文/久田絢子 撮影/中村嘉昭】

 

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