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中村勘九郎・七之助兄弟が10年ぶりに登場!『第三十五回 四国こんぴら歌舞伎大芝居』製作発表レポート


香川県琴平町の風物詩「こんぴら歌舞伎大芝居」が35回目の春を迎える!

天保6年(1835)年に建てられた国の重要文化財「旧金毘羅大芝居(金丸座)」。坂本龍馬と同い年のこの日本最古の本格的な芝居小屋で、昭和60年(1985)に第1回が開催されて以来、地元はもとより全国のファンに愛されている桜の季節の『四国こんぴら歌舞伎大芝居』が、第三十五回記念として今年も4月6日から21日まで開催される。

出演者は、大河ドラマでも活躍中の中村勘九郎、中村七之助の兄弟をはじめ、市川中車、中村扇雀といったメンバーを中心に、こんぴら初お目見えの中村虎之介、中村歌女之丞、大谷桂三、片岡亀蔵などの顔ぶれが揃った。

上演作品は、第一部がまずは、歌舞伎屈指の名作『義経千本桜』の中から「すし屋」。大和(奈良県)の下市村にある鮓屋を舞台に、平家の生き残りである維盛(扇雀)を救うために、いがみの権太(勘九郎)、父・弥左衛門(中車)ら家族の犠牲を描いた悲劇。そして、古典落語『星野屋』をもとにした新作歌舞伎『心中月夜星野屋』。青物問屋 星野屋の照蔵(中車)と囲われ者の元芸者・おたか(七之助)、おたかの母・お熊(扇雀)など個性的な登場人物たちが騙し合いを繰り広げる喜劇という二本立て。

第二部は近松門左衛門の『傾城反魂香』の中から「吃又」と呼ばれる場面。吃音の夫・又平(扇雀)と、彼を支える献身的な妻・おとく(七之助)の夫婦の情愛、そして彼らに訪れた奇跡を描いた義太夫狂言の名作。そして、大名の花見のお供についてきた次郎冠者(勘九郎)が酔って高下駄をはいてタップダンスを踊る趣向が楽しい舞踊『高坏』。最後は、三遊亭圓朝の名作落語『芝浜』を歌舞伎化した『芝浜革財布』。酒で身を持ち崩した魚屋・政五郎(中車)が、ある朝拾った革財布。家で大宴会をして目覚めると、妻・おたつ(七之助)は夢だと言って取り合わず、反省した政五郎は一念発起して働き、3年経ったある日…という、笑いと涙で心あたたまる作品。

2月下旬、都内でこの製作発表記者会見が行われた。出席者は、中村勘九郎、中村七之助、市川中車、中村扇雀、片岡英樹琴平町長、安孫子正松竹株式会社取締役副社長。それぞれの挨拶の後、質疑応答に移った。

【挨拶】

中村勘九郎 今回10年ぶりにこんぴら歌舞伎に出られること、とても嬉しく思います。10年ぶりと聞き、そんなに経つのかと。25回の楽の時に父(十八代目勘三郎)が「30周年、来るからね」と言っていました。それが実現できなかったのが、今でも悔しいし寂しい。紙(吹雪)を切ってくれた山本のおばちゃんも、30周年を楽しみにしていてくれましたが、来れず、おばちゃんもいなくなっちゃった。寂しいですが、父への恩返し、山本のおばちゃんへの恩返しで、この公演を良い芝居にしなきゃいけないという気持ちでいっぱいです。10年間に名前も変わり、結婚もして、子どもも2人できて、ひとつでもふたつでも大きな姿を皆さんにお見せできたらと思います。扇雀さんをはじめ(平成)中村座のメンバーも一緒ですし、何より中車さんと一緒に芝居できるのが、初めてで本当に嬉しい。熱い熱い魂を持っている人たちばかりなので、その魂に引っ張ってもらいながら一生懸命やりたいと思います。

中村七之助 父が20代後半の時、金丸座で「順路」と書いてあったのを見て「これは順路じゃだめだよ。魂を吹き込まなくちゃいけないよ」と。今考えると、20代後半で新しいこと、無理じゃないかと考えるところを突き進んでいった。当時は(中村)吉右衛門のおじさま、(澤村)藤十郎のおじさまと3人でもう楽しかったんでしょうね。その光景が目に浮かびます。でも3人も35年続くとは当時は思ってなかったんではないでしょうか。3人の情熱、こんぴらの皆様の情熱、35年やり続けてこられた諸先輩方の努力・愛であることを肝に銘じ、35周年という記念のこんぴら歌舞伎に出させていただきます。一生懸命勤め、楽しい1か月にできるように努力したいと思います。

市川中車 3年ぶり2度目に行かせていただくことになりました。今日、改めてこうして壇上で、前回もご一緒させていただいた扇雀のお兄さまはもとより、中村屋さんのご兄弟おふたりと並ばせていただいて、改めて勘三郎さんの存在を強く感じます。最初に僕が歌舞伎の舞台に立った時、何より勇気づけていただいたのが勘三郎さん。その勘三郎さんが30周年の時に行けなかった。そして今回、勘九郎さん・七之助さんと同じ舞台に立たせていただき、(勘九郎とは)初めてご一緒しますし、何より『義経千本桜』の「すし屋」で権太郎の父親をさせていただく。勘九郎さんと親子という立ち位置も含めて、勘三郎さんが「命がけでやれ」と仰られている気がします。もちろん、琴平町の温かい雰囲気や、行く前は「何もやることがないから」と父(市川猿翁)のお弟子さんから言われていたのに、行ってみたら、扇雀のお兄さんが主に先導なわけですが、夜はやることがいっぱいあって(笑)。楽しくて楽しくて、やることがないと言ったお弟子さんたちは何だったんだろう?というくらい充実した16日間を過ごした思い出があります(笑)。それもありますが、やはりこんぴらに行って命がけで皆さんに恩返しをしたい。勘三郎さんが絶対に今もここにいらっしゃる気がしますし、見守ってくださっていると思うので、勘三郎さんへの、7年前に(歌舞伎の世界に)入った時の、そして最後に会った時の恩返しができればと思って、命がけでやらなければならないと思いました。心を込めて演じさせていただきます。

中村扇雀 20代の頃から何度金丸座に出させていただいたか、かなりの数をお邪魔しています。20代の頃は若気の至りで飲みすぎて、琴平町の方にだいぶご迷惑をかけて、今に始まったことじゃないですが(笑)、勘三郎の兄貴とずいぶん夜楽しい思いもしました。金丸座に初めて出た時、もしお芝居の神様というのがいたら、この劇場に降りてきているんではないかと。お客様が目の前にいて、下手な部分は特に目立ち、でも必死になってやるとお客様がすごく良い反応をしてくださるので、ちょっと自分がうまくなったんじゃないかと錯覚する部分があって、あの劇場に行くと、常日頃、大きい近代的な劇場でやっている自分たちの心の中に、お芝居の原点はこういう感覚で、先人たちは(こうして)歌舞伎を作ってきたんじゃないかと、思い出させてくださる劇場。それを教えてくれたのもやはり亡くなった勘三郎のお兄さんで、その魂が宿って、役者としてひとつずつ成長させていただける劇場という気がします。今回(中村屋の)ふたりは生まれた時からのお付き合いですし、中車さんも歌舞伎役者になられる前からの付き合いですので、終演後も楽しい毎日を送れると今から楽しみです(笑)。

【質疑応答】

──35回記念公演にかける意気込みと、金丸座の印象を教えてください。

勘九郎 父の思い、熱がこもった小屋ですから、拙い芸ですが見えないパワーをもらって(演じたい)。扇雀さんが仰った通り、空間が近くて凝縮されているせいか、お客様の心に訴えかけるような芝居をしないと薄いものになってしまうので、毎日新鮮に、慣れないようにやれたらいいなと思います。特に『義経千本桜』は歌舞伎の名作中の名作ですが、先人たちが築いた型に心をのせなければ、型だけになってしまう。そういうものが浮き彫りになる小屋ですから、しっかり権太という人生を生きたい。金丸座は、6歳の時、祖父(十七代目勘三郎)が「沼津」の久作を演じた時に見に行っていて、客席を歩く時に引きずり出されて、ご挨拶をしたのをすごく覚えています。それからずっと見に行っていて、子どもからすれば夢の劇場。そこでやっと芝居をできたのが25回目だったんじゃないかな? 父が久作をやって「沼津」を一緒にできて、不思議な感覚におちいりました。大好きな小屋です。

七之助 父もそうですし、今まで35年続けてきた諸先輩の熱い思い(を感じ)、そして琴平の皆様の胸に届くようなお芝居をするのが第一だと思います。琴平の印象は、兄も申しましたが、芝居を見に行くというより旅行というイメージ。父とふたりでホテルの部屋に泊まったのも琴平が初めてですし、芝居に行ったら、廻り舞台をみて花道で遊んで、すっぽんを上げてもらったり。そして船の博物館へ行ったり、レオマワールドへは何回通ったか! シューティングゲームがあったんですけどね(「そう、懐かしい!」と勘九郎)100回は乗ったんじゃないかな? 点数が一番上になると、別室に行ってボスと戦えるんですよ。降りちゃ乗って…と琴平は本当に楽しい思い出しかありません。もちろん今回は子どもの頃の御恩をお返しするべく、一生懸命やらせていただきます。

中車 僕も子供の頃、絶対100回乗ってると思います(笑)。この世界になぜ入ったのかということをもう一度、勘三郎さんという大きな存在を感じながら、一日一日を大切にやりたい。金丸座の印象は、ただただ驚くばかり。楽屋の上に、今は乗っちゃいけないと言われている部分があったり、お芝居中に木戸を開けて朝になることを表現したり、前回は(中村)鴈治郎のお兄さんのご襲名で、お兄さんが「こういう演出にしよう」と満杯のお客様の間を渡って花道に来るようにしたり。初めて見るものばかりだったので、このような劇場で歌舞伎ができることの凄さにただただ圧倒されました。

扇雀 毎月舞台に臨む時はそれなりに意気込みますが、(平成)中村座やコクーン(歌舞伎)などの新しいものをやる時に、(勘三郎に)「これを客席で見たいか」とよく聞かれたんです。「客席で見たいと思ったらいい舞台だと思う」とよく仰っていたので、自分たちが客席で見たくなるようなお芝居を目指して(いた)。今回はすでに客席に行きたい演目と配役になっているので、それにお応えできるように。あそこに行くと、本当に色んな感覚が湧いてきて、今までも新しい演出みたいなことを閃くことが多かった。耐震構造の(補強)後で柱も全部とってから行った時は、かけすじ(宙乗りの装置)を使えるので空を飛んでくださいと言われて、『葛の葉』の狐で無理やり宙を飛びました(笑)。宙乗りで二階まで行って、ブドウ棚(格子状に組んだ天井)から客席全面に木の葉を落としたり、七之助さんと「新口村」をやった時も、本来は上手の奥に引っ込むのですが、仮花道が上手にあるので、だったらお客様のほうに引っ込もうと、仮花道の上にも雪を降らせて引っ込みました。本来は、孫右衛門(役)が真ん中で、一人で幕切れをして目立つんですが、七之助さんと僕が目立つので(坂東)彌十郎さんが怒ってました(笑)。『鷺娘』の時も、仮花道で海老反りをすると、毛がお客様の頭の上に届いて、すごく喜んでくれて。それも向こうに行ってから思いついてやりました。

──こんぴら歌舞伎の魅力、金丸座で歌舞伎を演じる良さとは。

勘九郎 役者サイドから言うと、お客様の近さ。本当にここ(手前)にいる感じで、それは魅力ですね。お客様の熱い視線がダイレクトに伝わるので、キャッチボールしやすく、やりやすい。そこには怖いというのもありますが。

七之助 見る側としてはとても見やすい、温かみのある劇場ですね。中村座もそうですが、たぶん今のお客様には靴を脱いで芝居を見る経験がないだろうと思います。靴を脱ぐという安心感、またお客様同士の距離が近いので、和気藹々として、とてもアットホームな空間です。父が巡業で色々な古い芝居小屋を回って、ちょうど今度兄がやりますが(「すし屋」の)権太が腹を突いて悲しい場面でシーンとなってる時、都会だったらバイクの音がする。中村座もパトカーの音とかが聞こえますが、(金丸座は)虫の音とか、舞台の外の効果音が聞こえて、「こういうところで昔はやってたんだろうな」という気持ちにさせてくれる小屋です。ご覧になったことがないお客様は、騙されたと思って、小屋に入っただけで世界が変わりますから。 中車 僕もやはり音じゃないかと思います。前回『あんまと泥棒』という、45分間僕がずっと目をつぶっている芝居ですが、夜から朝になっていき、先ほど申し上げた木戸を開ける演出がいいんじゃないかという話になったりしましたが、ちょうど4月なので、ひたすら鶯がいいタイミングで鳴いてたんです。大向うさんのように「ホーホケキョ」と鳴いて、「わかってるな、鶯も」と思ってずっと芝居をした記憶を鮮明に思い出しました。

扇雀 昨年9月、モスクワとサンクトペテルブルクで歌舞伎をやらせていただきました。それまでにもニューヨーク、ミラノ、ロンドン、ローマ…色々なところで歌舞伎をやらせていただいた。そうすると、その土地の代表的な劇場で、その土地を代表する演劇を見る機会がずいぶんある。日本を代表する劇場のひとつが歌舞伎座で、それはどなたも認めることと思いますが、金丸座に行くと「ああ日本に生まれてよかったな」と。日本の劇場、日本の文化、先人が作った原点に触れる感覚がとてもあるので、ひと言で申し上げると、金丸座に行ったことのないかたは、伊勢神宮ではないですが、死ぬまでに一度は絶対に行ったほうがいい劇場です。それが金丸座の魅力だと思います。

──大河ドラマの主演役者がその年にこんぴら歌舞伎に来ることはこれまでなかったと思いますが、今回このタイミングでご出演を決めた思いは。また地元では「体力的に大丈夫か」の声もありますが、それを乗り切る工夫などがあれば。

勘九郎 お気遣いありがとうございます。そりゃそうですよね、1年間撮影していて、出られないですよね。今回は阿部(サダヲ)さんとのW(主演)なので行けたんです。35回のこんぴらに出られるのは嬉しい。私自身も、芝居にひと月出るのは11月(2018年)ぶり。こんなにも出てないことは久しくないので、早く舞台がやりたいなという気持ちもありますし、体力的には大丈夫です。5月からまた撮影がスタートするので、4月もちょうどいいトレーニング階段(金刀比羅宮の石段)が向こうにありますから(笑)。トレーニングをして、芝居をして、温泉で疲れを癒して、最高じゃないですか! お客様からのパワーを貯めて、また5月からの撮影に挑めたらいいなと思います。

〈公演情報〉

「第三十五回 四国こんぴら歌舞伎大芝居」

[第一部] 11:00~  『義経千本桜 すし屋』  『心中月夜星野屋』

[第二部] 15:00~  『傾城反魂香』  『高坏』  『芝浜革財布』

出演◇中村勘九郎 中村七之助 市川中車 片岡亀蔵 大谷桂三 中村虎之介 中村歌女之丞 中村扇雀

●4/6~21◎旧金毘羅大芝居(金丸座)

〈料金〉A席14,000円 B席10,000円 特別席(一階東出席・西出孫席・二階前舟)16,000円(全席指定・税込)

〈お問い合わせ〉こんぴら歌舞伎事務局 0877-75-6714

http://konpirakabuki.jp/schedule/index.html  

 

【取材・文/内河 文】

 

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