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三大名作最後の『義経千本桜』に取り組む!加納幸和インタビュー

歌舞伎三大名作の『KANADEHON 忠臣蔵』と『菅原伝授手習鑑』を07年と12年に上演してきた花組芝居が、満を持して三大名作最後の演目『義経千本桜』に取り組む。

『義経千本桜』は、源氏と平氏の最後の戦いである「源平合戦」の後日譚ともいうべき物語。手柄を立てたものの兄頼朝に謀反の疑いをかけられ、追われる身になった源義経と静御前を縦軸に、死んだはずの平家の武将たち、知盛・維盛・教経のその後の運命の変遷が描かれる。

この大作の上演を前に作・演出を手がける加納幸和に構想を話してもらった「えんぶ12月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

様式は歌舞伎に寄って枠組みは現代演劇の手法で

──『義経千本桜』は通しで全五段という長大な作品ですが、2時間半にまとめるそうですね。

各段のエッセンスをぎゅっと詰め込みます(笑)。ただ、歌舞伎の台本は、さすが先人たちが工夫して今の形に作り上げただけあって、よく出来ていてカットしにくいのですが、同じ事を別の言い回しで言ってたりするところをうまく摘まんでいけば。今ちょうど初演の文楽を活字にした原文が手に入ったので、そこからも取り入れていこうと思っていて、例えば静御前はちょっとおてんばだったりと人物像に人間味があって、行動に筋が通っているんです。そこを取り入れることで、他の人物たちも新鮮に見えるのではないかと思っています。

──三大名作の最後ということで、前2作での経験も大きいでしょうね。

『KANADEHON 忠臣蔵』のときは義太夫の台詞回しをとにかくやろうと。今回も参加してくださる鶴澤津賀寿さんの三味線の力もあって、かなり義太夫寄りにできました。『菅原伝授手習鑑』では義太夫を一切入れずに、演技のパターンだけは歌舞伎から取って、全体にわりと自由に作りました。今回はその両方を取っていこうと。文楽はいわば音楽劇ですので、その音楽性など面白いところは踏襲して、でも狐忠信が出てくる仕掛けなどはさすがに作れませんから、現代演劇の手法で処理できれば。つまり様式は歌舞伎に寄ってはいますが、枠組みはちょっとモダンに。

──何もない空間からポンと狐忠信が出てくるとか?

そういうことですね。能狂言の素晴らしいところは、何もない空間でなんでも表現できることで、それだけの身体性があるからですが、アイデアとしてはそこをいただいて、同時に『義経千本桜』を作ったこれまでの人たちの、それぞれの工夫とかこだわりもちゃんと見えるように。どうしても古典というと身構える方がいますが、構えないで観ていただけるようにしたい。そして「古典の様式って面白いね、いいね」と言ってもらえるように、役者の肉体に乗せていければと思っています。

時代劇ブームに乗って古典の良さを伝えたい

──劇団の方たちが様式や型を自然にできるのは大きな武器ですね。

おかげさまで32年やってきて、座員それぞれ身についたものもあるし、僕がやろうとすることもすぐわかってもらえるようになって、そこはラクになりました。特別なメソッドなどがあるわけでもないのに、花組芝居としての体系ができていて、身体的な共通言語もできていることは有り難いですね。

──配役も楽しみですが、歌舞伎では段ごとに演じる役者が違っていたりしますね。

基本的に1つの役は1人の役者が演じます。義経は武市佳久、静は永澤洋、若い2人にやってもらいます。知盛は桂憲一でいがみの権太は小林大介、狐忠信は本人が前からやりたいとアピールしていたので谷山知宏に(笑)。今回は出演者がいつもよりちょっと少ないので、僕をはじめベテラン勢が何役もやってがんばります(笑)。

──花組芝居らしい華やかで賑やかな公演になりそうですね。

今、ゲームや2.5次元舞台の影響もあって、若い方の間で時代劇がまたブームなんですね。ちょうど良い機会ですから、この時代劇ブームに乗って、大もとになっている名作を知っていただけたらと。ただ、あまりしかつめらしい作りにすると、かえって敬遠されることになるので、柔軟に面白いものにして、この名作の良さを伝えたいですね。

かのうゆきかず○兵庫県出身。87年、花組芝居を旗揚げ、ほとんどの作品の脚本・演出を手がけ、劇団外の演出も多数。俳優としても映像から舞台まで幅広く活躍中。劇団以外の近年の主な出演舞台は、音楽劇『悪名』『グリーンマイル』『ドレッサー』『三億円事件』など。西瓜糖『ご馳走』(演出)花組芝居ヌーベル『毛皮のマリー』(脚本・演出)で2019年前期の読売演劇賞演出家賞にノミネートされている。

【公演情報】
花組芝居『義経千本桜』
原作◇竹田出雲 三好松洛 並木千柳
脚本・演出◇加納幸和
出演◇加納幸和 原川浩明 山下禎啓 桂憲一 大井靖彦 北沢洋 横道毅 秋葉陽司 松原綾央 磯村智彦 小林大介 谷山知宏 丸川敬之 永澤洋 武市佳久
●12/13~22◎あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
〈お問い合わせ〉花組芝居 03-3709-9430
〈HP〉http://hanagumi.ne.jp

【構成・文◇宮田華子 撮影◇岩田えり】

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