歌舞伎座「九月大歌舞伎」開幕!
歌舞伎座9月公演「九月大歌舞伎(くがつおおかぶき)」が9月2日に初日の幕を開けた。
(※第二部は既報の通り、9月2日から6日まで上演を中止。9月7日より代役にて開幕する。詳細はHPにて)
「九月大歌舞伎」は、片岡仁左衛門、中村梅玉、坂東玉三郎をはじめとした豪華な顔ぶれで、たっぷりと歌舞伎の醍醐味を味わえる名作が揃った。
歌舞伎座では、引き続き出演者・お客様は各部総入替え、客席数(1808 席)は 50%(904席)を維持して公演を行っている。換気や消毒を徹底するなど、安心して歌舞伎を楽しめるよう、今後も感染予防対策に万全を期していく。
第一部は、「六世中村歌右衛門二十年祭」「七世中村芝翫十年祭」として二作品が上演。幕開きは、人情味に溢れる 『 お江戸みやげ(おえどみやげ )』 。
名優二人を偲ぶ上演の幕が開くと、歌舞伎座の檜舞台に湯島天神の茶屋が現れる。正面の床几に座るのは、七世中村芝翫の長男・中村福助。福助は、昨年1月以来の歌舞伎座出演、コロナ禍で公演を再開した昨年8月からは初めての歌舞伎座出演となる。父・七世芝翫がお辻を演じた際には、お紺役で何度も親子共演を果たしている大切な作品。福助は公演を前に「叔父と父という、ふたりの偉大な存在に少しでも近づけるよう、自分にとっても、今回の出演は、日々のリハビリのモチベーションになっております。感謝しております」とコメントを寄せている。
今回の福助出演に際し書き加えられた常磐津文字福の役で冒頭から舞台に登場すると、客席からは万雷の拍手が送られた。茶店の女中役を勤める梅花から「今日はどちらへお出でなされたのでございますか」と問われた福助は、「父さんと叔父さんの年忌ゆえ、お墓参りに」と手を捧げると、場内はあたたかい拍手に包まれる。その後も、角兵衛獅子の兄弟役を勤める福助の甥・中村福之助と歌之助兄弟から「お師匠さん、ご無沙汰しております」「お元気そうで何よりでございます」と声を掛けられるなど、元気な舞台姿を見せた。6分程の出演で床几から立ち上がると、平成 30 年9月の舞台復帰以来、初めて歌舞伎座の舞台を歩き、舞台上手まで引っ込む間、場内は拍手がやまなかった。
結城からやってきた行商人、中村芝翫演じる倹約家のお辻と、金勘定にも大らかな中村勘九郎演じるおゆう。おゆうに誘われて見物した宮地芝居で、お辻は人気役者の中村七之助演じる阪東栄紫にすっかり心奪われてしまう。一世一代の恋をしたお辻にとっての、大切な“お江戸みやげ”とは…。
対照的なお辻とおゆうを演じる芝翫と勘九郎のやり取りが楽しく、息ぴったりな掛け合いに客席からは度々笑いが起こる。特に、父・七世芝翫が当り役としたお辻を勤める当代の芝翫は「最近顔が父に似てきたとよく言われる」と取材会で語っていたように、先代芝翫の面影を客席は感じているようだ。栄紫に惚れたお辻の真っすぐな思いが心に沁み入り、ほろ苦くも温かい空気に包まれる幕切れには、客席から大きな拍手が上がった。
続いては、 『 須磨の写絵 ( すまのうつしえ)』 。在原行平と海女の姉妹の悲恋が描かれる能「松風」をもとにした舞踊劇。本作をはじめとした松風舞踊で、松風を情緒豊かに表現した六世中村歌右衛門の二十年祭という節目に、名女方を偲ぶ。中村梅玉が在原行平を演じるのは今回で3回目。初演は、父・六世歌右衛門が最後に松風を演じた昭和 53 年10 月、2回目の平成 10 年4月は七世芝翫が海女松風を勤めた。
当月は、中村魁春が松風を勤める。在原行平と松風村雨姉妹が織りなす幻想的で美しい舞台に、場内の視線が釘付けとなる。先日取材会に出席した梅玉は、第一部で六世中村歌右衛門二十年祭、七世中村芝翫十年祭が行われることについて「一門のみんなで追善できることは非常に意味のある事。供養の思いをこめて一所懸命つとめたいと思います」と想いを語った。
第三部は、 『 東海道四谷怪談 ( とうかいどうよつやかいだん )』。運命に翻弄される男女、美しくも怖ろしい鶴屋南北の大傑作。片岡仁左衛門、坂東玉三郎が昭和 58年以来、38 年ぶりに共演することでも話題の舞台。今回は、玉三郎のお岩が魅せる怖ろしさと、仁左衛門が勤める伊右衛門の色悪の魅力が際立つ、浪宅の場から隠亡堀の場を上演。毒薬を飲んだお岩の顔が段々と醜くなっていき、“髪すき”の場面では場内の空気も張り詰める。舞台上で展開される伊右衛門とお岩の物語を、客席は固唾を呑んで見守る。
隠亡堀の場では、昭和 58 年上演時に初代尾上辰之助(三世尾上松緑)が勤めた直助権兵衛役を、辰之助の長男・尾上松緑が勤める。浪宅の場で伊右衛門に殺された中村橋之助演じる小仏小平がお岩と表裏に磔にされた“戸板返し”の場面に息を呑み、玉三郎二役目のお花も登場。仁左衛門、玉三郎、松緑、橋之助でのだんまりで絵面も決まり、奇跡的な今回の上演に大きな拍手が送られた。微細な心理描写が味わい深く、怨念や恐怖を効果的に魅せる歌舞伎ならではの様式美あふれる怪談劇となっている。
【公演情報】
歌舞伎座9月公演
『九月大歌舞伎』
2021年9月2日(木)~27日(月)
【休演】9日(木)、21日(火)
◎第一部 午前11時~
六世中村歌右衛門 二十年祭
七世中村芝翫 十年祭
川口松太郎 作
大場正昭 演出
一、『お江戸みやげ(おえどみやげ)』
お辻 芝翫
おゆう 七之助
阪東栄紫 勘九郎
角兵衛獅子兄 中村福之助
角兵衛獅子弟 歌之助
小女みの 玉太郎
女中お長 梅花
お紺 莟玉
鳶頭六三郎 松江
常磐津文字福 福助
常磐津文字辰 東蔵
二、『須磨の写絵(すまのうつしえ)』
行平名残の巻
在原行平 梅玉
海女村雨 児太郎
海女松風 魁春
◎第二部 午後2時10分~
(※9月2日(木)~ 6日( 月)まで上演を中止。9月7日より代役にて開幕)
一、『近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)』
盛綱陣屋
佐々木盛綱 幸四郎
高綱妻篝火 雀右衛門
和田兵衛秀盛 錦之助
盛綱妻早瀬 米吉
信楽太郎 隼人(代役:錦之助)
高綱一子小四郎 丑之助
盛綱一子小三郎 亀三郎
北條の臣 吉之丞
北條の臣 宗之助
竹下孫八 廣太郎
古郡新左衛門 錦吾
伊吹藤太 歌昇(代役:種之助)
北條時政 又五郎
盛綱母微妙 歌六
二、『女伊達(おんなだて)』
木崎のお光 時蔵
男伊達中之島鳴平 萬太郎
同 淀川の千蔵 種之助
◎第三部 午後6時~
四世鶴屋南北 作
『東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)』
四谷町伊右衛門浪宅の場
伊藤喜兵衛内の場
元の浪宅の場
本所砂村隠亡堀の場
お岩/お花 玉三郎
直助権兵衛 松緑
小仏小平/佐藤与茂七 橋之助
お梅 千之助
按摩宅悦 松之助
乳母おまき 歌女之丞
伊藤喜兵衛 片岡亀
後家お弓 萬次郎
民谷伊右衛門 仁左衛門
〈料金〉1等席15,000円 2等席11,000円 3階A席5,000円 3階B席3,000円 1階桟敷席16,000円(全席指定・税込)
未就学児童は、満4歳よりお一人様につき1枚切符が必要です。
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または東京は03-6745-0888、大阪は06-6530-0333
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【写真提供/松竹】
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