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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」開幕!

昼の部『毛抜』(前方)粂寺弾正=市川新之助、(後方)左より、錦の前=大谷廣松、小野春道=中村梅玉(C)松竹

歌舞伎座での2ヶ月にわたる「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」公演。満員御礼となり連日大きな賑わいを見せた11月公演に続き、12月5日からは「十二月大歌舞伎」(12月5日初日~26日千穐楽 休演日:12日、19日)を開催中。

《昼の部》
12月公演は歌舞伎の様式美を堪能できる華やかな演目、 『 鞘當( さやあて)』 で幕を開ける。

昼の部『鞘當』左より、名古屋山三=松本幸四郎、留女=市川猿之助、不破伴左衛門=尾上松緑(C)松竹

舞台は桜が満開の吉原仲之町。尾上松緑演じる不破伴左衛門と松本幸四郎演じる名古屋山三がやってくると、すれ違う際に刀の鞘が当たったことから斬り合いとなり…。争う二人を止めに入るのは市川猿之助演じる留女(偶数日は市川中車演じる留男)。荒事味のある伴左衛門と和事味漂う山三の渡り台詞や、留女の貫禄ある啖呵が心地よく響く。伊達を尽くした豪華な衣裳も目に美しく、廓風情漂う舞台に会場は華やかな空気に包まれた。

続いては、十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言『 京鹿子娘二人道成寺( きょうかのこむすめににんどうじょうじ )』。今回は鐘供養から、市川團十郎家の家の芸「歌舞伎十八番」の一つで華やかかつ壮大な荒事の魅力を存分に堪能できる『押戻し』までを上演。春爛漫の道成寺に現れる二人の白拍子花子を尾上菊之助と中村勘九郎、大館左馬五郎を市川團十郎白猿が演じる。二人の花子が、実は恋の恨みから蛇体となって道成寺の鐘を焼いた清姫の怨霊であったことが分かり、その本性を現すと、花道より勇猛な大館左馬五郎が登場し、怨霊の前に立ちはだかる。前半の華やかな踊りから一転、後半は新團十郎演じる左馬五郎が花道から本舞台へと怨霊を力強く押戻していく様子を観客も息を呑んで見守る。

昼の部『鞘當』左より、名古屋山三=松本幸四郎、不破伴左衛門=尾上松緑(C)松竹

「竹馬の友の和康と兄貴と慕うた中村屋の面差し漂う雅行によく似た化物奴…」と清姫の怨霊を演じる菊之助と勘九郎に絡めた遊び心溢れる左馬五郎の台詞に観客は大盛り上がり。公演に向けたインタビューで「父(十二世團十郎)のようなおおらかな左馬五郎を目指します。」と語った團十郎は、典型的な荒事の扮装を身にまとい、存在感溢れる左馬五郎で観客を魅了した。新團十郎、菊之助、勘九郎と同世代の俳優が揃い、襲名を寿ぐ華やかな一幕となった。

昼の部を締めくくるのは、八代目市川新之助初舞台狂言『毛抜(けぬき)』。

昼の部『毛抜』粂寺弾正=市川新之助_(C)松竹

11月公演にて『外郎売』の外郎売実は曽我五郎を凛々しく勤めあげた八代目市川新之助が、今月は史上最年少となる9歳で『毛抜』の粂寺弾正を勤めるとあって、開幕前から注目が集まる演目の一つ。

舞台は中村梅玉演じる小野春道の屋敷。原因不明の病に伏せる姫君錦の前の様子をうかがいに、姫君の許婚である文屋豊秀の家臣粂寺弾正がやって来る。機智に富んだ弾正は姫君の奇病の仕掛けや悪人たちの策略を見事に解き明かしていき…。

父・十三代目團十郎が演じた『毛抜』の舞台を観てから、粂寺弾正が憧れの役だったと話す新之助は、持ち前の明るさとおおらかさを存分に活かし、愛嬌あふれる弾正を見事に演じ切った。本作の見せ場である様々な見得が決まるごとに観客からは大きな拍手と劇場指定の関係者による小気味良い大向うの声が会場に響き渡る。

歌舞伎十八番の中でも特におおらかな雰囲気が溢れ、古風な味わいたっぷりの一幕。新之助が今回使用している髷は曽祖父にあたる十一世團十郎が粂寺弾正を勤めた際に使用していたもの。「新之助としていろんな役をいっぱい演じていきたい」と熱く語り、歴代の想いを受け継ぐ八代目新之助が大きな一歩を踏み出した歴史的瞬間に立ち会った観客からは、あたたかな拍手が絶えることなく送られた。

《夜の部》
夜の部は、襲名披露『口上(こうじょう)』から始まる。

夜の部『口上』前列左から2番目より、市川新之助、市川團十郎白猿、市川左團次(C)松竹

幕が開くと舞台上には十三代目市川團十郎白猿、八代目市川新之助はじめ、市川團十郎家の色である「柿色」の裃を揃って身にまとって俳優がずらりと並び、幕が開くと同時に客席からも大きな拍手が沸き起こる。本日の初日は松本白鸚が体調不良で休演のため市川左團次による紹介で始まった。続けて、河原崎権十郎、市川右團次、市川高麗蔵、松本幸四郎、市川猿之助、市川門之助、市川男女蔵、市川齊入が次々と華やかにお祝いの挨拶を述べる。團十郎は「市川宗家の覚悟」を感じさせる真摯な眼差しで、続く新之助は若々しいエネルギーに溢れ、溌溂と挨拶した。最後には、11月に引き続き、團十郎が皆様の無病息災を願い成田屋の家の芸である「にらみ」を力強く披露し、熱い拍手に包まれた。

夜の部『口上』(C)松竹

続いては、市川團十郎家所縁の舞踊『團十郎娘(だんじゅうろうむすめ)』。

夜の部『團十郎娘』近江のお兼=市川ぼたん(C)松竹

『團十郎娘』は文化10(1813)年に七世團十郎によって初演された所作事。美しく、力自慢で評判の娘・お兼を市川ぼたんが勤める。歌舞伎座において歌舞伎の本興行で女性が出し物をするのは実に60年ぶり。昭和37(1962)年5月に歌舞伎座で行われた十一代目市川團十郎襲名披露興行の際に三代目市川翠扇が同じく『團十郎娘』を勤めて以来となる。

夜の部『團十郎娘』左より、漁師=市川男女蔵、漁師=市川右團次、近江のお兼=市川ぼたん(C)松竹

舞台は近江八景の一つの琵琶湖のほとり。花道より馬をひいてやってきたお兼は乙女の恋心を近江八景によせて見せていく。ぼたんは長唄に合わせて愛らしく繊細に心情を訴えかけ、観客の心を掴む。やがてお兼の大力の噂の真偽を確かめようと、隠れていた市川右團次、市川男女蔵ら演じる漁師たちが打ちかかるが、お兼は軽やかにそれをあしらう。大きな見せ場である白い晒を用いた“布晒し”では、白く長い晒を華麗に翻し、その軽快な様子に場内からは万雷の拍手が送られた。

最後の演目は、11月に続けての上演となる歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら ) 』。

夜の部『助六由縁江戸桜』花川戸助六=市川團十郎白猿(C)松竹

裃姿の松本幸四郎の口上に始まり、聞こえてくるのはさっぱりと軽やかな河東節の粋な演奏。坂東玉三郎演じる三浦屋揚巻が花道より登場すると、場内は一気に華やぎ、一瞬にして吉原の街に。傾城たちの口から語られる江戸一の伊達男・花川戸助六とは一体どんなに良い男なのかと、客席の期待も最高潮に達したところで登場するのが、市川團十郎勤める花川戸助六。花道にあらわれた途端、無駄のない流麗な立ち振る舞いにすべての観客が視線を奪われる。

夜の部『助六由縁江戸桜』左より、花川戸助六=市川團十郎白猿、髭の意休=坂東彌十郎(C)松竹

高まった期待をさらに上回る新團十郎の洗練された美しさに圧倒されるうち、物語は進んでいく。助六が探す重宝・友切丸の詮議のため、坂東彌十郎演じる髭の意休に悪態をついたかと思えば、印象的な登場人物たちが次々登場し華やかな舞台を背景に楽しい場面が続く。中村勘九郎演じる白酒売新兵衛がやってくるとその和事味ある佇まいと、弟の助六との対比が面白く、喧嘩を売った相手に自らの股の下をくぐらせる件は、思わずくすりと笑いがこぼれる。廓風情を漂わせる市川猿之助演じる通人里暁の存在も印象的で、新團十郎、の若い頃のエピソードを繰り出し、笑いを誘う。師走の忙しなさを忘れる、襲名披露興行に相応しい華やかなひと時となった。

【公演情報】

「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」
「十二月大歌舞伎」
2022年12月5日(月)~26日(月)
【休演】12日(月)、19日(月)
【貸切】昼の部:15日(木)、夜の部:11日(日)

◎昼の部 午前11時~

其俤対編笠
一、鞘當(さやあて)

不破伴左衛門 松緑
留女 猿之助(奇数日)
留男 中車(偶数日)
名古屋山三 幸四郎

二、京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)
鐘供養より『歌舞伎十八番の内 押戻し』まで

大館左馬五郎 海老蔵改め團十郎
白拍子花子 勘九郎
所化 彦三郎
同 坂東亀蔵
同 萬太郎
同 種之助
同 男寅
同 中村福之助
同 玉太郎
同 歌之助
白拍子花子 菊之助
後見 家橘

三、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
八代目市川新之助初舞台相勤め申し候

粂寺弾正 初舞台新之助
腰元巻絹 雀右衛門
秦民部 錦之助
八剣数馬 歌昇
小野春風 新悟
秦秀太郎 児太郎
錦の前 廣松
八剣玄蕃 右團次
小原万兵衛 芝翫
小野春道 梅玉

◎夜の部 午後4時~

十三代目市川團十郎白猿
一、 八代目市川新之助   襲名披露 口上(こうじょう)
柿色裃勢揃いにて相勤め申し候

海老蔵改め團十郎
初舞台新之助
白鸚
幸四郎
右團次
男女蔵
男寅
染五郎
團子
市川右近
青虎
九團次
寿猿
笑三郎
笑也
猿弥
中車
錦吾
門之助
高麗蔵
権十郎
齊入
猿之助
左團次

二、團十郎娘(だんじゅうろうむすめ)

近江のお兼 ぼたん
漁師 男女蔵
同 種之助
同 男寅
同 中村福之助
同 右團次

三、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)
河東節十寸見会御連中

花川戸助六 海老蔵改め團十郎
三浦屋揚巻 玉三郎(5~15日)
七之助(16~26日)
通人里暁 猿之助
三浦屋白玉 菊之助(5~15日)
梅枝(16~26日
福山かつぎ 巳之助
男伊達山谷弥吉 男女蔵
同  田甫富松 萬太郎
同  竹門虎蔵 廣太郎
同 砂利場石造 中村福之助
同  石浜浪七 吉之丞
傾城八重衣 新悟
同  浮橋 児太郎
同  胡蝶 廣松
同  愛染 鶴松
同 誰ヶ袖 笑三郎
茶屋廻り 玉太郎
同 歌之助
同 染五郎
同 團子
文使い番新白菊 歌女之丞
奴奈良平 九團次
朝顔仙平 猿弥
国侍利金太 市蔵
遣手お辰 萬次郎
三浦屋女房 友右衛門
白酒売新兵衛 勘九郎
髭の意休 彌十郎
くわんぺら門兵衛 左團次
曽我満江 吉弥(5~15日)
玉三郎(16~26日)
口上 幸四郎
後見 齊入

〈料金〉1等席23,000円 2等席18,000円 3階A席8,000円 3階B席6,000円 1階桟敷席25,000円(全席指定・税込)
チケットWeb松竹(24時間受付)
チケットホン松竹 0570-000-489(10:00-17:00)または東京03-6745-0888 大阪06-6530-0333
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/770

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