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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『恐るべき子供たち』間もなく開幕! 上演台本のノゾエ征爾 インタビュー

KAATで白井晃芸術監督が取り組んでいる近現代戯曲シリーズ、本年は思春期の生と性をテーマに、再演の『春のめざめ』に続いて、5月18日から6月2日まで、新作の『恐るべき子供たち』を上演する。『恐るべき子供たち』は、フランスの詩人・小説家・劇作家 ジャン・コクトーの中編小説で、ある姉弟の愛とも憎しみともつかない関係を中心に、4人の若者の生態と、彼らを取り巻く大人たちの関係を描き出す。

外界を知らずに成長し、弟との“王国”を守ろうとし続ける美しい姉・エリザベート役には南沢奈央。姉と共に幼稚で享楽的な価値観のまま成長していく弟のポールに柾木玲弥。物語の語り部的役割を担うポールの友人・ジェラール役に松岡広大。姉の友人・アガート役に馬場ふみか。そして、子供たちを時に見守り、時に抑圧する”大人たち”を、デシルバ安奈、斉藤悠、内田淳子、真那胡敬二ら実力派俳優陣が演じる。

この注目作の上演台本を手がけるのが、劇団「はえぎわ」の主宰で作・演出・俳優として活躍するノゾエ征爾。初めての挑戦となるジャン・コクトーの世界について感じていることなどを話してもらった。

完成度が高くて、表現も研ぎ澄まされた小説

──白井晃芸術監督から、コクトーの『恐るべき子供たち』の上演台本を手がけてほしいという要望を受けて、いかがでした?

コクトーの作品は、ちゃんと読んだのは今回が初めてという感じですから、果たして自分に出来るだろうかと。でもそういうもののほうがやり甲斐がありますね。イメージできないときのほうが、自分の中で盛り上がるものがあるので(笑)。

──読んでみての印象は?

面白かったですが、この小説に描かれている世界観は、頭ではわかるんですが感覚としては合致しない部分もあって、スルスルと進むというわけにはいきませんでした。それはなぜだろうと思ったとき、コクトーは実体験をもとに描いているけれど、僕にはそういう背景がない、そういう人としての根本的な違いや距離感があるのだと思いました。

──小説は思春期の子供たちの閉ざされた世界で、どこかファンタジーのような非日常感がありますね。

妄想のような世界にも思えるのは、コクトーがアヘン中毒の治療で入院していた3週間の間で書き上げたからかもしれません。でも小説としての完成度が高くて、表現もすごく研ぎ澄まされていて、すげえ…と思いながら読んでました。

──その小説を上演台本に仕上げたわけですが、ノゾエさんは演出家でもあります。台本化の中でその視線は入ってきますか?

普段書いてるものとそう違ったものは書けないんですよね。演出しないから本だけだからという書き方をしてもいいのかもしれないけど、それはあまり出来ない。ですから演出ありきで、現場で生まれるものを入れる余地とか余白はかなり残したまま台本にしました。僕自身、演出の立場になったとき、台本で構築されすぎているのは好きじゃないし、現場で生まれる部分、現場で見つける部分というのはかなりあるので、そこは今回も残してあります。

──演出する白井さんの作品についての印象は?

そんなに沢山は拝見してないのですが、一番最近が昨年4月の『バリーターク』で、あの作品はすごく自分の感覚にヒットしました。頭で理解するというより、感覚としてすごく豊かなものが広がっていて、なんだろうこれは?と思ったし、でも自分のすごく好きなものだなと。それが白井さんの演出への最終的な信頼に繋がったと思います。今回この台本を書くとき、あの感覚を持っている白井さんが演出してくださるのだから、きっとこれで大丈夫だろうとか、書きながらそういう気持ちはありました。

──白井さんの演出には良い意味で日本的ではない乾いたセンスがありますが、そこはノゾエさんとちょっと似ている気がします。

日本的じゃないなというのは自分でもよく思います(笑)。そして、似ているかは別として、白井さんの舞台美術などのセンスもすごく好きですね。

何か演劇的な仕掛けを入れて欲しいと

──白井さんから上演台本について、具体的な要望はありましたか?

1つ大きくあったのは何か演劇的な仕掛けを入れて欲しいと。「ノゾエさんなりの仕掛けを気にしてください」と言われました。なんだろうな?とそこをずっと考えていました。

──その仕掛けをどう入れたのでしょう?

視点という部分ですね。子供たちがいて、大人たちがいて、観客がいる。その物語の中で、子供たちをどう見るか、大人がどう見ているか、その視点として、語り部というかお客さんに話す人を1人設けてみたんです。そうすることによって「大人が大人として子供たちを見ている」という視点がはっきり出来る。それによって『恐るべき子供たち』を観に来たお客さんは、「観客プラスこの子供たちを見ている大人」という構造を持ちます。つまり、物語の中で子供たちは演技していて、演劇という中でも演技している、そういう何重かの構造によって、この作品世界の輪郭がはっきりすればと思ったんです。

──その仕掛けによって、いわば「閉じているような」子供たちの世界が観客へと開かれるのですね。

そう思います。この物語の子供たちを役者が演じるとき、どうしても冷めてしまう一瞬が出来るような気がしていて、逆にその距離感を力に変えたいなと。単に「役者が子供たちを演じている」だけではなく、演劇を演じているということも構造として設けたら、より力のある作品になるのではないかと思ったんです。

──ノゾエさんは、いつも新しい発想で作品を構築し直しています。昨年の『命売ります』も、舞台美術をはじめ斬新な切り口で三島由紀夫の世界を引き寄せていました。いつもどんなアプローチで入っていくのでしょうか。

最初からこうしようとか考えているわけじゃないんです。最初は衝動を大事にしていて、今回もラクガキ稿というのを書いて、それは細かいことを考えずにまず勢いを重視してバーッと書く。後でそれを「これはこういう意味でこうなったのかな」と分析していく。とにかく粗く掴んだ段階で書いてみる。その段階でどんどん書けるか書けないかは意外と大事で、この作品も、すごくスムースとまではいかないですけど、良いうねりの中で書けました。

──その上演台本を白井さんがどう演出するか楽しみですね。

僕もすごく楽しみです。途中の話し合いで舞台美術なども話題に出たりしたのですが、ちょっとしたやり取りがとても刺激的で、こういう話を永遠にしていたいなと思うほどでした(笑)。

──ノゾエさんは沢山の演出家の方と一緒に仕事をしていますが、作・演出家としてインスパイアされることは?

沢山あります。というか、わりと影響されてしまうほうなので、他の方の作品はあまり見ないほうがいいときもあります。今見たらまずいなとか(笑)。白井さんもそうですが、先輩の作・演出家の方々とご一緒することが、僕はわりと多いんです。そういう方々に感じるのは、皆さんすごく熱いことで。「やばいな、熱さで負けてるな」とか(笑)。僕より10年も20年もキャリアがあるはずなのに、子供じみた熱さが今でもあって、そこはすごいなと思いますね。

どこか止まっていた思考が動きはじめるような作品に

──ところでこの作品は、1929年に書かれていますから90年前です。でも書かれている内容は全然古くないですね。

描かれているのが人間の内面の部分なので、そこは永遠に変わらないテーマですよね。そして、この中に出てくる思春期の子供たちの持つ純粋性とか、狂暴性とか、無自覚とか、残酷で美しいところとか、僕たちに何故かすごく響いてくる。それはたぶん大人になって失くしてしまった感覚への羨望などもあるでしょうし、それ以上の何かもあるんだろうなと。それが惹きつけるんですよね。でも僕もそれがまだよく分かりきってないんです。例えば「残酷」という言葉に「美しい」がついてくるような、「子供」という誰もが辿ってきた時代にあったもの。そして生きていくうえではそれは失くしてようやく一人で生きている、でも失くしたくなかったもの。だから現実に「子供じみた大人」を見ると憤りを感じるのかもしれません(笑)。ウザイのに羨ましいという(笑)、そういう訳のわからない面白さがこの作品にはありますね。

──たぶん「子供の時代」が遠くなればなるほど、その感覚は強くなる気もします。劇中の子供たちと近い世代、若い人にとってどうなのか、そこも興味がありますね。

そうですね。世代というか、「子供」を過ぎてからの年数によってもすごく感じ方が違う気がします。だから幅広い世代に観ていただきたいし、僕自身、観終わったときにどういう感覚になるか興味があります。

──演じている若い俳優の方々にも、大きな意味のある作品になりそうですね。

彼らがどう受け止めるのか、どこで苦しむのだろうと思いますが、でもその苦しむことすら届くものになるだろうし、作品の力になると思います。そして、観てくださるお客さんの中にも、「面白かった」という簡単な一言ではおさまらない何かが生まれるのではないかと。どこか止まっていた思考が動きはじめるような、観ている間それが起動してうごめき続けるような時間になるのではないかと思っています。

■プロフィール

のぞえせいじ○1975年生まれ。脚本家、演出家、俳優。劇団はえぎわ主宰。99年にはえぎわを始動。以降、全作品の作、演出を手掛ける。2012年『◯◯トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞受賞。劇団外での活動も多く、16年にはさいたまスーパーアリーナで高齢者1600人出演の1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ、きみのゆめ~』の脚本、演出を手掛けた。近年の主な公演に、文学座アトリエの会『鳩に水をやる』(17年 脚本)、松尾スズキ作・演出舞台『ニンゲン御破算』(18年 出演)、世界ゴールド祭2018ゴールド・アーツ・クラブ『病は気から』(18年 脚本・演出)、パルコプロデュース『命売ります』(18年 脚本・演出・出演)など。現在放送中のテレビ朝日土曜ナイトドラマ「東京独身男子」に出演中。

〈公演情報〉

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース

『恐るべき子供たち』

脚原作◇ジャン・コクトー[コクトー 中条省平・中条志穂:訳「恐るべき子供たち」/光文社古典新訳文庫)]

上演台本◇ノゾエ征爾

演出◇白井晃

出演◇ 南沢奈央 柾木玲弥 松岡広大 馬場ふみか

デシルバ安奈 斉藤悠 内田淳子 真那胡敬二

5/18~6/2◎KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

〈料金〉プレビュー公演(5/18・19)5,000円 本公演6,500円(全席指定・税込)

※各種割引料金(本公演のみ)  U24チケット3,250円 高校生以下割引1,000円 シルバー割引(満65歳以上)6,000円

〈お問い合わせ〉チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)

〈公式HP〉https://www.kaat.jp/d/osorubeki

 

 

【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】

 

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