堀越涼脚本・演出の新作公演『沈丁花』 藤原祐規・和合真一インタビュー&堀越涼コメントも到着!
堀越涼の脚本・演出による新作公演『沈丁花』が、12月16日〜20日、KAAT神奈川芸術劇場大スタジオで上演される。
堀越は自身が旗揚げした演劇ユニット「あやめ十八番」で歌舞伎、能、浄瑠璃など様々な古典芸能を基礎とした創作活動を重ねており、劇中音楽がすべて生演奏であるなど、独自の作品を上演してきた。今作は、旅行雑誌ライターの油木が豪雨災害に遭った夜に、20年前に訪れた秘湯「白花温泉」での出来事を振り返りながら、過去と現代の二つの時代を行き来する物語になっている。
出演者には、W主演の山田真歩と松島庄汰をはじめ、各方面で活躍する個性豊かなメンバーが顔をそろえ、「あやめ十八番」の吉田能が音楽監督として楽隊を従えた生演奏で舞台を彩る。
今作において、油木が「白花温泉」で出会った新聞記者の滝里を演じる藤原祐規と、宿泊した宿で三助(入浴客の背中を流したりする番頭)として働く寒河江を演じる和合真一に作品に挑む思いを聞いたインタビューに、さらに作・演出の堀越涼からコメントも到着した!
全体を通して見れば、結構シンプルな物語
──藤原さんは堀越さんの作品にはこれまで2回の出演経験があるそうですが、今作の台本を読んだ感想をお聞かせください。
藤原 セリフが相変わらずオシャレだな、というのが第一印象でしたね。本当に何でもない会話を面白く書いちゃう、言わば“堀越節”がふんだんに使われているなと思いました。過去2回の出演経験の中では、演じる側として苦労した部分もあったので、気を引き締めてかからないと、という思いもあります。
──苦労した部分というのは、具体的にどういったところだったのでしょうか。
藤原 セリフのチョイスがオシャレということも関係あるのかもしれませんが、普段あまり使わない言葉の流れだったり接続だったりするんですよ。それがちょっと覚えづらいと感じるときはありました。あとは、堀越くんが役によってすごく細かく演出するんですね。だからこそすごく面白いんですけど、初めはちょっと戸惑ったところもありました。
──和合さんは台本を読んでどんな感想を抱きましたか。
和合 一人一人のキャラクターが紡いでいくヒューマンドラマという印象で、言葉の節々に品の良さが現れているなというのはすごく感じましたね。それが知性的に感じられて、ちょっと難しいのかな、という感じも受けました。でも全体を通して見れば、結構シンプルな物語だったので、その中で我々がどういうエッセンスを出して一つの作品に仕上げていくのか、稽古で作り上げていくのが非常に楽しみです。
──和合さんは、堀越作品には今回が初参加ですね。
和合 そうなんです、だから堀越さんがどういった方なのか、藤原さんからお聞きしたいと思っていて。
藤原 ヘンな人です(笑)。
和合 そうなんですね! まあ、演劇界は変わり者が多いって言いますからね(笑)。
藤原 和合くんも、ね……噂には聞いているんですけど……。
和合 え、ちょっと待ってください、噂って何ですか?
藤原 共通の知り合いがいるので、その人に和合くんってどんな人?って聞いたら「クラッシャーですね」って言われました。
和合 それは完全に風評被害だな(笑)。
藤原 僕は和合くんが出演していた「まほステ」(舞台『魔法使いの約束』)を見に行ったことがあって。そうしたら和合くんがちょっと暴れてる感じのシーンがあったんですよね。
和合 あれは、素の和合真一がちょっとだけキャラににじみ出ちゃったんですよね(笑)。
藤原 それを目の当たりにして、ああ噂は違わないな、って思いました(笑)。いや、でも達者な役者さんだな、と思いましたよ。
和合 ありがとうございます!これでもう、今作の稽古場も安泰ですね。
藤原 気が早いな(笑)。
毎回しっかり取材や調べ物をしてから書いている作家
──それぞれご自分の演じる役にはどういう印象をお持ちでしょうか。
藤原 今作は登場人物全員にドラマがちゃんとある台本だなと思いました。僕の演じる滝里は、親しみやすいようなキャラクターで登場しつつ、物語的には結構爆弾を抱えていて、そのへんをどう演じていくかが面白いところでもあり、難しいところでもありますね。堀越くんの中では「こういう感じで」というのもありそうな気もするので、今はまだ計りかねているんですけれども、とても楽しそうな役だなと思いましたし、楽しそうということはイコール大変なんだろうなとも思うので、とにかく頑張っていかなきゃなと思います。
和合 僕が演じる寒河江はミステリアスなキャラクターで、最初謎めいているところがあって、言葉数も多いわけじゃないんですけど、後半に向けていろいろなことが明らかになっていくところをうまく演じていきたいです。僕は「三助」という職業をちゃんと知らなかったのでいろいろ調べまして、風呂の湯を沸かしたり背中を流したりする江戸時代から続く職業だと知って、演劇の中でそういう職業を体験できるというのもなかなかないと思うので楽しみです。あと、三助は美丈夫がやっていたということで、まさに僕にピッタリの役だなと思いましたね!
藤原 おいっ!(笑)ってここでツッコんでおいた方がいいですかね(笑)。
和合 このツッコミもセットにしておかないと、僕がただのイタいヤツになってしまうので、よろしくお願いします(笑)。
──後半、お2人がガッツリ絡むシーンがあります。
藤原 そうなんですよ、実は結構関係の深い2人なんですよね。
和合 ネタバレになっちゃうからあまりお話しできないんですけど、最初は主人公が偶然出会った温泉でそこにいる人たちとも出会う、という感じなんですが、いろいろなことがどんどん結びついて行って最終的にはどうなるのか、というところが演劇として非常に面白いんだろうなと感じます。
──お互い初共演ですが、相手に期待することは何でしょうか。
藤原 さっきも話しましたが、和合くんは「クラッシャー」という噂を聞いていて、実際に舞台を見てもちゃんと笑いが取れる面白い達者な役者だな、と思ったんですけど、今回は真面目なイケメンの役だからそういう面白い部分を出すところがなさそうなので、クラッシャーな和合くんではなく、達者な役者としての和合くんとガッツリ絡むのはとても楽しみです。
和合 藤原さんとは今さっき初めてお会いしたばかりですけど、既に頼れるアニキだなというのがにじみ出ているので、そんな方と一緒に積み上げていけることに安心感を覚えています。
──今作はエンターテインメントとして楽しめる作品でありながら、社会問題についても考えさせられ作品になっています。
藤原 和合くんも言っていましたが、割とシンプルな物語なんですけど、それぞれのバックボーンをちゃんと描いたりとか、結論に持って行くまでにちょっともったいぶったりとか、そういったところで演劇としてやるべき面白さに持って行っている感じがすごいしますよね。
和合 今までの堀越さんの作品も、社会問題を描いているものが多かったんですか?
藤原 重いテーマを描いたりとか、ノンフィクションを膨らませてファンタジーにしたりとか、毎回しっかり取材や調べ物をしてから書いているんだと思います。役者としても、演じていて「これはきっとお客さんに軽くは映らないな」と思える作品です。
タイムスリップしたような感覚に陥りそう
──今作は「あやめ十八番」と同様に、生演奏で上演されるそうですね。
和合 最初にオファーをいただいたときに、生演奏が入ると聞いたので役者が演奏するのかと思ってしまったんです。それで「僕、楽器弾けないですけど大丈夫ですか?」って聞いたら、僕は演奏しなくていいということで安心しました(笑)。僕が以前出た舞台で、ジャズバンドの生演奏と一緒にやったことがあったんですけど、今回は作品的にジャズではないと思うので、どういった曲調、どういった楽器で雰囲気を醸し出すのか非常に楽しみですし、音楽と演劇の相乗効果がどうお客様の目に映るのか、反応が楽しみです。
藤原 僕はこれまでも堀越くんの作品で、吉田能さん率いる楽隊の生演奏を経験しましたが、稽古をしていくうちに、「なにその楽器?」「それで音を出しているのか!」っていうようなものが増えてきたりとか、SEも楽隊が出したりとか、一緒にやっていてすごく面白いんです。しかもそれが、堀越くんに言われて用意したというよりは、楽隊の人たちが独自にアイディアを持ち寄っている感じなんですよ。そういうのってやっぱり一緒に稽古していてテンションあがりますよね。だから今回またそういう稽古ができるのかなと思うと、非常に楽しみです。でも逆に、それはプレッシャーでもあるんですよね。
和合 そうですよね、音に負けないようにしなくちゃいけないですもんね。
藤原 台本も演出も楽隊もすごいんだから、それじゃあこっちもがんばらなきゃ、って気持ちが引き締まりますね。
──劇場が横浜のKAAT神奈川芸術劇場大スタジオです。
和合 キャパが200くらいと聞きました。お客さんとの距離も近いので、表情一つ一つまでとらえやすいから、誰もが楽しめるというか、物語の世界に入り込める作品になるんじゃないかなと思います。
藤原 神奈川芸術劇場で上演する、ってところもオシャレだよね。
和合 タイトルもオシャレだし、セリフもオシャレだし、生演奏だし神奈川芸術劇場だし、ってなんかもうオシャレの塊ですね!
──「オシャレの塊」って、今作のキャッチフレーズに使えそうですね(笑)。どんなオシャレな上演になるのか楽しみです。
藤原 過去と現在を結構行ったり来たりする台本ですから、舞台でやるのは大変そうだなと思います。でも油木という役を、現代は大沢健さん、過去は松島庄汰くん、と2人の役者で時代ごとに演じ分けたりすることでテンポよくやれるんじゃないかな、という気はしています。
和合 2つの時代のうち、僕たちが登場する時代は1999年という設定なんですが、ちょっとタイムスリップしたような感覚に陥りそうですよね。
藤原 台本からはどことなく昔懐かしい感じも受けるけど、どんな雰囲気で行くんだろうね。
和合 とりあえず僕は、金髪でメッシュ入れてイケイケな感じで出て行きましょうか。
藤原 やべーやつ出てきちゃったじゃん、急に(笑)。和合くん、村の人の役でしょ?
和合 ……はい、ちゃんとやります(笑)。お客さんには2つの時代それぞれの雰囲気も楽しんでもらいながら、時を重ねて行って真相にたどり着くというお話しでもありますので、そのあたりの謎解きにも期待してもらいたいですね。
──劇場周辺には観光地も多くありますから、観劇と観光と両方楽しむというのも楽しそうですね。
和合 そうですね、経済回さないといけませんからね。
藤原 GDPがマイナス成長というニュースが出たばかりですしね。大変由々しき事態です。
和合 『沈丁花』効果で経済もなんとかしたい、という精神でやりたいですね。
──最後に、お客様へのメッセージをお願いします!
藤原 また感染者数も増えてきてしまって、僕らもとても緊張した思いで作品を作っているわけですけれども、作り手側としてはできることをすべてやって、稽古を頑張って、本番をやる想定で力を尽くすしかないと思っています。僕らは一生懸命面白い舞台を作って、感染症対策を最大限してお待ちしておりますので、皆さんも気を付けて来ていただいて、劇場でお会いできたらいいなと思います。
和合 いろんな事情もあるでしょうし、「皆さん来てください!」というわけにはなかなかいかないのが現実ですが、それでも人が「芸術を楽しみたい」と思う気持ちはずっと絶えないと思うんです。我々も情熱を持って舞台をお届けして、その火を絶やさないようにしなければならないというところもあると思います。とにかく我々は今できることを精一杯やりますので、お客様の方でも感染対策をしていただいて、お互い最大限できることをやりつつ、みんなで経済を回しつつ(笑)、舞台を楽しみにしていただければなと思います。
■PROFILE■
ふじわらゆうき○三重県出身。テレビアニメやゲーム作品の声優、ラジオパーソナリティ、また俳優として舞台を中心に多くの作品で活躍中。最近の主な出演作品は『最遊記歌劇伝 -Sunrise-』、『WELL』~井戸の底から見た景色~、wonder×works 舞台『わが花』、ミュージカル『SUPERHEROISM』再演、ナイスコンプレックス『十二人の怒れる男』、One on One 33rd『back-to-back』、ミュージカル『ヨルの真ん中』など。
わごうしんいち○東京都出身。グラフィックデザイナー歴7年を経て、2014年より本格的に芸能活動を開始、舞台や映像で活躍中。映像制作では演出から撮影・編集まで全てをこなし、HPの制作やグラフィックデザイン、自身の作品の写真展を開催するなどマルチな才能をみせている。最近の主な出演作品は、舞台『魔法使いの約束』第3章、舞台『正義ノ嘘人』、舞台『文豪とアルケミスト嘆キ人の廻旋(ロンド)』、音楽劇『まほろばかなた』など。BSフジ『ニッポン美景めぐり」ではレギュラーナビゲーターも務めている。
《作・演出:堀越涼 コメント》
◎今作の世界を書くきっかけになったもの
令和元年房総半島台風により、生まれて初めて“被災した”という感覚を持ったのが始まりです。東日本大震災等もありましたが、他県と比べれば被害は少なく、比較的穏やかな気候の千葉県に住む者としては、被災したと言える経験は、この時だけだったと思います。
◎そこに絡めて描きたかったもの
首都圏を災害から守るために犠牲になる地方を描こうと考えました。テーマとしては大きなものですが、なるべく登場人物達のパーソナルな問題に帰結するように描いています。
◎演出上の見どころ
見どころというと難しいですが、稽古場ではトライ&エラーを繰り返し、これ以上のものは無いのかと、常に自問自答しながら、全員で意見を出し合い舞台を創っています。僕一人の力ではなく、全員で創ったというのが最大の見どころではないでしょうか。
◎インタビューに出ていただいた藤原祐規さんと和合真一さんの俳優としての魅力と演じる役柄への期待
藤原さんは僕の作品には、これで3回目の出演になります。稽古場では、僕のやろうとしていることをいち早く察して、持ち前の演技力を駆使して体現してくれる非常に頼りになる俳優さんです。今回の役は、藤原さんにピッタリだと思います。ファンの方も存分に期待して下さって貰って良いのではないかと思ってます。
和合さんは、初めましての役者さんですが、舞台の基礎体力があり…これは褒め言葉ですが、非常に古風な雰囲気の演技をなさるので驚きました。演じて頂く役は、なかなか難しい役ですが、今となっては和合さんしか考えられないほど、ものにしていらっしゃるなぁと感じています。
◎本作を楽しみにしているお客様へのメッセージ
決して煌びやか舞台ではありませんが、人間に心の琴線に触れるような作品です。目の前で起こることに、是非、思う存分、心を揺さぶられて頂きたいと思っています。
■PROFILE■
ほりこしりょう○千葉県出身。あやめ十八番主宰。2006年よりネオかぶき集団・花組芝居に入座し、俳優・女形として活躍。2012年、あやめ十八番を旗揚げし、作・演出を務める。2021年3月で花組芝居を退座。あやめ十八番以外の主な作品は、花組芝居『花たち女たち』(出演)、木ノ下歌舞伎『三人吉三』(出演)、砂岡事務所『変わり咲きジュリアン』(脚本・演出)など。
【公演情報】
CCCreation Presents
舞台『沈丁花』
脚本・演出:堀越涼(あやめ⼗⼋番)
出演:⼭⽥真歩 松島庄汰
藤原祐規 少年 T 和合真⼀ 宇佐卓真
⼤沢健 ほか
●12/16~20◎KAAT 神奈川芸術劇場〈⼤スタジオ〉
〈料金〉⼀般6,900円 パンフレット付8,300 円 学割(U-18 以下対象)5,500 円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※学割は当⽇年齢の分かる⾝分証提⽰。
〈チケット取扱〉カンフェティ https://confetti-web.com/jinchouge
〈公式サイト〉 https://www.cccreation.co.jp/stage/jinchou-ge/
〈公式Twitter〉@ccc202007
【取材・文/久田絢子 撮影(藤原・和合)/中田智章】
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