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不屈の魂が結実したコンサートバージョン 『ジャージー・ボーイズ イン コンサート」開幕!

7月18日、日本でも空前の大ヒット作品となったミュージカル『ジャージー・ボーイズ』のコンサートバージョン『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』が、無観客によるLIVE生配信上演の形で、帝国劇場で開幕した。

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は、「Sherry」「Can’t Take my off of you(君の瞳に恋してる)」「Big Girls Don’t Cry(恋のヤセがまん)」等々、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう名曲の数々を生み出した「ザ・フォー・シーズンズ」が、世界のヒットメイカーに上り詰めた光と、その栄光の裏にあった、家族との不仲、グループ内での確執などの影のドラマを、彼らのヒット曲を用いて紡ぎあげたミュージカル。2005年のブロードウェイ初演以来、トニー賞、グラミー賞、ローレンス・オリヴィエ賞など、名だたる賞を総なめにして世界を席巻。2014年には名匠クリント・イーストウッド監督による映画版も製作されている。

作品の日本上陸は2016年。現在も作品の権利関係を司っている「ザ・フォー・シーズンズ」のメンバーの一人、ボブ・ゴーディオによる厳しい審査をパスし、「日本のフランキー・ヴァリ」として認められた中川晃教を不動のシングルキャストに。他のメンバーをチームREDとチームWHITEのWキャスト体制で組み、シアタークリエで開幕した。

この日本Versionは、演出の藤田俊太郎が彼らの泥臭いまでに濃い絆と、栄光の影の苦闘を真摯に描きつつ、音楽による開放感を舞台に迸らせ、終わらない青春をミュージカルならではの手法で見事に描ききった。わけても彼らと、その音楽と共に観客も生きていると感じさせてくれた優れた演出と、キャスト全員の魅力、美しいハーモニーの歌声を輝かせて大ブレイク。一部キャストが入れ替わった2018年のチームWHITE、チームBLUEによる上演は、シアタークリエに入りきれない多くの観客の嬉しい悲鳴と共に、熱狂の季節を駆け抜けた。

そんな舞台がいよいよ帝国劇場の大舞台に進出するという、熱い夏の訪れが心待ちにされていたのだが、突然世界を覆った新型コロナウイルスの影響で公演は中止を余儀なくされていた。

けれども作品は『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』としてジャージー魂そのままに不屈の復活!  フランキー・ヴァリ役の中川晃教を中心に、本編上演ではチームごとの出演のはずだった、トミー・デヴィート役の藤岡正明と尾上右近、ボブ・ゴーディオ役の矢崎広と東啓介、ニック・マッシ役のspiと大山真志が同時に舞台に立つという、『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』だからこそ可能になった奇跡の上演として、7月18日に、長い休止期間を経た帝国劇場再開場と共に開幕の日を迎えることになっていた。

ところが、会場となる東京・帝国劇場勤務の従業員1名に新型コロナウイルスの感染が認められ、21日までの公演は初日を目前に中止に。本来劇場が稼働していなかった為、濃厚接触者はいず、保健所からは上演に支障なしという判断が下りた中で、尚、観客の安心・安全を最優先し、より万全な感染予防策を講じるためという東宝自らの判断で、7月18日~21日までの4公演を中止。当初から予定されていた初日から三日間のLIVE映像生配信を、無観客上演により行うことが決まったのだ。

この一報を耳にした時の心境は筆舌に尽くし難い。芝居でもありコンサートでもあるともいえる優れた構成だからこそ、観客のいない『ジャージー・ボーイズ』というものが正直想像できなかった。スタッフ、キャスト、関係者の苦渋の決断がいかばかりだったかが察せられるだけでなく、この日を指折り数えて待っていた観客の落胆が我がことでもあるだけに、どこまで『ジャージー・ボーイズ』には試練が降りかかるのだろうかとただただ天を仰いだ。

けれども、生配信により開幕した『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』の底力と面白さが、それらの憂いを打ち払っていく様には、こちらの想像を軽々と超えるパワーがあった。LIVE映像生配信の前に、演出の藤田自らが「イン コンサート」でしかできない『ジャージー・ボーイズ』の魅力を語り、帝国劇場のドアまで案内してくれる粋な趣向にはじまり、開幕した作品は、ただ名曲を並べたコンサート形式にとどまらない、ミュージカルであり、十分に芝居でもあった。

全体の構成が「春夏秋冬」に分けられていて、それぞれをトミー・デヴィート、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシ、フランキー・ヴァリがナビゲートしていくそもそものスタイルを十二分に活用し、効果的なナレーションを挟みつつ、時に実際の台詞で、時に過去の上演映像で、登場人物たちの変わっていく境遇、置かれた状況を的確に示しながらドラマがよどみなく進むのに驚かされる。

何よりも、トミー、ボブ、ニック、そして彼らを見出すボブ・クルーが二人ずついることに全く違和感がなく、それぞれのWキャストのカラーの違いを存分に伝える効果になっていたのは大発見。特にLIVE映像では、舞台上に離れている二人が極自然にひとつの画面に収まったり、袖中に去っていく人物の、まさにその表情がアップになるなど、客席からでは決して見ることができないアングルの数々が興趣を増す。感染拡大対策で客席のキャパが半減しているからだけではない、ひとつの作品としてのLIVE映像の完成度が際立った。

それでもやはり、フランキーの中川が「Can’t Take my off of you(君の瞳に恋してる)」を歌い上げ、無人の客席に美しいミラーボールが回る映像には、涙を禁じ得なかったが、そのフランキー=中川がいう「最高だったのはレコードがたくさん売れたことでも、富と名声を得たことでもない。四人が集まって新しい音楽のハーモニーが生まれて、世界の全てが消えて音楽だけに包まれる。あの瞬間が最高だった。だから僕は今も歌っている。歌い続けている」という趣旨の終幕の言葉に、全ての想いが昇華されていくのを感じた。この想いがあるからこそ『ジャージー・ボーイズ』は不死鳥で、どんな困難も障害も跳ねのけ、明日に向かって進み続けるに違いない。

そんな唯一無二の日本のフランキー・ヴァリ中川晃教の更に輝く歌声と「トワング」の見事さは言うに及ばず、初演からの復帰となったトミー・デヴィートの藤岡正明の、役柄を体現しきっている存在がそばにいることで、中川の双肩に担っているものが軽減されたかに感じられるのが素晴らしい。

同じトミーに初挑戦の尾上右近の大きな表現が、トミーの内にある焦燥を透けて見せたし、中川同様初演以来の不動のボブ・ゴーディオ矢崎広に生まれた余裕と大きさが、ボブの怜悧な頭脳と感覚に真実味を与えている。

新ボブの東啓介の艶のある歌声も、今回の上演に新たな華を添えた。再演から続投のニック・マッシspiは、経験値から生まれた落ち着きで、穏やかに振る舞い続けたニックの爆発を的確に表現。新ニックの大山真志が、持ち味の温かさをベースに大役を余裕すら滲ませて演じて頼もしい。

また役として、音楽面に重要なコーラスとして、作品を担った面々の豪華さも光り、ボブ・クルーの加藤潤一と法月康平の個性の違いが、少ない台詞からもにじみ出ていつか本編で!との期待を高める。ノーム・ワックスマンはじめ八面六臂の活躍が光る畠中洋。あくまでキュートな綿引さやか。活きの良い小此木まり。ダイナミックな遠藤瑠美子。高音の美しい大音智海。三拍子揃って頼れる白石拓也。貴重な美声の山野靖博。ジョニー・ペシの愛らしき意気揚々がピッタリの若松渓太と、多士済々なメンバーが不屈の『ジャージー・ボーイズ』を支えている。

そんな全員と、更に迫力の生演奏も含め、藤田が指揮した『ジャージー・ボーイズ』カンパニーが、観客の拍手に包まれる光景はもうすぐそこだ。急遽の代替えではない、新たな感動を生んだ『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』。帝国劇場を飾るもうひとつの初日の開幕が待たれる。

7月18日の開幕予定に合わせて、演出の藤田とメインキャストからコメントが届いたので、帝国劇場の客席に観客が入る23日の公演の前にお届けする。

【演出&キャストコメント】

藤田俊太郎(演出)
当初予定していたかたちでお届けすることは叶いませんでしたが、本日7月18日ライヴ配信での開幕、帝国劇場の再開を嬉しく思います。劇場での一日一日を大切に、真摯に作品に向き合っています。この作品の魅力は一体感です。出演者、ミュージシャン、全てのプランナー、カンパニースタッフ、劇場の皆様のつくりだす、まるでフォー・シーズンズの美しいハーモニーのような一体感を感じていただけたらと思います。作品の最後のピースは観客の皆様です。劇場で観劇される方も配信を御覧の方も、お一人お一人の力で共に作品を完成していただけたら幸いです。ジャージー・ボーイズを愛していただいていることに心から感謝しています。

中川晃教(フランキー・ヴァリ役)
初日を前にして、これまでしてきたように、ステージに立ちたいと思います、という気持ちなのですが、この梅雨の時期特有ともいうべきか、体力をじわじわと奪っていく(笑)感覚とも戦いながら、3週間ほどリハーサルを重ねてきました。歌うということは、日常生活で使う筋肉や、運動とは異なる体の使い方をしていることがよくわかります。あらゆる演目が中止になっていく中、僕たちと、お客様とで一緒になって育て上げてきたJERSEY BOYSは、2018年のコンサートバージョンとしてもお客様に喜んでいただくことができました。
四季を一気に駆け巡るコンサートならではの物語性をぜひ体験していただきたいです。数々の名曲の、その由来もよくわっていただけると思います。音楽が主役と呼ばれるようになった本ミュージカルですが、コンサートとしての醍醐味と、演出効果で、ストーリーの陰影も感じていただけると思います。お客様お一人お一人が私たちJERSEY BOYSカンパニーをここ帝国劇場へと押し上げてくれました。演目として長く愛されるものとなるように、私たち一人一人は努力を惜しまずに本作に挑み続けます。
劇場でのリハーサル中に、劇場空間に風を感じます。その風に、歌声も感動も乗せて、劇場中に届いていく感覚です。劇場に足を運ぶことのできないお客様にも配信を通して、私たちがミュージカルの風をお伝えします。心で観劇くださるすべてのお客様に、新しい感動をお届けしたいです。

藤岡正明(トミー・デヴィート役)
こうしてもう一度ステージの上で皆様の前に立てることに、本当に言葉では言い尽くせない喜びと感謝があります。そして、その再出発が帝劇という歴史ある劇場ということにも、大きな大きな感謝の気持ちでいっぱいです。このコンサートで、お客様に特に注目してほしいポイントはやっぱり、僕ですかねぇ(笑)。様々な不安を抱えられている中で劇場まで足を運んでくださるそのお気持ちに報いることができるよう、最善の防止策を徹底し、そして何より最高のステージをお届けすることをお約束します!!!

尾上右近(トミー・デヴィート役)
久々に生でお客様に観ていただけるということ。そして人生初めてのコンサート、初めての帝劇! 色々な種類のワクワクが心に渦巻いております。コンサート形式とはいえお芝居の要素もふんだんに、そしてそれぞれの役者が輝く演出になっていると思います。本来交わるはずのないダブルキャストが一斉に集うところで、また新たな魅力を持った作品に見えるのではないでしょうか。久しぶりにお客様にお会いできることを本当に、本当に嬉しく思っています。不安も色々あるかもしれません。そんな不安も吹っ飛ばすくらいの歌声を届けられたらと思っています。

矢崎広(ボブ・ゴーディオ役)
本公演の中止をはじめ、様々な事を乗り越えて迎える初日です。沢山の方に支えられて、ここまできました。しっかりと色んな面で緊張感を持ちつつ、日々の公演を楽しんでいきたいと思います。このコンサートでお客様に特に注目してほしいポイントは、歌とダンスだけではなく、芝居も詰まっているのがこのコンサートの特徴です。このジャージー・ボーイズの物語の魅力を沢山の方に感じていただけたら嬉しいです。コンサートとして復活して参りました。こんな時だからこそジャージー・ボーイズ愛が集まり、そして深まったと感じています。幕が開いたら全力で楽しんで、帝国劇場の再開とジャージーの復活を、共に盛り上げましょう。皆様よろしくお願いします。

東啓介(ボブ・ゴーディオ役)
本公演が出来なくなりましたが、コンサートと言う形で復活し、こうして、初日を迎えられること本当に嬉しく思います。早く多くの人に劇場に来ていただき、見ていただきたいです。何より皆さんと笑顔で会いたいです。このコンサートでは全曲注目して欲しいですが、特にというと、僕のソロナンバーがあるので、是非聴いていただきたいです。数ヶ月ぶりの舞台観劇。待ちに待ったと思います。僕も同じ気持ちです。心から楽しんで下さい。それだけで何か失ったものであったり、つらかった事が、幸せに変わると思います。そうなれるよう僕らも活力を与えていきたいと思ってます。一緒に盛り上がりましょう!!!

spi(ニック・マッシ役)
初日を前にしての今の心境ですが、まだ実感が湧いていません。本当にできるのかな?という思いと、やるぞ!という心持ちが複雑におりまざっています。皆様の不安や恐怖をひしひしと感じる日々で、安心させてあげたい気持ちでいっぱいです。このコンサートで、お客様に特に注目してほしいポイントは、“新キャスト”です。皆様素敵な方々なので楽しみにしていてください。稽古から沢山準備をして本番に向けてきました。ジャージー・ボーイズを存分に楽しんでいただけたらと思ってます!

大山真志(ニック・マッシ役)
この状況で舞台に立てる事、そして外に出ることだけでも不安な状況の中足を運んでくださる事、本当に感謝しています。ありがとうございます。どんな状況でもこのコンサートを通して皆さんに笑顔になってもらえるように自分自身も楽しみたいと思います。このコンサートでお客様に特に注目してほしいポイントは“生の臨場感”です。全世界が大変な状況にあり、正直この数ヶ月間は観劇どころでは無かったと思います。そんな中でお金を払って、時間を割いて、この作品を観劇していただける事を本当に幸せに思います。皆様が明日も頑張ろうと思えるよう、細心の注意を払い、楽しんでいただけるよう全力を尽くしたいと思います。

【公演情報】
『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』
脚本◇マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽◇ボブ・ゴーディオ
詞◇ボブ・クルー
演出◇藤田俊太郎
出演◇中川晃教
藤岡正明  尾上右近 矢崎広 東啓介 spi 大山真志
加藤潤一 法月康平 畠中洋
綿引さやか 小此木まり 遠藤瑠美子 大音智海 白石拓也 山野靖博 若松渓太
●7/18~8/5◎帝国劇場
〈料金〉S席13.500円 A席9.000円 B席4.500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈チケット問い合わせ〉東宝ナビザーブ https://stage.toho-navi.com/
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/jersey/index.html

【配信情報】
日程:8月1日13:30、2日13:30、4日18:30、5日13:30
イープラスの配信サービス・Streaming+でのライブ映像生配信を実施。
〈視聴料金〉4500円(税込)
※生配信のみ。アーカイブ視聴なし

 

【文/橘涼香 写真提供/東宝演劇部】

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