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『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』市川團子インタビュー

明治座では、創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』を5月3日から28日まで上演中だ。
市川團子は、その公演の夜の部、三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繫馬』に出演。この作品は四世鶴屋南北の原作を、團子の祖父である三代目市川猿之助(現市川猿翁)と奈河彰輔の脚本で、明治座で1984年に初演している。
今回は、当代市川猿之助が平将門の遺児・相馬太郎良門を演じるほか、大喜利所作事『蜘蛛の絲宿直噺』では、女童、小姓、番頭新造、太鼓持、傾城、土蜘蛛の精の六役を早替りで踊り分けるなど、〝奮闘公演〟に相応しい内容になっている。
その舞台で、今年2月の博多座『新・三国志 関羽篇』に引き続き猿之助と共演する團子に、この舞台に出演する思いを聞いた「えんぶ6月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する

憧れの人、猿之助の背中を見つめながら

──今作は、團子さんのおじい様・猿翁さんが三代目猿之助として明治座で初演されました。

今回の上演にあたり、明治座で上演したものを映像で観ました。とにかくじいじ(猿翁)がかっこよくて。その作品を今の猿之助さんで観ることができる、しかもそれに出演させてもらえるということで、本当に嬉しいしありがたいです。

──團子さんが演じる〝百足のお百〟というのは、どのような役なのでしょうか。

一見おぼこい感じの女の子なんですが、実は裏の顔があって…というお役です。他の出演者の皆さんも、正体を隠して普通の町人になりすまして登場する、というような人が多い作品なのですが、お客様には本当の正体がわかるように、例えば普通の町人は知らないようなことをポロッと言ってしまったりとか、ちょっと匂わせたりはするんです(笑)。その駆け引きや、少しずつ「実は」という部分がわかってくるところなどを楽しんでもらえたらいいなと思います。

──猿之助さんは團子さんにとってどのような存在でしょうか。

僕にとっては憧れの人です。『新・三国志』では猿之助さん演じる関羽の息子・関平役を務めさせていただきましたが、猿之助さんは本当にかっこいいという言葉に尽きます。花道から登場するときに猿之助さんの後ろを歩いていると、その背中がとても大きく感じました。僕にとって三代目猿之助であるじいじも憧れの人ですから、今回の作品は、憧れのじいじがやった作品を、憧れの四代目猿之助さんがやるという、もう憧れしかない公演ですね。

──『新・三国志』のときは、本物の水を使った大立ち廻りが話題になりましたね。

歌舞伎座で上演した『東海道中膝栗毛』のときに本水に入らせていただいたことはあったのですが、『新・三国志』のお稽古で本水に入ったら、前回とは水圧が違うのもあって、前が何も見えなくてびっくりしました。そして衣裳は、初演で猿之助さんが関平を演じたときに着ていたものを使わせていただいたので、同じ衣裳で出られたことが心強かったです。

スーパー歌舞伎をやるにはまず古典ができないと

──2012年に8歳で五代目團子として初舞台。團子というお名前はおじい様もかつて名乗られていました。

「あのかっこいいじいじが名乗っていた名前なんだ」と嬉しかったです。團子という名前は、僕はすごく好きです。字も音もかわいらしい感じがありながら、力強さも兼ね備えているイメージがあるんです。

──歌舞伎俳優は名前とともに成長していくという印象がありますが、今までに「團子」という名前に助けられたなと思う瞬間はありましたか。

初代猿翁さんと三代目段四郎さんと、当時三代目團子だったじいじが一緒に写っている写真が家にあって、そこにそれぞれのサインが書いてあるんです。僕にとってじいじは「猿之助」と「猿翁」というイメージが強いので、じいじのところに「團子」とサインされているのを見て「本当にじいじは團子だったんだ」と実感しました。その名前を名乗らせていただけて、同じ名前で舞台に立っているということは、「憧れのじいじと同じことをやらさせていただいてるんだな」と感じられて、とても嬉しく心強いです。

──昨春から大学生になり、学業と両立しながら活動されていますが、大学には行かずにお仕事に専念するという選択もできたと思います。大学に行くことを選ばれたのはなぜでしょうか。

澤瀉屋は、じいじも猿之助さんも大学を卒業されているので、自分もその後を追いたいという思いが一番大きいです。じいじが大学に入ったのは、ひいおじい様(三代目市川段四郎)が「外からの視点を持つために」という思いを持っていたからだと聞きました。大学では、歌舞伎やお能など、日本の伝統芸能についての講義も受けているのでとても楽しいです。

──大学生活を経験して外からの視点を得た團子さんがどのように活躍されていくのか楽しみですね。

ありがとうございます。歌舞伎以外のものを学ぶとより一層、「ああ、やっぱり歌舞伎は世の中で一番面白いな」と思うんです。他のものの面白さを知ることで、同時に歌舞伎の良さを再認識するというか、「歌舞伎最高だな」って思いますね。

──今後の活動についてどのようなビジョンを持っていますか。

とにかく今は古典をやりたいと思っています。『新・三国志』に出演したときも、スーパー歌舞伎をやるにはまず古典ができないといけないということ、古典がどれだけ大事であるかということを痛感しました。

──古典の作品で挑戦したいものや、やってみたい役はありますか?

澤瀉屋のものは全部好きですし、昔から言っていますが、『三人吉三』も好きです。今回の『御贔屓繫馬』も古典なので、勉強させていただけて嬉しいです。とにかく今はいただいたお仕事を一生懸命、まずはひとつひとつ頑張りたいなと思っています。

(文中の澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは〝わかんむり〟です)

■PROFILE■
いちかわだんこ○2004年生まれ、東京都出身。市川中車の長男。祖父は市川猿翁。12年6・7月新橋演舞場『ヤマトタケル』のワカタケルで五代目市川團子を名のり初舞台。最近の主な出演作品は、16年~19年八月納涼歌舞伎『東海道中膝栗毛(弥次喜多)』、20年、歌舞伎座 壽初春大歌舞伎『連獅子』吉例顔見世大歌舞伎『義経千本桜』十二月大歌舞伎『傾城反魂香』市川弘太郎の会『義経千本桜 川連法眼館』、21年、八月花形歌舞伎『三社祭』、22年、三月大歌舞伎『新・三国志 関羽編』八月納涼歌舞伎『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)』など。

【公演情報】
明治座創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』

◎昼の部
植田紳爾作
藤間勘十郎演出・振付
市川猿之助演出
歌舞伎スペクタクル 不死鳥よ 波濤を越えて―平家物語異聞―
出演:市川猿之助 中村壱太郎 中村米吉 ほか

◎夜の部
四世鶴屋南北作
奈河彰輔脚本
市川猿翁脚本・演出
石川耕士補綴・演出
市川猿之助演出
三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繫馬』(ごひいきつなぎうま)

出演:市川猿之助 中村米吉 中村隼人 ほか

●5/3~28◎明治座
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター03-3666-6666(10:00~17:00)
〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/info/

 

【インタビュー・文/久田絢子 撮影/中田智章】

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