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方南ぐみ企画公演 朗読劇『青空』樫田正剛×TETSUYA インタビュー

昨年8月、多彩なキャストの参加で上演、大きな感動を呼んだ朗読劇『青空』が、今年はさらにスケールアップ。幅広く豪華なキャスト陣により、8月9日~18日、日本橋・三越劇場にて上演される。

【あらすじ】
少年の遊び相手は柴犬と野良猫だった。
時代は太平洋戦争真っ只中。
物資不足に陥ったお国は庶民に「家庭で飼育している犬と猫を差し出せ」と命令を下した。
愛国心に満ち溢れていた少年だったが…柴犬と野良猫の命を助けたいと願った―。

軍国少年と呼ばれていた小学生の大和と彼の友だちである柴犬の麦、キジトラ猫の小太郎が、戦禍の中で必死に生きる姿を描く物語を、4人1組の出演者が、少年と犬と猫、そして父親などに扮して演じる朗読劇だ。

この注目作の上演を前に、作・演出をつとめる樫田正剛と、出演者のEXILE TETSUYAが、この作品のこと、芝居への想いなどを話してくれた。

樫田正剛 TETSUYA

久しぶりの樫田フレーバーに熱くなって

──『青空』は、何度も上演されている『あたっくNo.1』と同様、戦争の時代を描く作品です。まず本作を書こうと思った動機から聞かせてください。

樫田 やはり『あたっくNo.1』を書いたことが大きいですね。あの作品との出会いで人生観が変わりましたから。さらにそのあと3.11があって、より命について考えることになりました。この作品は、戦争中にあった動物に関する色々な事実を知ってすごく衝撃を受けたんです。戦争って人を狂わすな、考えもつかなかったことをやるんだなと。そして、そういうことを動物目線から、それも悲惨にではなく、いわば青春物語として伝えられたらと思ったんです。

──その昨年の上演がたいへん好評で、今回再演ということになりました。

樫田 ぜひ再演したいと思っていました。夏に限らずどんな季節でもいいからやるべきじゃないかと。今回は三越劇場で上演するのですが、戦争で燃えずに残った唯一の東京の劇場なので、そこでやることに意味があるなと。

TETSUYA それ、今初めて知りました。

樫田 そうなんだよ。だから最初は『あたっくNo.1』をやろうかなと思ったんですけど、昔の劇場なので高さがなくて、最後のシーンの高さが作れないから。

TETSUYA あれ欲しいですからね。一番大事なシーンだし。

樫田 そういう事情もあって、『青空』ならぴったりだなと。

──TETSUYAさんは、その作品のオファーを受けていかがでした?

TETSUYA 僕は今、膝の治療とリハビリをしていますが、久しぶりに樫田さんとメールのやりとりをしていたら、時間があるなら台本読んでみてよと『青空』を送ってくれたんです。昨年の公演は僕も観ていて、樫田さんらしい作品だなと思っていたんですが、送られてきた台本を読んでいたら、樫田さんフレーバーを久しぶりに思い出したというか、こういう感覚久々だなと。そして、そういえば舞台の芝居ってここ数年やってなかったなと。初舞台からずっと毎年のようにやっていて、今でも芝居は大好きでやりたい気持ちはあったんですけど、自分の活動が色々あって4年くらい出られなかったんです。でも久しぶりにゆっくり過ごせる時間の中で、この台本に出会って、久々の樫田さんフレーバーに熱くなって(笑)。再演があるから出ないかと言われたとき、出たいと思いました。

樫田 作戦通りだった(笑)。

──TETSUYAさんを熱くさせた樫田さんフレーバーというのは?

TETSUYA 『あたっくNo.1』もそうですが、昭和の時代ならではの匂いがするんです。僕が知らない時代の話を書いているのに懐かしさもあるし、出てくる人たちの想いをそのまま素直に出すような人間くささがあって、いるよねこういうヤツみたいな。僕は『あたっくNo.1』が初舞台でしたから、芝居をやるうえで、そういう樫田さんフレーバーが染み込んでいるんです。

凄い方たちと一緒にやってしびれろよと

──台本には犬と猫が出て来ますが、TETSUYAさんも猫を飼っているそうですね。

TETSUYA 犬も好きなんですが、どちらかというと猫派で(笑)、台本の中に猫の色々な仕草が出てくるんですが「あるある」と(笑)。動物好きのツボを押さえてる素晴らしい台本だなと思いました。

──4人1組で、少年と犬と猫とお父さんなどを演じますが、大和少年を女性が演じる場合もあるようですね。

樫田 もしアニメだったら大和役は女性がやりそうだなと。読んでくださる女優さんの中にも、犬の麦をやりたいと言う方がいたりする。だから配役は毎回自由なんです。TETSUYAくんにも初日と千秋楽に出てもらいますが、初日は猫の小太郎で、千秋楽は大和の役なんです。

TETSUYA 2つともやりたかったので、嬉しいですね。でも出演者をみたらすごい方々とご一緒するので、大丈夫かなと(笑)。

──TETSUYAさんへの期待の大きさを感じます。

樫田 期待もありますが、リハビリしているのに出て欲しいと言ったら出てもいいよと言ってくれたので、だったら僕が今できる最高の場をセッティングしてあげたいなと。初日に一緒に出演する(渡辺)いっけいさんとか楽日の國村(隼)さんは、TETSUYAは僕の書いたNHKのドラマでも共演しているんですが、久しぶりの舞台だからそういう凄い方たちと一緒にやってしびれろよと(笑)。

TETSUYA 愛ですね(笑)。

──初日メンバーはほかに内田真礼さん、西田尚美さん、楽日はイッセー尾形さんと高野志穂さん、皆さん実力のある方ばかりです。TETSUYAさん自身も期待する部分は大きいのでは?

TETSUYA そうですね。共演者の方には自分のすべてをさらけだして、全力をぶつけていかないと結果を出せないと思うので、久しぶりに気合いが入りました。今年1年はリハビリしながら、ちょっとゆっくりしようと思っていたけど、そうはいかなくなりました(笑)。でも久しぶりすぎて、台本読みながら「あれ、お芝居のスイッチどこにいったかな」と(笑)。これかな?これかな?と手探りでやっているんですけど、そういう芝居勘みたいなものを探すことも楽しくて。本番は1回で終わっちゃうので、今はその1回きりの本番へ向かうことを最大に楽しみたいなと思っています。

──リーディングの公演には2回ほど出演していますね。リーディングならではというのはどんなことでしょう?

TETSUYA 台詞を覚えなくていいというのはありますね(笑)。『あたっくNo.1』みたいな激しい動きもないし(笑)。でも一見ラクそうですけど舞台に立つことには変わりはないし、独特の難しさもあります。

樫田 台本を持ってるのに噛むとかね(笑)。

TETSUYA 僕、2回ともめちゃ噛みましたからね(笑)。

──今回は14組の公演があるわけですが、各組をまとめる演出として何が大事ですか?

樫田 基本的なルールだけですね。時代背景とか言葉のイントネーションとか。演劇ってどれが100点ってないんですよね。だからこちらがガチガチに縛ってしまうより、皆さんが持ち込んできたものを大事にする。稽古時間も短いですし、ここは違うなという部分だけチェックして、もう1回読んで、次はもう本番、みたいな。そういう稽古ですし、時代背景が重かったりすることもあって、最初は皆さん緊張するみたいです。TETSUYAとか手が震えると思う(笑)。

TETSUYA ははは(笑)。たぶん20ページとか25ページくらいまで震えるでしょうね(笑)。

──14組それぞれ物語の見え方も違いが出て来そうですね。

樫田 僕にとっても発見の連続です。稽古でも、ああこういう読みをするんだ、こういう言い方もあるんだと。良いなと思ったら他の組のときに「こういうやり方もあるよ」と、自分で考えたみたいに(笑)。

TETSUYA それずるいな(笑)。

──演出家としてもすごく刺激になる現場なのですね。

樫田 普通の公演だとキャストは大体14人~15人くらいですが、『青空』は48人の俳優と一緒にやるわけで。

TETSUYA 48人か!すごいね。

──それだけの出演者が出たいと思う作品ということですね。

樫田 有り難いですね。それにプロデューサーが、『青空』という作品はもっともっと沢山の方に知ってもらうべきだと。その思いもあって、これだけの方たちに声をかけたくれたんです。

自分を全部さらけ出して舞台に立つ気持ちよさ

──お二人は『あたっくNo.1』をはじめ何本も作品を一緒に作っていますね。

樫田 出会ったときは、まだ彼が二代目J Soul Brothersとして活動中で、『あたっくNo.1』のオーディションに他のメンバーと一緒に受けにきたんです。TETSUYAは良い意味でガツガツしていて、うまくなりたいとか、あんなふうになりたいとか、真っ直ぐに出してきて、演出の言葉にもすごく素直で。他の役者たちにちゃんと刺激を受けるし、芝居を好きになっていってるのが、見ていてすごくよくわかった。それにプライべートでも芝居の質問をしてきたり、また一緒にやりたいなと思わせるところがあって、それで「次あれやろうか、次はあれ」みたいにしてるうちに、どんどん舞台に嵌まってきて。

TETSUYA 嵌められましたね(笑)。

──『あたっくNo.1』という作品も含めて、TETSUYAさんには良い出会いだったのですね。

TETSUYA 良い出会いという一言では語り尽くせないくらいで、最初が『あたっくNo.1』だったということは本当に大きいです。自分の知らない時代や出来事をリアルに知ることになったし、日本人としてのルーツとか、色々な発見や感動がありましたから。そして、映像と違って舞台では芝居のアプローチがすべて全力で、全力で右を向くとか全力で走るとか全力で叫ぶとか。初めてそういうものに出会えてすごく気持ちよかった。自分を全部さらけ出してステージに立っていいんだと。アーティスト活動ではなかなかそこまでさらけ出さないですから。例えば着飾ったり格好つけたり、そういうパフォーマンスをお客さんが楽しんでくれるわけで。それとはアプローチが違う面白さを感じたし、舞台の芝居というものがすごく好きになりました。

──ダンスも全身での表現かと思いますが、芝居と違うところは?

TETSUYA ダンスは声のない表現で、演劇は声を出せる、そこが魅力ですね。声を出して何かを伝えるというのはこんなに楽しいのかと。

──勝杜という役も熱くて真っ直ぐでTETSUYAさんに似合っていました。この役をTETSUYAさんにしようと思ったのは?

樫田 最初は3人で3つの役をシャッフルしてやらせて、それで決めました。どれも魅力のある役どころで、とくにあとの2つは特攻に選ばれて、「行ってきます」と言う役なので、みんなやりたがるんです(笑)。

TETSUYA ある意味、花形ですからね。僕もやりたくなかったわけじゃないんですが、一番魅力を感じたのは勝杜だったんです。

樫田 僕の伯父をモデルにした役なので、TETSUYAは僕の伯父さんです(笑)。

未来の世界にワールドピースが広がるように

──そのあと樫田さんの『袋のねずみ』で初主役をつとめて、コメディも演じましたね。

TETSUYA 『あたっくNo.1』と同じ時代、昭和初期の物語でしたから入りやすかったということもありましたが、僕のことをよく知ってくれたうえで、オリジナルを書いてくれたので、役も理解しやすかったです。芝居を始めてから、小劇場で魅せる演技をしてみたかったので、樫田さんにそういう話をしたんです。

樫田 TETSUYAが「舞台で活躍してる人たちって、小劇場から本格的な演技を学んできてるじゃないですか。僕も段々大きな劇場に行くという経験をしてみたい」と言うので、まず『袋のねずみ』を200人弱くらいのシアターモリエールでやったんです。次は俳優座劇場とか本多劇場でやって、そこから紀伊國屋ホールに行きたいねとか話してたんだけど。

TETSUYA いつのまにか話がフェイドアウトしてましたね(笑)。

──色々なかたちで演劇と向き合ってきたTETSUYAさんですが、芝居をすることで、ユニットでの活動にフィードバックするものというのは?

TETSUYA 沢山あります。ダンスの表現にしても、自分が楽しく踊りたいだけだったら、ただ踊っていればいいんですけど、ちゃんと作品としてのコンセプトを考えて、ドームだったりアリーナだったり、その会場の規模にとらわれず、一番端のお客さんまで何を伝えたいのかということ、その中で自分の役割りはなんなのかということを考える。それにEXILE TETSUYAという役を演じきるという意味では、芝居での経験が生きています。格好つけて登場することも、コミカルな部分も、1人でソロダンスを踊るときも、ここはこういう立ち位置で、こういうアプローチをしたらお客さんは楽しんでくれるんじゃないかと。お芝居をやっていたことで、いろんな事を考えられるようになりました。

──自分で演出するようなものですね。

TETSUYA そういう感じですね。とくにEXILE THE SECONDだと考えやすい。自己プロデュースしているような感じですね。

──最後に改めてお二人に伺います。今回の作品で伝えたいことは?

樫田 こういう時代があったんですよということを知ってほしい。でも押しつけ的なメッセージではなく、知っていただいて何を感じてくださるかはそれぞれです。それがお芝居の面白さですから。僕自身は戦争世代ではないのですが、ここまで生きてきた中で知った知識とか聞いたことなどを、たまたま書ける場所があって、舞台ならそれを発表できる。ですから1つでも2つでも作品を作って、誰かがそれを観て、心のどこかにしまっておいてくれたらいいなと。そういうことが自然に広がっていけば、それが平和なのかなと。

TETSUYA 僕は芝居ではけっこうブランクが空いてしまったのですが、また樫田さんの作品でリスタートできるというのは、僕の人生にとってすごく良いきっかけになりました。その感謝の気持ちを込めて舞台に立ちたいです。そして今年は令和元年ですが、時代の流れってすごく早くて、どんどん流されていくし、今の時代って生き方が前とは少し違ってきているのかなと。でも僕らの仕事は平和産業なので、平和がないとステージに立てないんです。だから平和を願うということは僕らの絶対的な願いでもありますし、災害も含めて色々なことを乗りこえてきた今の日本の僕らから、この作品に乗せて、未来の世界にワールドピースが広がるように、その願いを込めて立てたらいいなと思っています。でも最初の20ページくらいは手が震えていると思うけど(笑)、それだけは許してほしいですね(笑)。

 

■PROFILE■


てつや○神奈川県出身。EXILE、EXILE THE SECONDのパフォーマーとして活躍。俳優としても映像や舞台で活躍。主な出演舞台は、方南ぐみ企画公演『あたっくNo.1』(2009年、2012年)、方南ぐみ企画公演 ばったもん3番勝負 其の壱『袋のねずみ』(主演、2010年)、DANCE EARTH ~生命の鼓動~、DANCE EARTH PROJECTグローバルダンスエンターテインメント『Changes』など。2014年、淑徳大学人文学部表現学科の客員教授に就任。2018年3月に早稲田大学院スポーツ学科研究科の修士課程を卒業。


かしだしょうご○北海道出身。演出家、脚本家、漫画原作者、作詞家。ラジオ・テレビの放送作家を経て脚本家となり、1990年『世にも奇妙な物語 -パパは犯罪者- 』でドラマデビュー。1992年劇団方南ぐみを旗揚げ。編集プロダクション方南ぐみと劇団方南ぐみの主宰者を務める。『あたっくNo.1』『THE 面接』など、現在も再演を重ねる数々の名作を生み出している。EXILEのシングル「道」(2007年)の作詞など、多岐にわたる活動を展開中。

【公演情報】
方南ぐみ企画公演
朗読劇『青空』
作・演出:樫田正剛
出演:(1つの物語を4人で朗読 五十音順)
8月 9日(金) 19:00  内田真礼、EXILE TETSUYA、西田尚美、渡辺いっけい
8月10日(土) 13:00 佐倉綾音、瀬戸祐介、Dream Shizuka、前川泰之
8月10日(土) 18:00 梅津瑞樹、加藤良輔、佐伯大地、正木郁
8月11日(日) 13:00 大塚寧々、鈴木福、竹中直人、松田凌
8月11日(日) 18:00 紫吹淳、神保悟志、高橋ひとみ、多和田任益
8月12日(月) 13:00 緒月遠麻、染谷俊之、藤井隆、米原幸佑
8月13日(火) 19:00    岩谷翔吾(THE RAMPAGE)、凰稀かなめ、梶原 善、モロ師岡
8月14日(水) 14:00 舘形比呂一、藤原 樹(THE RAMPAGE)、前島亜美、升 毅
8月15日(木) 19:00 石井正則、石野真子、岩谷翔吾(THE RAMPAGE)、太田将煕
8月16日(金) 14:00 鈴木砂羽、染谷俊之、松井珠理奈、村田雄浩
8月16日(金) 19:00 岡田義徳、笛木優子、藤原樹(THE RAMPAGE)、升毅
8月17日(土) 13:00 飯島直子、佐藤晴美(E-girls/Flower)、神保悟志、松田 凌
8月17日(土) 18:00 戸谷公人、中島早貴、平田広明、渡辺いっけい
8月18日(日) 18:00 イッセー尾形、EXILE TETSUYA、國村隼、高野志穂

●8/9~18◎三越劇場
〈料金〉6500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈方南ぐみ公式HP〉http://hounangumi.info/
〈方南ぐみ公式Twitter〉https://twitter.com/hounan_gumi

 

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】

 

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