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『夜想曲─ノクターン─』本日開幕! 東山義久×北翔海莉インタビュー

架空の街「トーキョー」に集う、一獲千金を狙う男達。欲望、嫉妬、裏切り、そしてミステリアスなひとりの女が繰り広げる一夜の物語を描いた、KIRARI SHOW ACT☆PARADISE THEATER『夜想曲─ノクターン』が、銀座の博品館劇場でいよいよ本日5日開幕する(12日まで)。

1920年代のアメリカ・イタリアの裏社会のスタイルをイメージしながら、東山義久・北翔海莉を中心に、DIAMOND☆DOGS(以下D☆D)のメンバーに、川原一馬、長澤風海、小寺利光、若松渓太が加わり、スタイリッシュでダークな世界を紡ぐ、蠱惑的なSHOW ACTだ。

そんな作品の中心で活躍する東山義久と北翔海莉が、作品や刺激的な稽古場、さらにお互いの魅力を語り合ってくれた。

今までのイメージを覆す役どころ

──今回の『夜想曲』─ノクターン─の構成についてまず教えていただけますか?

東山 「SHOW ACT」という作りになっていて、ミュージカルではなく、ストレートプレイの芝居のなかに、ショーナンバーを入れていく形になっています。1920年代の禁酒法時代がイメージで、イタリアンマフィアっぽい雰囲気なのですが、架空の都市「トーキョー」を舞台に物語を運ぶ。ミュージカルナンバーというよりは、キャスト個々の良さを生かしたダンスナンバー、僕達DIAMOND☆DOGSのショーに通じる場面がストーリーのなかに入って来るという形です。

──そのダンス場面は「劇中劇」ともまた違うのですか?

東山 劇中劇ではないですね。例えば僕の役が見た白昼夢ですとか、北翔さんの役が「こうなったらいいな」と思っている、そういったものがそのままショーアップしていく形です。

──ではミュージカルとも、ショーケースとも違う、新しいもの?

東山 そうですね。ミュージカルにも色々な形がありますが、台詞が歌になるのがミュージカルなのだとしたら、役の心情を歌やダンスナンバーにしていく形なので。

──そのなかで北翔さんが演じる役どころは?

北翔 今回、脚本・演出の宇治川まさなりさんが、あてがきで一から作って下さったので、私の役柄もあてがきなんですが、今までの私のイメージを覆すような夜の店の歌姫という役柄です。自分としてはこれまで演じたことのない「女」を演じる、新らしい挑戦にもなるのと同時に、やってみたかった役柄なんです。ただ、これまでやってみたいという気持ちはありながらも、私にはできないのではないかとも感じていて、なかなか怖くて手が出せなかったジャンルの役柄なので、新しい引き出しを作っていただくイメージで、宇田川さんが私にこの役を当てはめてくださったことが嬉しいです。毎日発見がありますし、全編の通し稽古をしてみて、今回女性が私1人だけ、紅一点なので、自分がどう見えていたいのか?を含めて、やっと分かってきたという感じです。やはりひとりで台本を読んでいるだけではなく、稽古場でそれぞれの役柄を皆様が演じて、物語が立ち上がってきたことで「なるほどこういう風にできていくんだ」という答えが見えてきた感覚がありますね。

──北翔さんからこんな役柄に挑戦してみたい、と希望を出されたのではないのですね?北翔 そうです。どなたが私にこのタイプの役を、と思ってくださったのかな?と

東山 最初にイメージを出したのはうちのプロデューサー(栫ヒロ)です。そこから宇治川さんとご相談しながら、CLUB「夜想曲」の設定や、劇中のBGMは全部チャイコフスキーの楽曲を様々なアレンジで使おうですとか、台詞回しにシェイクスピアの匂いがするものを、などのイメージを積み重ね、1番いいところを取り上げながら、宇治川さんが台本の形にしてくださったんです。

北翔 とても綺麗な言葉を選ばれているなというイメージがあって、ロマンチックな表現になっていますね。

──東山さんが演じるキャラクターはどういう設定なのですか?

東山 北翔さんも今までにやったことがない役柄とおっしゃっていますが、僕もある意味やったことがないかな。一攫千金を狙う作戦計画の首謀者、リーダーみたいな役です……いや、どこかでやっているかも知れないけど(笑)。登場人物それぞれが、やりたいことや夢、目的があって集まっているんです。僕もそうだし、みっちゃん(北翔の愛称)もそうで。そのなかでテーマが裏切りや嫉妬という真面目なものなので新鮮ですね。みっちゃんとはこれまで二回共演させていただいているのですが、コンサートと『CLUB SEVEN 』という、ちょっとあっちの方だったので。

北翔 あっちの方ってなんですか?(笑)それじゃあ今までが真面目じゃなかったみたい!(笑)

東山 いや、だって特殊っていうか(笑)『CLUB SEVEN』って唯一無二の作品だから(笑)、こうやって真面目にお芝居をして、一緒に踊る場面もたくさんあるのが新鮮なんです。きっと観ている方にも新鮮に感じていただけると思います。

僕達二人の場面は色っぽい感じになる

──ご一緒の場面もたくさんあるということでさらに楽しみですが、そんなお二人がお互いに感じている魅力を教えてください。

東山 色々な機会に何回も言っていますが、みっちゃんはなんでもできるし、実年齢は僕の方が上なのですが、醸し出される雰囲気がお姉さんで、ご一緒していてホッとさせてくださる方です。やはり宝塚歌劇団で組を率いてこられた経験もおありなので、本当にオーラが大きいんです。歌も踊りも芝居も全てできるし、明るいし。そのなかで今回の役が、夜の世界にいる、ビジュアル撮影の衣裳のようにバイオレットなイメージなので、どうなっていくのかが楽しみです。僕はどちらかと言うと夜のイメージが強いと言われるので(笑)、僕達二人の場面は色っぽい感じになると思いますよ。他のメンバーは、キャッキャッ言って楽しそうにやっていますけどね(笑)。それら全てを含めて、北翔さんは今回の「『夜想曲』チーム」の太陽のような存在です。

北翔 私は東山さんと初めて共演させていただいた時に、振り覚えも台本を覚えるのも、すごく早くて、どんどん進化していかれるのに驚いて、共演者としては「ちょっと待って下さい!」という感じでした(笑)。お稽古場でもそうですし、舞台に上がってからも進化が止まらなくて、しかもそれがとても面白い方向に行くこともありますし(笑)その意味では、しっかりついていかないと置いていかれてしまう恐怖心もあります。ですから東山さんからは常に勉強させていただいているという印象が強いです。それから今回の公演はD☆Dさんに加えてゲストの方がたくさんいらして、それぞれのジャンルで一流の、秀でたものをお持ちの方々ばかりなので、自分がやったことのないものにもたくさん取り組めているので楽しいです。踊りもそうですし、お芝居もそうです。挑戦できる現場って怖くもあるのですが、その分出来上がったときの達成感も大きいですし、新しい引き出しもできたと思えて、毎日稽古場に来るのが楽しいです。

皆が一番良いものを作ろうという姿勢でいる

──東山さんからご覧になった今回の座組の方々はいかがですか?

東山 全員あまりにも知っている顔ぶればかりなので(笑)本当に「『夜想曲』チーム」という感じなんですが、特にD☆Dのメンバーに関して言うと、今年はHomer、(新開)理雄、(廣瀬)真平が入ってから初めての、メンバー7人だけのゲストなしの公演を7月にしました。その後9月にダンスだけのショーケースをやって、次が今回という、同じ博品館さんで全く違う三作品をやらせていただけて。そのなかで、自分たちでひとつの舞台を作りあげていく責任感をそれぞれが感じて、7月、9月、そしてこの12月の流れで成長できていると思います。素晴らしいゲストの方のお力もお借りして作るのが、彼らの中でも楽しいようですね。「絶対に明日までにこの歌詞をあげてこい!」など、檄を飛ばすこともありますが、終電ギリギリまで粘ってやっている。そうやって彼らが役者としても挑戦しつつ、作品に血肉を加えていく作業にも取り組んできているので、僕も楽しみにしています。僕が来年はコロナ禍で一度中止になった『ミス・サイゴン』に出演させていただくこともあって、必ずしも2022年はD☆Dのメンバーと全てを一緒に作っていかれるスケジュールではないので、その為にも7月9月、そして今回の12月の公演がちゃんとできれば、僕がいない間もちゃんとメンバーだけで様々なことがやれるという形ができてくるんじゃないかなと思っています。

──北翔さんからご覧になったD☆Dメンバーの印象はどうですか?

北翔 笑いの絶えない稽古場なんです!

東山 おそらく今までみっちゃんが出会ったことのない珍獣たちでしょう?(爆笑)。毎日可笑しいことが2、3回起こるんですが、僕たちにとっては普通なんだけど、みっちゃんの周りにはいないタイプの人ばかりだと思う(笑)。

北翔 (笑)そういう意味では本当に楽しい現場でもありますが、それぞれのパフォーマンスを、目の前で見せてもらえるのはファンのひとりとしてもすごく刺激的です。何よりも先ほどおっしゃったように、例えば私が1番最初に登場するところの振りは中塚(皓平)さんがつけてくださって、そこからみんなで踊るところはHomerさんが振り付けてくださり、私が歌う歌詞は咲山(類)さんが書いてくださる。出演者の方々みんなが生みの苦しみを味わって、例えばこの歌詞をつけるのにどれだけの時間を費やして考えてくださったんだろうと、そういう気持ちを思うと、一つひとつを大事に表現したいなと思います。歌も踊りももちろん芝居も、共演者の方達が、この作品を愛して作り上げたというものに対して、自分もそれにちゃんと応えられるようにしていきたいと思います。それだけ皆さん本当に一生懸命作ってくださるので。もちろん、スタッフの先生方に歌や踊りをつけていただく時にも心から感謝していますけれども、一方で、外部の方に頼むのではなく、自分たちで考えてみようという今回の形には、一緒に出ていて愛情をたくさん感じます。

東山 そう言っていただけるのは嬉しいですし、歌詞なども「先生」はいないから、これはこっちの方がいいというような提案をしていただくのも大歓迎です。そうやって一緒につくっていけたら、D☆Dのオリジナルの強みが出るかなと。メンバーも、お馴染みのゲストの方達ともいつもそうやって作ってきているので、今回みっちゃんにも、どんどん意見を出してもらいたいです。

北翔 だから例えばさっきお話した初登場のシーンも、1回振りがついたあとで「やっぱり北翔さんだったらこっちの方がかっこいいかな」と、変えてくださったりもしていて。皆さんが役者のことを考えて、1番いいもの作ろう!という姿勢でいてくださることが嬉しいです。

──ますます本番の舞台への期待が高まりますが、では見どころポイントと一緒に、楽しみにされている方達にメッセージをお願いします。

北翔 皆さんがあてがきなので、それぞれが面白いですし、かっこいい、痺れる芝居になっています。その中でも私は、オープニングにそれぞれの得意ジャンルを披露して登場する場面が好きです。バレエの方、タップの方、ヒップホップの方と、びっくり箱を開けたようなオープニングを見た時に、ファン目線でうわっと思ったので、私はいまの時点ではオープニングがおススメです。今回私自身もそうですけれども、出演者皆で作った、新しく挑戦する作品でもありますし、妥協せずに作り上げた、本当に皆様に喜んでいただける作品になると思います。これは是非見逃さないで欲しいなと思いますね。これまで応援してくださっているファンの方にも、今までにない北翔海莉を見ていただけると思いますので、是非楽しみにしていてください!

東山 見どころは全部という気持ちですが、特にと言うことであれば「SHOW ACT」ってなんだろう?と手探りで作っていること、そのものかなと思います。観終わったあとに「いまお芝居を観たのかな?ショーを観たのかな?」ですとか、「あの人すごく面白かったけど、すごくカッコ良かったね」など、色々な感覚で捉えていただける作品になっていて。もちろんそれぞれの役柄を通して共感していただけるものもあって、北翔さん演じるミステリアスな歌姫は実はどういう存在だったのか?や、裏切りがテーマのひとつだけれども、例えば僕の役は何を裏切ったのか?など、色々な解釈をしていただける作品です。ご覧になった方それぞれによって、きっと見え方も変わってくると思うので、色々な楽しみ方をしていただけたら。終わってから「ここが好きだった」「ここはこう思った」という話を、仲間同士でしていただける物語だと思います。特に、今回こうして改めてゲストとして北翔さんとご一緒させていただいて、楽しいし、挑戦している姿がなんて素敵なんだろうと、再確認できました。当たり前だったことが当たり前でなくなって1年半、僕自身もそうですし、メンバーもみんな、公演ができるということの全てに感謝していますし、百戦錬磨の北翔さんをはじめ、ゲストの皆さんと新しいものを作り上げるD☆Dと、12月のこの時間を共有していただけらと思っています。

■PROFILE■


ひがしやまよしひさ〇大阪府出身。大学卒業と同時に初舞台。『エリザベート』のトートダンサーで注目を集める。2003年DIAMOND☆DOGSを始動、リーダーとして舞台構成・総合演出も手掛ける。2013年には肉体表現の可能性を追求する新たなるカンパニー「BOLERO」を立ち上げてドラマ性のあるダンスステージを創り上げる等、ジャンルを問わずに活躍している。主な出演作に【舞台】『CLUB SEVEN –ZERO Ⅲ-』『ALTAR BOYZ』『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -シリーズ、『モーツァルト…オレは誰だ!!』『ELF The Musical』、『ODYSSEY』ミュージカル『イヴ・サンローラン』『DRAMATIC MUSICAL COLLECTION 2018』『戯伝写楽2018』『サロメ』『エジソン最後の発明』『レ・ミゼラブル』等。

ほくしょうかいり〇千葉県出身。1998年宝塚歌劇団に入団。宙組、月組、専科を経て15年に星組トップに就任。16年11月『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』で退団。17年9月のミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』で主演、女優活動をスタート。主な出演作に「~薔薇に魅せられた王妃~ 現代能『マリー・アントワネット』」、「藤間勘十郎文芸シリーズ其ノ参『恐怖時代』『多神教』」『藤間勘十郎文芸シリーズ其ノ四 怪談牡丹燈籠』『蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』『海の上のピアニスト』『ミュージカル ふたり阿国』『I Love Musical』『CLUB SEVEN ZEROII』音楽劇『ハムレット』等がある。

【公演情報】
『夜想曲─ノクターン─』
脚本・演出◇宇治川まさなり
音楽◇la malinconica
振付◇港ゆりか 木野村温子 Homer D☆D
出演◇東山義久 北翔海莉
DIAMOND☆DOGS[中塚皓平 和田泰右 咲山類 廣瀬真平 新開理雄 Homer]
川原一馬 長澤風海 小寺利光 若松渓太
●12/5~12◎博品館劇場
〈料金〉9,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03‐3571‐1003
〈劇場公式サイト〉http://www.hakuhinkan.co.jp/theater/?post_type=event

【アフタートークショースケジュール】
・12/6 18:30公演終演後
DIAMOND☆DOGS
・12/7 18:30公演終演後
東山義久 北翔海莉/宇治川まさなり MC:中塚皓平
・12/9 18:30公演終演後
川原一馬 長澤風海 小寺利光 若松渓太 MC:和田泰右

【ライブ配信情報】
12/8 18:30~(14日23:59までアーカイブ付)
12/12 14:00~(18日23:59までアーカイブ付)
〈視聴券料金〉各公演4,000円(税込)
販売サイト:https://eplus.jp/nocturne/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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