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福士誠治演出、笑いと人情と仕掛け満載な忍者コメディ『葉隠れ旅館物語』上演中! 

プリエールプロデュースによる『葉隠れ旅館物語』が11月10日から池袋のあうるすぽっとで上演中だ。(17日まで。)

演出は人気俳優の福士誠治。その活躍は俳優だけにとどまらず、舞台の演出や音楽活動(バンド「MISSION」のボーカリスト)など、多岐にわたっている。とくに舞台の演出については、近年精力的に行っていて、少年のような無邪気さを併せ持つ彼のセンスで今回も楽しい舞台に仕上がっている。

脚本は、「ふくふくや」と「ゴツプロ!」の脚本・演出として知られる竹田新(俳優としての活動名は山野海)。人情あふれる物語の書き手として外部プロデュース公演やドラマの脚本、小説執筆などでも活躍している。

今回の『葉隠れ旅館物語』は、忍者の子孫が経営する古い旅館を舞台に繰り広げられる人情喜劇で、笑いあり涙ありのストーリー展開とともに、忍者屋敷のような舞台セットを使った忍術や、派手なアクションまで楽しめる娯楽作となっている。

【ものがたり】
古びた「葉隠れ旅館」は、まったく女性にモテない独身兄弟二人で切り盛りしている。彼らは実は伊賀忍者の末裔で、活躍の場がなくなった令和の現代では、すっかり平和ボケしていた。
そこへある日、美しい女性がやってきて、しばらく滞在したいと言う。どうやら叔母とその息子に追われているようだ。訳ありで儚げな佇まいに心を射抜かれた男たちは、何とか力になって彼女のハートを射止めたいと躍起になるが────。

舞台上には一見普通の古い旅館の座敷が建て込まれている。そこでゴロゴロしている野田喜一郎(駿河太郎)はこの家の長男だが、あまり旅館の仕事には興味がなさそうだ。一方、兄とは対照的に弟・千二郎(渡辺裕太)は、久しぶりに宿泊の予約が入ったことでいそいそと掃除に励んでいる。そんな弟にちょっかいをだして遊ぶ兄。どこかゆるーい兄弟のやりとりの中で、この旅館がいまにも潰れそうなほど寂れていることや、彼らが伊賀忍者の末裔であること、だが忍術は困っている人を助けるためにしか使えないことなどが分かってくる。

そこに兄弟の祖父・野田弥太郎(渡辺哲)や、喜一郎の幼なじみで大地主の息子・井坂重之助(村上航)が加わり、たわいのない話で盛り上がっているところに、予約客である久世苑子(岡本玲)がやってくる。若く美しい女性の長期滞在とあって、兄弟のみならず祖父や重之助までそわそわしはじめ、場は一気に活気づく。さらにそこに人探しをしているという上品な中年女性・北川佳乃(増子倭文江)と、その息子・道助(深澤大河)が訪れたことで、物語は波乱含みの様相を呈していく。

なんといってもこの作品の面白さは忍者というファクターを現代に持ち込んだことにある。ストーリーの根底にあるのは日本の現代社会を映したシビアな人間ドラマなのだが、忍者や忍術というスパイスのもたらすファンタジー的色合いで、笑いと救いにうまく着地してみせる。なにしろ人の心を読んだり、本音を吐かせたりという忍者のワザが、人助けのために使われるのだから、これはもう見事というしかない。さらに古びた旅館に仕掛けられた忍者屋敷ならではのトリック、たとえば回転戸や隠し扉、滑り棒などが見せ場で活躍、その仕掛けを使いこなしてみせる俳優たちの体を張った演技にも感動させられるのだ。

そんな舞台に出演している俳優たちは、演出の福士誠治自身が俳優ということもあって、1人1人の個性をより膨らませながら生き生きと役に取り組んでいる。

座長でもある駿河太郎は、天然で天真爛漫な喜一郎役を明るさと軽妙さで演じ、同時に長男ならではの責任感や忍者末裔ならではの行動力でカッコ良さも体現、舞台を牽引する。

渡辺裕太は人が良くてしっかり者の弟・千二郎役を、持ち味の素直さを生かしつつ、駿河や渡辺哲や村上航、さらには岡本玲まで加わった暴れキャラたちを相手に、よく拾いながら物語を支える。

弥太郎役の渡辺哲は、孫たちをライバル視するほど気が若くてちょっととぼけた祖父の役をチャーミングに演じ、増子倭文江の佳乃とのデート場面でのダンディぶりも見逃せない。

旅館に勝手に出入りする井坂重之助の村上航は、金持ち息子の嫌味な部分もコメディセンスで笑いに変える自在さで、ひとたび出て来たらその一挙手一投足から目が離せなくなる。

ヒロイン役の岡本玲はこれまでシリアスな役柄が多かったが、この作品でのコメディエンヌぶりは新境地で、振り切った演技を見せてくれる。とくに食事と滑り棒のシーンは必見!

この忍者コメディでまさかその姿を見られるとは思わなかった演技派大女優の増子倭文江。だが第一声の挨拶で客の笑いをしっかり摑み、かつ大詰めではその演技派ぶりを堪能させてくれる。

その息子役の深澤大河は、2.5次元舞台で鍛えた身体能力をフルに生かし、側転や連続回転などアクションで魅了。役柄はマザコンだが心優しい青年で、終盤にその真情を吐露する場面では観客の涙を誘う。

作者の竹田新の「人間はね、大口開けて笑うために この世に生まれてきたの。だから泣いてる暇なんてないの」という言葉通り、物語の隅々にまで笑いが散りばめられ、その笑いのために真剣にパワフルに身を挺する役者たち。その1人1人の魅力を物語の中であまさず照らし出した福士誠治の演出にも拍手を送りたい。

【公演情報】
プリエールプロデュース
『葉隠れ旅館物語』
作:竹田 新
演出:福士誠治
出演:駿河太郎 岡本 玲 渡辺裕太 増子倭文江(青年座) 村上 航(猫のホテル) 深澤大河 渡辺 哲
●11/10~17◎あうるすぽっと
〈料金〉一般/前売6,500円 当日6,800円 22歳以下/前売5,500円 当日5,800円円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
※22歳以下/入場時身分証提示
〈お問い合わせ〉プリエール 03-5942-9025(平日11-18時)
〈公式サイト〉https://priere.jp/performance/2111/

【配信情報】
『葉隠れ旅館物語』
配信チケット:3,500円(税込)
販売期間:販売中~11月23日(金)20:59(Webのみ)
ライブ配信:11月16日(火)14:00
アーカイブ配信:ライブ配信終了後~11月23日(金)23:59
ご利用ガイド:カンフェティストリーミングシアターご利用ガイド https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=63525&

 

【文/榊原和子 写真提供/プリエール】

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