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悲しくも優しく美しい【怪物】の誕生!舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』

主演に元宝塚歌劇団星組の男役スターで、退団後俳優、声優、歌手として大活躍中の七海ひろき、演出に錦織一清の布陣で、不朽の名作を新たな世界観で創造した舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』が、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA での上演を大盛況のうちに終え、1月20日~23日大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで上演される。

舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』は、イギリスの小説家メアリー・シェリーが1818年に匿名で出版した(1831年改訂版出版)ゴシック小説『フランケンシュタイン』を基に、岡本貴也が書き下ろした新作舞台。七海ひろきが演じるからこその「麗しい怪物」が愛を知り、家族を求める姿が切なくも美しく描かれてゆく。

【STORY】
19世紀、欧州。若き科学者ビクター・フランケンシュタイン(岐洲匠)は、科学の力で死体を蘇らせる禁忌の実験に熱中し、遂に【怪物】(七海ひろき)を誕生させる。だが【怪物】は、生まれたばかりの赤ん坊同然でありながら、ビクターの手には負えない怪力を持ち、意思の疎通がはかれないままに、街へと彷徨い出る。

【怪物】は街でも自己コントロールができない力の為に、人々から疎外されるが、たまたまその場に来合わせた盲目の娘・アガサ(彩凪翔)から、温かい言葉をかけられる。【怪物】の姿が見えない故に彼を恐れず、食べ物を分け与え、友人として接してくれるアガサの住まいに近い、森の奥深くに隠れ潜んだ【怪物】は、アガサとの会話や借りた書物から、尋常ならざるスピードで言語や知性を習得していく。やがて豊かな感情も芽生えた【怪物】は、家族を欲し、自分の【父】であるビクターに会いたいと願うが、その純粋な心とは裏腹に、ビクターの婚約者リズ(横山結衣)、弟のウィル(佐藤信彦)、召使いのジャスティーヌ(北村由海)、アガサの兄フェリクス(蒼木陣)、祖父ラセー(永田耕一)等、関わる人々それぞれの想いのなかで、運命を流転させてゆき……

今なお多くの創作物が生まれ続けている『フランケンシュタイン』のイメージを決定的に固めたのは、1931年にユニバーサル・ピクチャーズが製作した映画『フランケンシュタイン』の存在だった。この映画で描かれた【怪物】は、いくつもの死体から生み出されたことを表す縫い目が全身にあり、角形の顔をした大男で、このビジュアルが現在も「フランケンシュタイン」という怪物を象徴したものになっている。だが、元々原作で描かれた名もなき【怪物】は、容姿こそ正視しがたい「怪物」と呼ぶしかないものだったが、非常に高い知能を持ち、僅かの間に言葉を習得し、人の心と感情も持ち合わせているという設定だった。何より「フランケンシュタイン」は、彼を創造した研究者の名で、正しくは「フランケンシュタインが創った怪物」であり、怪物=フランケンシュタインという、一般的に広く伝わっている呼称からして、誤解からはじまったものだった。

このあたりは、近年日本でも上演されカルトな人気を博した韓国ミュージカル『フランケンシュタイン』がぐっと原典に近づけたストーリーを展開しているが、今回の舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』は、更に原典がそもそも描いた、容貌によって迫害を受け創造主に恨みを抱くに至る【怪物】を、家族の営みに憧れ、その美しさのなかに自らも心を通わせたいと願う孤独な魂として描いたことに新鮮さがある。

この七海ひろき主演で『フランケンシュタイン』を、という企画に打ってつけの岡本貴也の着眼点が生き、どんな作品にもエンターティメントの真髄を吹き込むことに腐心する錦織一清の演出があいまって紡がれた、濃密で切なくも美しい舞台には、舞台面の大きさ以上に奥行感じさせる美術(乘峯雅寛)照明(米澤正直)らのスタッフワークも功を奏し、大きな見応えがあった。特に、疎外される者と忌避する者、愛情と憎しみなど相反するものが、数珠つなぎになって展開していくドラマには、不思議なほど変わらない人の心に棲む好悪の普遍性があって、それが一見奇想天外な設定の登場人物たちに、親和性を感じさせる力になった。

この世界観の中心をなした七海ひろきが、【怪物】に儚さも感じさせた印象的なポスタービジュアルそのままに美しく舞台に登場。声の発し方もわからない生まれたての状態から、言葉を覚え感情豊かに成長していく、人であれば赤子から幼児、少年、青年と姿形が変わっていく成長過程を、声の出し方、姿勢、立ち居振る舞いだけで巧みに表していく表現力が光る。これは宝塚退団後声の仕事も積極的に展開している七海の経験値あってこそのことだし、外見の異形を最小限の表現にとどめてなお、人から忌避される哀しみとそれ故の感情の波に説得力を与えたのは、「七海ひろき」というジャンルとも呼びたい、独自の表現活動を展開してきた強みに他ならない。今後もどんな活動をしていってくれるのかに改めて期待が高まる主演ぶりだった。

【怪物】の創造主である若き科学者ビクター・フランケンシュタインの岐洲匠は、舞台・映像と大きな出演作が続く人だが、彼が何故死から生を生み出そうとするのか、神の領域に手を染めようとしたその理由が明確に描かれている脚本が生きて、狂気に取りつかれた所謂単純なマッド・サイエンティストではないところに、岐洲の資質がよく合っている。信念と禁忌の間で揺れる心がにじむ演じぶりも堂に入っていて、たった一人で舞台に位置する時間も長い作品をよく支えていた。

【怪物】と心を通わせる盲目の娘アガサの彩凪翔は、元宝塚歌劇団雪組で活躍した男役スターで、今回の舞台が退団後初の本格的な芝居ものの舞台になったが、宝塚時代にもまずその美貌で注目を集めた人らしく、舞台に出てきた瞬間にパッと場が華やぐ存在感が光る。宝塚時代に女性役も、また目が不自由という役柄の経験もあるだけに、演技も実に自然で、視覚情報に惑わされないからこそ、真実をそのまま見抜いている役柄の穏やかさが、【怪物】の憧れの象徴に相応しかった。

更に、全員で8名というカンパニーが、多彩な役どころを演じ分けているのも見どころで、この地区の判事とアガサの兄フェリクスを演じる蒼木陣は、ビジュアルを大きく作り込んでいないなかでも、表情や立ち姿で二役の違いを実にクッキリと見せた力量が光るし、ビクターの弟ウィル他多くの役を演じる佐藤信⻑も、そもそもこのドラマを動かした重要人物であり、ビクターが何故神の領域に踏み込もうとしたか?のキーマンであるウィル役を、あざとさのない演技で披露してドラマに大きく寄与した。

ビクターの婚約者リズと、アガサの兄フェリクスの新妻サフィを演じる横山結衣も、AKB48卒業後、この舞台が初の本格的な芝居ものとなったが、こちらも大変大きな鍵を握っているリズ役はもちろん、サフィ役にも【怪物】が言葉を覚えていく過程に、無理のない説得力を与える役割りを果たしていて、愛くるしいとも言いたい容貌のなかにある役者魂を感じさせた。フランケンシュタイン家に仕える召使いジャスティーヌの北村由海が、良い意味の下世話さを持った普通の人を表現したのがドラマ展開に欠かせないポイントになったし、アガサの祖父ラセーをはじめ、四役を務める永田耕一が、様々な階級、立場の人々が生きているという、作品世界の厚みを加える存在になっている。

総じて怒涛の展開のなかに、観劇後にこんな気持ちになる『フランケンシュタイン』ものにはじめて出会えたと思える作品で、配信及びBlu-ray化も決定したこの舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』の魅力を、是非多くの人に知って欲しい一篇になっている。

【公演情報】
舞台『フランケンシュタイン─cry for the moon─』
原作:『フランケンシュタイン』( シェリー作 小林章夫訳 光文社古典新訳文庫刊 )
演出:錦織一清
脚本:岡本貴也
出演:七海ひろき 岐洲匠 彩凪翔
蒼木陣  佐藤信⻑ 横山結衣 北村由海
永田耕一
●1/7~16◎東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(※公演終了)
●1/20~23◎大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
〈料金〉10,000円(前売・当日共/全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション0570-200-888(11:00~16:00日祝除く)
〈公式サイト〉https://stage-frankenstein.com/#top

【LIVE配信情報】
SPWNにて東京公演千穐楽、大阪公演大千穐楽を含む全4公演ライブ配信(配信終了後も各公演日から1週間アーカイブ配信付
〈チケット料金〉3,800円(税込)
アーカイブ視聴期間:各回の公演終了後22:00~1週間後の23:59まで
■配信日時
1月16日(日)13:00公演 ★七海ひろきメイン特別スイッチングDAY
1月16日(日)18:00公演
1月23日(日)12:00公演 ★彩凪翔メイン特別スイッチングDAY
1月23日(日)17:00公演
〈購入詳細〉https://stage-frankenstein.spwn.jp/events/220107-23-stage-frankenstein

【Blu-ray発売情報】
劇場または公式通販サイトでの予約販売。
〈販売価格〉9,800円(税込)+送料・手数料
〈収録内容〉本編+特典映像(メイキング映像を予定)
〈発売日〉2022年7月予定 ※詳細要公式サイト確認

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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