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永遠の「未完成」DIAMOND☆DOGS結成20周年記念公演『Le Pont de l’Espoir』上演中!

パフォーマンス集団として進化を続けるDIAMOND☆DOGS(以下D☆D)が、結成から20周年を迎えた記念公演『DIAMOND☆DOGS 20th Anniversary Le Pont de l’Espoir ル・ポン・ド・レスポワール』が、銀座博品館劇場で上演中だ(5日まで)。

ダンサー5名、ボーカル2名のユニットとして、ところも同じ博品館劇場でD☆Dが誕生したのは2003年春。不動のリーダー東山義久が、東宝版『エリザベート』のトートダンサーで一躍注目を集めていたなか、ダンサー、シンガーという括りではなく、あらゆるチャレンジをしながら、アーティストとして進んでいく道を目指して始動したD☆D。公演タイトルはまさに彼らそのものの『未完成』。DIAMONDの原石たちが、互いにぶつかりあい、磨きあいながら至高のDIAMONDを目指していく、今日に至る歩みのはじまりだった。

そこから20年。D☆Dの一員として活動したメンバーは17名に及ぶ。関わった長さはそれぞれだが、その誰が欠けても成立しなかったD☆D20年の軌跡が、今回の記念公演に凝縮されていた。

SHOW.1はこの公演タイトルが冠された新たなオープニング「Le Pont de l’Espoir 」からD☆Dはじまりの「未完成」へと遡っていく構成。ある時期から、ダンサー5名、ボーカル2名という括りが合わなくなってきたと感じさせた、ダンサーも歌い、シンガーも踊るという、常に表現の幅を広げてきたD☆Dは、各自の得意とするダンスジャンルという意味でも、互いが互いの領域を吸収して、進化してきたことが見えてくる。それは、こうして歴史を振り返りつつ、新たなアレンジや振付を取り入れていく構成からも明らかで、かつて「ひと言の台詞もないけれど、誰にでもストーリーが伝わるバレエ『白鳥の湖』のような舞台を創ることが理想」という趣旨の思いを語っていた森新吾の存在を強く感じる「Swan jazz」など、クラシックの名曲を使用することも多いD☆Dの、レパートリーの多彩さが弾けるナンバーが続く。

特に、充電期間を経て「D☆D第二章」として始動した2019年加入のメンバー廣瀬真平、新開理雄、Homer の個性がD☆Dに与えた新たな輝きも堪能させつつ、最早D☆Dにいないことがちょっと想像できない中塚皓平、和田泰右、咲山類が、踊り、歌い、新境地も拓くなか、20年の歴史の体現者東山を筆頭に、いまのメンバーで創る「未完成」がむしろ新鮮なことに胸打たれる時間だった。

続く、SHOW.2は「Valentine SHOW」シリーズですっかりおなじみの、LIVE形式で怒涛の楽曲が続いていく。何しろ20年の歴史が集まっているから、この楽曲ははじめてという観客も必ずいることだろうが、おいてきぼり感がまるでない。つまり、「みんな、ついてこいよ!」ではなく、「みんな、一緒に楽しもう!」のショーアップも手放さないのが、D☆Dのライブパフォーマンスの醍醐味。D☆Dのボーカル面を長年支え、コンポーザーとしていまも楽曲を提供し続けているTAKAの新曲を、初期メンバーの大村俊介[SHUN]が振り付けるという祝祭の時ならではの趣向もあり、博品館のボルテージはいや増しになった。

東山義久

そんななかで、D☆Dのセンターを担い続けてきた東山義久が、SHOW.1で芯を取る様々な場面で、自身が大作ミュージカルへの豊富な出演経験を糧に表現力をさらに高めていることはもちろんだが、全員で踊る時、またSHOW.2のLIVEシーンなどで、後列にいる、また最端にいることにも、ある意味違和感がなくなっていることに改めて驚かされた。D☆Dの歴史のなかで東山はこれまでにも何度となくこうしたフォーメーションを取ってきたが、ダブルを回っただけで視線を釘付けにするダンス力と、持ち前のスター性でそうした位置取りが如何にも座りが悪く感じられることも実はあったものだ。だが他のメンバーたちの成長と東山自身が深めていった連帯が、「全員がプリンシパルであり、全員がアンサンブルである」というD☆Dの理念を、この20周年の節目に実現している様には、ひと口に感慨という言葉だけでは足りない思いがした。おそらくこれからD☆Dは、そして東山義久というパフォーマーは、より大きな可能性を手にいれるだろう、そう確信させる舞台だった。

中塚皓平

背中に翼を隠し持っている跳躍力の持ち主中塚皓平は、近年D☆D全体の構成を見る立場になり、振付家としても活動の幅を広げていることで、己の個性をより見極められる客観性を持ちえたのだと感じさせる出方や、例えば基本的には全員が同じ振付のなかでも、見せ方が際立ってノーブルになっている。コント場面でオチを担うことの多い人だが、それは所謂「ギャップ」の面白さであって、あくまでも本人の資質のなかにプリンスチャーミングの香りがあり、それを押し出すことに躊躇がなくなったことが、D☆Dのパフォーマンスそのものの幅を広げて頼もしい。

和田泰右

一方、D☆D筆頭の元気印、和田泰右は、得意のヒップホップ系のダンスの魅力はそのままに、新たな静けさや、美しくしなやかなダンスシーンも手中に収めていて、発表当時非常に新鮮だった「Rain」をより深化させたのをはじめ、様々なナンバーでも多彩な表情を見せてくれるようになった。長くD☆Dの末っ子の位置にいて、やんちゃな面や、いたずらっ子ぶりを発揮していたが、それはメンバーのなかでの立ち位置、自分の役割りや居場所をきちんと察知しているクレバーさ故で、兄貴分になったいまは、その心身両面の回転の速さが新たな魅力を生んで、D☆D20年の進化を体現している。

咲山類

D☆D筆頭のボーカリスト咲山類は、本来得意としていたクラシック系の歌唱から、ミュージカル、ポップス、オリジナルと、年年歳歳どんなジャンルでも歌いこなすスーパーボーカリストへ変貌を遂げて、D☆D歌唱面の屋台骨を支えている。加入当時は、歩くだけでも精一杯という感覚があったことは最早伝説と言ってよく、今や軽やかにダンスシーンにも加わり、そのリズミカルな動きがまた歌唱面にも良い影響を与えているのだろう。今回D☆Dと言えばの佳曲「Swallows」も朗々と、だけではなく感情表現豊かに聞かせ、これはSHOW.1のエポックメイキングのひとつ。忘れられない歌声になった。

廣瀬真平

前述した跳躍力=中塚皓平という、D☆Dのセオリーをある意味打ち破った、もう1人の背中に翼を持つ人材、廣瀬真平は、その滞空時間の長さと共に、近年は歌唱面の才能も発揮して、「いまのD☆D」を形成する力になっている。元々ミュージカル経験の豊富な人だし、言動にコケティッシュさがある個性が、舞台姿にも色濃く表れるようになっていて、役を演じているのではなく、廣瀬真平として踊り歌う姿の魅力が増しているのが嬉しい。

新開理雄

ボーカルだけでなく、近年の舞台ではダンサー枠も果敢にこなしている新開理雄は、キュートな容姿とひたむきさで、どちらかと言うと「攻めていく」傾向が強かったD☆Dに癒しの風をもたらした。何より非常に無垢な歌声が独特で、ふとした瞬間に「可憐」という言葉が浮かぶほどの存在感にあざとさがない個性が、美的センスも含めてD☆Dに新たな立ち位置を築いている。

Homer

そして、D☆D加入後、最も大きな進化と深化を遂げたHomerは、数々の振付や、得意のアクロバティックなダンスだけでなく、芝居に歌にとひょっとしたら本人も気づいていなかったのかもしれない才能を開花させていて、公演ごとに目を瞠る変貌ぶりで惹きつける。ダンスの表現も劇的に深めたし、何よりD☆Dのメンバーでいることが、楽しくて仕方がないという高揚が一挙手一投足からこぼれ出て、観ている側にも幸福感を振りまいてくれる存在が眩しい。

そんな7人のメンバーが、踊り歌い続ける場面構成の多彩さだけでなく、同じ動きから、各々の短いソロパートを挟む曲、またほんの一瞬ポーズをキメていく様にも、それぞれの個性が煌めいている。この一人ひとりが個々に立っていつつ、きちんとD☆Dという集団でもあるのが、D☆DのD☆Dたるゆえん。東山光明、大村俊介[SHUN]、小寺利光のOBたちも駆けつけるこの20周年記念公演を、そんな祝祭のしつらえとは異なり集大成と感じさせないのは、彼らひとり一人の伸びしろが豊かに広がっているからこそだろう。この公演のあとリフレッシュ期間に入り、各々が様々な場所で新しいものを得る旅に飛び出していくD☆D。再会を約束しての旅だというその期間のあと、D☆Dはまたどんな姿で、どんな舞台を見せてくれるのか。そんな永遠の「未完成」を貫くD☆Dのいまを、是非多くの人に体感して欲しいし、ここからはじまる新たなD☆Dの世界にも期待している。

【公演情報】
DIAMOND☆DOGS 20th Anniversary
『Le Pont de l’Espoir』(ル・ポン・ド・レスポワール)
構成・演出・振付:D☆D
音楽:NASA/TAKA/la malinconica
振付:大村俊介〔SHUN〕/木野村温子
トータルアドバイザー:宗田梁市
出演:
DIAMOND☆DOGS
東山義久
中塚皓平
和田泰右
咲山 類
廣瀬真平
新開理雄
Homer
Musician/Bass蛇石 徹 Drums井上順乃介 Guitar 三輪達宏 Keyboard 吉田 蒼
●6/28~7/5◎博品館劇場
*開場は開演 45 分前
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
〈チケット〉博品館劇場 OnlineShop https://theater-hhk.shop-pro.jp
博品館 1F TICKET PARK 03-3571-1003
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003
〈公式サイト〉https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/pr_2023_06_28

【アフターイベント情報】
※ゲストの出演は、アフターイベントのみ。当日の公演チケットの座席で終演後観覧可能。
6月28日 (水)18:30  ゲスト:大村俊介〔SHUN〕 出演:DIAMOND☆DOGS
6月29日 (木)18:30  ゲスト:小寺利光 出演:東山義久・中塚皓平・和田泰右・咲山 類
6月30日(木)18:30  ゲスト:小寺利光 出演:和田泰右・廣瀬真平・新開理雄・Homer
※以上終了**********************************************************************
7月1日 (土)13:00  ゲスト:東山光明 出演:東山義久
7月1日 (土)17:30  ゲスト:東山光明 出演:東山義久・咲山 類
7月2日 (日)13:00  出演:東山義久・中塚皓平 和田泰右・咲山 類
7月3日 (月)18:30  ゲスト:東山光明・大村俊介〔SHUN〕・小寺利光 出演:東山義久・中塚皓平・和田泰右・咲山 類
7月4日 (火)14:00  出演:DIAMOND☆DOGS
7月4日 (火)18:30  ゲスト:大村俊介〔SHUN〕 出演:東山義久 MC中塚皓平
7月5日 (水)14:00  スペシャルカーテンコール 出演:DIAMOND☆DOGS

【ライブ配信情報】
ライブ配信時間:7月5日(水)14:00~
※ 途中から視聴した場合はその時点からのライブ配信となり、生配信中は巻き戻再生不可。
視聴可能期間:7月5日(水)14:00公演 ~7月11日(火)23:59
※ 配信終了後、7月11日(火)23:59までアーカイブ視聴可能。(システムメンテナンス・7月6日(木)AM2:00~8:00除く)
視聴券料金:4,000円(税込)
販売サイト:https://eplus.jp/dd20th_espoir/
販売期間: 6月28日(水)17:00~7月11日(火)21:00まで
※アーカイブ最終日の1日前、7月10日(月)より支払方法クレジットカード限定。

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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