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「想像を超えるペアに」東啓介×青野紗穂 New Musical『Color of Life』稽古レポート

脚本・作詞・演出 石丸さち子×作曲・編曲 伊藤靖浩、出演 東啓介×青野紗穂のNew Musical『Color of Life』が5月1日~27日、DDD青山クロスシアターで上演される。この公演の稽古場へ取材で入る機会を得た。

本作は、ニューヨークのオフ・オフ・ブロードウェイ演劇祭「Midtown International Theatre Festival」で2013年に初演され、最優秀ミュージカル作品賞、最優秀ミュージカル演出賞、最優秀作詞・作曲賞、最優秀ミュージカル主演女優賞という4部門を受賞した二人ミュージカル。日本では2016 年に初演され、今回は日本で3度目の上演となる。

和也役を務める東は舞台『刀剣乱舞』などの2.5次元作品から、舞台「命売ります」などのストレートプレイ、ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』まで幅広く出演する注目の若手俳優。レイチェル役を務める青野はニューヨークアポロ・シアターの「Stars of Tomorrow」で優勝を果たすほどの実力を持つ歌手であると同時に、音楽劇『人魚姫』やミュージカル『RENT』などのミュージカル作品に出演する若手女優。

この日、取材時は冒頭シーンの稽古が行われていた。東演じる和也は大震災を機に画題を見失ってしまった画家。青野演じるレイチェルは心から愛した同性の恋人を亡くしたばかりの女優。これから出会うふたりが、それぞれ違う楽曲で自らの「今」を歌う場面だ。ここで石丸がふたりと話したのは、歌詞一行一行の持つ意味。例えばそれは自分に対しての言葉なのか、世間に対しての言葉なのか。「生み出せない」という言葉が意味するのは諦めなのか「生み出したい」という気持ちなのか。そういった繊細なニュアンスを丁寧に説明し共有していく。さらに歌唱中の、例えば足の踏み出し方や手の動きなども、「そうすると、このための振付に見える」などと指摘し、大切に大切につくりあげていく。

印象的だったのは、恋人を病気で失ったレイチェルが一人ぼっちの部屋で「♪目を開ければあなたはそこにいない」と歌う歌詞に対し、石丸がつけた「語尾をサーチライトのようにして恋人を探して」という演出。青野は頷き、次の歌唱でもうそのニュアンスが伝わりだす。その歌、その姿には、自分が大切な存在を失ったときの記憶が呼び起こされ、心が痛くなった。

また、東が歌う表題曲「カラー・オブ・ライフ」(https://www.youtube.com/watch?v=eBFFewdNJWM)は、一曲の中でメロディも色とりどり、描かれる感情も色とりどりと、かなり難しいことをやっているのがわかる。石丸からは「そこにある感情が“ひとつ”に見えないようにしたい」という演出が入り、東も表現しようとトライする。最後に紹介する東のコメントにもあるが、求められることのハードルが高い。しかしそこに真っ直ぐ向き合う東そして青野の姿は、公演への期待を上げるものだ。

稽古はそのまま和也とレイチェルが飛行機で隣り合わせになる出会いのシーンへ。台詞もほぼなく動きだけで見せる場面だ。同じ手続きを踏んで進んでいく空港での行動。幾何学的ともいえる動きなのに、「和也らしさ」「レイチェルらしさ」が滲み出るのがおもしろい。そこに石丸からは「レイチェルは勝気にしとかないと悲しみが襲ってくるよ」「いずれ絵のモデルになることを匂わせて」などの演出がつく。その言葉は、動きそのものではなく空気を導くものだ。

次は、レイチェルと和也がそれぞれ自らのアイデンティティについて歌うシーンへ。レイチェルが歌う「Who Am I? Who are You?」は、日本とアメリカの二重国籍を持つ自分の「どっちでもなさ」や、同性愛者である自分が異性(和也)に惹かれていることへの戸惑い、さまざまな苛立ちが弾けるように表される楽曲。叫び響き渡る青野の歌声が印象的で、けれどレイチェルの持つ強さや明るさも感じられる不思議な魅力を感じる。一方、和也の歌う「絵を描く時に必要なもの」は、レイチェルと出会い再び絵が描けるようになったことを歌う喜びにあふれた楽曲。ふたりの生活から生まれるしあわせが絵につながっている様が、のびのびとやわらかい東の歌や動きで表現される。この楽曲は、歌の中で絵を描き始め、次の瞬間には完成しているという“時間のジャンプ”があるため、石丸からは「描き始めてから完成するまでの間にあるものを予感させてほしい」というリクエストも。歌の中で膨らんでいく時間が空間を満たすようだった。

これまでで最も若いキャストふたりによる新たなNew Musical『Color of Life』。本作としては初の対面客席で、セットも新たなものとなっている。たったふたりのキャストで“boy meets girl”を描くシンプルなミュージカルだが、そのなかで味わえる美しく印象的な音楽や演出、そしてふたりの姿をぜひ劇場で体感してほしい。

【コメント】

東啓介

石丸さんとご一緒させていただくのは4度目なので、求められることのハードルがどんどん上がっていると感じています。そのおかげで新しい自分が見つかるかもしれないな、と感じています。ものすごく繊細なお芝居なので、そう言った部分と、身体を使って大きく見せる部分との差を求められています。青野さんは、すごくレイチェルっぽいんですよね。さち子さんが「私の想像を超えてくれるペアを見つけたい」とおっしゃっていたので、二人で頑張りたいと思っています! 今日稽古場をご覧になってお分かりだと思いますが(笑)歌もお芝居も、今苦しんでお稽古している最中です。是非劇場で、この作品を通して成長した姿をご覧いただきたいですね。

青野紗穂

この作品は一言で言うと出会いの物語だと思っています。なので、稽古場でも、石丸さんに出会った事、東くんに出会った事を、毎回新鮮に感じるようにしています。今はまだ発展途上ですが、自分が自分であり自分でない。時の数える幸せなどを、ご指導していただきながら、レイチェルを探しています。いつもピリッとした緊張感と、そこに生まれる幸せを噛み締めています!

 

【アフタートーク ゲスト】

アフタートークでは、日本初演・再演のキャストである上口耕平をはじめさまざまなゲストが登壇する。

5月3日(金・祝)17:00公演:相葉裕樹

5月4日(土・祝)17:00公演:納谷健

5月9日(木)   19:00公演:上口耕平

5月15日(水)  19:00公演:松岡充

5月17日(金)  19:00公演:三津谷亮

5月22日(水) 19:00公演:三浦涼介

 

【公演情報】

New Musical『Color of Life』

脚本・作詞・演出◇石丸さち子

作曲・編曲◇伊藤靖浩

出演◇東 啓介 青野紗穂

●4/26(プレビュー公演)◎相模女子大学グリーンホール 多目的ホール

●5/1~27◎DDD青山クロスシアター

〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885(平日11:00~18:00)

https://coloroflife.westage.jp/

 

【取材・文/中川實穂】

 

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