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人気コミック初の舞台化!舞台『セトウツミ』開幕!

河原で暇をつぶす二人の高校生男子が過ごす奇妙な時間と友情を描いた舞台『セトウツミ』が、本日5月27日東京芸術劇場 プレイハウスで開幕する(6月4日まで。のち大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで6月9日~11日まで上演)。

舞台『セトウツミ』は、2013年~2017年まで、「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載された此元和津也原作の人気コミック「セトウツミ」初の舞台化作品。2016年に実写映画化、2017年にテレビドラマ化とこれまでにもメディアミックスを展開する人気を博してきたが、今回の舞台化は、眼鏡をかけたクールな風貌で、放課後、塾に通うまでの時間を河原で過ごしている内海想役の牧島輝と、ある事情からサッカー部を退部することになり、河原で暇つぶしをする、お調子者で、ギザギザ髪が特徴の瀬戸小吉役の有澤樟太郎の、若手人気俳優二人が自身で上演を望んだことから企画がスタート。上演台本・演出に、第五十七回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し、演劇集団・円の座付き演出家で劇作家としても高い才能を発揮している内藤裕子。美術に演劇界の巨匠、堀尾幸男を迎えたのをはじめとした強力な布陣で、主演の二人が愛した『セトウツミ』の世界観が生のステージで展開されている。

【STORY】
高校2年生の放課後。サッカー部を辞めて暇な瀬戸小吉(有澤樟太郎)と、塾に行くまでの時間を潰す内海想(牧島輝)。
何故か気の合った二人は、学校では互いに親しく話すこともないまま、この河原でだけ日々延々とハイレベルな無駄話を続けていく。
「この河原でただ喋るだけの青春があってもええんちゃうか」
そんな河原には、瀬戸が片思い中だが、本人は内海が好きなクラスのマドンナ樫村一期(佐藤日向)。瀬戸に猛アプローチをするハツ美(佐藤二役)。センター分けの髪型が特徴で、名前も対照なことから、瀬戸が公平な奴だと言い切る二人の同級生・田中真二(納谷健)。ピエロの格好で河原にいるバルーンアーティストのバルーンさん(岩崎正寛)。河原近くの病院に入院中の車椅子の少女(南沢奈央)などなど、様々な人がやって来ては、また通り過ぎていく。二人にとって暇つぶしのはずだったそんな時間は、やがて何物にも代えがたい大切なものになっていき……。

基本的には舞台に長く伸びる河原で展開されていく物語は、原作コミック通り一つひとつの小さなエピソードが積み重ねられて進んでいく。性格が全く異なるからこそ、気が合うんだろうな、という二人の会話はまさにハイレベルな無駄話で、連なっていく場面、場面はある時は捧腹絶倒だったり、ある時は虚を突かれたり、ある時は妙にシリアスだったりしながらも、シチュエーションコメディの趣で進んでいく。だが、ひとつの言葉、舞台に映し出される1行のSNSが、とても大切なものとしてのちのちに響いていく展開が緻密だ。この、脚本・演出の内藤裕子の優れた構成力には惹きつけられるし、仮に「セトウツミ」という大人気コミックに全く予備知識がないまま客席に座ったとしても、冒頭からわずかに2エピソードいくかいかないかで、主人公の高校生・瀬戸と内海の出会いから、性格、二人の関係性がスーッと理解でき、あとはただただ二人の繰り広げる「河原で喋っているだけの青春」を微笑ましく見ることができるのは、まるでマジックのようだ。しかも、高校時代、もっと言えば本分は学ぶこと、という学生時代が実は人生のなかでそれほど長い期間ではないと気付くのは、ずっと大人になってからのことで、その渦中にいる間には「学校」は世界の全てに他ならない。だから誰もが悩むし、辛いことも多いし「あー青春って眩しい!いまが人生の春!」だなどと、思えている人の方がおそらくずっと少ないだろう。そうしたキラキラ眩しくない青春の切なさと、でもやっぱりこれからなんにでもなれる、何回でもやり直せる若さだけが持っている力が、この河原にはちゃんと充満していて、二人の時にバカバカしさにあふれる会話が愛おしい。様々な画像が、舞台上のあらゆるところに浮かび上がる意外性にあふれた堀尾幸男の美術が、河原しかないはずの舞台を、様々な場所や次元に広げていく様もさすがとしか言いようがない。

そんな河原で暇つぶしをしているW主演の牧島輝と有澤樟太郎が、舞台で生き生きと躍動し、作品の牽引車としての大きな役割りを果たしていく。

言動の全てに頭の良さを感じさせ、どこか世の中を斜めに見ているように映る内海想役の牧島輝は、クッキリと華やかな容姿を眼鏡のなかに封じ込め、淡々とツッコミを続けていく内海をクールに演じて全く嫌味がないのに驚かされる。笑顔を見せる場面の方が少ないなかでも決して無表情ではなく、呆れたり、ちょっといいなと思ったりがよく伝わってくるし、だからこそ時折見せる笑顔には観ている側までが嬉しくなるほど。瀬戸が考えていることの先を読む長台詞も明晰に聞かせて、基本的に少ない動きのなかで役柄を十二分に表現していた。

一方、サッカー部の花形選手だったところから、あるきっかけで退部した瀬戸小吉役の 有澤樟太郎は、言動の全てがストレートな瀬戸の、愛すべきヌケっぷりと相手の感情の機微をくみ取れる優しさのバランスが絶妙。理知的な大人の役柄も立派に演じている有澤が、これぞ高校生男子!とも言いたい、思い込みや天衣無縫さを自然に醸し出している姿に感嘆させられる。これは牧島にも言えることだが、スペクタクルなアクションも楽々とこなせる身体能力で、等身大の高校生を演じるからこその動きの滑らかさも貴重で、こんな友人がいたらいいだろうなと思える瀬戸そのものだった。

何よりも、プライベートでも親しい友人である二人が、コロナ禍において自分たちが発信するなら『セトウツミ』だ、と思ったという、お互いの作品愛が迸っていて、二人が舞台で瀬戸と内海を演じている姿に多幸感があふれるのがそのまま、観ている側にも瀬戸と内海をすんなりと愛せる原動力になり作品の根幹を支えていた。

また、共演者のほとんどが作品のなかで二役を演じているが、その演じ分けがなんとも見事で、知らなければ二役だとは気づかないのでは?とさえ思えるほど。登場する高校生たちのほとんどが彼女に憧れているクラスのマドンナ樫村一期と、瀬戸のことが大好きなハツ美の二役の佐藤日向は、立ち姿や台詞発声が一期とハツ美で全く違い、同じ制服を着たままの二役の困難さを軽々と越えていたし、バルーンさんと内海の父親の二役の岩崎正寛は、舞台に漂う空気感が両役どころでまず完全に異なるという、芝居巧者ぶりを披露。また、車椅子の少女と内海の姉の南沢奈央も、それぞれの役柄と、瀬戸と内海に対するドラマのなかで求められる距離感の取り方が絶妙で、大きな存在感を放っている。

そして、特筆すべきは田中真二の納谷健。センター分けの髪型と、名前の漢字から「こいつは公平な奴だ」と瀬戸に言い切られる田中の、そんなはずないだろう、の部分を伝える大きなエピソードをほぼ一人芝居で的確に表出していて、彼の存在は作品の大きなアクセントになっていた。

全体に、自分ではすっかり大人のつもり。でも心はまだまだ少年の柔らかさが占めている高校生、高校時代に思いを馳せられる作品になっていて、これからの演劇界でますます大きな存在になっていくだろう、牧島輝と有澤樟太郎の「演じたい!」という情熱を受け止め、舞台を作り上げた製作側の心意気にも敬意を表したい。劇場ではもちろん、少人数の舞台だけにおそらくLIVE配信ではまた違う表情が見られるはずの舞台『セトウツミ』を、是非多くの人に体感して欲しい。

初日を前に、キャストたちからのコメントが届いた。

【コメント】
牧島輝
自分のイメージより大きな舞台で上演することになり、驚きと動揺はありましたが、カンパニー全員で仲睦まじく稽古ができたことで今日を迎えられました。長期間稽古が出来たことで、いつもよりセリフが身体に馴染めている印象がありますし、いつもと違ういい形で初日が迎えられるんじゃないかと思います。
河原に二人がいて、二人に関わってくる誰かがいて、そんな景色を見る感覚で舞台を観ることができる、なかなかない舞台になっています。
どこにでもあるような場所ですが、二人にとってはかけがえのない場所ですし、自分にもこんな場所があったなとセットを含めて懐かしんで楽しんでいただけたら嬉しいです。

有澤樟太郎
この作品は僕と輝の二人が「いつか上演したい!」という想いから生まれた舞台です。
瀬戸と内海の掛け合いが主ではありますが、他のキャラクターが出てくることで雰囲気が変わり、またいろいろな空気感を感じられる作品だと思います。二人の掛け合いももちろんですが、登場人物とのやりとりや関係性も楽しめて、そこでさらに瀬戸や内海というキャラクターがより分かると思いますので、是非注目していただきたいです。
大阪が舞台であるこの『セトウツミ』を時間をかけて沢山稽古をしたことで、キャスト全員がどんどん大阪に馴染んでいて、ネイティブ大阪になっていると思います。全国にいるお客様、海外にいるお客様にも是非楽しみにしていただきたいです。

佐藤日向
樫村一期、ハツ美を演じます佐藤日向です。
主演のお二人が立ち上げた企画から始まったこの作品に演者として携わらせていただき、とても嬉しく思います。
稽古を重ねていくうちに難しさを感じつつもキャストの皆様が本当に面白く、
普段の会話から「セトウツミ」を感じていました。
初日の幕が開き、舞台上で皆様の笑い声を聞けるのがとても楽しみです!
東京、大阪、そして名古屋での公演をよろしくお願いします!!

納谷健
『セトウツミ』舞台化の課題と舞台での田中くん達の在り方と向き合った日々がお客様に届く。
……めっちゃ緊張します。それぞれの日常が流れていくようにリラックスして臨みたいです。
微笑ましく見届けていただければ幸いです。

岩崎正寛
「人生は暇つぶし」とも言われますが、内海くんが過ごした高校3年間の暇つぶしの時間を2時間ちょっとで皆様にお届けします。対岸にいる高校生たちの姿をボーッと眺めるような心持ちで一緒にこの河原に腰掛けて下さいませ。思い思い集まっていただいたこの時間が皆様の心に残る壮大な暇つぶしの一つになります様に!

南沢奈央
牧島さんと有澤さんのセトウツミコンビ、控えめに言っても最高です。お二人にしか出来ない、息の合った掛け合いがグルーヴ感を生んでいて、わたしも初めての関西弁でのお芝居でそこに乗っていけることが楽しいです。またここから、お客様に観ていただくことで進化していくと思うので、幕が開けるのが待ち遠しいです!

【公演情報】
舞台『セトウツミ』
原作◇此元和津也『セトウツミ』(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
上演台本・演出◇内藤裕子
出演◇牧島輝 有澤樟太郎/佐藤日向 納谷健 岩崎正寛 南沢奈央
●5/27~6/4◎東京・東京芸術劇場 プレイハウス
〈料金〉S席7,800円、A席5,800円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 0570-077-039(10:00~18:00)
●6/9~11◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉全席指定7,800円
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888 (10:00~18:00)
〈公式HP〉https://www.umegei.com/setoutsumi/

【ライブ配信情報】
配信日程
東京・6月3日18:00公演 <ヴィジュアル撮影風景映像付き>
大阪・6月9日18:00公演 <稽古場風景映像付き>
【アーカイブ視聴可能期間】
各回生配信日から2日後まで視聴可能
※《6月3日18:00公演》ライブ配信終了後、準備が整い次第~ 6月5日23:59まで
※《6月9日18:00公演》ライブ配信終了後、準備が整い次第~ 6月11日23:59まで
【チケット販売期間】
5月27日10:00~アーカイブ終了2時間30分前まで
※《6月3日18:00公演》~ 6月5日21:30まで
※《6月9日18:00公演》~ 6月11日21:30まで
〈料金〉《英語字幕あり、なしを購入時に選択》
視聴券:各4,000 円(税込)https://w.pia.jp/t/setoutsumi/
公演プログラム郵送サービス付き:各6,000円 ※送料別途

©此元和津也(秋田書店)2013

【取材・文・撮影/橘涼香】

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