明治座『大逆転！ 大江戸桜誉賑』荒木宏文インタビュー

観たことのない荒木宏文を観ていただきたい

明治座が本年4月に創業150周年を迎える。その記念公演の１つ、『大逆転！ 大江戸桜誉賑（おおえどさくらかーにばる）』は、松平健、コロッケ、久本雅美、檀れいをはじめとする豪華キャストたちが出演。江戸を舞台に、殿様と傘職人という立場の違う二組の夫婦が入れ替わってドタバタ大騒動を繰り広げる。

そんな華やかでめでたい作品で、明治座に初登場するのが荒木宏文。ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめとする2.5次元舞台からストレートプレイまで幅広く演じ、またムビ×ステ 『漆黒天』では映画と舞台で主演するなど、今勢いのある俳優の1人だ。そんな荒木宏文に明治座公演への思いを話してもらった「えんぶ4月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

今の時代に添った要素を取り入れた喜劇

──明治座は初出演になりますが、どんな印象がありますか？

今年で創業150周年ということで、歴史の重みを感じますし、その劇場で上演することを前提に企画を立てて、雰囲気などを生かした舞台を作っている。だからこそ明治座というブランドへの信頼があるし、お客様に愛されているのだと思います。

──今回の舞台では、松平健さん扮するお殿様の子息・秀宗を演じますが、なぜか親元を離れて浪人暮らしをしています。

秀宗は、父親の築きあげたものをそのまま受け継いでいくのではなく、自分なりに学びたいことや突き詰めたいことがある。そう伝えたところ勘当されてしまった。そういう意味では現代の親子にもあるような話だと思います。

──物語自体が、殿様と傘職人が意地の張り合いから暮らしを取り替えるという、あまり時代劇らしくない話ですね。

この作品は時代劇らしい重いお芝居ではなく、今の時代に添った要素を取り入れている喜劇で、いろいろ裏設定があったり、恋模様も現代的なシチュエーションなので、お客さんには面白がってもらえると思います。時代劇は、今の世の中で起きているような話でもフィクションとして落とし込めるし、現実離れしていても時代劇という枠組みでならショーとして見せられる。そこが良いところだと思います。

──座組にベテランの俳優さんが多いことで学べることも多そうですね。

そう思います。僕はアニメやゲームが原作の2.5次元作品を多く演じてきたことで、荒木宏文という俳優個人の色を極力出さないようにしてきたんです。僕の個性は必要ないと思っているぐらい、2.5次元の俳優としてのアプローチを徹底してきました。でも今回のような喜劇の場合、役を自分の素に近いところに置いておかないと、アドリブや反応が役から逸脱してしまう。そういう事態に対応するためにも、荒木宏文としての見せ方を考えておかないといけない。傍から見て荒木宏文の魅力はどういうところなのか、考えないといけないと思っています。

ウソのない自由な心で舞台に立ちたい

──荒木さんは21年秋から22年秋まで、「ミュージカル『刀剣乱舞』にっかり青江単騎出陣」という一人芝居で全国47都道府県を巡演しました。そこで沢山のものを得たのでは？

ミュージカルなので歌や殺陣があるのですが、巡演では殺陣の相手もバックコーラスもいないし、自分の起こしたアクションにリアクションしてくれる相手もいないわけです。
舞台は生ものなので毎日変化するわけですが、何が変化していくかといったら、土地が変わる、劇場が変わる、客層が変わる、それによる変化で、劇場の音響が違うと反響も違うので、セリフのリズムを変えていかないといけない。演劇を見慣れた人が多いときとそうでないときでは拍手のタイミングも違うので、芝居のリズムが違ってくる。毎公演が劇場やお客さんとのセッションでした。
ただ、板の上で生まれる化学反応でいうと、お客さんの反応は確かに関係しますが、やはり共演者とのセリフや動きの掛け合いで毎回変化していく、それが生ものの魅力だし、やはりお芝居の魅力は人と人が舞台上で生み出すものにあると改めて思いました。

──俳優としてまた経験値を積んだのですね。この明治座公演での変化も楽しみです。

これまで喜劇はほとんどやっていない僕が、創業150周年という祝い事の公演に呼んでいただいて、僕のために書かれた役で、僕に当てて書かれたセリフを言わせていただく、その意味を大事にしながら、ウソのない自由な心で舞台に立ちたいと思っています。松平さんとの場面では涙もありますし、コロッケさんや久本雅美さんには振り回していただけると思いますが（笑）、今までにない役どころの、ちょっと観たことのない荒木宏文を観ていただきたいです。そして、2.5次元の役者がこんなこともできるんだと、明治座のお客さんに興味を持っていただければ、それも僕が参加する意味になるのではないかと思っています。

■PROFILE■
あらきひろふみ○兵庫県出身。俳優集団D-BOYSのメンバー。ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめ、数多くの舞台や映像に出演。ミュージシャンとしても活動するなど多岐にわたる。最近の出演作は、映画『文豪ストレイドッグス BEAST』、ムビ×ステ『漆黒天 -終の語り-』。舞台は、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』、演劇の毛利さん『天使は桜に舞い降りて』、ムビ×ステ『漆黒天 -始の語り-』、舞台『モノノ怪～化猫～』など。

【公演情報】
明治座創業150周年記念前月祭
『大逆転！大江戸桜誉賑』
脚本・演出：細川 徹
出演：
松平健　コロッケ　久本雅美　檀れい
荒木宏文　田島芽瑠　丹羽貞仁　真砂京之介　上川周作　梅垣義明 　ほか
●3/4～28◎明治座
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター　03-3666-6666 (営業時間 10:00～17:00)
〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/lineup/2023/03/

【文／宮田華子　撮影／中村嘉昭】