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a new musical『ヴァグラント』明治座公演まもなく開幕! 平間壮一・廣野凌大インタビュー

平間壮一・廣野凌大

 

「自分らしくいていいんだ」と感じて欲しい

ポルノグラフィティのギタリスト新藤晴一が初めて手掛けるオリジナルミュージカル作品、 a new musical『ヴァグラント』が、8月19日~31日に東京・明治座、9月15日~18日には大阪・新歌舞伎座で上演される。

ポルノグラフィティの楽曲の歌詞の多くを手がけ、作品世界の構築が人気を呼ぶ新藤が、かねて温めていた題材を、綿密な打ち合わせを重ね、気鋭の演出家・板垣恭一が脚本・演出を担当。新藤が書き下ろした20曲以上の楽曲と共に、新たなミュージカル作品が誕生する。

そんな作品で、主人公の芸能の民〝マレビト〟の佐之助をWキャストで演じる平間壮一と廣野凌大が、物語の世界観や役柄、いまの時代に伝えたい思いを語ってくれた「えんぶ8月号」のインタビューをご紹介する。

大正時代を描きながら現代につながっている

──プロデュース、原案、作詞、作曲をポルノグラフィティの新藤晴一さんが担う、話題の作品ですね。

廣野 原案を出してプロデュースをするというフィルターを通しているのですが、新藤さんが伝えたいメッセージは、「ポルノグラフィティ」というフィルターを通した時と何も変わらずに、地続きのつもりだとおっしゃっているので、まずそれがすごく楽しみですよね。

平間 音楽も『ヴァグラント』用に書いてくださっていますが、もしこの舞台で結果的に使わない曲が出たら、「ポルノ」で使いたい! というレベルで作られているそうなので、素敵な楽曲が多いです。生演奏も入るので、もうそこからすごく豪華ですよね。

廣野 ミュージカルのファンの方にも、「ポルノ」のファンの方にも観ていただきたいし、新藤さんに「やって良かった!」と思ってもらえる作品にしていきたいですが、ストーリーとしては大正時代の話ですよね?

平間 そうだね。でもそこから現代に繋がってもいて、この時代の良さを描くことでいまの日本に足りないものが伝わっていくといいなと思える内容です。

廣野 ファンタジーなようでいて、ファンタジーではなく、ファンタジーじゃないんだと思うとファンタジーだったというのかな。本当にミュージカルに相応しいし、キャラクターに人間として感情移入できるんです。

──そのキャラクターですが、佐之助はどんな人物なのですか?

平間 美弥るりかさん演じる桃風と佐之助が〝マレビト〟と言われる芸能の民で、祭りなどに呼ばれる仕事をしているんですが、この二人だけが特殊なんだよね。

廣野 そうなんです。他の方々は大正時代のリアルな存在なんですが、僕らだけがさっき言ったファンタジーな部分を担う存在で、世の中を俯瞰して見ながら、人としての大事なものを見つけていく役どころで。

平間 特に、祭りの時には必要とされているのに、普段は下賤な者というか、真っ当な仕事をしていないと思われて見下されているのが、台本を読んでいて面白いなと。

廣野 コロナ禍での僕らの立ち位置を連想しましたよね。求められる瞬間は必ず訪れるんだけれども、不要不急と退けられもする。その芸能の儚さのようなものが描かれていて。

平間 しかもひと口に芸能と言っても、求められるものが何なのかがわからないじゃない? それぞれ持っているものが違うし、果たしてそれが自分なのかもわからない。そういう感覚がすごく深い作品ですね。

平間壮一・廣野凌大

いまの環境で楽しむ方法は絶対に見つかる

──お互いの印象はいかがですか?

廣野 まだ知り会って日は浅いんですけど、考え方がすごく似ているんです。芸能するものとしてのマインドみたいなものが。だから出会うべくして出会えたという気持ちがします。

平間 すべてが同じ考えではないかもしれないけれど、言っていることがスッと理解できるんだよね。

廣野 だからもちろん表現は違っていくと思いますが、互いに尊重しあえるので、そこをダブルキャストの良さとして佐之助に投下していければいいですよね。

平間 脚本・演出の板垣恭一さんが、誰が佐之助を演じるのかわかっていなかった時に書いていたものから、僕らがやると決まってからキャラクターが書き換わっていったとおっしゃっていて、しかもWキャストであっても二人が同じにならなくていいと言ってくださるので。

──板垣さんは全く同じにするならWキャストの意味がないとよく言われていますね。

廣野 今回、Wキャストの全員がそう思っていると思うので、僕らも悪い意味でのプレッシャーが全くないですから、それぞれの佐之助を生きていきたいです。

──楽しみにしています! 最後に是非皆さまにメッセージを。

廣野 いま、少しでも全体からはみ出していると、強制的に戻されてしまうような世の中になっている気がしていて。その良さもあるんでしょうけれども、正直矛盾も感じるんですよね。ある意味、自分というものをちゃんと持っての取捨選択ができにくい時代になってきているなと。そういう空気に対して、この作品は「自分らしくいていいんだよ」と、気づかせてくれる内容になっていると思います。是非劇場に足を運んでいただいて、皆様が知らず知らずに窮屈になってしまっているところや、自分自身と改めて向き合っていただけたら。是非劇場でそうしたものを感じ取ってもらえたら幸いです。

平間 目の前に情報があふれてしまっているからこそ、辛いことも多い時代なのかなと思っていて。例えば、いつか海外の、この国に行ってみたい! と夢見ていても、写真投稿サイトを覗くとその憧れている場所の、すごく綺麗な海や山の景色がどんどんアップされている。世界にはこんなに綺麗なところがたくさんあって、実際に行っている人たちがいっぱいいるのに、自分には行く予定がない、となった時にすごく辛さを感じてしまう。自分もいつか行こう! いつか必ず行ける! と信じる力が弱くなって、どうして自分は行けないんだろう、とそこにばかりこだわってしまうというのか。でも、自分の人生を楽しむも楽しまないも自分次第だし、いまいる場所、いる環境のなかで楽しむ方法って絶対に見つかるんですよ。この作品が、そういういまみんなが抱え込みがちなモヤモヤを表現したうえで、生まれてきてよかったと思える、観てくれた人の希望になったらいいなと思っています。だから僕たちが選ばれたんじゃない? あんまり自分を飾らないでしょう?

廣野 自分を飾るって発想は全然ないです。

平間 そうだよね。そういう僕たちだからできることがきっとあると思うので、それを楽しみに是非劇場にいらしてください!

■PROFILE■
ひらまそういち〇北海道出身。2007年に『FROGS』で初舞台を踏み、以降ミュージカルを中心に多くの舞台で活躍。近年の主な舞台出演作に、『RENT』『キングアーサー』『ヘアスプレー』、音楽劇『クラウディア』『イン・ザ・ハイツ』『The View Upstairs-君と見た、あの日-』『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』『ドン・ジュアン』Coloring Musical 『Indigo Tomato』などがある。

ひろのりょうた〇千葉県出身。2016年ハイパープロジェクション演劇 舞台 『ハイキュー!!』で俳優としてデビュー。舞台を中心に活躍を続けている。21年「Bimi」名義でアーティスト活動も展開している。近年の主な舞台作品に、舞台『鋼の錬金術師』『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage、ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『タンブリング』 『ワールドトリガー the Stage』、音楽劇『まほろばかなた』などがある。

【公演情報】
a new musical『ヴァグラント』
プロデュース・原案・作詞・作曲:新藤晴一
脚本・演出:板垣恭一
出演:平間壮一・廣野凌大(Wキャスト)/小南満佑子・山口乃々華(Wキャスト) 水田航生 上口耕平 玉置成実/平岡祐太 美弥るりか 他
●8/19~31◎東京・明治座
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666 (10:00~17:00)
●9/15~18◎大阪・新歌舞伎座
〈お問い合わせ〉新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)
〈公式サイト〉https://www.meijiza.co.jp/info/2023/2023_08/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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