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35年ごしの願いが実現! 祖父・片岡仁左衛門×孫・片岡千之助が共演する『連獅子』取材会レポート

秋の気配が日ごとに深まるなか、歌舞伎座では「吉例顔見世大歌舞伎」が11月1日から26日まで上演される。緊急事態宣言は現時点で解除されたが、引き続き感染予防対策を徹底し、客席は50%での興行となる。

第一部は、まずは古から幸せを運ぶといわれる国の特別天然記念物“こうのとり”の親子を題材にした、優美な舞踊劇『神の鳥(こうのとり)』。そして、幕末の動乱期に活躍した井伊直弼の暗殺前夜を叙情豊かに描く、新歌舞伎の名作『井伊大老』。

第二部は、曽我兄弟の仇討を題材にした、江戸歌舞伎の様式美あふれる『寿曽我対面』。そして、厳しくも温かい親子の情愛や、親獅子の精と仔獅子の精の勇ましく華麗な毛振りなどが見どころの人気の舞踊『連獅子』。

第三部は、「忠臣蔵」の世界を、花形俳優が新たな演出で魅せる『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)』。歌舞伎屈指の名作『仮名手本忠臣蔵』はもちろん、『元禄忠臣蔵』『土屋主税(ちから)』など、様々な「忠臣蔵もの」のエッセンスも取り入れ、騒動の起こりから仇討が叶うまでの名場面を堪能できる作品だ。

出演者は尾上菊五郎、松本白鸚、片岡仁左衛門といった大ベテランから若手俳優まで顔を揃え、芸術の秋にふさわしい公演となっている。

【取材レポート】

10月上旬、第二部『連獅子』に出演する仁左衛門と、その孫である片岡千之助の合同取材会が行われた。親獅子の精を勤める仁左衛門は、77歳。これまで本興行で親獅子を演じた最高齢は十七代目中村勘三郎の76歳だが、今回はそれを更新する。

冒頭の挨拶では、仁左衛門が「35年前に十七代目の中村屋のおじ様(勘三郎)が当時の勘九郎君(十八代目勘三郎)と一緒に踊られた。その時、もし歌舞伎座で『連獅子』を踊れる役者になったら、おじ様と同じ年の時に倅(片岡孝太郎)と踊りたいと決めていました。それから35年経ち、今回、孫との共演で踊らせていただく。35年間抱いていた願いが叶いました」と笑顔で語る。千之助は「祖父と興行では3度目の『連獅子』を勤めさせていただきます。21歳のこの年にできる自分のベストを一所懸命に尽くします」と緊張の面持ちで語った。

今回の祖父と孫の『連獅子』は、幼い頃から十八代目勘三郎の『連獅子』に憧れていた千之助が仁左衛門に、「おーぱ(仁左衛門)と『連獅子』が踊りたい」と手紙を書いたのがきっかけで、10年前の2011年に初めて実現した。当時、仁左衛門は67歳、千之助は11歳だった。

仁左衛門は、その頃の思い出を聞かれて「初演では、じじ馬鹿ですが、小さい子どもが本当に頑張ったと思いました。7年前の歌舞伎座の時は、成長した部分と、ちょっと(成長が)足りない歯がゆさが入り乱れていた。身内の甘さと、先輩後輩としての厳しさの難しいところです」。

千之助は「一番の思い出は稽古の時。それまではまだ優しいおーぱとして稽古していただいていたが、『連獅子』の稽古から本当に厳しく、僕の中では、祖父というより役者の大先輩に変わりました。仔獅子のように谷底に突き落とされた感覚で、追いつきたい、這い上がらなければという気持ちを持たせていただいたことが作品にも繋がった」と振り返る。

今回の公演についても仁左衛門は、「とにかくしっかりと踊ってもらわなければいけない。今までは作らなくても仔獅子だったが、21歳になり、あどけない仔獅子を表す芸の難しさが加わった。それをどこまで克服してくれるか」と、千之助に期待する。

同時に自身についても、「自分もこの年で昔のようには動けません。ただ、後シテでも同じように動く必要はない。中村屋のおじ様も、ゆったりと親獅子としての貫禄があり、仔獅子がぴちぴちと跳ねる、その対比がとても素敵だった。今までの(他の俳優の)『連獅子』をご覧になっている方には物足りなく感じるかもしれませんが、こういうのがあっていいんじゃないかと楽しんでいただければ」と意欲的。

さらに「もちろん親獅子が子どもを鍛えるドラマが大前提ですが、登場して、清涼山の話をする踊りが一番難しい。(観客が)歌詞がわからなくても、霊山の楚々たる景色、空気の冷たさを表現できるかどうか。あとは、親の子どもに対する愛情をどこまで表現できるか。後シテでも、兄弟ではない、親と子の雰囲気が出せれば」と、演者としての課題や見せどころについても語った。

芸について仁左衛門がよく話すのは「とにかく人に求められる役者になってほしい」ということで、それは千之助にとっても、俳優としても人としても、1つの目標でありモットーとなっている。それは千之助のみならず、次代を担う後輩たちへのアドバイスでもあって、「まずはお客様が第一です。どんな端役でも、あの人が出ていればこの芝居が楽しくなると思われる役者になってほしい。それにはまず役者仲間に必要とされること。この芝居を成立させるにはこの役者がほしいと言われるようになってほしい」と願っている。

そのために必要なことについても、「とにかく自分のアンテナを磨くこと。私なんかはいまだに、公演中でも先輩方の映像を繰り返し見たりして、研究します。するとその都度、新しい発見がある。この頃マンツーマンのお稽古が少なくなっていますが、単に映像だけ見ていると、動きがわかっても心がわからず、なぞっているだけになります。裏を探る気持ちを大事に。そして、褒めていただくのも大事ですが、貶していただくことも大事。悪く書いてあるな、で終わらず、どういう意味で書いてあるのか、それを勉強することも身につけてほしい」と、喜寿を迎えても第一線を走り続ける先輩としての厳しさと愛情を滲ませた。

【公演情報】
歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」
令和3年11月1日(月)初日→26日(金)千穐楽
休演:8日(月)・18日(木)

◎第一部 午前11時開演

水口一夫 作・演出
一、『神の鳥(こうのとり)』

狂言師右近実はこうのとり(雄鳥)/山中鹿之介幸盛 片岡愛之助
狂言師左近実はこうのとり(雌鳥) 中村壱太郎
仁木入道 中村種之助
傾城柏木 上村吉弥
赤松満祐 中村東蔵

北條秀司 作・演出
二、『井伊大老(いいたいろう)』
千駄ヶ谷井伊家下屋敷

井伊直弼 松本白鸚
仙英禅師 中村歌六
老女雲の井 市川高麗蔵
お静の方 中村魁春

◎第二部 午後2時30分開演

十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言
一、『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』

工藤左衛門祐経 尾上菊五郎
曽我五郎時致 坂東巳之助
曽我十郎祐成 中村時蔵
小林朝比奈 尾上松緑
八幡三郎 坂東彦三郎
梶原平次景高 坂東亀蔵
化粧坂少将 中村梅枝
秦野四郎 中村萬太郎
近江小藤太 河原崎権十郎
梶原平三景時 市川團蔵
大磯の虎 中村雀右衛門
鬼王新左衛門 市川左團次
後見 坂東秀調

河竹黙阿弥 作
二、『連獅子(れんじし)』

狂言師右近後に親獅子の精 片岡仁左衛門
狂言師左近後に仔獅子の精 片岡千之助
浄土僧専念 市川門之助
法華僧日門 中村又五郎

◎第三部 午後6時開演

河竹黙阿弥 作
渡辺霞亭 作
戸部和久 補綴
石川耕士 構成・演出
市川猿之助 演出
『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)』
序幕
第一場 鶴ヶ岡八幡社頭の場
第二場 桃井館奥書院の場
第三場 稲瀬川々端の場
第四場 芸州侯下屋敷の場
第五場 同     門外の場
大詰
第一場 槌谷邸奥座敷の場
第二場 高家奥庭泉水の場
第三場 元の槌谷邸の場
第四場 花水橋引揚げの場

顔世御前後に葉泉院/大鷲文吾 尾上右近
河瀬六弥 中村歌之助
源蔵姉おさみ 市川笑也
高師直/戸田の局/河雲松柳亭 市川猿之助
晋其角 市川猿弥
大星由良之助 中村歌昇
井浪伴左衛門 松本錦吾
桃井若狭之助/清水大学 松本幸四郎
足利直義/お園 坂東新悟
寺岡平右衛門 澤村宗之助
大星力弥 中村鷹之資
塩冶判官/槌谷主税 中村隼人
龍田新左衛門 大谷廣太郎
赤垣源蔵 中村福之助
小浪 中村米吉
(五十音順)

〈料金〉1等席15,000円 2等席11,000円 3階A席5,000円 3階B席3,000円 1階桟敷席16,000円(全席指定・税込)
未就学児童は、満4歳よりお一人様につき1枚切符が必要です。
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または03-6745-0888
チケットWeb松竹 検 索
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/731

【衣装クレジット】
片岡仁左衛門/スーツ、シャツ、ネクタイ:Ermenegildo Zegna、シューズ:Paraboot その他:スタイリスト私物 【問い合わせ】ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300 パラブーツ 03-5766-6688
片岡千之助/スーツ、シャツ、ネクタイ:LOUIS VUITTON 、その他:スタイリスト私物  【問い合わせ】ルイ・ヴィトン クライアントサービス 0120-00-1854

【取材・文/内河 文 写真提供/松竹】

 

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