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生配信も決定! 信州・まつもと大歌舞伎『夏祭浪花鑑』中村勘九郎オンライン取材会レポート

今はなき十八代目中村勘三郎×演出家・串田和美のタッグで、古典歌舞伎を一から読み直し、新解釈と斬新な手法で演出するというコンセプトのもと、名作に異なる角度から光を当て、従来とはまた異なる魅力を引き出してきたBunkamuraシアターコクーンのコクーン歌舞伎。

今年の演目は、1998年にコクーン歌舞伎として初演、以来大人気を博し、海外でも上演されて喝采を浴びた『夏祭浪花鑑』。

浪花(大阪)を舞台に、恩人のため身をいとわず奔走する市井の人々(庶民)の人情や男伊達の意気地、義理ゆえの苦衷などを鮮やかに描いた物語で、特にむせかえるような夏の夜、祭囃子のなか団七がその後の運命を左右する大きな出来事を起こす「長町裏」は、歌舞伎屈指の名場面でもある。

メンバーは、団七を初役で勤める中村勘九郎をはじめ、弟の中村七之助や片岡亀蔵、そして現代劇の俳優ながら独自の存在感を際立たせる笹野高史など、コクーン歌舞伎の常連に加えて、映像でも大活躍中の尾上松也、今回初参加となる勘九郎の次男・中村長三郎、中村虎之介など、座組を刷新しての上演となった。

松也、七之助、勘九郎

だが緊急事態宣言が出たため、当初の初日5月6日から11日まで急きょ休演となり、プラチナチケットと化したこのコクーン歌舞伎が、信州・まつもと大歌舞伎『夏祭浪花鑑』として、6月17日から22日まで、長野県・まつもと市民芸術館で上演される。

また、「チケットを持っていながら休演で観劇できなかった」「観たいがコロナ対策を考えると東京へは行きづらい…」といった数多くの声を受けて、このたび6月20日に生配信が決定した。これを受けて、勘九郎がオンライン取材会を行った。

中村勘九郎(団七)

勘九郎はこれまで3回の配信公演を経験しており、『夏祭』の生配信は必ずやりたかったから嬉しい、と声を弾ませた。「去年7月に最初に配信させていただいた時、僕は後ろ向きでした。演劇は生の舞台をご覧いただくのが一番だと思っていたから。でも、コメント欄でお客様の待っていたよ、やってくれてありがとう!という反応を見て、コロナが晴れてからも続けていきたいと思ったことの1つです」。

東京公演と松本公演とでは、劇場の(間口の)大きさや機構が違うため、新たに稽古し直して開幕を待つ。「上演中の舞台からの配信は初めて。役者から放たれる独特の“気”を感じてほしい」と意欲十分だ。松本へは5年ぶり、とても楽しみにしている。「松本に行くと、自分がスーパースターになったと勘違いさせてくれる(笑)。町を歩いていても車を停めて車中から手を振ってくれたり、東京じゃありえません」と笑う。

団七は本役としては初めてだが、父(十八代目勘三郎)の代役で2011年に博多座で一度演じている。当時は東日本大震災があったり、長男・中村勘太郎が生まれた直後で、少し不安定な時期でもあった。開幕5日前まで三谷(幸喜)の『ろくでなし啄木』に出演していたので、『夏祭』の稽古は夜中になり、体力的にも辛かったと振り返る。

「地震で、自分たちが芝居をしていいものかと自問自答しながらの日々でした。あまり公演の記憶がない(苦笑)。今は準備期間もたっぷりあり、コロナ禍に合わせて演出を変更し、みんなで一から稽古し直している。心も体も全然違います」と自信をのぞかせた。

勘三郎の姿をずっと見続けて、『夏祭』の台本を開いたことがないくらい自分の脳裏に叩き込まれてきた団七役をついに演じるわけだが、団七の義理の父で、強欲で意地汚い老獪な男・義平次は、コクーン歌舞伎には欠かせない笹野高史。「長町裏」では団七と義平次の2人芝居とも思えるほど、濃厚な絡みがある。

勘九郎 笹野高史

「笹野さんが最初に義平次をお勤めになった時、あまりに素晴らしくて、僭越ながら、僕が団七をやる時は必ず義平次をとお願いしました。役者としての魅力や人間力もさながら、歌舞伎をとても尊敬し、古典を大事にし、義太夫狂言を研究されている。歌舞伎役者が見れば一目瞭然ですが、歌舞伎役者よりちゃんと歌舞伎をやっている(笑)」という惚れ込みよう。

次男の長三郎は、松本の舞台には初めて立つ。「松本は市民の方々が町ぐるみで、一種のお祭りのように我々カンパニーを迎えてくれる。今はそれを近くで感じることはできないが、その(温かい)空気感やサポートのありがたさを感じてくれたら」と父の顔になった。これまでは、打ち上げで地元の人々が開いてくれる蕎麦パーティーが大きな楽しみだった。「今はそれは絶対できないし、してはいけない。僕たちが楽しむのではなく、松本の方たち、まつもと大歌舞伎を観に来てくれる方が楽しんでくれたら」と語った。

勘九郎 長三郎 七之助

配信の特徴を「江戸時代の歌舞伎の見方の1つかも」と指摘する。「集中して見てほしい作品や空気は、劇場でしか味わえません。でも歌舞伎はご飯を食べながら、お酒を飲みながら観る、あるいは子どもが泣いたらあやしに外へ出る。そういうことがそもそも歌舞伎の在り方だった。それを一番自由にできるのがご自宅(での配信観劇)じゃないでしょうか」。どんな人々に観てほしいかと尋ねられると「七之助も言っていますが、配信は(チケットを)1枚買えばご家族全員で観られる。よく観劇に来られる奥様の歌舞伎を、家族が共有して見てくださったら一番いいですね。チラッと見て面白くなければ、テレビを見に行ってもいい。今まで歌舞伎に触れてこなかった方々が少しでも興味を持ってくれたら」と期待をふくらませる。「少しでも外に出ない(出なくていい)ように、20日の日曜日は家で観てくださったらと思います」と呼び掛けた。

 

【公演情報】
信州・まつもと大歌舞伎
『夏祭浪花鑑』
演出・美術:串田和美

団七九郎兵衛 中村勘太郎
団七女房お梶 中村七之助
一寸徳兵衛/徳兵衛女房お辰 尾上松也
玉島磯之丞 中村虎之介
団七伜市松 中村長三郎
傾城琴浦/役人左膳 中村鶴松
三婦女房おつぎ 中村歌女之丞
三河屋義平次/舞台番笹平 笹野高史
釣船三婦 片岡亀蔵
●6/17~22◎長野 まつもと市民芸術館
〈料金〉一等席11,000円 二等席8,000円 三等席5,000円/25歳以下3,000円 四等席2,000円/25歳以下1,000円 特等席12,500円(お土産付き)(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉まつもと市民芸術館チケットセンター 0263-33-2200(10:00-18:00)
https://matsumoto-kabuki.com/

【配信情報】
信州・まつもと大歌舞伎2021『夏祭浪花鑑』 生配信
日時:6月20日(日)15:00公演 (アーカイブ配信なし)
※14:40より生配信限定の特別映像が配信されます。
チケット料金:3,500円(税込)+システム手数料220円
※有料配信チケットは、6月20日(日)15:30まで販売。
配信場所:松竹「歌舞伎オンデマンド」
https://mirail.video/publisher-title/481
そのほか MY Bunkamura、イープラス「Streaming+」、ぴあ「PIA LIVE STREAM」

 

【文/内河 文 写真提供/松竹】

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