歌舞伎座「五月大歌舞伎」開幕!
歌舞伎座で「五月大歌舞伎」が5月12日に開幕した。
緊急事態宣言の発令を受け、5 月 3日からの公演を中止していたが、12 日に初日の幕を開け、28日の千穐楽まで歌舞伎座 で上演中だ。
「五月大歌舞伎」は尾上菊五郎をはじめ、人気と実力を兼ね備えた俳優が顔を揃え、歌舞伎の多彩な魅力を楽しめる公演。
引き続き出演者・観客は各部総入れ替え、客席数(1808 席)は 50%(904席)を維持して公演を行っている。
第一部の序幕を飾るのは、 『 三人吉三巴白浪 (さんにんきちさともえのしらなみ )』 。
「吉三郎」という同名の三人の盗賊が、百両の金と名刀・庚申丸を巡って数奇な運命に翻弄される物語のうち、三人が初めて出会い義兄弟の契りを交わす屈指の名場面「大川端庚申塚の場」。当月は、尾上右近のお嬢吉三、中村隼人のお坊吉三、坂東巳之助の和尚吉三という配役で、花形世代の三人がそれぞれ初役で挑むことでも話題。尾上右近演じるお嬢吉三による「月も朧に白魚の…」から始まる台詞など、名作者・河竹黙阿弥ならではの流麗な七五調の名台詞や幕末の退廃的な雰囲気を存分に堪能できる世話物。花形ならではの清新なエネルギーが溢れ出す舞台に、客席からは大きな拍手が響き渡った。
続いては、新古演劇十種の内 『 土蜘( つちぐも)』
能『土蜘蛛』を題材とした松羽目物の舞踊劇。病床に伏せる市川猿之助演じる源頼光の館へ、忽然と姿を現す尾上松緑演じる叡山の僧智籌。その本性は実は土蜘の精で、頼光の命を狙っている。音もさせず、いつの間にか花道に佇む智籌の出は妖しさが漂い、場内も緊迫した空気に包まれる。異形の恐ろしさを持つ智籌と気品あふれる頼光の対峙は見どころのひとつ。また、菊五郎の孫・寺嶋眞秀演じる太刀持音若は、智籌の妖しさにいち早く気づく重要な役どころ。頼光に「ご油断あるな」と伝える堂々とした姿に、客席の視線は釘付けに。後半には本性を顕した土蜘の精が、坂東亀蔵演じる平井保昌や四天王と豪快な立廻りを繰り広げる。土蜘の精が千筋の糸を鮮やかに繰り出すと、歌舞伎座は華やかな雰囲気に包まれた。
第二部は、 『 仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら )』 。
一幕目は、清元の舞踊「道行旅路の花聟」から幕を開ける。桜と菜の花が咲き誇る中、人目をはばかるように寄り添うのは、中村錦之助演じる早野勘平と中村梅枝演じる腰元おかる。勘平は、主君塩冶判官が殿中で刃傷に及んだ際、職務を怠りおかると会っていたためにその場に居合わせなかった。その罪を恥じて命を絶とうとする勘平を、おかるが必死に慰める。そしておかるの実家のある京・山崎へと向かう二人の道行を描いた一幕。華やかな春景色の中、二人に漂う一抹の哀愁が胸に沁みる舞台だ。
続いては、「六段目」。
幾度となく早野勘平を勤めてきた尾上菊五郎が「難役中の難役」でありながらも「やりがいのある役」と表現する勘平の、美しくも哀しい運命がドラマティックに描き出される歌舞伎屈指の人気作。仇討ちに加わりたいと願う勘平が、舅を殺してしまったと勘違いする複雑な心理描写が見どころ。自らの不運を嘆き「いかなればこそ勘平は…」から始まる述懐は、歌舞伎の名台詞のひとつ。白塗りの頬に血潮をつける演出は視覚的にも鮮やかで、悲劇を際立たせる。女房おかるに中村時蔵、千崎弥五郎に中村又五郎、母おかやに中村東蔵、一文字屋お才に中村魁春、不破数右衛門に市川左團次と、大歌舞伎にふさわしい顔合わせの珠玉の舞台だ。
第三部は、 『 八陣守護城 (はちじんしゅごのほんじょう )』 で幕を開ける。
猛将で知られる加藤清正(役名では佐藤正清)が、徳川家康から勧められた酒を毒酒と知りながら飲み、主君である豊臣家を守護したという逸話を題材にしている。舞台いっぱいに広がる豪華な朱塗りの船上。中村歌六演じる佐藤正清が、中村雀右衛門演じる雛衣に今見た夢の話を語る。正清は、北畠春雄の館で忠義心ゆえに毒酒を飲むが、常と変わらず悠然とした姿。様子を伺いにやって来る北畠の使者らも怪訝な面持ちで去っていきく。後半、客席に向かって船首が廻る演出は迫力にあふれる。壮観たる船上で見せる、正清の武将としての大きさや風格、その勇姿が胸に迫る名舞台。
続いては、新歌舞伎十八番の内 『 春興鏡獅子 (しゅんきょうかがみじし)』 。
一人の俳優が可憐な小姓弥生と、勇壮な獅子の精という対照的な二役を踊り分ける歌舞伎舞踊屈指の大曲。舞台は江戸城の大奥。将軍の御前で踊りを披露することになった尾上菊之助演じる小姓弥生が優美に踊るうち、傍らに飾られている獅子頭を手にすると、獅子頭に魂が宿り…。弥生の意思とは関係なく、何処へともなく弥生が姿を消すと、菊之助の長男・尾上丑之助と坂東彦三郎の長男・坂東亀三郎による、二人の胡蝶の精が登場。可愛らしく軽快に踊る。菊之助の獅子の精が披露する、クライマックスの豪快な毛振りも見どころだ。
【公演情報】
歌舞伎座「五月大歌舞伎」
2021年5月12日~28日
※開場は開演の40分前を予定
休演/19日(水)
◎第一部 午前11時~
河竹黙阿弥 作
一、三人吉三巴白浪 一幕(さんにんきちさともえのしらなみ)
大川端庚申塚の場
お嬢吉三 尾上右近
お坊吉三 隼人
和尚吉三 巳之助
河竹黙阿弥 作
二、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
叡山の僧智籌実は土蜘の精 松緑
平井保昌 坂東亀蔵
源頼光 猿之助
◎第二部 午後2時30分~
一、仮名手本忠臣蔵 (かなでほんちゅうしんぐら)二幕
浄瑠璃「道行旅路の花聟」
早野勘平 錦之助
鷺坂伴内 萬太郎
腰元おかる 梅枝
六段目「与市兵衛内 勘平腹切の場」
早野勘平 菊五郎
女房おかる 時蔵
千崎弥五郎 又五郎
母おかや 東蔵
一文字屋お才 魁春
不破数右衛門 左團次
第三部 午後6時20分~
中村漁岸 作
松貫四 補綴
一、八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
湖水御座船
佐藤正清 歌六
雛衣 雀右衛門
福地桜痴 作
二、新歌舞伎十八番の内「春興鏡獅子」(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生後に獅子の精 菊之助
胡蝶の精 亀三郎
胡蝶の精 丑之助
〈料金〉1等席15,000円 2等席11,000円 3階A席5,000円 3階B席3,000円 1階桟敷席16,000円(全席指定・税込)
未就学児童は、満4歳よりお一人様につき1枚切符が必要です。
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または東京は03-6745-0888、大阪は06-6530-0333
チケットWeb松竹 検 索
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/714/
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