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井上小百合らフラガールのダンスショーが光る 舞台『フラガール』初日囲み会見&レポート

井上小百合、矢島舞美、富田望生らが名作映画の世界を演じる『フラガール』が、10月18日、東京・日本青年館で開幕した。(10月27日まで、大阪公演は 11月2日~4日、サンケイホールブリーゼにて)

この作品は2006年に公開された映画『フラガール』の舞台化で、昭和40年の福島県いわき市の炭鉱町を舞台に、常磐ハワイアンセンター設立のエピソードとともに炭鉱町の少女たちがフラガールに成長していく姿を描いている。

【物語】
舞台は昭和40年の福島県いわき市。かつて炭鉱の町として栄えていたが、石油が登場したことによって廃れてゆき、毎月のように多くの労働者たちがリストラにあっていた。そんな中、町おこしのために常磐ハワイアンセンターを設立し、フラダンスのショーを行って町を盛り上げようとする動きが始まる。のちにフラガールのリーダーとなる紀美子(井上)は、男が炭鉱で働き女は働く男を支える生活を当たり前だと考え、育ってきた。ある日親友の早苗(太田)から常磐ハワイアンセンターのダンサーに応募しようと誘われる。「ダンスなんてやったことがない」と戸惑いながらも、泥まみれの生活から抜け出せるチャンスだと懸命に訴える早苗に心を動かされ、都会からやってきた元SKDのダンサーによる厳しい稽古に挑むことを決意する。最初は父親に連れてこられたひきこもりの小百合(富田)と子連れで離婚した事務員・初子(伊藤)の4人だけのチームだったが、次第にメンバーが増えていく。反対する大人たちの厳しい目にさらされながら常磐ハワイアンセンターオープンまでわずかな時間で、果たして素人の少女たちはプロのダンサーとして舞台に立つことができるのだろうか…?

紀美子と早苗は二人だけの秘密を持つほど仲が良く、福島弁で他愛のない会話を繰り広げるごく普通の18歳だ。紀美子は早苗に引っ張られるようにフラガールに応募したが、元SKDのダンサー平山まどかのダンスを見て感動し「絶対にプロのダンサーになる」と固く決心する。フラガールとして厳しい稽古が始まった当初に見せる紀美子と早苗のダンスがおよび腰で笑わせる。アイドルとして活躍している2人が見事なコメディエンヌぶりを発揮する。

紀美子を演じる井上小百合は、素朴だけれど芯の強い少女を表情豊かに演じる。早苗とのつらい別れを経験した時に「こんな時に笑顔で踊れない」とまどかに反発するものの、プロのダンサーとしての意識が少しずつ高まり、最後に見事なダンスを見せるまでの紀美子の成長ぶりを、2時間の舞台を通して鮮やかに表現してみせた。

そんな紀美子を鍛えていくのが、矢島舞美演じる平山まどか。だらしのない母親のせいで背負わされた借金から逃れるためにフラダンスの講師を引き受けたものの、あまりの田舎にうんざりし、住んでいる人たちさえも見下す態度を取る。酒浸りでやさぐれたまどかを矢島はよく通る声で迫力ある演技を見せている。まどかが抱えている哀しみや女性が認められない世の中に対する怒りは根深いものがあるが、フラガールたちと接して育てていくうちに町に馴染み、乱暴な口の利き方をしながらも彼女たちに愛情を注いでいくようになる。そんなまどかの心境の変化を矢島は等身大で演じている。最大の見せ場となる、紀美子たちの前で披露するフラダンスも見事だ。

小百合役は富田望生。学校でのいじめが原因で引きこもりになってしまった少女で、小さい頃からダンスが好きだったことに目をつけた父親が、なんとか今の状況から抜け出すきっかけにしたいとフラガールの説明会場に連れてくる。最初はためらう小百合が、好きなダンスをしていくうちに心を開いていく姿を説得力のある演技で見せてくれる。富田のダンスはキレがあり、かつて小百合のことをバカにしていた同級生たちがダンスを見て驚くシーンのダンスは圧巻で胸が熱くなる。

太田奈緒が演じる早苗は父親の仕事の事情で町を離れることになるのだが、どんなことがあってもダンスを諦めてはいけないと紀美子を応援する早苗の存在は、困難に立ち向かっていく紀美子の原動力となっていく。太田は、フラガールとして紀美子たちと同じ舞台に立つことは叶わなかった辛さを感情豊かに表現。福島を離れてもダンスを続けている強さも感じさせる。

町中が常磐ハワイアンセンターの設立に反対する中、積極的にフラガールに応募してきたのが事務員の初子だ。初子役の伊藤修子は、夫に逃げられ一人で子どもを育てているという厳しい境遇にありながらも、暗さを感じさせないキャラクターを好演。

また吉田美佳子演じ小百合の同級生は、小百合を小バカにしたり、トラブルが起きたら取っ組み合いのけんかをしたりする激しさもあるものの、のちにフラガールになるとその役目をしっかり果たすなど起伏の多い役をリアルな演技で演じている。フラガールでは華があり、ひときわ目立つ存在だ。

常磐ハワイアンセンター建設に走り回る企画部長吉本は山崎銀之丞。紀美子たちを支える貴重な存在で、とかくけんか腰になる反対派との間に立って立ちまわる姿は、サラリーマンの中間管理職を思わせる。できる限り穏便に事を運ぼうとする吉本だが、いざというときは声を荒げて自分の思いを訴える熱い面も。吉本の存在があったからこそ、フラガールが誕生したのだということが分かる説得力のある山崎の演技が光る。

紀美子の母・千代を演じる有森は、「炭鉱こそ自分たちが生きていく道」と信じる強い女性を力強く演じている。頑なにハワイアンセンター建設に反対し、フラガールにチャレンジする紀美子に対してだけでなく、まどかにも激しく怒りをぶつけるが、紀美子のダンスを見て次第に気持ちが変わっていく。娘たちの可能性をつぶしてはいけないと語る姿は強く優しい母親そのものだ。

紀美子の兄・洋二朗(味方)は千代と同じようにハワイアンセンター建設に反対はしているものの、フラガールになろうとする紀美子を優しく見守る。まどかに対しても最初はきつく当たるが次第に理解するようになり、紀美子の将来を託す。亡くなった父親からの教えである「男は家族を守るもの」を信条にする不器用だけれど強い男を、味方は丁寧に演じきった。

そんな洋二朗を慕って炭鉱で働く若者を演じるのが中山優貴。最初はハワイアンセンター建設に反対するものの、時代の流れに逆らえないとハワイアンセンターのオープンに尽力していく姿を熱く演じている。

町の大人たちに批判されながらも、支えてくれる人たちがいたフラガールだが、常磐ハワイアンセンターの舞台に立つまで、さまざまな困難が立ちはだかる。悲しい別れも経験する。だがそれらを乗り越えてきた彼女たちが披露するフィナーレのダンスショーを観ていると、「やったね!」と声をかけたくなるような爽快感を感じる。かつて映画を観たことがある人もそうでない人も、舞台ならではのスピード感と迫力あふれる物語を堪能してほしい。

【会見】

ゲネプロに先立ち、囲み会見が行われ、井上小百合(乃木坂46)、矢島舞美、富田望生、福島雪菜、太田奈緒(AKB48)、伊藤修子、味方良介、有森也実、山崎銀之丞の9人が登壇し、作品への意気込みを語った。

有森也実 味方良介 太田奈緒 富田望生 井上小百合 矢島舞美 福島雪菜 伊藤修子 山崎銀之丞

──最初に出演者の方々お一人ずつ意気込みをお願いします。

井上 谷川紀美子役を演じさせていただきます、井上小百合です。よろしくお願いします。意気込みは特にないですけれど、楽しくできたらいいなと思っています(笑)。

矢島 平山まどか役の矢島舞美です。皆さまに夢と希望をお届けできたらいいと思っております。

富田 熊野小百合を演じます富田望生です。頑張ります。とにかく笑顔でこの舞台を一緒に作れるように精一杯頑張ろうと思います。

太田 木村早苗役をやらせていただきますAKB48の太田奈緒です。私もとにかく頑張りたいと思います。

福島 木村早苗役の福島雪菜です。今日、自分は初日ではないんですけれど、袖からみんなに元気に事故やけががなく、無事に初日が迎えられますようにとパワーを送っておきたいと思います。

味方 谷川洋二朗役の味方良介です。若い女の子たちが多いので、埋もれないようにフレッシュな気持ちで頑張りたいと思います。

伊藤 佐々木初子役の伊藤です。踊りについていくのが大変だったんですけれど、間違えないように頑張ります。

有森 ヒロインの紀美子と洋二朗の母親役の千代を演じています。私の役は昭和40年代の変わりゆく炭鉱で、自分自身も変わっていく炭鉱の不安を抱えながら娘を応援し、若い女の子たちからエネルギーをもらい、新しい時代へ踏み出す一人の人間として関わるという、難しいけれど楽しい役どころになっております。

山崎 吉本紀夫役をやらせていただきます山崎銀之丞です。僕のやる吉本というのは、常磐ハワイアンセンターを設立するにあたって、奔走する男の役です。とにかく今回は出演者のみんなが若い女性で、フラダンスをやったことがない子たちが稽古しながら物語の中と同じように少しずつ成長するのを見せてもらいましたので、(映画の)大ヒット作ということで多少のプレッシャーもございますが、井上小百合さんのフラガールを皆さんに楽しんでいただけるものになっていますので、ぜひお楽しみください。

【質疑応答】

──井上さんにお伺いしたいのですが、グループの卒業を発表してからの主演舞台となります。映画版とは異なる注目ポイント、こういうところを観てほしいというところがあれば教えてください。

井上 本当にこのタイミングで発表するとは自分でも思っていなかったので、神様の計らいというか、何かご縁があるのかなと思っています。この作品を卒業につなげるわけでは全くなかったんですけれど、今そうなってしまっているので、がんばらなきゃなと思っています。稽古していくうちに、どんどん今の自分と重なっていくのが分かって、いろいろな人の支えがありながら、まだ何者でもないけれどいつか何者かになるかもしれないみたいな、そういう希望にあふれた作品が自分とリンクしています。すべてのせりふに全部嘘のない感情で挑むことができていて、とてもありがたいと思っています。映画版では(蒼井)優さんが演じましたけれど、舞台版では私にしかできないフラガールがあるんじゃないかと思っているので、その辺は楽しんでいただけたらいいなと思っています。

──有森さんにお伺いしたいのですが、今日本列島が台風被害にあっていて、今回の舞台となっている福島も被害が出ています。地元の方々にどのようなメッセージを届けたいですか?

有森 恩返しですね。今回は東京と大阪での公演ですが、まわりまわって私たちがこうやってこの物語を、福島の人間ではないけれど方言を話して、発信できるというのはありがたいことだし感謝しなくてはいけないことです。強い気持ちを橋渡しできるのは、演技者としてうれしいです。

──富田さんは福島県出身ですけれど、何か思い入れみたいなものはありますか?

富田 思い入ればかりの作品なので、ここにきてすごくプレッシャーではないですけれど、映像とはまた違って、こんなにも気持ちを作る瞬間というのを他の作業にも当てなきゃいけないんだと感じています。舞台をはけた裏での行動や、物語もすごいスピードで展開していくので、もちろんお客様はそれがすごく面白いと思うんですけれど、そこに対する心構えが劇場に入ってからおびえるというか「わー、こんな感じなんだ」というのがすごいです。ただ私も震災当時に担任をしていただいた先生が、他のクラスの先生を連れて東京までわざわざ観に来てくださるそうで、親戚も来てくれるので、台風とか地震もたくさんありますけれど、楽しみにして来てくださる方がいるので、「やんなきゃいけねえな」という気持ちがあります。皆さんと力を合わせて素敵な舞台にできるように頑張りたいと思います。

──福島さんと太田さんそれぞれにお伺いします。今回Wキャストですが、それぞれが演じる時の見どころがあれば教えてください。

福島 私は昨日最後の通し稽古を終えたんですけれど、今日の朝も(演出の)岡村さんに「私の早苗、大丈夫でした?」という感じで聞いたら「お前は声が通るから、そこが強みだから、押して押してガンガン行け」と言われて、私の早苗は、押して押して押し倒していこうと思いました。

太田 私は本当に自信がないんですけれど、(山崎)銀之丞さんがすごく気さくに話してくださって、普段話している時に「なんか奈緒の言葉は嘘っぽい」と言われて、大丈夫かなと思うので、とりあえず舞台上で大丈夫かぜひ確認してください。

──井上さんにお聞きしたいんですけれど、フラダンスは実際にどうだったかということと、ダンスの先生役である矢島さんもフラダンスについての思いを教えていただければとおもいます。

井上 いやー、しんどいです(一同爆笑)。びっくりするぐらい稽古がしんどくて、最初のほうは動けなくなっちゃって、「もう勘弁してください」みたいになってしまいました。これは大変だぞと思っていたんですけれど、稽古を積み重ねていくうちにどんどん体が動くようになっていって。それが不思議だなと思っていて…。でも私はそのレベルに到達するのにすごく時間がかかってしまって、本当にダイエットジムに通っているような気持ちでいます。望生ちゃんとかどんどん痩せちゃうんじゃないかって。本当に大変でした。でもその成果が今日出せればいいなと思っています。

矢島 稽古が始まる前に、フラのレッスンから始まったんですけれど、私も同じように普段ダンスとかで使わない筋肉を使うんだなと。電車に乗りながら「腰痛いな」と思う時も最初はあったんですが、やっていくうちにだんだんそれもなくなって、筋肉がついたんだなと思ったし、私は先生の役なので最後みんなを見守るんですけれど、日に日に上達していくフラガールのみんなを見ると、やっぱり感動してしまって、観に来てくれる皆さんもみんなの練習した成果をリアルに感じていただけるんじゃないかなと思うので、そこは楽しみに観てほしいなと思います。

──(キャストから修子さん、しゃべることはないですか?と言われ)修子さん、見どころをひとつお願いします。

伊藤 私は本当に人より踊りができないので、ついていくのが大変だったんですけれど、なんとか…。

有森 それも見どころの一つですよね。

伊藤 (とまどいがちに)そ、そうですね。やっぱり私だけ間違っていたと思われてしまわないように、そこだけ気を付けたいと思います。

──それでは最後に井上さんから一言、観劇される方へメッセージをお願いします。

井上 まずこの作品は実話というところがすごく大きいと思っています。昭和40年の時代背景もすごく濃く表現されていますし、何よりこういう少女たちが本当にいたというのが感動的なストーリーだと思っています。それを演じることができてすごくありがたいと思っているし、一生懸命頑張らなきゃなと思っています。観に来てくださった方が明日も頑張ろうとか、ちょっとでも勇気がもらえたとか、すごく力を持った作品なので一生懸命取り組んでいきたいと思っています。よろしくお願いします。

 

【公演情報】
『フラガール -dance for smile-』
作:羽原大介、李相日
総合演出:河毛俊作
構成演出:岡村俊一
出演:井上小百合(乃木坂46)/矢島舞美/富田望生 /太田奈緒(AKB48)福島雪菜(劇団4ドル50セント)/味方良介、中山優貴(SOLIDEMO)/吉田美佳子、伊藤修子/有森也実/山崎銀之丞 ほか
●10/18~27◎日本青年館ホール
〈料金〉 S席9,500円 A席8,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉チケットぴあインフォメーション0570-02-9111(10:00~18:00)
●11/2~4◎サンケイホールブリーゼ
〈料金〉9,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
〈公式 HP〉http://www.rup.co.jp/

 

【取材・文・撮影(囲みソロ)/咲田真菜 舞台写真・囲み写真提供/RUP】

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