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ミュージカル・コメディ『恋のすべて』まもなく開幕!稲垣吾郎インタビュー

稲垣吾郎主演でミュージカル・コメディ『恋のすべて』が、まもなく東京建物Brillia HALLで上演される。(2月27日まで)

本作は、稲垣吾郎の舞台ではおなじみの鈴木聡の作・演出作品。03年の『謎の下宿人~サンセット・アパート~』から始まった2人のタッグは、これが7本目となる。今回は音楽監督に青柳誠を迎え、「恋と音楽」シリーズから続くバンドメンバーとともに、最高におしゃれで楽しい大人のミュージカル・コメディを届ける。

物語の舞台となるのは、1930年代のアメリカ。探偵ニック・テイラーのもとに、「娘を恋に落としてくれ」という奇妙な依頼人が現れる。亡くなった探偵仲間の未亡人に送金しているためお金が必要なニックは、気乗りせぬまま依頼を引き受けるが・・・。

共演には、花乃まりあ、石田ニコル、松田凌、北村岳子、羽場裕一ら個性と魅力溢れるキャストが集結。恋のときめきとほろ苦さ、笑いと切なさが交錯する鈴木聡ワールドが、華やかにスタイリッシュに繰り広げられる。

そんな作品『恋のすべて』で探偵ニック・テイラーに扮する稲垣吾郎に、この舞台や役柄について話してもらった。

甘い夢の中にずっといるような公演

──今回の舞台『恋のすべて』の上演についての思いから聞かせてください。

まず鈴木聡さんとまたご一緒できることがすごく嬉しいです。そして、こういう状況の中で舞台ができるということは本当に幸せだなと。鈴木さんとのお仕事は、僕にとって本当に「楽しい」しかなくて、いつも2ヶ月間くらい夢の中にいるような気がするんです。ちょっと非現実的で、どこかキラキラした甘い夢の中にずっといるような。作品のテイストもそうですし、鈴木さんも、バンドのメンバーも、みんながそんな空気を一緒に作ってくれる。いつも自分へのご褒美みたいな感じでこの期間を過ごしています。

──作品の内容についてはどんな印象ですか。

今回もすごく面白い台本です。僕が演じるニック・テイラーは探偵で、僕と同じくらいの年齢で、今までの人生でいろいろな経験をしてきた。だからもう恋はしなくなったけれど、それでもまだちょっとドキドキしていたいし、思わず心がゆらゆらと動いてしまったりする。この年齢の男性のそういう気持ちがうまく描かれていて、僕の等身大といってもいい役です。

──ニックは稲垣さんに似ていますか

似てるんじゃないかな。鈴木さんが僕に当てて書いてくださった役ですから。20年ずっと一緒にやってきた鈴木さんだからこそわかる「僕」なんでしょうね。僕はグループ活動をしていたので、どうしてもグループでの自分のポジションとかキャラクターみたいなものを意識してしまうし、いつもそういう方向のキャラクターを演じていなきゃいけないというサービス精神があるんです。でも今、ラジオを週に3回、ラジオの生放送と収録をやらせてもらっているんですが、ラジオはテレビよりも、僕の「素の部分」がにじみ出てしまうんです。隠せないというか。その僕の素の部分を、鈴木さんは舞台でうまく出してくれているなと思います。とくに、物語がうねっていく中で登場人物は様々な選択をして生きていくわけですが、その選択の仕方がニックと僕は似ているんです。本当は恥ずかしいからそのことは言いたくないし、「役とはまったく違う。役者だから演じています」と言いたいけれど、似てるんですよね(笑)。これはそういうシリーズの作品なので。このシリーズで僕自身も成長しているし、その年齢の僕が出ているので、今回は今の僕なんじゃないでしょうか。

スイング・ジャズから昭和歌謡テイストまで

──今回の時代背景は1930年代ですが、稲垣さんにはその時代のアメリカが似合うと鈴木さんはおっしゃっています

鈴木さん自身がその時代がお好きなんですよ。スイングの時代っていうのかな。文学で言うとアーネスト・ヘミングウェイや、F・スコット・フィッツジェラルドなどの時代で、すごく影響を受けていらっしゃると思います。その時代はアメリカの1つの黄金期で、キラキラしていた時代なんでしょうね。僕自身はそんなに影響は受けていないし、自分が似合うのかは全然わからないんですが、鈴木さんに教えてもらったりして、もっといろいろ知っていきたいですね。

──スイングの時代ということで、出てくる音楽はスイング・ジャズがメインなのでしょうか?

スイング・ジャズは沢山出てきます。とくに北村岳子さんが歌うスイングは、すごく素敵で、まさにベニー・グッドマンの世界ですね。そこに僕たち男性がコーラスしたり。それに、その時代の音楽ではないんですが、ビル・エヴァンスのピアノだけで歌うような、きれいなジャズ・ボーカルのバラードがあったりします。ただ、面白いことに基本はスイング・ジャズなんですが、美空ひばりさんが歌われていたような戦後のジャズ歌謡曲みたいなものも出てきます。どこか昭和感というか昭和歌謡的な、それがスイングとうまく結びついているんです。もちろん音楽の歴史というのは連綿と続いているものですから繋がっていると思いますが。そういう昭和歌謡テイストのものからスタンダードなジャズ、そして僕らが歌ってきたようなポップス、そういうエッセンスがいろいろ入っていますから楽曲が本当に素晴らしいです。全部で20曲近くあるので、耳でもすごく楽しめると思います。

──今回のカンパニーの方々の印象を聞かせてください

「恋と音楽」シリーズから続くこの作品は毎回そうなんですが、すごくいろいろな畑の方が集まっているのがいいですよね。僕のようにアイドルからの人間がいたり、ヒロインの花乃まりあさんは宝塚出身の方で、北村岳子さんは劇団四季で、羽場裕一さんは夢の遊眠社出身ですから演劇畑で、それに2.5次元系イケメンの松田凌さんがいたり。それぞれ鈴木さんの劇団ラッパ屋さんの世界観ともちょっと違う方たちで、そういう皆さんの融合感というか化学反応が面白いですよね。それがこの作品の魅力だと思うし、僕も演じていて楽しいです。

この作品でまた歌う楽しさを味わっている

──鈴木さんとのタッグは7作目になるわけですが、その中で稲垣さんのどんなところが引き出されていると思いますか?

僕のちょっと調子のいいところとか、実はおしゃべりなところ(笑)、それに人たらしなところかな(笑)。僕は今度始まるドラマ(『風よ あらしよ』NHK)では辻潤(ダダイズムの思想家)の役ですし、サイコパスだったり、天才音楽家だったり、自分とはまったく違うような役の方が多いんです。でも鈴木さんは、僕の本当の資質をわかっていて、少しコミカルなところとか明るいところとか、そういうところまでよく見ている。だから書かれる台詞なども自分の言葉すぎて、セリフを言うのが恥ずかしいくらいです(笑)。

──俳優としての稲垣さんは、今お話に出たようなシリアスな作品と、明るいエンターテイメントを絶妙に演じ分けていらっしゃいますが、そこはあえてバランスをとっている?

いや、単にどちらも楽しいからやっているだけですね(笑)。バランスを取らないと精神的に病むとかそういうメンタルの弱さは僕はまったくないので(笑)、いろんな役とのギャップを俳優として楽しんでます。それに今回のようなエンターテイメントは、役だけでなく音楽的にも楽しめるんです。僕らのグループはいつも最新のポップスというか、そのとき一番旬のアーティストの方に曲を作っていただいてそれを歌っていましたが、この舞台はもっといろいろなジャンルの音楽が楽しめる。初めてシャンソンやボサノバを歌ったのも「恋と音楽」シリーズでした。今回もこれまで出してないキーにも挑戦しています。そういう部分も観てくださる方には楽しいんじゃないかな。

──鈴木さんと出会って20年ということですが、稲垣さんにとって一番よかったなと思うことは?

一番はやっぱり音楽ですね。鈴木さんとの出会いでジャズと出会って、亡くなった佐山(雅弘)さんと出会えたし、バンドのメンバーとも出会えた。おかげでジャズの世界を、深掘りとまではいかなくても僕なりに探っていこうと思ったので。それにミュージカルという形で、歌手としてもう一度歌ってみようと思ったことは大きいですね。それまでは、音楽はグループとしての表現の1つでしかなくて、ソロで歌うことはあまり考えていなかったから。そういう意味ではまた歌う楽しさを味わっています。そして、そんな僕の楽しさが、観てくださる方たちにも伝わればいいなと思っています。

いながきごろう○東京都出身。俳優、歌手、声優、司会者、タレント。1991年にCDデビュー。2017年9月、「新しい地図」をスタート。俳優としては、2010年に映画『十三人の刺客』での演技で第23回日刊スポーツ映画大賞・助演男優賞、第65回毎日映画コンクール男優助演賞。2019年主演映画『半世界』で第31回東京国際映画祭で観客賞、第34回高崎映画祭で最優秀主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に、【映画】『海辺の映画館―キネマの玉手箱』『ばるぼら』、【ドラマ】『きれいのくに』、【舞台】『君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~』(18年、19年)『No.9─不滅の旋律─』(15年、18年、21年)『サンソン─ルイ16世の首を刎ねた男─』(21年)。本年3月下旬にドラマ『風よ あらしよ』(NHK BS4K・BSプレミアム)の放送が控えている。

【公演情報】


モボ・モガ プロデュース ミュージカル・コメディ 『恋のすべて』
作・演出:鈴木聡
作曲・音楽監督:青柳誠
出演:稲垣吾郎 花乃まりあ 石田ニコル 松田凌 北村岳子 羽場裕一
演奏:pf.青柳誠 vln.高橋香織 b.バカボン鈴木 g.三好“3吉”功郎 perc.仙波清彦
●2022/2/13~27◎東京建物Brillia HALL
〈料金〉S席11,500円 A席6,500円 車イス席11,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈チケット情報〉https://koinosubete.com/#ticket
〈公式ホームページ〉https://koinosubete.com/

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀 スタイリスト/細見佳代(ZEN creative) ヘアメイク/金田順子(June)】

〈衣装クレジット〉ジャケット¥88,000、ネクタイ¥14,300、パンツ¥29,700/すべてボス、シャツ/スタイリスト私物〈問い合わせ先〉ヒューゴ ボス ジャパン(株)03-5774-7670

 

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