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菊池風磨×田中樹の個性が輝かせる永遠の夢と友情!『DREAM BOYS』

2004年ジャニー喜多川作・構成・演出、滝沢秀明主演での初演以来、ジャニーズの錚々たるタレントたちによって演じ継がれている『DREAM BOYS』が、Sexy Zoneの菊池風磨主演、対峙するチャンプ役SixTONESの田中樹の強力タッグにより、帝国劇場で上演中だ(30日まで)。

『DREAM BOYS』は、ボクサーを目指す少年たちの夢と友情が相手を思いあうが故にすれ違い、また大人たちの思惑によって誤解が誤解を生んでいく波乱万丈のストーリーに、歌とダンスとワイヤーアクションなどの醍醐味をふんだんに盛り込んで作られた作品。初演から17年間に渡りジャニーズのタレントたちに受け継がれ、パワーアップを重ねながら上演が続いている。特に今回の2022年バージョンは、2020年公演以来新型コロナ禍によりノンストップ1幕ものに短縮されていた舞台を、本来の2幕構成に戻した上演で、2021年大好評を博した主演菊池風磨、チャンプ役田中樹による、客席へのフライングシーンなどを除いた初のほぼ全編上演が実現。『SHOCK』の顔として帝国劇場を知り尽くした堂本光一演出のもと、よりブラッシュアップされた舞台が展開されている。

【STORY】
幼少時からボクシングジムに通い、いつかチャンプになる夢を追っていたフウマ(菊池風磨)とジュリ(田中樹)は、互いに切磋琢磨を続ける親友であり、良きライバルだったが、ついに新人王争奪戦の決勝で戦うことになった時、フウマが突然3ラウンド目で試合を放棄。予期せぬ形で新人王となったジュリはボクサーとしての道を邁進し、フウマは俳優に転身。大きなわだかまりを残したまま、二人は疎遠になっていた。

それから8年。チャンプとなりジムの後輩に慕われ、彼らのカリスマリーダーとして尊敬を一身に集めているジュリのボクシング人生が、プロデューサーのマリア(紫吹淳)によって映画化され、しかもフウマが出演するという話にレイア(中村嶺亜)をはじめジムのメンバーたちは激怒。フウマが出演する限りこの企画には承諾できないと言い切るジュリに、フウマは土下座してまで映画化と出演を懇願する。そんなフウマにジュリはもう一度、8年前の決着をつける試合をするなら認める、という条件を出しフウマは再試合を受け入れる。かつてマリアの上司だった演劇プロデューサーのエマ(鳳蘭)は、マリアの言動に不審を抱くが、マリアはどこ吹く風の姿勢を貫く。

一方、ボクサーとして、チャンプとして経験を積んでいるジュリに、いまのフウマが太刀打ちできるのかと、フウマと同じ施設育ちの弟分コウキ(川﨑皇輝)は不安を募らせるが、そんな心配はいらないと、仲間たちとのデビューに向けてレッスンを重ねるコウキを逆に励ますフウマ。実はは心臓病を患っているコウキに移植手術を受けさせたい一心で、フウマはマリアから提示された多額の出演料を欲していたのだ。

やがていよいよ試合の日。チャンプのジュリに食らいついて闘うフウマのパンチがヒットし、リングに倒れたのはなんとジュリだった。だが、その直後マリアが、フウマの使っていたグローブに鉛の板が入っていたと告発。ジムの仲間たちはもとより、マスコミからの非難が集中したフウマをいまはしばらく身を隠すしかないと、エマが古い劇場に匿う。だが、その隠れ家を探し当てたレイアがフウマに襲いかかり、止めに入ったコウキともみ合いになったことから、事態は更に思わぬ方向へと転がり落ちていき……

全体を通して感じるのは、実は相手を思ってとった行動が誤解を生み、さらにのっぴきならない状況へと悪化していく、物語世界の意外な深刻さだ。そこには誰かがどこかで、ひとこと理由を言ってさえいれば回避できたはずの、小さな綻びがどんどん膨らんで収集がつかなくなる状況が怒涛のように描かれ、追い詰められていくフウマの孤独が痛いほどだ。けれども、今回作品が本来の2幕ものに戻ったことで、「何もかも引き受けてやろうじゃないか!!」の有名な決め台詞と共に、フウマが幕を引き下ろして終わる1幕の幕切れや、追われる彼が幕に映し出される摩天楼を、ロープ一本で飛び移っていくスパイダーフライングと呼ばれる名シーンなど、主人公に雪崩のように襲ってくる不幸を、華麗なケレンに展開させていく見事さに、エンターティメントを生涯追求し続けたジャニー喜多川の描く世界観の真骨頂があらわれている。更にその精神をまるごと引き継いだ堂本光一が、ある意味ドラマチックさを優先していた作風に、細かい改訂を加えて整合性を加味しているから、ストーリーや人間関係がよりわかりやすくなっていて、『DREAM BOYS』という作品自体が確実にアップデートされているのも頼もしい。何よりもおそらく世間一般に抱かれているイメージよりも、実はわかりやすいハッピーエンドに帰結しないことが多いジャニーズの舞台が、例え肉体が滅んだとしても、魂が継承されていく美しさを常に描いていること。時代が変わり、主演者、出演者が次々にバトンリレーを重ねながら、エンターティメントを支えていく、ジャニー喜多川が「ジャニーズ」という大きな存在に託した終わらない夢のひとつが、作品を形成している様が、堂本演出によってよりスタイリッシュに提示されている様がなんとも眩しかった。

その大切な作品の主演者としてバトンを託された菊池風磨が、柔らかな笑顔と、内に秘めた信念をにじませてフウマを演じている。代々演じる本人の名前がそのまま役名になるのがジャニーズ舞台の伝統でもあって、そこには演じる者それぞれの個性こそが、役柄を作っていくというスターを重んじる姿勢が込められているのだろうが、どんな苦境に陥っても、自身が発光している菊池の持つ華やかさは、まさに『DREAM BOYS』の主人公に打ってつけ。ストーリーが大きく変わることがないのは承知していながら、フウマが救われますようにと自然に祈りたくなる、役柄との親和性が抜群だった。

一方のチャンプ・ジュリの田中樹は、どこかに骨太な香りがある個性が、自身も秘密を隠しながら高みに立ち続ける孤高のチャンプ役にピッタリとあっていて、後輩たちから神格化されるほどに慕われている姿にも説得力がある。物語世界のなかでの菊池とのバランスも非常に良く、ジャニーズ事務所入所同期の間柄でもある二人が、それぞれに活躍の場を得ながら大きく成長して『DREAM BOYS』を輝かせている姿に感銘を覚えた。

フウマが大切に守ろうとするコウキの川﨑皇輝は、この作品のキーパーソンでもある役柄を、ジャニーズのアイドルたちのなかにいて、さらに目を引くキラキラとした存在感と真摯な演技で魅了すれば、チャンプを慕うレイアの中村嶺亜も、チャンプへの憧れが強いが故に、怒りのあまり暴走してしまう、やはり作品にとって欠かせない役どころを印象的に演じている。中村と同じくジャニーズJr.の実力派ユニット「7 MEN 侍」の菅田琳寧、本髙克樹、佐々木大光、今野大輝、矢花黎。「少年忍者」のヴァサイェガ渉、北川拓実、織山尚大、黒田光輝は、それぞれキャラクターが書き込まれ作品内での人物像に厚みが増したし、内村颯太、深田竜生、元木湧、檜山光成、青木滉平、豊田陸人と共に全員が生き生きと躍動している姿が爽やか。彼ら若者たちの運命を担うプロデューサー同士であるエマとマリアの鳳蘭と紫吹淳も、互いに抱える因縁がよりハッキリしたドラマのなかで、2幕冒頭にフウマと歌う「Sad Song」が復活したことも併せて、共に宝塚歌劇団の一時代を築いた元トップスターの押し出しが、若いアイドルたちの舞台を引き締めている姿が健在。『DREAM BOYS』のもうひとつの顔としての力量が顕著だった。

総じて、進化し続ける『DREAM BOYS』の確かな歩みが感じられる舞台になっていて、初日前に行われた囲み取材に、菊池と田中と共に「少年忍者」の川﨑皇輝、ヴァサイェガ渉、北川拓実、織山尚大、黒田光輝が登場したのも、常にジャニーズタレントの未来を担う人材がつないできた『DREAM BOYS』の歴史を感じさせた。

ここでも田中が「去年と同じ満点を目指す」と言うと「200点を目指せよ!」と菊池がすかさず重ねるのに、「ちょっとキャパオーバーして疲れちゃう」と答えたり、織山が菊池と田中に優しくしてもらって頑張れた、という内容の挨拶をすると「優しくした?」「いや、俺はしてない」と二人がこれぞ阿吽の呼吸でまぜっかえすなど和気藹々。

更に、まず主演・菊池風磨と書かれるが、今日から田中樹を先に書いて欲しい、それによって世の中を印象操作させていきたいという趣旨の、ウィットに溢れる田中の言葉に爆笑も生まれ、なんの遠慮もなく冗談が言い合える二人の関係性が、2022年版『DREAM BOYS』に力を与え、作品をさらに押し上げていく未来を感じさせていた。

【公演情報】
『DREAM BOYS』
エターナルプロデューサー:ジャニー喜多川
演出:堂本光一
出演:
菊池風磨(Sexy Zone)
田中樹(SixTONES)
7 MEN 侍
中村嶺亜・菅田琳寧・本髙克樹・佐々木大光・今野大輝・矢花黎
少年忍者
ヴァサイェガ渉・川﨑皇輝・北川拓実・織山尚大・黒田光輝・内村颯太
深田竜生・元木湧・檜山光成・青木滉平・豊田陸人
紫吹淳/鳳蘭
●9/8~30◎帝国劇場
〈料金〉S席 12800円 A席 8000円
〈お問い合わせ〉 03-3201-7777 東宝テレザーブ
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/dreamboys/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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