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柳楽優弥主演の新作『CITY』間もなく開幕! 藤田貴大インタビュー

マームとジプシーの主宰で作・演出家の藤田貴大、その新作『CITY』が、5月18日から彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで上演される(26日まで。その後、5月29日に兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、6月1日、2日は穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホールで上演)

今回の新作『CITY』は、男性中心のキャスティング、現代的な大都市を舞台とした物語、そしてモチーフがSFのヒーローなど、マームとジプシーのファンにとっても目新しい〝要素〟が多い。これは、今までの藤田作品と一線を画す意欲作になるのだろう。藤田自身が「新たなフェーズ」と語る『CITY』について、その当人に話を聞いた。

僕の中の「柳楽優弥」像を描く

──今作は男性中心のキャスティングになっています。女性キャストが中心だったこれまでの作品とは、明らかな作風の違いが出るのでしょうか?

20代の頃は女性に仮託した方が自分の気持ちや台詞を書きやすかったんですが、最近は男性の恥ずかしくなるようなバカバカしい会話も含めてありかもしれないとおもい始め(笑)。男性は男性の繊細さや面倒くささがあり、それを描くのも面白いかもしれないとおもっています。

──キャスティングの中心に柳楽優弥さんが象徴的にいます。柳楽さんに当てて書くのでしょうか?

柳楽さんの口調で書くという意味ではなく、僕の中の「柳楽優弥」像を描くつもりです。柳楽さんの出演作を見ると、演じる役柄からはみ出した「柳楽優弥」という存在をいつも感じます。きっとこれまでの作家も柳楽さんに当てて書いたんでしょうね。俳優・柳楽優弥のために書かれた言葉。今回はそれに挑戦したいです。柳楽さんのために書いた言葉と僕の言葉が、作品の中でどういう均衡で保たれるのか。でも、柳楽さんの出演作や本人のことを知るとかえって執筆の足を引っ張られることもある。悩ましいです。柳楽さん以外の登場人物は、フィクションの登場人物としてうまく書けそうなのですが。

その感覚を作品に落とし込みたい

──今作で描かれる「善悪」について、現時点の構想を聞かせて下さい。

僕自身も「いま善悪にこだわる理由」や「善悪とは何か?」ということを日々自問しています。この作品で一番こだわりたいのはそこですから。善悪の線引きや、線そのものを疑うような作品になるんじゃないかとおもっています。2019年を生きる中で、以前より政治について考えたりいろいろしますけど、「善悪」というのが、いまの自分にとって描くべきモチーフなんだとおもいます。

──藤田作品の変遷も関係しますか?

寺山(修司)さんや蜷川(幸雄)さんの作品に取り組んでその当時のことを考えると、例えば社会のシステムも今より隙があったんだろうなと感じます。だからこそ自分たちの力で変えられるかもしれないと考えることができる。当時に比べて今の若者が醒めているということではなく、システムが整い過ぎていて、怒りの感情があっても先に進めないというジレンマがあるようにおもいます。善なのか悪なのかははっきりとはわからない、だけど生理的に嫌だと感じる、いまのその感覚を作品に落とし込みたいと考えています。

──善でもない、悪でもない、正体不明の薄気味悪さ。

善悪を描くとき、以前は白黒つけることが一般的だったとおもいますが、今はそれではリアリティがないように感じます。人にはそれぞれの立場があって、善悪は誰にも決められない。この何年かでそういう経験をいくつもしました。また、演劇は自分の中の明確な答えを表現するものではありません。それではただのお説教になってしまう。「それはブログに書いてよ!」という話です。自分の中でまだ揺らいでいる感情を揺らいでいるままやることが演劇の魅力だとおもいます。「善悪」について自分の中でも混乱し続けているからこそ、僕はいまこの問題に取り組みたい。

観客の頭の中で長く再生され続ける作品を

朝のワイドショーでコメントをしている芸能人に嫌気が差す瞬間がある一方で、別の番組に出ている同じ人を見て笑ってしまうことがあります。朝には憎悪したその人を夜には好んで見るなんて支離滅裂な話です。でもその混乱、揺らぎこそが人だとおもいます。『CITY』はそういう、混乱している自分を積極的に反映させたいです。2時間という上演時間の中で物語を整理しようとするのではなく、もっとグチャッとしたまとまりのない状態で観客に渡し、観客の考える余地を残すことが重要だと考えています。

──今回は未成熟さ、未完成さを重視している?

作品としてはもちろん完成されたものになります。ただ、テーマやコンセプトを言い切ることには抵抗がある。昨年の『BOAT』では、青柳(いづみ)演じる「除け者」がラストシーンでテーマをかなり直接的に言い切りましたが、あれから1年しか経っていないのに、言いたいことを言い切ることが難しい世の中になっているように感じます。もっと曖昧な、揺らぎをテーマに含ませたいし、揺らいでいること自体を観客に渡したいです。

──劇作家・藤田貴大にとってはチャレンジですね?

これまではラストシーンに向けて熱量を加速させ、強い印象で作品を終えてきました。でも今回は淡いの中に消えて行くようなラストでも良いのではないかと考えています。『BOAT』の終わり方自体は、僕自身も言いたいことを言い切ったものだったとおもっています。でも最後に圧倒されて、感動するだけで終わってしまったようにも感じていて。もう少しラストを滲ませた方が、観客の頭の中で長く再生される作品になれたかもしれないという想いが今はあります。リフレイン(※初期のマームとジプシーを代表する、ひとつのシーンを角度を変えながら複数回繰り返す手法)の効果は劇場の中だけで終わるものではなく、劇場を出た後や、次の日にだって観客の頭の中で再生される。同じように、観客の頭の中で長く再生され続ける作品を作ることが重要だとおもっています。今回は気持ち良いラストシーンでは終わらせたくない。あるいは気持ち悪さかもしれませんが、観終わって何かが残る感覚にしたいし、都市の生きづらさに繋がるような作品を目指したいです。

ふじたたかひろ○85年生まれ、北海道出身。劇作家、演出家、マームとジプシー主宰。07年、桜美林大学在学中にマームとジプシーを旗揚げ。以降全作品で作・演出を担当する。11年に三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』を発表し、第56回岸田國士戯曲賞を受賞。19年5月~6月に新作『CITY』を上演する。

【公演情報】

『CITY』

作・演出◇藤田貴大

出演◇柳楽優弥 井之脇海 宮沢氷魚 青柳いづみ/菊池明明  佐々木美奈  石井亮介 尾野島慎太朗 辻本達也 中島広隆 波佐谷聡 船津健太 山本直寛/内田健司(さいたまネクスト・シアター)  續木淳平(さいたまネクスト・シアター)

●5/18~26◎彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

●5/29◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

●6/1・2◎穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール

〈お問い合わせ〉彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(休館日を除く 10:00~19:00)

https://www.saf.or.jp

 

【取材・文/園田喬し 撮影/山崎伸康】

 

 

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