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四半世紀の感動が今ここに『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』レポート!

朝夏 瀬奈 彩輝 麻路 姿月 春野 水

今や日本ミュージカル界きっての人気作品として定着しているミュージカル『エリザベート』が、1996年宝塚歌劇団で初演されてから四半世紀、25周年を迎えたことを記念して、歴代キャストが集った『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』が、4月5日~11日大阪・梅田芸術劇場メインホール、4月17日~5月5日東京・東急シアターオーブで華やかに開催された。(緊急事態宣言を受け、4月28日~5月5日の公演は残念ながら有観客公演は中止となったが、一部回を除き無観客ライブ配信公演として上演が続いている)。

ミュージカル『エリザベート』は、『モーツァルト!』『レベッカ』『マリー・アントワネット』など、数々の大ヒットミュージカルを生み出した脚本・作詞ミヒャエル・クンツェ、音楽・シルヴェスター・リーヴァイのゴールデンコンビによるミュージカル。1992年のウィーン初演以来、オーストリー・ハプスブルク帝国の皇后エリザベートの、自由を求め続けた生き様と、その思いの象徴でもある「死=トート」を具現化した幻想性があいまって大ヒットとなり、世界中で上演が重ねられてきた。

そんな作品の本邦初演を担ったのが宝塚歌劇団雪組で、のちに宝塚のみならず、日本ミュージカル界の雄となる小池修一郎が、男役が主演を担う宝塚のテーゼに合わせ、エリザベートの分身ともとれる存在だった「死」を、エリザベートを愛し、彼女に愛されたいと願う「黄泉の帝王」と位置づける大胆な潤色を考案。これによって、人が生を受けた以上必ずその日を迎える絶対的存在であるはずの「死」が、生きたままのエリザベートに愛されたいと願う究極のパラドックスを抱えるという更なる幻惑を生み、「愛と死の輪舞」と名付けられたトートの為の新曲を含めた作品は熱狂を持って迎えられる。その後各組での再演が続き、宝塚歌劇団を代表する人気作品として定着している。

今回の『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』は、その歴代キャストの多くが大集結。ハンドマイクを持っての歌唱だが、ほぼ全編の楽曲が網羅され、ひとつの作品としても十二分に楽しめる夢の祭典が実現した。

基本的には出演者全員が衣装とヘアメイクも全て再現する「フルコスチュームバージョン」と、それぞれのキャストが役柄のイメージにあった衣装を着用して繰り広げる「アニヴァーサリーバージョン」という大きく分けて二つの括りがあるが、「アニヴァーサリーバージョン」で歴代スターたちが各自着用した衣装の数々も、凝った趣向のものばかりで、年代に合わせ、場面に合わせての着替えも幾度もあり、「フルコスチュームバージョン」にも決して引けを取らない華やかさ。作品世界が立ち上るのはもちろん、当時の思い出が瞬時にして蘇った。

明日海トート

特に大阪公演の初日には麻路さき、姿月あさと、彩輝なお、春野寿美礼、瀬奈じゅん、水夏希、朝夏まなと7人のトート、白城あやか、大鳥れい、白羽ゆり、蘭乃はな、愛希れいか、実咲凜音6人のエリザベートが勢揃い。次々と入れ代わりながら各場面を歌い継いでいく様は、ただ豪華のひと言。それぞれの個性の違いも現れ、何よりも誰もが現役時代よりも更に歌唱力をアップさせているのに驚かされる。瀬奈は二幕でルキーニも演じ、闊達な表現が光った。特にこのアニヴァーサリーバージョンのみの出演だった愛希れいかが「私だけに」から1幕ラストの鏡の間までの、エリザベートのハイライト部分を担当。堂々たる演技と歌唱で、退団後女優としてもエリザベートを演じている経験値の高さを如実に示した。

また、東京公演の初日も参加した顔ぶれに若干の違いはあったが、愛希以外は双方に参加したキャストの持ち場を変えてきた構成が光り、この両日だけで様々な歌を聞くことができる粋なはからい。東京初日には単独の再現日が残念ながらなかった彩輝なおが、ハンガリーへの旅から1幕ラストまでの長尺な場面を受け持ち、短髪のトートという新鮮な出で立ちと、退団後飛躍的に伸びた歌唱力を印象づけていたのが嬉しい。皇帝フランツに稔幸、和央ようか、初風緑、彩吹真央、霧矢大夢、北翔海莉が揃い、霧矢は2幕ではルキーニも演じる大活躍。ルドルフもあの凝縮した出番の中で、えまおゆう、大空ゆうひ、彩吹が演じ継ぎ、フランツ共々、もっと観たい!とドキドキさせられる。このメンバーの中に少年ルドルフで安蘭けいが登場するのもSpecial感を高め、在団時、また退団後と高い歌唱力で魅了し続ける安蘭から、「ママ、どこなの」の愛らしい少年の声がスッと出るのが奇跡のようだ。やはりアニバーサリーのみの出演の初風緑のフランツが「夜のボート」の低音を美しく響かせた。

朝夏トート

実咲エリザベート 朝夏トート

こうした特別なお祭り感のある公演もあれば、フルコスチュームによる「16年宙組バージョン」で朝夏まなとトートと、実咲凜音エリザベートの邂逅が実現。2016年上演ということは5年前!?がむしろ驚きなほど、当時のままの黄泉の帝王とエリザベートが登場し、朝夏独特の指先の使い方にも現役時代が一気に蘇ってくる。それでいて数々の大作ミュージカルでヒロインを務めている女優としての蓄積も生きて、声が更に伸びやか。「私が踊る時」の鮮やかな決めポーズは、朝夏&実咲コンビの白眉。北翔海莉のフランツの馥郁とした歌声も聞きもので、この人の持つ温かさは皇帝の誠実さに実によく似合い、「夜のボート」の切なさが胸に染みた。

実咲エリザベート 朝夏トート

実咲エリザべート 朝夏トート 北翔フランツ

そんな新鮮な顔合わせもある中で、元月組の宇月颯がかつて新人公演で演じたルキーニ役の大任を務め、大阪初日にはさすがに固さも見られたが、回を重ねる毎にめきめきと実力を発揮。東京公演時点では、水を得た魚の如く自由に、のびのびと全体を率いるルキーニを活写していたのが忘れ難い。宇月がこの公演の間に見せた長足の進歩は「スターはライトが育てる」ことを証明していて、ダンス、芝居、歌と三拍子揃った得難い実力派が、この特別な機会に真価を発揮できたことに、演劇の神様の存在を感じた。

蘭乃エリザベート 明日海トート

蘭乃エリザベート 宇月ルキーニ

もうひとつのフルコスチュームは「14年花組バージョン」。やはりまるであの日のままに見える明日海りおトートの麗しき再降臨だったが、外見の変わらなさに比してトート役の演技が格段に深まり、死が愛を求める葛藤を描ききっていたのに瞠目させられた。思えば明日海にとって『エリザベート』は花組トップスターとしての披露公演で、そののち続いた明日海時代の充実を思い返せば、この深化はむしろ当然の趣。最初の相手役蘭乃はなのエリザベートの、己を信じる力に特段の強さのある表現が突き抜けていて、懐かしい力感のあるエリザベートを再現していた。この二人を相手に大阪では鳳真由がフランツに初挑戦。大変な緊張だったと思うが、新人公演主演経験も豊富な人だけに、その緊張を感じさせず、生まれついての高貴な身分であるが故に、愛していながらエリザベートの苦悩が理解できない皇帝の矛盾を表現していた。更にルドルフ役には七海ひろきが登場。退団後の目覚ましい活躍で、宝塚OGの新たなジャンルとも言える立ち位置を切り拓いている七海の憂愁の貴公子ぶりが眩しい。

蘭乃エリザベート 明日海トート 鳳フランツ

七海ルドルフ 明日海トート

また14年上演時に新人公演でエリザベートを演じた、二代目の相手役花乃まりあとの夢のコンビが東京で実現したのもこうした公演ならでは。花乃は瑞々しく美しく、自らが自由を求める渇望によって、ある意味で壊れていくエリザベートの変化を巧みに表現。高音も美しく伸びて、隠れた難曲である「パパみたいに」を軽々と歌い切った。

もうひとつ東京では、4月11日に宝塚歌劇を退団したばかりの望海風斗がルキーニ役で登場する大きな話題が。髪型から工夫があり、明日海トートとの同期生ならではのあうんの呼吸が楽しく、やはり望海のルキーニは適役だなと感じさせられる。更に「16年宙組バージョン」に加わった公演では、下級生時代にある種のコンビのようですらあった、朝夏まなとトートに対しての望海ルキーニが実現。朝夏、実咲、望海の三人が中心になったバウホール公演などの記憶も蘇り、良い意味で力が抜けている、謂わば下級生の顔をしている望海を久しぶりに見たという感慨があった。

懐かしい組み合わせは更に多々あり、東京で展開されたアニヴァーサリーバージョンの数々には、歴代の上演メンバーが多く集う公演が設けられた。水夏希率いる「07年雪組バージョン」では在団時からシャープな個性が際立っていた水に妖艶さが加わり、歌唱面の進化も顕著で「最後のダンス」のシャウトなども、巧みに自分の得意な音域に落とし込む技巧も見せて惹きつける。皇帝としての実直さと厳格さと、エリザベートへのひたすらな愛を両立させる彩吹のフランツ、歴代随一のロイヤル感を放ち、突き詰めた切迫感を感じさせる凰稀かなめのルドルフが集った中、大鳥れいのエリザベート、霧矢大夢のルキーニと新鮮な顔合わせを「宝塚はひとつです!」で括った水の、カーテンコールでの挨拶も美しかった。

瀬奈じゅん率いる「09年月組バージョン」は、歴代でも群を抜く「ロックな黄泉の帝王」だった瀬奈の個性が際立つ。前日のルキーニとは打って変わって高貴な香りを振りまく霧矢大夢のフランツ、どこか儚い切なさが噴出した大空ゆうひのルドルフと、これもまた夢の共演。カーテンコールでは三人が中心になった『パリの空よりも高く』の話題も飛び出し、瀬奈を永遠の憧れの人と慕う宇月颯がルキーニを演じている特段のドリーム感も加わって、万感の思い溢れる月組デーになった。瀬奈との縁が深い大鳥れいのエリザベートもよく座に馴染んだ。

その瀬奈が二番手時代に「オサアサ」と親しまれた、春野寿美礼率いる「02年花組バージョン」は春野の圧倒的な歌唱力が劇場の空気を掌握。在団時から歌の人として知られたが、退団後もその歌唱力はうなぎのぼりで、万座をひれ伏させるような力感のある歌声にただただ聞きいる。数多くのバージョンでエリザベートを務めた大鳥れいとのコンビ感も当然ながら絶大で、この二人での02年の上演からはじまった「私が踊る時」の歌い合いが感慨深い。瀬奈のルキーニの自由闊達ぶりが楽しく、霧矢のフランツともしっくりとあい、彩吹のルドルフの雪組バージョンでフランツを演じた同じ人とは思えぬ瑞々しさが揃って、強い結束を示した再現になった。

そこから、非常に残念なことに有観客での最後の公演になった姿月あさと率いる「98年宙組バージョン」は、フランツの和央ようか、ルキーニの湖月わたる、ルドルフの朝海ひかる、ゾフィーの出雲彩と鉄壁の布陣。長身揃いの宙組誕生の系譜が懐かしく思い出される。歌唱力に秀でる姿月あさとは、退団後歌手としての仕事に大きな足跡を残していて、シャンソンやタンゴの世界でも数々の代表曲があるが、誤解を恐れずに言うならば、やはりこの『エリザベート』のナンバーが、姿月の真骨頂だと感じさせた。

ここからの公演が無観客配信になったが、それを忘れさせる熱量を放った麻路さき率いる「96年星組バージョン」は、初演の主演者一路真輝と花總まりが、初日の映像出演のみになったこともあって、今回のガラコンサートでは最も歴史ある座組み。一路率いる雪組初演が、女性だけの歌劇団がほぼ歌だけで綴られる男女の声を想定して作られたミュージカルを上演する、その突破口を開く快挙を成し遂げた公演だったのに対して、ほとんど間を置かない再演になった麻路96年星組バージョンが、『エリザベート』の宝塚化をある意味で完成させた公演だったことを改めて思い出させる。麻路の存在感は鉄壁で、ここに登場してくれたことが尊い白城あやかエリザベート、歌唱面を含め安定感が際立った稔幸フランツ、えまおゆうルドルフに混じって、湖月わたるがルキーニを演じることに全く違和感がなく、月影瞳の少年ルドルフを含め、宝塚の『エリザベート』の歴史を体現していた。

他にも紫城るいのリヒテンシュタインは、安蘭けい同様このポジションでこの人が登場する贅沢さを振りまいたし、芽吹幸奈も実力を発揮。迫力満点の出雲綾ゾフィーに拮抗し得た純矢ちとせ。別格の存在感を放ったマダムヴォルフの嘉月絵理。エリザベートが求める自由の象徴である父親マックスの越乃リュウの粋と、宝塚歌劇団現役生として唯一の出演になった悠真倫の滋味深さが貴重だった。ルドルフには他に澄輝さやと、蒼羽りくのスター格も集合。少年ルドルフは安蘭、月影に並んで初嶺麿代、望月理世、桜舞しおん、矢吹世奈が個性を競った。

これら厳密に言って同じ公演はない日々変化するガラコンサートを支えたのが全公演出演者。ラウシャー大司教他の綾月せり。エルマー他の麻尋えりか。グリュンネ他の扇けい。ルドヴィカ他の愛純もえり。マダムヴォルフ他の大月さゆ。ケンペン他の美翔かずき。ヒュープナー他の如月漣。ヘレネ他の琴音和葉。ヴィンディッシュ嬢他の玲実くれあ。スターレイ他の咲希あかね。ツェップス他の天真みちる。シュヴァルツェンベルク他の貴澄隼人。家庭教師他の菜那くらら。死刑囚の母他の花陽みく。シュテファン他の煌海ルイセ。ジュラ他の蒼矢朋季の活躍なくしてこの公演は存在せず、主演を飾るスターたちが口々に感謝の言葉を述べていたのもうなづける。それぞれが大きな持ち場を見事に果たしていて、宝塚歌劇の結束を改めて知らしめてくれていた。西野淳指揮によるダット・ミュージック・オーケストラも、キャストの個性を殺さない素晴らしい演奏で、日々の公演を盛り上げた。

このスペシャルなガラコンサートを締めくくるのは、望海風斗トート、夢咲ねね第一幕、明日海りお第二幕エリザベートという、宝塚歌劇団在団時には実現が不可能だった、まさに夢の組み合わせによる「アニヴァーサリースペシャルバージョン」。5月3日17時、4日17時、5日13時ライブ配信と、5日大千秋楽は全国映画館でのライブ中継も実施され(緊急事態宣言都市の上映は中止)、夢の祭典がどこにいても視聴できる。四半世紀を超えた宝塚歌劇の財産演目『エリザベート』が30周年の道を歩みはじめる第一歩ともなる、ドリームバージョンを是非体感して欲しい。

【公演情報】
『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
構成・演出・訳詞:小池修一郎
演出:小柳奈穂子
●4/5~11◎梅田芸術劇場メインホール
●4/17~5/5◎東急シアターオーブ(4/28以降中止)

【今後の無観客ライブ配信】
●5/3(月・祝)17:00、5/4(火・祝)17:00、5/5(水・祝)13:00 アニヴァーサリースペシャル ver.
★視聴方法&視聴チケット購入方法
5/3&5/5 https://www.umegei.com/elisabethgala25/special.html#live
5/4 https://www.umegei.com/system/news/detail/5351

★映画館でのライブ・ビューイング
5/5 13:00 (緊急事態宣言都市での上映は中止)
〈お問い合わせ〉https://liveviewing.jp/elisabethgala25/

〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 0570-077-039(10:00-18:00)
〈公式ホームページ〉https://www.umegei.com/elisabethgala25

 

【取材・文/橘涼香 撮影/Studio Elenish】

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