南座「三月花形歌舞伎」開幕!
平成生まれの花形俳優陣が競演する「三月花形歌舞伎」の初日が南座で3月4日に賑々しく開幕した。
本公演は、活躍著しい中村壱太郎、尾上右近、中村鷹之資、片岡千之助、中村莟玉の五名が、ご当地京都にもゆかりある歌舞伎三大名作の一つ『仮名手本忠臣蔵』に挑む。
大序から四段目までを解説〈仮名手本忠臣蔵のいろは〉にて紹介。
五段目・六段目は役替りにて上方式と江戸式の違いを堪能。
続く『忠臣いろは絵姿』は七段目から十一段目の討入りまでの名場面を織り交ぜた内容で、
一度に『仮名手本忠臣蔵』の世界を楽しむことができる。
また新型コロナウイルス感染予防対策により、長らく南座での“大向う”は中止になっていたが、政府自治体の規制緩和を受け、本公演より、南座での“大向う”を再開した。
花形俳優による清新な演技で熱気あふれる「三月花形歌舞伎」、公演は3月26日(日)まで。(9日・16日は休演日)
◎午前の部【Aプロ】
解説〈仮名手本忠臣蔵のいろは〉大序から四段目まで
午前の舞台に解説を勤める尾上右近が登場すると、本日より再開となった“大向う”から威勢のよい「音羽屋!」の掛け声が響く。大勢の観客を前に「この三月花形歌舞伎も三年目。わたくしは二度目の出演となります。若手一同、平成世代の忠臣蔵ということをテーマに、熱い熱い舞台をお届けしたいと思っております。今回お届けするのは『仮名手本忠臣蔵』の世界でございますが、歌舞伎にとって超大作、最高傑作でございます。全十一段を通し上演しますと、丸一日かかりますが、今回は解説、お芝居、舞踊・立廻りなど様々な要素を織り交ぜまして、ぎゅぎゅっと凝縮して3時間ほどでお届けします。」と挨拶。続いて、物語のはじまり、大序から四段目までのあらましを舞台写真を交えながら紹介。最後には、南座のキャラクターみなみーなも舞台上に登場。SNSで事前に募集した観客からの質問に答えるとともに、写真撮影の時間も設けるなど、和やかに観客を忠臣蔵の世界に案内した。
一、『仮名手本忠臣蔵』五段目・六段目
Aプロはかつて中村壱太郎の祖父・坂田藤十郎も勤めた「上方式」での上演。芝居のそこかしこに、主人公勘平の感情の起伏が色濃く描かれている。
〈五段目〉主人公の元浪士早野勘平を勤めるのは、上方歌舞伎の次代を担う中村壱太郎。ご当地京都・山崎街道にて、中村莟玉扮する浪士の千崎弥五郎と再会し、仇討ちに参加する意を表す。
その日の夜、勘平の女房おかるの父与市兵衛が、勘平をもとの身分に戻すためにと身売りを決めたおかるの身売り金の半分、五十両をもって家路に帰るところ、稲むらから中村鷹之資扮する斧定九郎に刺し殺され、金を奪われる。歌舞伎の様式美にあふれた定九郎の動きと「五十両」の野太い台詞に観客は釘付けに。折からそこへ、猪が現れ、鳴り響く銃声の音。銃が命中した定九郎はあえなく死を遂げる。銃を撃ったのは、勘平。勘平は躊躇したものの、財布を抜き取り、その場を去るのだった。
〈六段目〉一夜明けた、与市兵衛の家。片岡千之助扮する勘平の女房おかると、先ほどの解説とは打って変わり祇園町の女将・一文字屋お才として登場したのは尾上右近。身売りについて話しているところへ、勘平が帰宅する。おかるの心遣いに感謝したのも束の間、自身が手にした財布が与市兵衛のものだと判明すると狼狽するが、その場を取り繕う。そして、泣いて別れを惜しむ、勘平とおかるの二人。俳優陣の熱の入った演技に客席からは拍手が巻き起こる。
やがて亡骸となった与市兵衛が家に運び込まれる。次第に追い込まれ、切迫した息遣いの勘平に、観客も息をのみ、事の次第を見守る。千崎弥五郎らに問い詰められた勘平は刀を腹へと突き立てるが、与市兵衛の傷が刀によるものと判明、勘平の疑いははれる。勘平演じる壱太郎の迫真の演技に、食い入るように舞台を見ていた客席からは、感嘆するように拍手が送られた。
二、『忠臣いろは絵姿』(Aプロ・Bプロ同一演目)
〈上の巻〉舞台が始まる前には忠臣蔵ではお馴染みの“口上人形”が登場。お客様を再び忠臣蔵の世界に誘う。明かりがつくと、舞台は桜満開の山科・大石神社。壱太郎扮する芸者春虹と右近扮する幇間栄壽が花道から登場。千之助扮する茶屋娘おせんとともに、かわるがわる七段目からの十段目の名場面を披露する。茶屋娘おせんの扮装のまま『七段目』の立役平右衛門を演じたり、『八段目』では、道行の様子を壱太郎と千之助が人形振りでみせたり、『十段目』では面(めん)を使って右近が、何役も踊り分けたり、最後には華やかな総踊りと、目にも楽しい趣向に富んだ一幕に、場内も笑い声がこぼれ、一気に明るい雰囲気に。
〈下の巻〉力強い大薩摩の演奏に続いて、浅葱色の幕が振り落とされるとそこは一面雪景色。千之助扮する大星力弥の立廻りに続き、「十一段目」眼目の激しい泉水の立廻りを鷹之資扮する小林平八郎と莟玉扮する竹森喜多八がみせる。さらに、壱太郎と右近も浪士として加勢し、最後には舞台上に五人が勢ぞろい。忠実の浪士さながら、若さと熱量あふれる五人の八面六臂の活躍に、客席からは万雷の拍手が送られ、幕となった。
◎午後の部【Bプロ】
解説〈仮名手本忠臣蔵のいろは〉大序から四段目まで
大きな拍手に迎えられ、中村壱太郎が登場。本日より再開となった“大向う”から「成駒家!」の掛け声がかかると、壱太郎から「嬉しいですね、今月から大向うが復活しまして、もう一度聞かせてください!」と、“大向う”とのコールアンドレスポンスを披露。お客様を前に「この三月花形歌舞伎は、平成生まれの俳優が中心となって、古典の演目を現代に意味を持って上演するというテーマになっております。今年は『仮名手本忠臣蔵』です」とご挨拶。続いて、物語のはじまり、大序から四段目までのあらましを舞台写真を交えながら紹介。最後には、南座のキャラクターみなみーなも舞台上に登場。SNSで事前に募集したお客様からの質問に答える一幕も。「初日前夜、当日はどんな気持ちですか」との質問に「私は興奮しいなので、ほとんど眠れず、朝は5時くらいに起きて、ハイテンションのまま先ほどAプログラムの勘平を終えました」と答えたり、写真撮影の時間も設けたりと、和やかにお客様を忠臣蔵の世界に案内した。
一、『仮名手本忠臣蔵』五段目・六段目
Bプロは「江戸式」の音羽屋型での上演。主人公早野勘平のすっきりとしたかっこよさが光る演出の数々で、歌舞伎ならではの様式美に富んでいる。
〈五段目〉主人公の元浪士早野勘平を勤めるのは、歌舞伎はもちろん、他方面での活躍が光る尾上右近。ご当地京都・山崎街道にて、中村鷹之資扮する、浪士の千崎弥五郎と再会し、仇討ちに参加する意を表す。その日の夜、勘平の女房おかるの父与市兵衛が、勘平をもとの身分に戻すためにと身売りを決めたおかるの身売り金の半分、五十両をもって家路に帰るところ、稲むらから斧定九郎に刺し殺され、金を奪われる。折からそこへ、猪が現れ、鳴り響く銃声の音。銃が命中した定九郎はあえなく死を遂げる。銃を撃ったのは、勘平。勘平は躊躇したものの、財布を抜き取り、その場を去るのだった。
〈六段目〉一夜明けた、与市兵衛の家。中村莟玉扮する勘平の女房おかると、先ほどの解説とは打って変わり祇園町の女将・一文字屋お才として登場したのは中村壱太郎。身売りについて話しているところへ、勘平が帰宅する。おかるが家に帰った勘平の着替えを手伝い、おかるの心遣いに感謝したのも束の間、自身が手にした財布が与市兵衛のものだと判明すると狼狽するが、その場を取り繕う。そして、泣いて別れを惜しむ、勘平とおかるの二人。俳優陣の熱の入った演技に客席からは拍手が巻き起こる。
やがて亡骸となった与市兵衛が家に運び込まれる。次第に追い込まれ、切迫した息遣いの勘平に、観客も息をのみ、事の次第を見守る。おかるの母おかやにぶたれた後、二人侍を迎える前に刀をみながら頭を整えるなど、随所に受け継がれた歌舞伎ならではの美しさが際立つ。やがて千崎弥五郎らに問い詰められた勘平は刀を腹へと突き立てるが、与市兵衛の傷が刀によるものと判明、勘平の疑いははれる。いまわの際での「色にふけったばっかりに」の台詞は江戸式の六段目を象徴する部分の一つ。腹を切ってなお、切々と思いを吐露する勘平の姿を観客は固唾をのんで見守り、幕切れには熱演に対し、拍手が送られた。
【公演情報】
「三月花形歌舞伎」
2023年3月4日(土)~26日(日)劇場:南座
【休演】9日(木)、16日(木)
◎午前の部 午前11時~
◎午後の部 午後3時30分~
《Aプロ》
解説 仮名手本忠臣蔵のいろは
大序より四段目まで
尾上右近
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
五段目
六段目 山崎街道鉄砲渡しの場
同 二つ玉の場
与市兵衛内勘平腹切の場
早野勘平 壱太郎
女房おかる 千之助
千崎弥五郎 莟玉
原郷右衛門 吉之丞
母おかや 千次郎
判人源六 翫政
百姓与市兵衛 寿治郎
斧定九郎 鷹之資
一文字屋お才 尾上右近
二、忠臣いろは絵姿(ちゅうしんいろはのえすがた)
上の巻
下の巻 花の山科
雪の討入
芸者春虹/小汐田又之丞 壱太郎
小林平八郎 鷹之資
竹森喜多八 莟玉
茶屋娘おせん/大星力弥 千之助
幇間栄壽/大鷲文吾 尾上右近
《Bプロ》
解説 仮名手本忠臣蔵のいろは
大序より四段目まで
壱太郎
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
五段目
六段目 山崎街道鉄砲渡しの場
同 二つ玉の場
与市兵衛内勘平腹切の場
早野勘平 尾上右近
女房おかる 莟玉
不破数右衛門/斧定九郎 吉之丞
母おかや 菊三呂
判人源六 荒五郎
百姓与市兵衛 寿治郎
千崎弥五郎 鷹之資
一文字屋お才 壱太郎
二、忠臣いろは絵姿(ちゅうしんいろはのえすがた)
上の巻
下の巻 花の山科
雪の討入
芸者春虹/小汐田又之丞 壱太郎
小林平八郎 鷹之資
竹森喜多八 莟玉
茶屋娘おせん/大星力弥 千之助
幇間栄壽/大鷲文吾 尾上右近
※午前の部/午後の部 同一演目にて上演します
〈料金〉1等席11,000円 2等席6,000円 3等席4,000円 特別席12,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットWeb松竹(24時間受付)
チケットホン松竹(10:00-17:00)0570-000-489
または 東京 03-6745-0888 大阪 06-6530-0333
〈公式サイト〉https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/806