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『扉座版 二代目はクリスチャン』上演中! 横内謙介・石田ひかり インタビュー

劇団扉座は今年40周年を迎えた。その記念公演の一環として、故つかこうへいの小説をもとにした『扉座版 二代目はクリスチャン』を、10月21日~31日、すみだパークスタジオ倉で上演中だ。

原作は1985年に雑誌「野生時代」に発表され、すぐに映画化、シスター姿のヒロインがドスを構える姿が衝撃を呼んだ。今回はその原作を今に置き換え、つかこうへい作・演出の『飛龍伝‘94』で初舞台を踏んだ石田ひかりをゲストに迎えた。

物語は、反社会勢力として人権を奪われ、もはや絶滅寸前となったヤクザの世界へ、修道女でありながら極道の妻となった今日子が、服役を超えて帰って来る。そこに何故か木村伝兵衛まで登場して……!

つかこうへいへのオマージュに満ちたこの公演について、稽古も終盤という時期に、作・演出の横内謙介と扉座初出演の石田ひかりに、本作について語り合ってもらった。

石田ひかり 横内謙介

今の時代ならではのヤクザファンタジーに

──石田さんは、つかこうへいさんの作品に出演するのは、94年の『飛龍伝‘94』以来ですね。

石田 まさかもう一度つかさんの世界に戻ってこれるとは思っていなかったので、今、台詞を言ったり、流れてくる音楽で歌ったりしながら、当時のことを思い出しています。

──この作品には石田さんが必要ということで、横内さんが出演を希望されたそうですが、今一緒に作っていていかがですか?

横内 とても魅力的な方ですから、ヤクザに惚れちゃったクリスチャンというところもチャーミングに見せていただけると思っていたし、実際にその説得力もあると思っています。びっくりしたのは、最初は今の石田さんに寄せて、わりとリアルな芝居で作っていこうと思っていたので、衣裳も子分たちはジャージですが、石田さんにはちゃんとしたものをと考えていた。そしたら「私もジャージを着たい」と(笑)。

石田 ラジオで横内さんと幻冬舎の見城(徹)さんが話していらっしゃるのを聞いて、見城さんはつかさんの担当をされていたので当然なのですが、横内さんがつかさんにそこまで影響されていたというのは、そこで初めて知って、「そうなんだ!」と。私も『飛龍伝‘90』でつかさんの作品を初めて観て、そのときの衝撃は今でも忘れられないんです。そういう思いを共有する3人なら、これはもう振り切ってやってしまったほうがいいんじゃないかと。それで勝負服にさせていただきたいと(笑)。逃げも隠れもごまかしもできない姿で、覚悟を決めて挑まないといけないなと思ったんです。

──今回の脚本は、まさにつか芝居のエッセンスが満載で、そこに今の日本の状況なども入ってきて、なおかつどんでん返しがありと、劇作家・横内謙介の面目躍如という仕上がりになっていますね

横内 『二代目はクリスチャン』は扉座に向いてるなと思っていたんです。ヤクザ役ができるというか、それこそジャージの似合う人たちが沢山いるから(笑)。ただ、この10年くらいでヤクザの周りで起こったことが劇的すぎて、社会的に絶滅危惧種みたいになっている。つまり、ある時代の清算としてヤクザが追いやられている。でもそこには僕らの生きてきた社会の歪みが清算されないままずっと来てるということも重なっているので、昔のままの『二代目はクリスチャン』でやってしまったら、それはファンタジーを超えて、ただのゲームにしか見えなくなってしまう。だからファンタジーという形に留めながらも今の時代を入れないといけない、ということがあって、今日子の役もちゃんとした人でないとという思いがあったんです。それで見城さんとも相談している中で石田ひかりさんという名前が出たとき、「あ、これで後日談がちゃんとできる」と。あの原作のままの『二代目はクリスチャン』だったら、本当に浮世離れしたものになってしまう。今はそんなもんじゃないですからね。昨日もニュースで、ヤクザの代打ち、親分の代わりに麻雀を打つのが仕事の人なんだけど、その仕事がなくなって強盗をやって捕まったと。みんな得意技を封じられて生きにくくなっている。同時に映画などでは、そういうヤクザの現実を描いたドキュメンタリーや傑作が生まれていて、どうせ書くならそういう現実の先まで届かないといけないなと思って書きました。

──そんな時代に、20年ぶりに刑務所から出所した今日子は、神竜組の姐さんとして、生きにくい世相の中で苦労している子分たちの面倒をみていきます。

石田 それぞれいろいろな過去がある人たちですが、なかでも親から捨てられて育った金ちゃん(金蔵)の話が可哀想で。少年院の先生にまで「お前みたいなのはヤクザになるしかないんだ」と言われるんですが、そうなったのは大人の責任ではないかと。本当に胸が痛む話がいろいろ出て来ます。

──組員たちが仕事がなくて原発の廃炉作業をしたりしますね。

横内 実際に下請けの孫請けぐらいで入っているという話もありますから。ただ、つかさんは『飛龍伝』なんかでも命がけで闘争をやっている人間を描いて、殺し合いと言ってもいいような闘いの話なのに、それを笑いに変えてみんなで笑ってしまう。で、そのあとに「笑ってる場合じゃねえぞ」と。一回笑って共犯者にさせておいて説教を始めるのがつかさんの手で(笑)、それが面白くて僕らはつかさんに嵌まったので、それを今回もやろうと。ただ、お客さんが一回共犯者になってくれないと次に行けないのに、今の世の中はコンプライアンスがあってそこで引っかかってしまう、やりにくい時代だなと。でもこちら側も覚悟を決めてやるしかないなと思ってます。

まさかこの作品で伝兵衛さんとご一緒できるなんて

──つかさんは過激で露悪的な台詞を書きますが、それを昇華させる愛情があったと思います。石田さんは『飛龍伝‘94』ではどう感じていましたか?

石田 まだ22歳で初舞台で念願の『飛龍伝』でしたから、とにかく楽しかったという思い出しかないんです。つかさんは怖いとみんなに言われていましたが、まったくそんなことなくて、ただただ可愛がってくださいました。公演が終わってからも亡くなるまでの間、ときどきFAXが入ったり、ある日突然「温泉でも行ってこい」といきなり温泉の予約をとってくださったこともあって、母と一緒に行かせていただきました(笑)。

横内 それ石田さんだけにじゃないかな(笑)。『飛龍伝‘94』のとき、台詞とかどんな気持ちで言ってました?

石田 考えてなかったと思います。毎日口立てで変わりますし、辻褄は全然合ってないし、一体この人は何年闘争してるんだろうとか、何年大学生やってたの?とか(笑)。そんなことを考えても埒があかないので、言われるままにやってました。でも本当に楽しかった。

──つかさんの世界や台詞が石田さんの感性に合ったのでしょうね。

石田 何よりも『飛龍伝』という作品の世界観がカッコよかったですから。50人の男性の中に女性は1人で、拳を突き上げればバリバリバリって音と光が落ちてくるし、みんなが「委員長!」「委員長!」「委員長!」って集まってきて、「死んでください」と言えばバタバタ死んでいく。本当に芸達者な方たちに囲まれて、皆さんのおかげで立っていることができたと思っています。

横内 そのあとリアリズムの芝居とか出て大丈夫でしたか? 映像をやっていたから大丈夫だったのかな。

石田 映像と舞台のお芝居はやっぱり違うんですよね。私はこの世界に35年いるんですけど、舞台は10本ぐらいなんです。間隔が空いてしまうので毎回一からやり直しで、そのつどそのつど、焦りと自己嫌悪です。

──それでもまた出演される理由は?

石田 舞台は一番鍛えられますから。私はとくに基礎を教わらないでやってきましたからテクニックがないんです。皆さんのお芝居を見て参考にするしかない。幸い私は恥ずかしいという思いがあまりないので、やるしかないと。身体を動かしてしっくりくるところを探して、あとは共演の方々との関係性で考えていったり。

──その思い切りの良さと芯の強さが、石田さんの役者としての清潔感に繋がっている気がします。その過程ではいろいろ考えても最終的に凜と立つというところは今日子役にぴったりですね。

横内 石田さんは、身体に言葉が沁み入ったときのリアリティが、稽古をしていても表われてくるんです。舞台に慣れている人はとりあえず台詞をパッパッ言う。言いにくい台詞なんてないんじゃないかというぐらいで(笑)。でも石田さんはリアルな芝居を長くやってきているから言葉に対する違和感なども感じやすいはずで、とくにこの作品なんかファンタジーだから言わなくていいこといっぱい言ってるんですが、それで躓いてしまったらどうにもならない。でもそこはつかさんから始まっているから、そんなことに関係なく舞台は成立するということもご存じで、そこのところでは本当に信頼できるなと思います。

──そして、今回の作品の見どころの1つに、『熱海殺人事件』の木村伝兵衛の登場があります。

石田 まさかこの作品で伝兵衛さんとご一緒できるなんて(笑)、びっくりしました。

横内 つかさんの作品を何本かやらせていただいてきて、今回はとくにオマージュの意味を込めて作りたかったんです。木村伝兵衛という人はある意味、僕にとって演劇も人生も導いてくれた人なんです。メンターってありますよね、長老とか導いてくれる人。それはもちろんつかさんでもあるんですけど、最初に観た『熱海殺人事件』で木村伝兵衛が、こんなに凄い世界がある、こんな考え方がある、こんなにふうにやると人間カッコよくなるんだと、教えてくれたんです。

石田 どなたが演じていた伝兵衛ですか?

横内 三浦洋一さん、知ってますか?

石田 はい。

横内 最高でした。色気があって。今回は僕と岡森の還暦祝いの意味もあって、岡森伝兵衛に出てもらおうと。弱体化したヤクザのために働くのはこの人ぐらいしかいないだろうという思いで登場してもらってます。

原点に還って小劇場からやり直すという気持ちで

──石田さんは横内さんとは初めての仕事になりますが、横内さんについてはどんな印象がありましたか?

石田 歌舞伎もミュージカルも書かれるし、幅広く活躍されている凄い方だなと。戯曲もすごい数を書かれていますね。今何本ぐらいですか?

横内 97本ですね。

石田 これが97作目なんですね。あっという間に100本になりますね!(笑)

横内 石田さんだってもう35年ですから、すぐ40年になりますね(笑)。

石田 14歳ぐらいでデビュー-して、この世界しか知らないんです。今回、コロナ禍になって仕事が全部ストップしたとき、愕然としたんです。なにも出来ることがない。資格もないし手に職もない。私たちって呼ばれないと何も出来ないんだなと。最初は感染拡大を抑えないといけないので当然だと思っていたんですけど、劇場にも行けないし、どこにも出かけられない。これは心が荒むなと思いました。やっぱり人生にはエンターテイメントが、楽しいことが絶対に必要だなと実感しました。

──35年間ここまで続けて来られた理由はどんなところにあると?

石田 とにかく人に恵まれたこと、そして作品に恵まれたからだと思います。もちろん自分でも努力しましたし、踏ん張ってきましたけど、人に恵まれていた、それが一番大きかったですね。

横内 僕は知らなかったけどアイドルをやっていた時代もあったそうで、自分でもびっくりするぐらい売れなかったと。

石田 そうなんです! 売れないアイドルを3年間(笑)。

横内 文芸作品でいきなり登場した天才少女、みたいなイメージだったから。

石田 とんでもない! デパートの屋上とか商店街でビール箱のステージで歌うんですけど、誰も振り向いてくれないんです。中学生だったので学校に行って昼で早退して、駅までの道で母が作ってくれた一口で食べられる小さなおにぎりを一口ずつ食べて、待っていたマネージャーさんと現場に向かうんです。そこから私の長———い人生が始まるんですけど(笑)。

──それを3年間がんばったんですね。

石田 やめたいと思っていたんです。つらいしみじめだし。でもそのときのプロモーションビデオを作ったメイクさんが、大林組(大林宣彦監督)のメイクさんだったんです。それで監督に推薦してくださって。だからそれも人のご縁なんです。そこから監督の『ふたり』に出演できることになって。

横内 そうなんだ。お嬢さんがそのままデビューしたように思っていたから。

石田 出会った方が皆さん、褒めながら育ててくださる方ばかりだったんです。あるオーディションで、走ったときに髪の毛がなびかないといけないと言われたので、スポ根系なので全力で走ったんです。そしたら皆さんが感動してくれて、ここまで全力で走る子は今どきいないと褒めてくれて(笑)。とにかく期待に応えたいという気持ちになってしまうんです。

──純粋さが周りの人たちに伝わるのでしょうね。今回もそこが今日子役に重なるので楽しみです。最後にあらためて公演への意気込みをいただけますか。

石田 この2年間、世界中の方々が、息苦しい中でいろいろ我慢したり、不自由な思いをしてこられたと思います。今やっと少しだけ良い状況になっている気がしますので、そういう2年間のストレスを晴らしていただけるように、私はドスを利かして(笑)、観ていただいた方に胸がスッとしていただけるようにがんばります。お楽しみに!

横内 今、どこの劇場も劇団もなかなかお客さんが戻ってこなくて、やはりコロナ禍で失ったものは大きいなと。この公演も昨年予定していた紀伊國屋ホールではできなくなったわけですけど、逆に裸舞台で還暦祝いをやるというのも何かの縁だなと。もう一回小劇場から原点に還ってやり直すという決意表明というか、その原点還りをぜひ観ていただきたい。そして演劇の熱を感じていただきたいです。

■PROFILE■

よこうちけんすけ○東京都出身。1982年「善人会議」(現・扉座)を旗揚げ。以来オリジナル作品を発表し続け、スーパー歌舞伎や21世紀歌舞伎組の脚本をはじめ外部でも作・演出家として活躍。92年に岸田國士戯曲賞受賞。扉座以外は、ミュージカル『奇想天外☆歌舞音曲劇げんない』(脚本・演出・作詞)『HKT指原莉乃座長公演』(脚本・演出)スーパー歌舞伎II『ワンピース』(脚本・演出)スーパー歌舞伎II『オグリ』(脚本)パルコ・プロデュース『モダンボーイズ』(脚本)六月大歌舞伎第三部『日蓮』(脚本・演出)『スマホを落としただけなのに』(脚本・演出)などがある。

いしだひかり○東京都出身。1991年大林宣彦監督『ふたり』で映画デビュー。92年、連続テレビ小説『ひらり』でヒロインを好演。1994年『飛龍伝‘94 -いつの日か白き翼にのって-』(作・演出:つかこうへい)で初舞台を踏む。テレビ、舞台、映画で活躍中。最近の出演作品は、【ドラマ】『DOCTORS~最強の名医~』(EX)日曜ドラマ『極主夫道』第8話(YTV/NTV)ドラマ25『猫』第5話(TX)『無用庵隠居修行4』(BS朝日)『きょうの猫村さん』(TX)『監察医 朝顔』(CX)、【映画】『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)『こどもしょくどう』(日向寺太郎監督)『凛』(池田克彦監督)、【舞台】DISOCOVER WORLD THEATRE vol.11『ウェンディ&ピーターパン』(演出:ジョナサン・マンビィ)トム・プロジェクト プロデュース『A列車に乗っていこう』 (作:北村想 演出:日澤雄介)『壁蝨』(作・演出:加藤拓也)。16 年4 月~20年3月、NHK-E テレ『 にっぽんの芸能 』 の司会(MC)を務めた。

【公演情報】
劇団扉座第71回公演 劇団創立40周年記念 幻冬舎プレゼンツ
『扉座版 二代目はクリスチャン』
原作:つかこうへい
脚本・演出:横内謙介
出演:岡森 諦 有馬自由 犬飼淳治 鈴木利典 新原 武 松原海児 野田翔太 早川佳祐 三浦修平 紺崎真紀 小川 蓮 翁長志樹/砂田桃子 大川亜耶
石田ひかり
●10/21~31◎すみだパークシアター倉(そう)
〈お問い合わせ〉劇団扉座 03-3221-0530(12:00~18:00 土・日・祝休、公演中平日12:00~15:00)
https://tobiraza.co.jp

 

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】

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