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【池谷のぶえの「人生相談の館」】第34回 三島有紀子さん(映画監督)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

2020年になりましたね。
なんだかキリがいい数字です。

キリがいいと、2020を基準として、ふと人生の前後を見渡してしまいます。
ひとり暮らしを始めたのがちょうど20年ほど前。
なんだかんだずっと居ついてしまい、もはやかなり手狭になってまいりました。

この先、どんなに順調に生きていったとしても20数年。
ホームパーティをしたいという目標がある私としては、いい加減動かなくてはいけません。

ちょうどまとまったお休みもできたことですし…と、物件サイトをあさりまくり、内見を予約。

しかし、しかしですよ、見事なまでに希望した部屋が内見できないのです…。

そして、これは信じていただけるかわかりませんが、「よし、引っ越しを考えよう!」と決めて動き出した矢先、毎夜眠りに落ちそうになると私の右側でありえない不思議な音がするようになったのです…こえぇぇぇぇ。

何? これはどんな現象なのですか?
ここから出ていく気か? そうはさせぬ! という現象なのですか?
神様は、一生私にホームパーティをさせてくれないのでしょうか…。

極めつけに、ふと覗いた引っ越し方位のサイトには、二黒土星の人は今年は引っ越さない方がいい、とさえ書いてある…もう心が折れそうです。

いっそ誰かにさらわれて、「今日からここに住みなさい!」って言われたい…。
キリがいい2020年の間に、ホームパーティを開催することができるのでしょうか…。

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こんにちは。のぶえさんのファンになってから、もうかれこれ久しいわけですが、のぶえさんのまわりの風が一瞬止まる、そんなお芝居の瞬間を何度も経験した、三島有紀子です。

2月公開の映画『Red』という映画を昨年は作っていたのですが、監督なのにコミュニケーション下手なんですよね。なので、最近、見つけた間接法をしめしめと多用しております。例えば机や椅子などを含めた空間を作る美術をこうしておけばこんな芝居が生まれるのでは? 動線が自然と生まれるような小道具をそっと置いておいたりすれば、こんな風に動けるのでは? なんて、朝一番に現場にいって、演出部と美術部とで、たくさん仕掛けを作ります。今作の主人公である夏帆ちゃんも妻夫木さんもみんな、そこに導かれるというよりも、「はいはい、そんな感じで考えてはるのね」と暗黙でやってみてくれるんです。ええ人です。置いてある小道具を使ってくれても使わなくてもいいんです。敢えてその案は捨ててくれてもよいんです。次の仕掛けが待ってます。たぶん、、、。
そんなおいしい方法を覚えてからますます、話下手が加速しています。もうね、役者さんがその空間に立ったとき、何を感じてどんなお芝居が生まれてくるのか、鼻血出そうになりながらワクワクして待ってるんで、話してる暇なんかないだろうと思ってしまいます。一応聞かれたらなんか話します。でも、私語はしません。どうも目も怖い、みたいです。自分ではニコニコしてるつもりなんですけど、伝わってません。
そこで、のぶえさんに相談です。こんな、間接的すぎるコミュニケーションて、どうなんでしょうか。やはり、みんなの緊張をといてふんわりした気持ちで「おはよう」「今日の気分はどう?」なんて世間話から始めたりして、にこやかにお話した方が良いでしょうか? その場合の自然な声の出し方を教えてもらえるでしょうか?やはり、サングラスとかして目を見せない方が良いでしょか?
役者さんである、のぶえさん! 教えてください、のぶえさん!

三島有紀子さん(映画監督)

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三島監督には、10年ほど前にドラマでお世話になった直後、「しあわせのパン」という映画でじっくりお世話になりました。
猫ニャー時代の私を見ていてくださって映像の現場に起用してくださったなんて、稀有な監督さんです。

「しあわせのパン」は、北海道の洞爺湖畔で、パンの美味しいカフェを営む夫婦と、そこに集う人々との物語。

お店も、そこを取り巻く景色も、何もかも素敵で、いまだにあの時の風景を思い出したりもします。そうだ、北海道にも10年行ってないことになるや!

確かに、お芝居を観に来てくださる時などは気軽にお話しするイメージではあったものの、その撮影の時はそんなにお話ししていない気がします。そのような想いがおありになったのですね。

もちろん私はコミュニケーションのコの字さえも袋小路に見えて怖いくらい、コミュニケーション下手ですので、よっぽど何度かご一緒した監督さんや演出家さん以外には、話しかけることすらままなりません。

さらに、特別に映像に苦手意識があり緊張してしまうタイプなので、監督さんがじっとしてらっしゃるだけでも「私のことが嫌いなんだ…早く帰りたい…」と思ってしまいますし、かといって明るくコミュニケーションをとっていただいても「絶対うそだ…」と帰りたくなってしまうと思います。
どっちにしろ帰りたくなってしまう私なんかが、コミュニケーションについての回答をできるとはまるで思えませんが…。

しかし、コミュケーションというと、言葉にすることが大前提な気でいましたが、確かにいろんな伝え方がありますね。

今回のように、監督さんがそんな愛ある仕掛けを考えて俳優たちを待ち受けてくれている場合があるなんで、思ってもみませんでした。といいますか、いままでもしていただいていたかもしれないのに、気づけずにいたかもしれません。
ちゃんと、その現場の声なき声に目と耳をすまして想いを感じ取るのも、俳優の役目ですね。

しかし、そうやって整えてくださっている現場と、それとは真逆のむむむ? という現場は存在するような気がします。
むむむ? の現場に慣れてしまうと、どの現場もむむむ? なものだと思い込んでしまっている自分もいる。それはとても反省です。

ですからきっと、三島さんやスタッフさんたちの愛ある仕掛けは、言葉では逆に伝わらないコミュニケーションだと思いますし、言葉を交わすものではありませんが、立派にひとつのコミュニケーションですよね。

素敵な作品になることに向かって、それぞれの役割を粛々と進めている現場を感じることもたまにあったりして、ああ、こうした映像の現場だったら心地が良いなぁ…信頼できるなぁ…と思います。
そしてそういう雰囲気というのは、やはり感じ取るもので、声に出さなくても伝わるものです。

ですが映像の世界だと、全体的な顔合わせがある場合は、監督さんや、原作者さんや、脚本家さんや、プロデューサーさんなどの作品に対する想いなどを聞く機会もありますが、主要な出演者でない限りそれらの想いを知る機会が少ないというのも、寂しく感じるところです。
こんな想いがある、こんな作品にしたい、などが聞けると、自分の役が必要である意味を感じることができる。

そんなものが欲しいなんて甘えじゃない! 自分で感じ取りなさいよ! と言われればそれまでですが、そうしたことを現場で受け取れる、そして俳優の方からも受け取りにいける、そんな現場が増えたらな…と思います。

三島さんの目が笑っていないかどうかは…あまり気にしたことがありませんが笑
何を考えていらっしゃるのかしら!? 怖いわ!! と感じたことはありません。作品について、何かじっくり企んでらっしゃるな…というのは、強く強く感じます。
鼻血が出そうなくらいワクワクして待っていてくださっているのですものね、俳優たちが何をするのかガン見したいわけですから、目なんか笑えるはずがありません。もはやガンガンにガン見していただきたいです。
サングラスをしてしまったら本当に怖いので、どうかゆるしてください…。

三島さんがひとつひとつの作品をとても愛していて、そのために尽力している姿勢は絶対に伝っていると思います。
今回そんな愛ある仕掛けをしてくださっていることを、具体的に聞けて嬉しいです。
こうしたお話を聞けたり、感じられる機会がもっとあると、もっともっと現場や作品が豊かになって行く気もしますが、各々の心がけ次第になってしまうのでしょうか。

私にとっても課題です。

■ラッキー待ち受け

「しあわせのパン」の撮影で洞爺湖に行った際に、ホテル近くにあった木彫り屋さんで買ったコロボックルとフクロウです。
その時の俳優さんたちの間で、ここのお店のコロボックルを買うことが流行して、私も流れに乗っかりました。これが部屋にあることによって、あの時の風景がザーッとよみがえります。もし、これが撮影の現場に置いてあったら、そういう感情が沸き起こるということですね。なるほど、これが仕掛けですね。
その後、三島さんは何度も洞爺湖でお世話になった場所を訪れていらっしゃるようで、とてもとても、コミュニケーション下手だとは思えません!
また私も、北海道に行けますよう。

■三島有紀子さん今後の予定
映画「Red」
監督:三島有紀子
原作:島本理生「Red」(中公文庫)
脚本:池田千尋 三島有紀子
詳細 → https://redmovie.jp/

【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
「お勢、断行」(原案:江戸川乱歩、作・演出:倉持裕、音楽:斎藤ネコ)
2020年2月28日(金)〜3月11日 (水) 世田谷パブリックシアター ほか、愛知・島根・兵庫・香川・長野公演あり

【映画】
「グッドバイ〜嘘から始まる人生喜劇〜」(監督:成島出)
2020年2月14日(金)全国公開

【テレビ】
読売テレビ・日本テレビ系「ランチ合コン探偵〜恋とグルメと謎解きと〜」毎週木曜23:59〜 レギュラー出演中
NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー

 

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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