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【池谷のぶえの「人生相談の館」】第28回 宮下今日子さん(女優)

むしろこっちが人生相談したい気持ち満々のコラム、「池谷のぶえの人生相談の館」です。

シス・カンパニー公演「恋のヴェネチア狂騒曲」の幕が無事開きました。
演劇という生の舞台で、一人もかけることなく、全員が健康で穏やかに千穐楽に向かっていけることは、なんて奇跡的なことなんだろうと、その有難みを年々強く感じます。

今回お世話になっている劇場、新国立劇場・中劇場に立つのは、15年ぶりであります。

15年前、場当たり2日目あたりで突然代役をつとめることになり、台詞を覚え、段取りを覚え、衣装の採寸をし、カツラの採寸をし、完璧でない状態を観られたくないのでゲネに誰も来てほしくないと事務所に駄々をこね、いろんな方から「ああした方がいい」「こうした方がいい」「自分の好きなようにやった方がいい」などと、世界のアドバイス100選かよってくらい真逆のアドバイスを受け、楽屋でのすったもんだもあり、結局キャパオーバーでゲネの前にひとり楽屋でウェンウェン泣き、結果、キャパオーバーが猛り狂うほどのヤル気に変換され、演じてるうちに素手で派手にコンクリの床を叩きまくっていたようで、手がグローブのように腫れ、ああ、かつて宿敵・父も酔って転んで手をグローブのように腫らして帰って来たことがあった…遺伝…手がグローブのように腫れるのは池谷家の遺伝なのか…と、ファミリーヒストリーに行きついた想い出の劇場です。

そんな中、お客さんとしていらしてた中村勘三郎さんが、何の面識もなかった私に「がんばったんだね」と声をかけてくれたことが、とても嬉しかったことを覚えています。

いつか私も、こっそりがんばった人たちの、そのこっそりを見つけたり、すくい上げてあげたい…そんな風に思ってはいますが、現実には自分のこっそりを見つけたり、すくい上げてほしくてたまりません。だって、心底こっそりやってっから誰も見つけてくんねーんだもん!

拙者、まだまだであります…。

そんな突風のようだった15年後、48歳の私が、10代後半くらいの恋する若い娘を演じるという、とんちでも使わなければ解決できないような役づくりで同じ舞台に立っております。
どうか、心底こっそりやってるとんちを見つけて、すくい上げてくれる方を待ち続けます。

さて今回のご相談は、たぶんまさに今たっくさんがんばってる方からです。

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のぶえさん、冬が待ち遠しいですか。
ここで以前相談した高田聖子さんのお悩みのアライグマは、のぶえさんのアドバイスにより、見事キャラメルコーンで捕獲されたそうです。
素晴らしいお悩み解決師!!
悩みの尽きぬ私は、相談したいことが山盛りですが、欲張るとご利益薄まりそうなのでここは一つに絞って。

これから人生最長の公演期間に入る私ですが、楽屋の鏡前の正解がわかりません。初舞台の時の大御所ヘアメイクの方に、鏡前の汚い子は出世しない!!と怒鳴られたトラウマもあり、きちんとしたいのですが、だいたい今食べてるものと後で食べたいものと、飲み物三種くらいに占領されて、徐々に隣の人のスペースへ侵略していってしまいます。自分のスペースを守りつつ、女優さんたちがよく置いている小さいかわいいものも飾りつつ、きちんとしてる風な鏡前の作り方を御指南いただきたいです。

あとやっぱりもう1つ!
平田敦子さんが大好きなのですが、どうしたらいいですか。

宮下今日子さん(女優)

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きょんちゃんは、本当に面倒見がよくて、いろんな人たちとコミュニケーションがとれる女性で、美人さんなのに変なことも大好きで…こうやって並べて行ったらマイナス面などどこにも見当たらないわけですが、鏡前についての正解ですか…。

きょんちゃんとは15年ほど前に共演していますが、その時、きょんちゃんの鏡前がどんな風だったか…もちろん覚えていないので、どこをどうした方がいいといった具体的な回答は難しいのですが、時々ポーチひとつくらいしか置いてない女優さんとかもいますよね。

ポーチひとつで何ができると言うのでしょう…既に化粧も必要ないほどできあがっている…というサインなのでしょうか。
もしくは、ポーチのファスナーを開けると、自宅の化粧台につながっているのでしょうか。

若い男子の鏡前で衝撃を受けたのは、飲みかけのペットボトル10本くらいで占められている鏡前です。もちろん鏡があるので、ペットボトル20本くらいに見える効果もあります。高層ビル群のようです。
その子のことは、心の中で「西新宿」と呼んでいました。

このように、鏡前にはそれぞれの生きざまが現れますね。
ちなみに私の場合は、人の目がある時は叱られないようにキチンとするタイプです。

もちろん鏡前は人の目につく場所ですから、比較的キチンとしています。
しかしだからといって、日常の片付けが得意かというとそうでもありません。

こうした事例から、鏡前は「だだ漏れる自分」「だだ洩れを隠す自分」に分類できるのでしょうか。

きょんちゃんのご相談からみるに、きょんちゃんはチームだだ洩れかもしれませんね。
でもちょっと憧れちゃいます、だだ洩れてしまう鏡前って。だって、嘘偽りのない姿ということですものね。潔いです。

早替えがたくさんある公演で、公演後、衣装さんがとある俳優さんの脱いだ衣装をリセットしようとしたら、衣装、衣装、衣装、バナナの皮、衣装、衣装…という順番で重ねてあった…という加藤啓さんのエピソードなども、憧れます。
途中、エネルギー補給したんだね…これが地層なら、歴史変換のタイミングがバナナの皮でわかるね。

本能の鏡前…ワイルドでいいではないですか。
ただ、いろんな方がいますものね。モノがはみ出ていてご迷惑がかかっては大変です。

・鏡前に敷く敷物や手ぬぐいなどで、自分の領域をビジュアルで知らしめる。
・さらに、ボックスティッシュや箱状のもので、左右の境界線を立体的に決める。ブックエンドなどを使用するのもよい。
・化粧水やスプレーなどの丸みをおびたものは鏡面に整列させる。
・飲み物、食べ物は、それぞれ1個しか置かない。

具体的なことを書きだしてみたものの、びっくりするような新鮮なことは何一つ出てきませんでした…ごめんなさい。

でも、この地味なことの繰り返ししかないような気がします。
ただ、それでもダメならとっておきの秘策があります。

きょんちゃんが大好きな、敦子さんに楽屋にいていただくのです。
敦子さんはよく鏡前をパトロールしてくれます。
「キャラクターものは1個まで!」「そのお菓子ずっとあるじゃん。食べないの?」などと、律してもくれます。

大好きな敦子さんとずっと一緒にいることができて、鏡前チェックもしてもらえるなんて! こんな素晴らしいことはありません。

■ラッキー待ち受け

人の目があるとキチンとする池谷の鏡前です。
お気に入りは、和楽互尊30周年のお湯割りカップと、「のぶえちゃんが絶対買わなそうなやつ」といって木野花さんがくださった花柄の敷物と、小林聡美さんがくださった、自分の顔が7倍に見える手鏡。
あと美味しいお菓子が入っていた籠が可愛かったので愛用してる。
右はボックスティッシュ、左は帰りに鏡前にかける手ぬぐい…という境界線で整えるのが常です。
きょんちゃんの公演、ぬきうち楽屋チェックに行くのでビクビクしながら待っててね! そして「がんばったんだね」って言うね!

■宮下今日子さん今後の予定
劇団☆新感線「けむりの軍団」
作:倉持裕
演出:いのうえひでのり

東京公演 TBS赤坂ACTシアター
7/15(月・祝)~8/24(土)

福岡公演 博多座
9/6(金)~9/23(月・祝)

大阪公演 フェスティバルホール
10/8(火)~21(月)

詳細→ www.vi-shinkansen.co.jp/kemurinogundan/

【筆者プロフィール】
池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。

[出演情報]
【舞台】
シス・カンパニー公演「恋のヴェネチア狂騒曲」(作:カルロ・ゴルドーニ、上演台本・演出:福田雄一)公演中
7月28日(日)まで 新国立劇場 中劇場

【映画】
「長いお別れ」(監督:中野量太) 上映中
「WE ARE LITTLE ZOMBIES」(監督・脚本:長久允)上映中
「アルキメデスの大戦」(監督・脚本・VFX:山崎貴)7月26日(金)公開

▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼

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