【フォトグラファースギノユキコ with えんぶ WEB CLOSE to my HEART】11 土田有未
えんぶにて脚本家・演出家・俳優を撮り続けて約20年(長期中抜け有り)。
いわゆる非日常を創作する彼ら・彼女らの姿を
日常的でありながら、そっと風変わりな目でつかまえるスギノの写真。
このコーナーではえんぶ誌面では掲載しきれなかった
“スギノお気に入り”の写真達とともに演劇人を紹介。
インタビュー&写真から現れるその心にフォーカス。
File.11 土田有未
(2019年10月取材/撮影)
自分が 面白いと 思ったことに バッといく!
トリッキーな設定、登場人物、ストーリー展開…で、観るものを混乱、惑わせ、魅了する、当代きっての脚本家・演出家の鎌田順也(ナカゴー)と大谷皿屋敷(劇団「地蔵中毒」)。今年、2人の作品に出演し、ナカゴーでは悩みを抱える小学生男子、地蔵中毒ではおしとやかな妻のち、ジャングルの王となる女をのびやかに演じた土田有未。小柄な身体に秘められたエネルギーの源を探る!
一番、行動力があった 中学時代
――演劇を始めたきっかけは?
元々は映画が好きだったんです。子供の頃に『34丁目の奇跡』とか子役が活躍する映画を観て、すごいなぁ! いつかアメリカ行ってみたいな、と思っていました。それから、自分で調べるうちにアメリカでは演劇を学問としてとらえていると知り、面白そう! 行きたい! 行くなら早く行きたいと思って。中学生くらいのときに両親に話したら「いい」ということになったんです。
――意思と行動力がすごいですね。
一番そのときが行動力があったんじゃないかな。パッ、と行きましたね。今は何も決められない性格ですが…。
オーガスト・ウィルソンが 好き
――高校での生活はいかがでしたか?
最初の頃はほとんど英語がしゃべれなくて。学校の中の舞台も全部オーディションなので、オーディションも受けられず。1年目は舞台美術などをやらせてもらい、2年目からオーディションを受けてお芝居ができるようになりました。
――大学もアメリカですか?
高校を卒業した後、ボストンにある大学の演劇学科に入りました。
――そこでは演劇を体系的に学ぶのですか?
はい。私が入ったのは歌や踊りがない、いわゆるストレートプレイの学科で、演出や演技、戯曲をちょっと書いたり。スタニスラフスキーなどのメソッドを4年間学びました。
――どんな傾向のお芝居なんですか?
アメリカは元々ある戯曲をやることが多いので、古典やシェイクスピアとか。私はオーガスト・ウィルソンが好きだったので、彼の戯曲を授業でやったりしました。
――得意な科目などはありましたか?
アジア人が1人だったので、ちょっとコミカルなことをやるだけで目立つというか…。そういう役が多かったかもしれないですね。…得意って言われると難しいです(笑)。
――卒業後は?
ロサンゼルスに行って、芸能事務所に所属しながらバイトして、オーディションを受ける生活を3、4年くらい。日本のある事務所と契約することになって、帰国しました。
ナカゴーでは 男性の役が多いです
――ナカゴーに参加された経緯は?
ほかの劇団のお手伝いをしているときに、ナカゴーの鎌田さんが演出する作品に出ることになって。ナカゴーは観たことがなかったのですが、そのときちょうどナカゴーがオーディションをしていたので、「オーディションに行きたい」と伝えたら「土田さんの演技はわかっているので来なくていいです」と言われて。ダメだと思っていたら、その年の9月の公演に出してもらえることになって。それが初めてのナカゴー。『ミッドナイト25時』という作品です。
――戸惑いはありましたか?
鎌田さんってすごく映画に影響を受けてるんですよね。そういうところが面白いなと思って。結局、自分が面白いと思ったことにバッといくので、全然違和感などは感じなくて。やってることは、学生の頃と意外と違わないんじゃないかな、と。観ている人からしたらだいぶ違うかもしれないですが(笑)。特に私がやる役はもしかしたら…。
――今年3月に拝見したナカゴーの『駿足』ではキュートな少年役でした。
ナカゴーでは男の子役とおじいちゃん役が多いですね。3、4年位前にナカゴーで初めて男の人の町長役を演じてから、ずっと外国人の男の子とか男性の役です。それまでは女性の役もあったんですけど…。
地蔵中毒で 久しぶりの女性役
――9月の劇団「地蔵中毒」の『ずんだ or not ずんだ』では夫婦の役でしたが、いかがでしたか?
すごい緊張しました。1年のほとんどの舞台で男性役だったので、女性の役はどうしたらいいんだろうって。昭和の女性のようなイメージと言われたので、小津安二郎監督の映画を、ちょっと観たんですけど。全然参考にならなかったです(笑)。めちゃくちゃ悩んで難しかったです。
――途中から、ジャングルの王になって、のびのび演じられているように見えましたが。
少年っぽさのある役だったので、やりやすかったですね。
――井戸を掘る姿にも説得力がありました。
地面の堀り方は、夫役のかませ(けんた)さんが「僕よく掘ってたんです」と、堀り方を教えてくださいました。
鎌田さんと 大谷さんの演出
――地蔵中毒の大谷さんの演出はいかがでしたか?
鎌田さんも大谷さんも細かいんですけど、細かさの種類が違いました。大谷さんは「ここはもっと早く言って欲しい」とか「こことここの間に句読点を入れる」など、セリフの言い回しの指示が多くて、動きや感情の熱量についてはあまり仰らなくて。鎌田さんは、気持ちや感情の熱量や動きにこだわって、あまりセリフの言い方については言わないんです。そういう差はありました。
両方字幕を つけてます(笑)
――最後に、土田さんの理想の生活みたいなものを教えていただけますか? 例えば2ヶ月に1回、舞台に出るとか。
そのくらい出れたらいいですね~。
――公演の規模は気にならないですか?
どこでも。呼ばれたら、ぜひ。映画も興味があります。でも、あまり日本の映画に詳しくないので、もっと勉強しないと、と思っています。
――勉強なんかしなくて、全然大丈夫ですよ!
時間があってチョイスがあったらやっぱり海外のものを観ることが多いので…。
――字幕なしで見れるんですよね?
英語は、訛りがあると聞き取れない時もあるので、英語の字幕をつけるんです。でも私、最近、日本語の映画とかをTVで見るとき字幕をつけないとわからない時があって(笑)。日本のものってボソボソ喋るじゃないですか。一緒に見てる人に「なんて言ってるの?」って何回も聞いちゃうことがあって。だから最近、両方字幕をつけてます(笑)。
【土田有未プロフィール】
つちだあみ○東京都出身。2002年に渡米し、ニューヨークの高校、ボストンの大学にて演劇/舞台演出等を学んだ後、2013年に帰国。2014年より『もはや、もはやさん』以外のナカゴー特別劇場のすべての作品に出演し、2017年よりナカゴーに所属。
【活動予定】
ナカゴー本公演『堀船のマッチポンプ』
公演期間 2021年4月29日(木)〜5月5日(水)
会場 北とぴあ・ペガサスホール(15階)
HP: http://nakagoo.com
Twitter:@nakagoo_
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【スギノユキコプロフィール】
すぎのゆきこ○神奈川県出身。
日本女子体育短期大学舞踊科卒業。
在学中に演劇好きな友人に連れられ
初観劇。たまたまその公演後オーディションがある事をチラシで知り、
勢い余って受けた事がある為、今でも爆風スランプRunnerが耳に入るとゾワゾワする。
通信社等を回り、写真を学ぶ。
【インタビュー◇坂口真人 文◇矢﨑亜希子 撮影◇スギノユキコ】
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