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【フォトグラファースギノユキコ with えんぶ WEB CLOSE to my HEART】10 松本みゆき

えんぶにて脚本家・演出家・俳優を撮り続けて約20年(長期中抜け有り)。
いわゆる非日常を創作する彼ら・彼女らの姿を
日常的でありながら、そっと風変わりな目でつかまえるスギノの写真。
このコーナーではえんぶ誌面では掲載しきれなかった
“スギノお気に入り”の写真達とともに演劇人を紹介。
インタビュー&写真から現れるその心にフォーカス。

File.10 松本みゆき
(2020年2月取材/撮影)

演劇が私の人生を
豊かにしてくれる

マチルダアパルトマン旗揚げ公演の『ばいびー、23区の恋人』で、23人の恋人たちに次々と別れを告げに行くという、かなりあり得ない役柄を軽やかに演じている松本さんに、すごく親しみを感じ、少しとぼけた役を爽やかに演じるのが得意な女優さんかなと思った矢先に、劇団普通の『病室』を観た。芸達者な4人のおっさん達が患者として出演している中で、患者の妻として彼女が茨城弁のイントネーションで発した「おとうさん」の一言から、『病室』は一気に複雑な要素が絡み合った豊かな作品となっていった。二つの公演を観て、もっと彼女の“演劇”世界を知りたいと、今回のインタビューとなった。

小学一年生のときに バレエの教室に行って

――まずはプロフィールから教えてください。ご出身は?  

東京です。練馬区の下石神井っていうところです。

――石神井公園とかあるところですね。

あ、そうです、近いです。

――演劇に興味を持ったのはいつごろからですか?  

子供の頃からですね。母が小学校で音楽教えていて。ミュージカルなどによく連れてってもらってました。

――ご自分でやるのはいつごろから?  

小学一年生のときに母に連れられてバレエの教室に行って。そこから大学出るくらいまでずっとダンスだけやってました。

――えーー。  

日本女子体育大学舞踊学専攻で、コンテンポラリーダンスを専攻していて、卒業してから2年ほどダンサーとして舞台に立ってたんですけど、面白くないな、と思って。

――何が面白くないですか?  

なんか、コンテンポラリーをやってたんですけど、メッセージっていうか、作り手はこういうものが作りたいって思って作るんですけど、受け取る側は、自由でいいよ、みたいな。なんか、当時はそれが、なんで……(沈黙)その、分断されてる感じがして。今ならその人の心が動けばいいんだろうなって思えるんですけど。20歳位の時はダメでしたね。

 

新宿ゴールデン街劇場で 初舞台

――高校時代は?

高校は、数学のない学校に行きたい、と思ったら、関東国際高校というところが一年で数学がなくなるので、これは良いぞ、と。ダンスもやれるしね、と思って演劇科に行きました。ただそこで演劇をやった、という感覚はあまりないですね。挨拶や掃除など、マナーを叩き込まれました。

――ではどこで演劇の道に?

19歳のときに、KAKUTAの一週間のワークショップに参加して、そのときに役者さんとかと話していて、すごい皆さんポジティブっていうかコミュニケーションに積極的で素敵だなと思って、私も芝居をやったらそういう人間になれるかもしれない、と思って。

――なれましたか?  

当時よりはだいぶ(笑)。

――じゃあ大学の時にはもう演劇をやろうと思っていた。  

通ってたダンス教室に、黒テントの役者さんが体を訓練するために来ていて、その方に「今度プロデュース公演をするので出ませんか?」って言われたのが初舞台ですね。新宿ゴールデン街劇場という所です。セットが便器だけで(笑)。そこからワークショップとかに行きだして。それでコネクションが段々出来てきて。舞台観た人に声かけてもらったりしながら、続けてきました。

「らまのだ」との出会いが ターニングポイント

――ずっとフリーだったんですね。

マチルダアパルトマンに入るまではずっとフリーです。

――フリーでの活動は大変じゃないですか?

でもありがたいことに割と途切れなくやらせてもらってます。

――そのなかで、印象に残ってる出来事は?  

シンクロ少女の『少女教育』っていうのに出たときに王子小劇場の助演女優賞をいただいたりして。あとは、「らまのだ」さんの『終わってないし』っていうのに初めて出たときとかは、結構ターニングポイントだったなって思いますね。

――どんな感じで?  

その前に出た公演で「演劇やめたほうがいい」と言われボロボロになって、それで本当に辞めようかなって思ったときに、らまのだの演出の森田あやさんと出会って、なんか一つ前に進めた感じがしました。

お客さんと同じ世界で 生きてる人にはしたいなと

――そうしてるうちに、マチルダアパルトマンに入らないかと。

「劇団を作りたいんですけど、一緒にやりませんか?」って池亀三太さんから声かけてもらって。あんまり劇団に入りたいとは思ってなかったんですけど、三太さんが、「今まで当たり前にやってきたことを0から疑って新しいことをしてみたい」、と言われて、「ああ、それなら入りたいと」って思って入ったんですけど、なかなか、それはそれで大変ですね(笑)。

――そんな中で劇団の旗揚げ公演内の一本『ばいびー、23区の恋人』を観させていただいて。いいリズムのたのしいお芝居でしたよね。ああいうことを自然にできる感じの女優さんなんだと。

……自然?

――23人の恋人たちに次々と別れを告げに行くという、あり得ない役だったんですが、すごく親しみを感じたんですよ。

架空のアニメキャラみたいじゃダメだよねって。ちゃんと今この現実に生きてて、悲しんだり喜んだりしてる。ちゃんと人間であれ、というか、お客さんとおんなじ世界で生きてる人にはしたいなとは思ってやってました。

――で、二回目の公演があって、劇団普通の『病室』に出演しました。あの公演で松本さんはとても多様性のある豊かな表現をする方なんだな、と改めてわかって。そこらへんの手応えはいかがでしたか?

今回の『病室』は、ほんとに4人のおじさんたちが頼もしいから、私はそれについていくだけって感じでしたね。

――そうですね。誰が見てもおじさん達が面白かったんですけど、それぞれの事情を抱えた奥さんや娘さんたちも、それと同じくらい楽しめました。そういうディティールにもこだわっていて、そこから何かが伝わってくる、とっても豊かな作品だなと思いました。  

はい。とてもやりがいのある作品でした。

いま割とふんばり時だな と思ってます

――それで、劇団普通の公演に出演されて、とても面白かったなって思いつつ、次またマチルダアパルトマンの公演があるんですよね?

はい、5月に劇団の公演が。

――3つあって松本さんがメインになるものがありますよね。

長編が3つと短編が2つあるんですけど。

――え? 5個やるってこと?

まあ、長編の一つは私がメインでやらせてもらって、あと2つに出ます。

――それ結構大変ですね。  

大変ですね(笑)。でも短編は仙台の卸町アートマルシェってところでやったやつなので、まあ、まあ。

――とても楽しみです。  

その前に、3月にらまのだにでるので(笑)。それも3本立てなんですけど、30分、60分、30分の3本立てで、私は30分の二人芝居に出ます。

――8月にも公演予定がありますね。

はい。海外戯曲をやってみる会という出入り自由の団体を仲間たちと作っていて、8月に初めて劇場で公演をやるので、いま割とふんばり時だなと思ってます。

(※コロナウィルス感染拡大の影響で2020年8月公演は2021年6月に延期される)

 

演劇を通して知見が拡がる っていうのが、すごく楽しい

――唐突ですけれど夢とかってなんかありますか?  

夢かぁ……、でも割と演劇やってる時点で……、作品の内容とか役柄を調べたりすることで演劇を通して、すごく自分の知見が拡がるっていうか、それがすごく楽しいなって思うんです。演劇が私の人生を豊かにしてくれてるって今思えてるから、そんなにこれ以上多くを望まないというか……(笑)。

 

【松本みゆきプロフィール】
まつもとみゆき○東京都出身。幼少よりクラシック・バレエを学び、日本女子体育大学舞踊学科にてコンテンポラリーダンスを専攻、卒業してから2年ほどダンサーとして活動。演劇は2008年に新宿ゴールデン街劇場で初舞台。2018年マチルダアパルトマンの旗揚げに参加。海外戯曲をやってみる会を仲間たちと運営。

【活動予定】
第31回下北沢演劇祭 参加作品
マチルダアパルトマン
『すべての朝帰りがいつか報われますように』
2/27(土)・28(日)◎OFF・OFFシアター
http://m-appartement.com/next/

マチルダアパルトマン公式GOODS SHOPにて、
松本みゆき責任編集、マチルダアパルトマンの(MAGA)ZINE発売中。
https://mappartemen.theshop.jp

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【スギノユキコプロフィール】
すぎのゆきこ○神奈川県出身。
日本女子体育短期大学舞踊科卒業。
在学中に演劇好きな友人に連れられ
初観劇。たまたまその公演後オーディションがある事をチラシで知り、
勢い余って受けた事がある為、今でも爆風スランプRunnerが耳に入るとゾワゾワする。
通信社等を回り、写真を学ぶ。
instagram▶https://www.instagram.com/sugino_yukiko/

 

【構成◇矢﨑亜希子 文◇坂口真人 撮影◇スギノユキコ】

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