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【フォトグラファースギノユキコ with えんぶ WEB CLOSE to my HEART】06 笠浦静花/加藤睦望

えんぶにて脚本家・演出家・俳優を撮り続けて約20年(長期中抜け有り)。
いわゆる非日常を創作する彼ら・彼女らの姿を
日常的でありながら、そっと風変わりな目でつかまえるスギノの写真。
このコーナーではえんぶ誌面では掲載しきれなかった
“スギノお気に入り”の写真達とともに演劇人を紹介。
インタビュー&写真から現れるその心にフォーカス。

 

File.06  笠浦静花/加藤睦望
(2018年8月取材/撮影)

演劇という大海原? に 手と手を取り合い漕ぎ出した

思いっきりよく、スピーディー。時々、外連味やロマンチックな甘さも入れて、いい案配で人生の真理? を描いているやみ・あがりシアター。2012年の旗揚げからぶれない主宰の劇作家・演出家の笠浦静花と、笠浦が唯一、責任を持って巻き込んだメンバーの加藤睦望。今年の6月に上演された第11回公演『ボーダーリング』の話を中心に、やみ・あがりシアターの素顔に迫る!

こんな作風です!

——今回、初めて拝見したんですけど、オープニングにすごくワクワクしました。忍者たちが現れたり隠れたり、拍子木を使ったり…。その後はスピード感を残しつつ、普通のお芝居の展開になりましたが、最初だけ作りが違うというか。歌舞伎仕立てみたいなものは、元々お好きなんですか?

笠浦 うーん…いつもあるかないかで言ったら、ないですね。今回、オープニングの忍者村のシーンで歌舞伎めいたものを書いた一番の理由は、書いたことがないからです。実は私の作品のオチは全部、常識的なところにあって。セリフも普通のことしか言ってないんです。今回のように「婚活」「結婚相談所」という設定が決まったら、後の流れは全部妥当に進めたいので、逆に最初にフェイクを入れて、妥当な話じゃないように見せかけたい気持ちはあったかもしれないですね。

——妥当な話が好きなんですか?

笠浦 私が納得できる話の流れが、ほとんどの人にとって普通の気持ちの流れなんだろうなとは思っています。

加藤 自分が書く作品のテーマを納得するために書いてる、みたいなことを前に言っていました。そのために工夫してるんじゃないかなって、私は見てて思います。

——その中で加藤さんの役割は?

加藤 話の根幹みたいなところの役を毎回もらいがちだな、とは思っています。だからそこは理解しなきゃいけないとは考えているんですけど。私も、自分の解釈を入れてはいけないと思うので、そこはあまり気にせずに、ちゃんと役を生きようと、いつも意識してやっています。

年間でテーマが
決まってます。

——忍者の婚活って、珍しい題材だと思うのですが、どこから発想されたのですか。

笠浦  うちは年間で作品のテーマを決めていて、題材はすでに決まってるんです。今年は「病理」をテーマにした、異形のものが出てくる家族もので、3月の公演は妹の彼氏が魔法使い、今回は忍者の婚活。10月は悪魔の嫁姑戦争になる予定です。家族っぽいまとまりの中に異形のものがいる作品を作る1年にしたいと思っています。

——どうしてそういう風に考えているのですか?

笠浦 私がいろいろ書けるようになって、むっちゃん(加藤睦望)が、いろいろな役をできるようになることでしか、劇団の体力は強くならないと思っていて。なのでむっちゃんには、毎回違う役を書くようにしています。

——今回の加藤さんの役は、最初のうちは目立たないですが、お話が進んで行くとその目立たなさが、物語の中核を担う感じの流れに自然になってきて。最後の嵐の中で叫んでいるシーンで、「これが言いたかったのか!」とすごく感じました。

加藤 演出は、見た目で説明されることもあるので、私が気付いてなくても伝えたいことが伝わるように、きちんと演出してくれていると思います。

 

音楽があれば
書けるんです。

——音楽もすごく印象的でした。

笠浦 うちは公演ごとに音楽のジャンルを統一していて、今回はピアノによるワルツでした。実はスタートはそこなんです。今回はワルツでピアノと決めたら、ピアノの鍵盤は白と黒だからボーダーとか鯨幕を使おうとか。ワルツは回るから婚活パーティーの相手が回転寿司みたいに回る感じで…など作品を特徴づける要素を全部、音楽合わせで作っています。

——珍しいですね。

笠浦 旗揚げからずっとそうしていて。3月の公演では、アコーディオンによるポルカ、昨年9月の公演ではレゲエとか。全体のノリを音楽が決めています。音楽があれば書けるんです。

——曲のタイミングもよかったですね。

笠浦 いいタイミングで曲を入れようと思っているわけではなく、この曲が来たら次はこの曲というのが先にあって、それから台本を書いているんです。

——曲はみなさんで考えるのですか?

加藤 笠浦が全部、1人で。

笠浦 そうですね。音響さんに音を選んでもらったことはほぼないです。客入れ客出しの音楽も含めて。

加藤 インターネット上にいつでも見られるやみ・あがりシアターの共通のフォルダがあるんですけど、いつも次の公演のファイルができると最初に音楽がたくさん置かれていくんです。プロットとかじゃなくてやりたい音楽がたくさん。私は、音楽を選び始めたから、そろそろ書き始めるなってチェックしています。

気持ちは客代表

——最後の方、忍びの頭領の跡取りを振ったさくらちゃんと、振られた跡取りの弟ヤンス君の淡い恋物語みたいなシーンに、気持ちをくすぐられました。

加藤 ときめきポイントですね。

——胸がキュンとなりましたが、あれは観客へのサービスですか?

笠浦 私に対するサービスですね。私、客代表という気持ちでいるので、私が喜ぶようにして欲しいんです。

加藤 楽屋に舞台が映っているモニターがあるんですけど、あのシーンはみんなでこうやって(両手を握りしめて真剣な表情で)見てました。今日もかわいいねって。

笠浦 (笑)さくらちゃん可愛いからね。あそこをキュンとさせたいというより、そうなるように伏線を張っています。さくらちゃんもヤンス君も一生懸命、頑張っているから、お客さんに悪感情は抱かれてないですもんね。

次回作は
ホームメイドピカレスク

——次の公演は10月(※2018年10月の公演)ですね。

笠浦 はい。10月にAPOCシアターで、10月24〜30日です。タイトルは『背に描いたシアワセ』で、嫁姑の話になります。イメージテーマとしてはピカレスクロマンみたいにしようと思っていて、ホームメイドピカレスク。

——音楽はどんなジャンルですか?

笠浦 アイリッシュ民謡で笛を使っている曲でいきたいかな。悪魔といえば笛なんでね。フフフ。

——こういう時、加藤さんは俳優、パートナーとして、どういう準備をされるんですか?

加藤 準備? 笛吹けるようにならなきゃ!

一同 (笑)。

笠浦 今まで楽器を使った生演奏はなかったんですけど、アイルランドのティンホイッスルっていう短いリコーダーみたいな楽器があって。それは安いから「買えるな、買えちゃうな〜」って心が揺れています…。むっちゃん、吹奏楽部だもんね。

加藤 そう。へへっ。

笠浦 劇団として初めて、舞台上での生演奏が実現するかもしれない。

加藤 もし本当に笛を吹くとしたら1週間は笛の練習期間が必要ですね…。先にできるようにならないと
まずいな。

——楽器はお得意なんですか?

加藤 フルートをやってたんですけど、基礎は違うと思うので…。音階とかはわかると思います。

笠浦 縦笛だからね。

加藤 ティンホイッスル買わなきゃ。

——よかったですね。

加藤 得意分野が。できるかわからないですけど(笑)。

 

【笠浦静花/加藤睦望プロフィール】

かさうらしずか(写真左)○1991年生まれ、神奈川県出身。東京大学在学中の2012年にやみ・あがりシアターを旗揚げ。すべての作品の脚本・演出をつとめる。
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かとうむつみ(写真右)○1991年生まれ、愛知県出身。東大演劇サークルで笠浦に出会う。就職したものの、1年後、笠浦に口説かれ、やみ・あがりシアター唯一のメンバーに。

【活動予定】

○笠浦静花/脚本演出、加藤睦望/出演
・やみ・あがりシアター番外公演「完全な密室」2020年11/19~23@花まる学習会王子小劇場
公演情報▶http://yamiagaritheater.jp/next.html

・オフィス上の空6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活#2』2021年8/21~30@吉祥寺シアター

○笠浦静花/参加
・「日本の戯曲研修セミナー」in東京2020(オンライン版)2020年10月22日~25日

○加藤睦望/出演
・昼寝企画第2回公演『万物流転モラトリアム如来大卍』2020年10/24・25@阿佐ヶ谷アートスペースプロット

・アンティークスVintage28『タイトル未定』2020年12/16~21@下北沢シアター711

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【スギノユキコプロフィール】
すぎのゆきこ○神奈川県出身。
日本女子体育短期大学舞踊科卒業。
在学中に演劇好きな友人に連れられ初観劇。たまたまその公演後オーディションがある事をチラシで知り、勢い余って受けた事がある為、今でも爆風スランプRunnerが耳に入るとゾワゾワする。
通信社等を回り、写真を学ぶ。

【インタビュー◇坂口真人 文◇矢﨑亜希子 撮影◇スギノユキコ(人物)】

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  • 小野寺ずるの【女の平和】
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