《TAKARAZUKA NEWS PICKUP!》 新宙組トップコンビ真風涼帆&潤花披露公演『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』ライブ中継・ライブ配信実施!
政府による緊急事態宣言の発出ならびに、これにともなう自治体からのイベント開催制限等を受け、4月26日(月)から5月11日(火)までの公演を中止している宝塚歌劇団だが、中断を余儀なくされたり、上演が叶わなくなった作品を無観客上演し、ライブ中継、ライブ配信する予定が次々に発表されている。
そのひとつが、5月5日16時半から梅田芸術劇場メインホールで無観客上演が行われる、宙組公演Musical『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』。
この公演は充実の時を迎えている宙組トップスター真風涼帆と、この作品からトップ娘役に就任した潤花の、新宙組トップコンビお披露目公演で、第二次世界大戦中期、ナチスドイツの脅威が広がるヨーロッパにあって、中立国の立場を守っていたスイスのリゾートホテルを舞台に、戦時下の情報戦を戦い抜く男たちのドラマと、芸術を愛し守ろうとする人々の熱い想いを絡め、先行きの見えない日々を精一杯生きる人々のヒューマン・ドラマが描かれている。
【STORY】
第二次世界大戦中期、ナチスドイツの脅威が広がるヨーロッパにおいて中立国であるスイスは、様々な国籍、階級、職業の人々が行き来し、連合国と枢軸国側の駆け引きの場となっていた。
オランダ貴族の父とバレエリュスのダンサーの母との間に非嫡出子として生まれたロベルト・フォン・アムスベルク(真風涼帆)は、母の死後、父のもとに引き取られ、英国大学で国際政治学んだ後、英国のオランダ大使館に勤務している。外交官として多忙な日々を送るロベルトだが、彼の真の任務は、英国情報部の為に働くスパイキャッチャーとして、敵国のスパイを摘発することだった。
ある日、上司のリチャード(美月悠)からの密命を受けたロベルトは、スイスのリゾート地サン・モリッツに佇むHotel Svizra House(ホテル スヴィッツラ ハウス)にやってくる。そこから英国軍の機密情報がベルリンに送られているという事実が判明したのだ。到着早々ロベルトは、ベルリンとの無線交信がはじまった時期が、かつてバレエリュスの天才ダンサーで、現在はスイスで療養するニジンスキーの救済を目的として、ホテルで開催されるチャリティバレエ公演を主催する、ロシアの亡命貴族ミハイロフ侯爵(寿つかさ)一行が到着した時期と一致するという情報を得る。ロベルトは早速、この地で彼の任務をサポートする政治ジャーナリスト・エーリク(瑠風輝)と共に調査を開始する。
折も折、ロベルトはドイツ軍のパリ占領により失業したバレエダンサーのニーナ(潤花)と出会う。彼女はホテルでのチャリティ公演で踊るためにスイスにやって来たのだ。そんなニーナに自分の母がかつてニジンスキーと同じ舞台に立っていたことを話したロベルトは、素直に憧れをあらわにした彼女の真っ直ぐさと、情報戦の中、本心を隠して生きている自分との対比を感じ、強い印象を覚える。
そこにオーストリアの実業家ヘルマン(芹香斗亜)が、艶やかな美女アルマ(遥羽らら)を伴って現れる。彼らは共にこの公演のスポンサーだったのだ。ニーナに急接近したロベルトは、バレエ団のリハーサルにも出入りし、振付家兼プリンシパルダンサーのユーリー(桜木みなと)ら、バレエ団の関係者からスパイの可能性のある人物たちをピックアップしていくが……
去る4月10日から15日まで東京建物Brillia HALLで初演されたこの作品は、作・演出の植田景子の、舞台芸術に対する熱い思いが舞台の隅々にまであふれた濃い内容と、主演の真風涼帆の男役の粋を極めたトレンチコート姿にはじまる成熟度と、新トップ娘役の潤花の闊達で前向きな個性がピタリと一致した、新たなコンビの滑り出しの良さが好評を博し、大変なチケット難になった公演だった。
何よりも第二次世界大戦下に舞台芸術を守ろうとする人々のドラマが、現在のコロナ禍において同じく舞台芸術を守り、困難多い中最高のパフォーマンスを届けようとする宙組メンバーの熱演と自然につながり、劇場を愛する全ての人に舞台の素晴らしさを知らしめるメッセージが詰まっていて、観ているうちに熱いものがこみあげてくる。
特に、作劇が20世紀初頭のパリで華開いたバレエリュスの輝きへのオマージュと同時に、一種のミステリー、犯人捜しの要素も持っていることから、重要な人物が非常に多く、宙組選抜メンバーそれぞれに大きな働き場があることも宝塚歌劇作品としての充実度を高めている。
トップスターと二番手男役、トップコンビとは別のもうひとつの相棒的存在で、真風との絶妙なコンビネーションを育んでいる芹香斗亜と、この作品での相手役 遥羽ららの活躍はトップコンビに比肩するほどのものだし、桜木みなとはもちろん、重要なアクセントになる紫藤りゅう、瑠風輝ら二枚目男役陣が個性を発揮。更に、ブラフも多くある作品に欠かせない大人の役柄で魅了する、専科の万里柚美、組長・寿つかさ、松風輝、美月悠の味わいある芝居も楽しめる。またバレエが重要な要素になる作品だけに、綾瀬あきなをはじめ宙組のダンサーたちが、大石裕香振付のバレエシーンを美しく踊る醍醐味もたっぷり。緻密に構築されたドラマと、そうしたバレエシーンの数々に目が足りない想いを抱いた。
そんなコロナ禍の苦境にある今の時代だからこそ観て欲しかった作品の、梅田芸術劇場メインホール公演が中止になってしまったのは非常に残念だが、一方でライブ配信になることによって、春瀬央季、七生眞希、小春乃さよ等も含めた様々な役どころの、細かい芝居も自然にクローズアップされることだろう。魅力ある要素の多い作品だけに、初見の人はもちろん、東京で観劇が叶った人にも新たな発見があるに違いない。
なんと言っても、幕が開く冒頭の真風の惚れ惚れとする男役ぶりは必見で、宝塚の醍醐味を十二分に感じながら、舞台芸術の素晴らしさが同時に伝わってくるこの作品を是非多くの人に鑑賞して欲しい。
【公演データ】
宝塚歌劇宙組公演
Musical『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』
作・演出◇植田景子
出演◇真風涼帆 潤花 ほか宙組
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2021/hotelsvizrahouse/
【ライブ中継情報】
●5月5日(水・祝)16:30公演
会場:全国各地の映画館(緊急事態宣言都市での上映は中止)
〈料金〉4,400円(全席指定・税込)
https://liveviewing.jp/hotelsvizrahouse/
【ライブ配信情報】
●5月5日(水・祝)16:30公演
販売期間◇4月28日(水)10:00~5月5日(水・祝)16:00
視聴方法◇「Rakuten TV」および「U-NEXT」にて配信
〈視聴料〉3,500円(税込)
https://kageki.hankyu.co.jp/news/20210402_002.html
【文/橘涼香】
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