お芝居観るならまずはココ!雑誌『えんぶ』の情報サイト。

朗読劇『星標』に出演! 綺咲愛里×十輝いりす×美郷真也インタビュー

美郷真也 綺咲愛里 十輝いりす

朗読×音楽×映像で綴る新感覚エンターテインメント、STARLIGHT THEATER『星標(ほししるべ)』が、12月7日東京・品川区のスクエア荏原ひらつかホールで上演される(14時半、18時の2回公演)。

この作品は、あるラジオ番組をきっかけに、東京で勤める女性と、山梨のワイナリーで働く男性が夢に向かって踏み出していく姿を描いたもので、朗読と同時にバンドの生演奏と美しい映像効果で物語が紡がれていく。更に、本編終了後にトークショーと、劇中曲をキャストが歌うミニコンサートも用意された、盛りだくさんな内容になっている。

そんな作品に出演する元宝塚歌劇団星組トップ娘役の綺咲愛里、宙組から星組で大型男役として活躍した十輝いりす、そして宙組組長を務めた実力派の美郷真也が、全員初めてという朗読劇への期待や、それぞれの魅力を語ってくれた。

贅沢な生演奏と映像に力を得て

──まず、ご自身の役柄の紹介をしつつ、作品をどう感じているかを教えてください。

綺咲 今回初めて朗読劇に挑戦させていただきます。朗読劇は拝見したこともなく、漠然としたイメージだけしか持てていなかったのですが、いざお稽古に入ってみてからも、台本を読みながら声だけで演じるということで、台詞と台詞の間の自分の気持ちをどこまで表現していいんのだろうと、はじめは戸惑いもありました。例えば飲み物をひと口飲むというシーンがあるのですが、普通のお芝居でしたら本当に飲み物が小道具としてあって、それを飲んで置くという芝居があるのですが、今回はそういうこともないので、目に見えないところまで自分のたたずまいと声で表現しなければいけないんだなというのを目の当たりにしたんです。でも、だからこそ全く新しいお芝居の形に出会えたので、いまは楽しいなと思っています。演じる愛星(あいら)は、東京で普通に働くOLさんなのですが、心に夢を持ちながらも無難に生活しています。私もですが、皆様にも共感していただけるような、殊更に自分を飾ることもなく、日常を淡々と生きている女の子です。そういうある意味どこにでもいる普通の子が、ひとつのきっかけを通じて、ふつふつとチャレンジ精神を湧き上がらせて、夢に向かっていく。その姿から、皆様に希望や元気をお届けできたらと、丁寧に演じていきたいです。

綺咲愛里

──ということは、いま朗読劇にも様々な表現がありますが、今回のものは、小道具が実際に出てくるわけではなく、皆さんが台本を読まれる、一番シンプルな形の朗読劇なのですね?

美郷 そうです。

綺咲 お客様は、背景に流れる映像を見てイメージを膨らませていただけると思います。私たちキャストは、その映像に合わせて台詞を丁寧に読んでいくということになります。

──演劇の想像力に委ねる在り方なんですね。十輝さんはいかがですか?

十輝 私も朗読劇は初めてで、でもずっとやってみたいなと思っていましたから、機会をいただけて嬉しいです。ただ演じる宙翔(そらと)は男性役で、男役をやるのは宝塚をやめて以来なので、できるかなと思ったんですが、いざお稽古をしてみたら、すぐにしっくりきました(笑)。元々の声も低めですし、読み始めた途端に「あぁ、こういう感じだったな」と思い出したので、自分で心配していたような違和感はなかったです。ただ、あーちゃん(綺咲の愛称)が言っていたように、本当に声だけで表現するのは、難しいなとも思っています。特に宙翔は結構深いことを言うので、心を込めて言わなければいけませんが、あまり重くなりすぎでもいけないという、その兼ね合いを考えながらやっています。でも今回はバンドも入ってくださって、生演奏と一緒に朗読をするので、音楽が入ることによってすごく雰囲気も変わり、自分の気持ちも出しやすくなったので、楽しいなと思っています。

──生演奏が入るというのは贅沢ですね。

十輝 そうなんです。すごく贅沢なことだなと。映像もとても綺麗で、場面によって映し出されるいろいろな背景にも助けてもらいつつ、自分の気持ちをまっすぐお客様に表現したいと思っています。

美郷 私はラジオパーソナリティの結月(ゆうき)という役と、ひと場面ですが、東京のバーのマスター役も演じます。私のやっているラジオ番組を通じてご縁が繋がっていく、そのきっかけとなるパーソナリティー役なので、大切に表現していきたいです。私も長年演劇に関わってきましたが、朗読劇に出演するのは初めて。でも朗読劇とひと言で言ってもいまは色々な形があって、演劇とほぼ変わらないものもあれば、本当に静かに本を読んで、客席の皆さんと一緒にひと言ずつ言葉を噛みしめていくようなものまであるので、私たちは私たちの朗読劇のスタイルを作っていったらいいのかなと思っています。生バンドの皆さんの音楽と、山梨の風景など、場面に合わせた映像とが相乗効果になってお客様に伝わり、また私たちも力をもらって、それぞれのポジショニングで自然な感じで演じたいと思っています。

──バーのマスター役についてはいかがですか?

美郷 宝塚の男役を長年やっていた時に、おじさんの役は多かったので(笑)その時の雰囲気やニュアンスが出せたらいいなと。こんな感じで男役をやっていたな~と、自分でもすぐにイメージが膨らみました。そこは愛星ちゃんと二人の場面なのですが、培ってきたものがお客様にも垣間見えたらいいなと思っています。

──皆さんが宝塚退団後に積み重ねてこられたものはもちろん、少し懐かしさも感じていただけるものになっているのですね。皆様から初めての朗読劇というお話がありましたが、朗読劇ならではの醍醐味はどうですか?

美郷 あーちゃんが言っていたように、動作が伴っていない分、声にすべてを乗せていくことが重要なんだなと。

綺咲 立って動かないからこそ、どれだけ表現できるかというのは、難しくもあり、楽しくもあるところですよね。

十輝 私は一度に色々なことをするのが苦手なので、台詞だけに集中したらいいんだ!いうのがすごく良いなと思っていて。

美郷 あぁ、なるほどね!

十輝 普通は色々段取りがあるじゃないですか。ここでは絶対にこっちを向いていなきゃいけないとか、必ずここまで移動しておくとか。私はそういうことをなかなか器用にできない分、セリフを集中して読めばいいのか、と思えた時気持ちがちょっと楽になりました。一点に集中する形なので安心感もあるし、朗読劇って楽しいなと思っています。

美郷 それはいいね!

綺咲 素晴らしいです!

十輝いりす

宝塚で育ったもの同士のあうんの呼吸

──宝塚出身のお三方ですが、せっかくお集りいただいたこの機会に、お互いに感じている魅力を教えてください。

美郷 私とあーちゃんは宝塚の在団期間が重なっていないので、このお稽古で初めてお会いしたのですが、こちらは客席から彼女の舞台は何度も拝見させていただいていますし、なんと言っても、同じ釜の飯を食べた仲間達なので、集まってしまうと劇団では一緒にやっていなかったことを忘れてしまうくらいあうんの呼吸があって、とても自然にいられています。舞台を観させていただいていた時から、あーちゃんはトップの娘役さんですから、なんと言っても可愛らしいし、男役さんを自然に立ていく、基本的なことはもちろんおやりになっているけれども、一つ芯の通った、凛としたまっすぐなものを持っていらっしゃるなと感じていました。ブレない軸があるんです。もちろん相手役さんだったり、今回でしたらまーちゃん(十輝の愛称)が演じている宙翔くんにもちゃんと寄り添うことができていますが、一方で、誰かの相手役というだけではなく、ひとりの女性としてきちんと立っている。しっかりしたものを持っているので、今回ご一緒させていただいていても楽しいです。まーちゃんとは宝塚の宙組時代にずっと一緒にやっていましたので、普段の性格などもよく知っているつもりですが、彼女も退団してからの年月があって、こうやってお仕事を一緒にやるのは退団以来はじめてのことなので。

十輝 13年ぶりくらいですよね?

美郷 そうだね。私が退団して以来なので新鮮ですし、お互い退団後色々なことをやってきたあとで、またこうして彼女は男役の宙翔くんをやるし、私もバーのマスターで男役もするので、懐かしさもあります。やっぱり彼女のほんわかして大きな、まあ身長も大きいのですが(笑)持っている空気感も、とてもゆっくり穏やかで。それは彼女が男役をやっていた時の持ち味でもあったと思うのですが、今回の山梨のワイナリーの主も大きな心を持った人なんです。その彼が、愛星ちゃんと出会ったことで、これから先のストーリーが続いていくことを感じさせる。宙翔くんにも、愛星ちゃんから感化されたものもあったりするのかもしれない、心を揺れ動かされる何かがあったのだろうなと感じられる、まーちゃんのイメージにとてもあった役柄でもあるので、私も楽しみたいなと思っています。

十輝 まりえさん(美郷の愛称)とは今お話してくださったように、私が下級生時代、新人公演時代に色々と教えていただいた方で。それからずっと、退団してからもお世話になっていて、プライベートではよくお会いするのですが、お仕事をするのは本当に久しぶりで。でもまりえさんとご一緒だというだけで安心感がありますし、お芝居をされるのを間近にして、やっぱりすごいな、さすがだなと思いました。結月さんとマスター、女性と男性を全く違う人物として瞬時に演じ分けられるのも、本当に鮮やかで。プライベートで気楽に素の状態でお話させていただいていた時間が長かった分、演じられる時とのギャップに感動しました。「あ、組長さんだ!」と思えて。

美郷 組長だとか思うの!?(笑)

十輝 在団中は組長さんと新人公演メンバーという関係だったので(笑)、演じるまりえさんを拝見してその感覚が蘇りました。あーちゃんとは星組時代に何年か一緒で、お芝居でも絡んでいましたし、ショーでも結構絡んでいて。

美郷 一緒に踊ったりもしていたの?

十輝 歌ったり踊ったりしていたので、今回久しぶりに一緒にお芝居もできて、歌も歌えて、やっぱりあーちゃんはしっかりしているなって。

綺咲 そんなことないです!

十輝 見た目は可愛いんですけど、性格的にはすごくさっぱり、さばさばしているので。

美郷 本当ね!

十輝 ですから、とてもやりやすいです。ついていきますので、連れていってください!(笑)

綺咲 お連れします!(笑)まさこさんとは今お話ししてくださったように、星組でたくさんご一緒させていただいているのですが、中でも1番深くかかわったのが『太陽王 ~ル・ロワ・ソレイユ~』のときで。

十輝 あーそうだそうだ、お芝居と歌でがっつり一場面あったよね。

綺咲 はい。あの時、役の関係性としてすごく怖かったんです。

十輝 そうそう、私、怒ってたよね(笑)。

美郷 悪役だったの?

綺咲 悪役ではなくて、マザラン枢機卿で。私の役が、太陽王(ルイ14世)と一緒にいるのは、国のためにならない!と。

十輝 そうだったね!あーちゃんが「お願いします!」って懇願するんだけど「ダメだ!」って、なんでこんなに怒るんだって感じで(笑)怒っていた。

綺咲 お芝居としてはその思い出が大きいのですが、それとは裏腹に、普段のまさこさんは、本当におだやかで、温かくて、大きい方で。

十輝 身体が?(笑)

美郷 心がだよね(笑)

綺咲 はい! お役でも温かい広い心で受け止めてくださっていて、まさこさんの低い深い声が本当に素敵で。まさこさんの声を聞いて眠りたいと思うくらい、包み込んでくださるので、そんなまさこさんが演じる宙翔さんが、現代っ子というか、女の子らしい女の子の愛星を受け止めてくださっているので、このまま突き進んでいきたいなと思っています。美郷さんとは今回のお仕事が「はじめまして」だったのですが、全くそうとは思えないほど、既に甘えてしまっているので申し訳ないほどです。先ほど同じ釜の飯を食べたと言ってくださいましたが、本当に宝塚では、組も違いますし、在団した時期も違いましたのに、ずっと前からお世話になっているかのようにお話しさせていただけていて、本当にありがとうございます。

美郷 いえいえ、こちらこそ!

美郷真也

綺咲 きっと愛星も、ラジオパーソナリティの結月さんの温かく穏やかな声に、毎日きっと癒されていたんだなと、すっと想像できました。美郷さんのお声で台詞を聞かせていただいたことで、より私の中で物語が膨らみましたし、最後の場面も本当にあるんだろうなと思えたので、美郷さんのお力はとても大きいです。お二人とご一緒にお仕事をさせていただけることが本当に嬉しいですし、これからもずっとお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

──本当に余韻があると言いますか、ラストシーンの場所も、物語が続いていくのではないかな?と思える素敵なお話ですよね。また本編のあとにトークショーやミニコンサートもあるということなのでとても楽しみですが、では、公演を心待ちにされていたる方達に、メッセージをいただけますか?

綺咲 いま色々お話しさせていただきましたが、やっぱり朗読劇ということでラジオドラマでもない、ドラマでもない、映画でもない、舞台でもないという、本当に唯一無二の表現方法だなと思います。私自身もこの場を楽しみたいし、追及していきたいです。何より観てくださるお客様に、温かいものだったり、希望だったり、明日への活力というものを感じ取っていただけるような、そんな想像力をかき立てられるような舞台にしていけたらなと思っていますので、どうぞ楽しみにしていてください。

十輝 私も初めての朗読劇、久しぶりの男役、そして初めてのこの新鮮なメンバーでとても楽しみです。是非お客様にも楽しみにしていただきたいですし、まりえさんが司会の爆笑トークショーもありますので。

美郷 えっ?爆笑なの!?(笑)

十輝 はい(笑)。また、朗読劇の中で流れる曲を、私たちが歌い継いでいくミニコンサートもあるという、盛りだくさんな舞台になるので、是非に観にいらしてください。

美郷 私達三人での朗読劇に、素敵な音楽と映像の全てで、皆さんそれぞれのポジションを総合したエンターテインメントになっています。まず私達が楽しんでこそ、お客様にも楽しんでいただけるものになると思いますので、私たちにとって初めてのエンタメを楽しんでいきたいです。そして楽しいトークと、ミニコンサートと揃って、感染対策もバッチリというなかでお迎えしますので、多くの方に観にきていただけたらと思っています。お待ちしています!

【公演情報】
STARLIGHT THEATER『星標』
朗読×音楽×映像で綴るエンターテインメント
(トークショー&ミニコンサート付き)
脚本・作詞・演出:住川禾乙里
ステージング:はやせ翔馬
出演:綺咲愛里 十輝いりす 美郷真也
●12/7◎スクエア荏原ひらつかホール
開演:14時半/18時
〈料金〉7,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉080-5627-2756(11時~19時)
〈公式サイト〉https://starlight-theater.jp/

 

【取材・文・撮影/橘涼香 ソロ写真撮影/平岩享】

記事を検索

宝塚ジャーナルの最新記事

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』井上芳雄最終日の写真到着&再演発表!
稲垣吾郎主演舞台『多重露光』追加キャスト決定!
まもなく開幕!ミュージカル『アナスタシア』稽古場レポート&写真到着!
ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人~』のメインビジュアル公開! 
「祭シリーズ」9年ぶりに出演!上口耕平インタビュー

旧ブログを見る

INFORMATION演劇キック概要

LINKえんぶの運営サイト

LINK公演情報