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宝塚歌劇の楽しさに溢れるオリジナル二本立て!宝塚宙組『El Japón(エル ハポン)─イスパニアのサムライ─』『アクアヴィーテ─生命の水─』上演中!

宝塚歌劇団が原作のない完全オリジナル作品を揃えて臨んだ宙組公演宝塚ミュージカル・ロマン『El Japón(エル ハポン)─イスパニアのサムライ─』ショー・トゥー・クール『アクアヴィーテ─生命の水─』が、日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(16日まで)。

『El Japón(エル ハポン)─イスパニアのサムライ─』は、スペイン南部の町にサムライの末裔を自認する「ハポン(日本)」姓の人々が実在することに想を得て、大野拓史が紡いだ作品。慶長遣欧使節団の一行と共に海を渡った日本の剣士と、イスパニア(スペイン)の女性が、本来あり得なかったはずの運命の出会いによって、人生を重ね合わせてゆくまでが描かれている。

【STORY】
慶長18年(1613年)、仙台藩主伊達政宗(美月悠)は、イスパニアとの通商を求め支倉常長(寿つかさ)率いる慶長遣欧使節団を派遣しようとしていた。その出立を祝して鬼剣舞の一団が勇壮な舞を披露している最中、数人があろうことか政宗に斬りかかるが、夢想願流剣術の名手で、政宗の護衛役・蒲田治道(真風涼帆)が狼藉者を鮮やかに斬り捨て、政宗は難を逃れる。だが、首謀者である男の顔が明らかになった途端、治道は剣を納めてしまう。男は和賀一族の生き残りで、政宗の命により和賀家に出仕していた治道がかつて愛した女性・藤乃(遥羽らら)の弟・藤九郎(和希そら)だったのだ。和賀家が一揆を起こした際、政宗に呼び戻され、必ず戻ると誓った約束が果たせぬまま、和賀家一族がはかない最期を迎えたことを終生の悔いとする治道には、例え主君の命を狙った大罪人であろうと、藤九郎を手にかけることなど到底できなかった。治道の苦しい胸のうちを察した政宗は、「二つ荷物を預ける」と支倉に命じ、治道と藤九郎を処分することなく、遣欧使節団の船に乗せ、一年余の長い航海へと送り出す。

それから一年、使節団はようやくイスパニアに到着し、国王フェリペ3世(星吹彩翔)の王宮に迎えられたものの、実質的に国政を動かしている寵臣・レルマ公爵(凜城きら)の、仙台藩と通商を結ぶことを得策ではないとの考えから、ローマ法王への謁見を勧められ、体よく城外に追いやられてしまう。支倉がローマへと旅立ったあと、一行は郊外の修道院で無為の日々を送っていた。その間にも治道の命を狙っていた藤九郎に、治道はいつでも命をやっていいと示すが、使節団幹部格の西九郎(瑠風輝)は、治道が和賀家に戻ろうとしたのを止めたのは自分で、その後悔の為に治道がどれほど苦しみ続けているかを語り聞かせ、藤九郎に翻意を促す。

そんなある夜治道は、コリア・デル・リオの町で追っ手から逃げて来た日本人の少女・はる(天彩峰里)に助けを求められる。奴隷として農場に売られ過酷な労働を強いられていたはるを助けようと、多勢に無勢の中奮闘する治道だったが、突然加勢してきた、銃や短剣など様々な武器を纏う男アレハンドロ(芹香斗亜)の機転で難を逃れる。はるは、隠れていた同じ立場の日本の少女たちを呼び寄せ、治道はその人数の多さに驚く。少女たちは、フェリペ3世の改宗イスラム教徒追放政策により、多くの農園が働き手を失い困窮する中、禁止されている海外からの奴隷を導入して冨を得て、この地域を牛耳っているドン・フェルディナンド(英真なおき)の農場で働かされていたのだ。アレハンドロの勧めで一行は、女主人カタリナ(星風まどか)が営む宿屋に身を寄せる。カタリナは結婚式の前日に婚約者を殺され、それをドン・フェルディナンドの策略だと察していたものの、確たる証拠がなく、一人宿屋を守りながらドン・フェルディナンドの秋波を拒絶し続けていた。その為、何かといやがらせを受ける宿屋には、アレハンドロ以外に宿泊する者はいなかった。そんな状態の宿屋に大勢の日本人女性たちを預ける形になった治道は、せめて宿代の一部にと自身の刀を持参する。だがカタリナは、刀は武士の魂だと聞いている、夫も剣士だったからよくわかる、と話し、少女たちの宿代の代わりに剣を教えて欲しいと治道に乞う。愛した人をなす術なく惨殺された後悔を抱え続けるカタリナは、次の困難が振りかかった時にこそ、戦う力を得たいと欲していたのだ。

共に愛する人を失った悲しみを胸の奥に抱え続けていた治道とカタリナ。遠い異国に生を受けた二人は、互いの存在に、心の琴線に触れるものを感じるが、一方、フェリペ3世が掲げた悪政「貴族爵位の売却」に乗じ、ドン・フェルディナンドは息子のエリアス(桜木みなと)に爵位を得ることに成功。土地を治める貴族が宿屋の経営権を許可する立場であることを利用して、カタリナを追い詰める。日本の少女達を含めた宿屋を守る為、カタリナが身を捨ててドン・フェルディナンドの下に向かったことを知った治道は、折から通商交渉が失敗に終わり、日本に帰国することを余儀なくされた使節団から離れ、イスパニアに骨を埋める決意でカタリナ救出に向かうが……。

慶長遣欧使節団の艱難辛苦を描いた作品は多く、宝塚にも1981年に支倉常長を主人公として植田紳爾が描いた『海鳴りにもののふの詩が』があって、こちらも史実で残されている出来事に「こんなことがあったかも知れない」という人々の生き様が盛り込まれた作品だった。だが、今回の『El Japón(エル ハポン)─イスパニアのサムライ─』は、更に遣欧使節団に本来加わるはずではなかった人物が、運命に導かれるままに渡欧。異国の人々との交流を通じて、全く別の人生を歩み出す様が綴られていく。その想像の翼を広げたのが、異国の地に残る「ハポン伝説」であり、この作品で治道が究めた防御の剣、夢想願流が海を渡った謎であったというのだから、作家の想像力、プログラムの作者言で当の大野拓史自らがそう表現している「妄想力」には、やはり常人の及びもつかないものがあるなと感心させられる。この「妄想」のスピード感は相当なもので、映像も駆使して、仙台からイスパニアへとつながる物語は、冒頭の鬼剣舞、殺陣、マドリード王宮での舞踏、アレハンドロを中心にしたスペイン舞踊と、華やかな場面を織り込みながら進んでいく。しかも使節団の一行、王宮の人々、農場から逃げ出した少女達、タブラオで働く踊り子たちと、おそらく宝塚以外の舞台でなら、ここまでの数にはならないだろうそれぞれのグループが、いずれも相当な大人数で芝居やダンスを展開するから、舞台は常に賑々しい。しかもこのグループの面々の芝居が、僅かにではあるが、コメディチックな要素を含んでいるので、舞台は更に喧々たる雰囲気を醸し出していく。本来はやり過ぎに感じられるかも知れないこうした配置が、多くの人材に役をつけることに、ひとつの大きな意義がある宝塚歌劇では容認されるし、その賑わいの中でいつの間にか、ところでこの異国の人々同士は、今お互いに何語で話しているのか?という疑問さえもが、まぁそこに拘っても…という寛容な気持ちをもたらす物語感を強めるところに、宝塚マジックが感じられる。

特に、こうして周りが賑やかであるだけに、過去の悔いに囚われ続けている主人公・蒲田治道と、ヒロイン・カタリナの周りにだけ立ち上る孤独が浮き彫りになる効果があって、二人が長い日数を要さずに惹かれ合っていく過程がよくわかる。欲を言えば、もうひとつ、ふたつ、二人が心を寄せていく場面が欲しいところだが、それも宝塚歌劇の「トップコンビ」という固定された存在が持つ、二人が登場すればほぼ例外なく恋に落ちるのだという、観客側の認識が補完していて、遥かに国を隔てた男女の有り得ない恋に、真実味を与えていた。

その生涯の悔いを抱えた剣士という、蒲田治道の設定に宙組トップスター真風涼帆の個性が殊の外あっていて、常にどこか周りとは別次元の、鷹揚としてクールな雰囲気を纏っている真風が、この作品の治道を更に大きなヒーローとして体現している。最終的には武器を持たずしても戦えるという境地に至る、夢想願流の剣客であることに説得力を感じさせる大きさはたいしたもので、ひとつ間違えると、この局面で奥義指南をはじめるか?!のツッコミ満載になるだろう展開も、泰然自若で演じきり、スターとしての大きさをますます高めている。回想で登場する藤乃への思いと、悔いを抱える者同士としてのカタリナに寄せる思いの違いも明確で、美丈夫ぶりが光った。

対するトップ娘役星風まどかのカタリナは、失った婚約者を思い続け、自ら未亡人の立場に立ち続ける女性という、絵に描いたような大人の美女像に、負けん気の強さや情熱を加えたのが星風らしい。トップ娘役に就任以来、等身大で演じられる役柄よりも、こうした大人の役が回ってくることが比較的に多い人だと思うが、そこに自分のカラーを加味する術を着実に心得てきていて、進化を感じさせた。

流れ者の剣士アレハンドロの芹香斗亜は、最終盤におおざらいのある役柄を、あくまでも飄々と演じているのが芹香ならでは。出番が相当ポイントで飛んでいて、誰も寄り付かない宿屋に敢えて宿泊しているあたりで、もう少し活躍の場面が欲しいが、逆に言えばこれだけ「謎の人」のままでいる脚本で、物語を通じて存在感を消さずにいられるのは、芹香のスターたる証。ドン・フェルディナンドを若くスマートな色悪に転じて、芹香に振るという考え方もあったと思うが、このポジションに置くことで終幕の爽快感を全て芹香が担っていることを思えば、贅沢な起用だった。

ドン・フェルディナンドの息子エリアスの桜木みなとは、父親の不正に気付きながら豊かさを享受している生活に嫌気がさして、剣士を目指したという役どころ。ただ、これは脚本上の問題なのだが、あくまでも大きく分ければ治道の人生にあまり影響を与えていない人物なだけに、非常に難しい役柄だったと思う。そこを、いくら爵位を売るという悪政が敷かれている中でも、父親を貴族にするにはためらいがあり、息子の方ならと思わせる人物の造形、根にある品の良さを桜木が醸し出して支えていたのが大収穫。如何にも「拗らせ系」の役柄が何作も続いているのは気がかりで、各作家のキャスティングに配慮を求めたいが、終幕台詞のないところでの爽やかな演技にも見応えがあった。

一方、全体を通じて実は治道の人生を最も動かした人物である藤九郎の和希そらは、鋭い眼光と抜群の身体能力を生かした殺陣や剣舞で存在感を発揮。この役柄こそ、本来作中でもっと大きく扱われるべきポジションだと思うが、限られた出番の中で、役の担う存在意義を示し続けた和希の力量に拍手を贈りたい。

また、夢想願流での治道の先達である西九郎に扮して違和感なく貫禄を示せる瑠風輝の成長も光るし、回想シーンのみの登場だが、治道の悔いを体現する存在である藤乃の遥羽ららの儚げな美しさも目を引く。鷹翔千空をはじめ宙組の若手男役ホープが多く揃う使節団の一行、はるの天彩峰里以下、日本の少女たちを演じる娘役の面々もイスパニアで各地の方言が飛び出す異次元を飛び越え、双方グループ芝居の中で懸命に個性を発揮していて目に楽しい。マドリード王宮の道化セバスティアンの留依蒔世、ニコラの綾瀬あきな、女官ビアンカの瀬戸花まりが、状況説明を兼ねる歌を巧みに聴かせ、失意のままに去る支倉との別れの場は、異文化の人間同士が心を通わせたことが現れる、美しいシーンになった。その支倉常長の寿つかさ、伊達政宗の美月悠、フェリペ3世の星吹彩翔、レルマ公爵の凜城きらなど、歴史上実在した人物を演じる面々がしっかりと作品を支えて頼もしい。

中でも、色悪であり、時代劇の悪役そのもののドン・フェルディナンドを、専科の英真なおきが存分に憎々しく演じたのはやはり作品の大きなアクセントになっていて、重鎮の投入に納得がいく造形だった。総じて肩の凝らない作風の中に、細かい拘りが覗き、どこか古き良き宝塚を感じさせる作品に仕上がっていた。

そんな芝居のあとに続いたのが、ショー・トゥー・クール『アクアヴィーテ─生命の水─』で藤井大介の作品。このところテーマ性の濃い作品創りをしている藤井だが、同じアルコールをモチーフにしても明日海りおにワイン、真風涼帆にウイスキーというところに、作者の着眼点の良さが感じられる。実際に、ハイチェアに座ったまま、琥珀色のスーツで真風がセリ上がってくる姿は、サブタイトルそのままになんともクール。ここでショーの成功はもう決まったようなもので、階段を使わず出演者たちが次々とバーカウンターから飛び降りてくる展開も場を弾ませる。

それでいて、真風、芹香、桜木が三人で、ウイスキーと言えばのお約束過ぎるほどお約束の歌を歌いながら、気障な台詞で客席を回ったり、全員での総踊りもふんだんにありと、ショーの緩急もよく考えられている。

中でも、この作品で退団する星吹彩翔の、宙組の財産とも言えた抜群の歌唱力や、実羚淳の高い技術に裏打ちされた見事な脚線美など、個人を際立たせるキャスティングがよく考えられている。真風と男役の秋音光が女性側に回って組んで踊るダンスの新鮮さや、和希そらを中心とした若手群舞の溌剌とした跳躍など、今の宙組の陣容を十二分に活かした構成が楽しめる。

各場面を彩る羽山紀代実、御織ゆみ乃、ANJU、若央りさ、百花沙里などの女性振付家たちの個性に混じって、中塚皓平の南国感あふれるリズミカルな振付の個性も効果的で、真風&星風の新しい魅力が見えてきたのも面白かった。
全体に、和希にわざわざ女役をさせてこれだけ?というあまりの贅沢感や、いくらウイスキーがモチーフとは言え、茶系のイメージの衣装が頻繁すぎるか?という僅かな疑義はあるものの、生命の水=ウイスキーを多面的に捉えた、見どころの多い楽しいショー作品となった。

【囲み取材】

また、初日を控えて行われた囲み取材には、トップコンビ真風涼帆と星風まどかが登場。作品が東京で上演されることについて、的確な言葉で思いを語ってくれた。

──両作品の見どころを教えて下さい

真風 今の宙組に当てて書いて頂いたキャラクターが様々に登場するお芝居と、色々なウイスキーをテーマにした大人っぽくも華やかなレビューです。どちらもオリジナル作品なので、そういった意味では宝塚大劇場の幕が開くまでドキドキしていたのですが、英真(なおき)さんと共に、また初日の幕が開いてからはお客様と共に、1ヶ月間温めてきた作品でしたので、また東京のお客様とどのような空気感で作っていけるのか、私自身楽しみにしております。

星風 お芝居は日本とスペインの文化という、異文化な感じをしっかりと表現し、そこをお楽しみ頂けたらなと思います。ショーもウイスキーがテーマの大人の魅力がたっぷりの内容になっているので、その辺りを観て頂けたら嬉しいなと思っております。

──役づくりで大切にしていたことと、ショーで好きなシーンを教えてください。

真風 舞台は日本からスペインに移動するのですが、私は全編通して日本人の役なので、立ち回りの所作を気をつけながら、お稽古させて頂きました。ショーはどのシーンも大好きなのですが、プロローグから大きなバーカウンターをセットに、(振付の)羽山(紀代美)先生の素敵な振り付けで盛り上がるショーになっていると思うので、そこも観て頂けたら嬉しいです。

星風 日本の方々とは違い私はスペイン人の役で、スペインが舞台ということもありますので、スペインの女性としてしっかりと強く芯を持って、役創りを一から新たに勉強致しました。ショーは、どの場面も好きなのですが、今着させて頂いている中詰の場面が「ザ・宝塚」というような、華やかなメドレーなっていますので、好きな場面のひとつになっております。

──2020年の抱負をお聞かせ下さい。

真風 今年はこのようなオリジナル作品でスタートするということで、(作・演出の)藤井大介先生もショーのテーマとして言って下さっていたのですが、宙組を観に来たら色々な味のウイスキーが楽しめるという感覚になるような作品にしていけるように、観に来てくださったお客様に宙組の色々なキャラクター、それぞれの個性を楽しんでもらえるように、自分自身も組としても、そうした組になれることを目標に頑張っていけたらと思っております。

星風 幕開けの公演でもありますので、2020年が熱くスタートできるように、精一杯務めていけたらと思っております。

尚、この作品は舞台写真の別カットと共に3月9日発売の「えんぶ」4月号にも掲載致します!どうぞお楽しみに!

【公演情報】
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル・ロマン『El Japón(エル ハポン)─イスパニアのサムライ─』
作・演出◇大野拓史
ショー・トゥー・クール『アクアヴィーテ─生命の水─』
作・演出◇藤井大介
出演◇真風涼帆、星風まどか 他宙組
●1/3~2/16◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12.500円 S席9.500円 A席5.500円 B席3.500円
〈お問い合わせ〉0570-005100 宝塚歌劇インフォメーションセンター
〈公式ホームページ〉 http://kageki.hankyu.co.jp/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

 

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