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実力派キャストとスタッフが創り出すウェルメイドで美しい世界『ローズのジレンマ』上演中!

米国を代表する喜劇作家ニール・サイモンの晩年の傑作『ローズのジレンマ』が大地真央、神田沙也加、村井良大、別所哲也、の豪華キャストを揃えて、日比谷のシアタークリエで上演中だ(25日まで。のち、2月27日~3月1日大阪・新歌舞伎座、3月3日愛知・刈谷市総合文化センター アイリスでも上演)。

『ローズのジレンマ』は2003年にオフブロードウェイで2ヶ月あまりの限定公演が行われ、翌2004年に日本初上演を果たした作品。経済的危機に瀕している大物女流作家ローズが、最愛のパートナーだった人気作家ウォルシュの亡霊に提案され、助手アーリーンや売れない作家クランシーと共に、ウォルシュの未完の遺作を仕上げる中で、残された人生と向かい合っていく様が、ユーモアとペーソスを持って描かれている。

【STORY】
かつて著名な作家として名を馳せていたローズ(大地真央)は、5年前に最愛の恋人であり自身も人気作家であったウォルシュ(別所哲也)を亡くして以来、新作を書くことができず、破産の危機に陥っていた。助手のアーリーン(神田沙也加)は、贅沢な生活を顧みずに、負債だけが増えていくローズの経済状況を見かねて、ローズになんとか新作を書かせようとするが、ローズは毎晩のように、彼女にしか見えないウォルシュの亡霊と語らいながら過ごしていた。

ある日ウォルシュは、彼の未完成の小説「メキシカン・スタンドオフ」を若手作家クランシー(村井良大)と組んで仕上げ、印税を稼ぐようローズに提案する。なぜウォルシュがクランシーを推薦したのかわからないローズと、売れない作家である自分がなぜ選ばれたのかがわからないクランシー。ウォルシュのたっての勧めで対面したものの、そんなローズとクランシーの意見は合うはずもなく、二人は決裂してしまう。

ところが、ローズの預かり知らぬところでクランシーとアーリーンはお互いに惹かれ合うようになっていた。後日、再びローズの家に現れたクランシーは、思わぬ発想でアーリーンを驚かせ、アーリーンも重大な決心をして……

喜劇王とも呼ばれるニール・サイモンの作品はその名の通り上質なコメディの宝庫だが、一方でただ面白可笑しいだけではないシニカルな視点や、ままならない人生へのペーソスがどこかに潜んでいるものが多い。ちょうど昨年、ところも同じシアタークリエで大地真央が主演した『おかしな二人』にも、笑って、笑って、でもふと最後に哀感がこみあげる絶妙なスパイスが利いていたものだ。

そんな、人の愛すべき愚かしさに常に視点を置いていた作家の、晩年の作品に当たるこの『ローズのジレンマ』には、劇作家としてはもちろん、人としてニール・サイモンが経て来た年月による、円熟味とファンタジー性が加味されていて、どこかで胸をつかれるような思いがした。笑いながら泣いている、愛しさと切なさで胸がいっぱいになる。これだけのキャストを揃えているのだから、企画自体は数年も前に立っていたものだろうに、まるでいま日本が、世界が置かれている状況、この時に合わせて作品選定がなされたかのような、人生に対する温かさのある戯曲の根幹を、演出の小山ゆうなが実に丁寧にすくいとっているのも、この感覚を強めている。

その世界に生きた四人のキャストいずれもが非常に好演しているが、まずタイトルロールのローズを演じる大地真央が、この人にしか出せない絶妙の味わいで、どこか浮世離れしたローズを愛すべきキャラクターとして活かしている。人気作家だったのは過ぎた昔の話で、新作が書けず収入のあてもないのに「お花のない生活なんてできない」というほどローズは現実を直視できていない。けれどもその無頓着ぶりが、過去の栄光が捨てられない人間の業ではなく、生まれつきの天然に見えるだけでなく、どこか微笑ましく放っておけない気持ちにさせるのは大地のスター性あってこそ。今回の役柄にはそれが必要不可欠だと本人も充分承知しているのだろう。大地から近年の作品よりもファンタジーな香りがより強く押し出されているのも効果的で、愛する人の亡霊と会話しているローズに真実味があった。

そんな経済観念ゼロのローズを支えようと奮闘するアーリーンの神田沙也加が、ローズに対するしっかり者ぶりと、突然現れたクランシーの急接近に戸惑う心許なさを同時に表現して魅了する。全体を通してアイリーンの心境変化が手に取るようにわかり、自然にアーリーンにシンパシーを感じさせる好感度の高い女性像に仕上げていて、作品をより豊かに押し上げた。神田が大地に対して持っているリスペクトが、役柄に自然に反映されているのも良い効果になっていて、作品の流れを納得させる力があった。

アーリーンに一目惚れする売れない作家クランシーの村井良大は、初登場時点のちょっと無頼な雰囲気が、徐々に誠実さに変わっていく表現が巧み。特にワルを気取っていたが実は…というような、ある意味わかりやすいきっかけがあっての変化ではなく、作品の中でのアーリーンとの出会いをはじめ、一つひとつの細かい積み重ねによって、自然にクランシーの醸し出す雰囲気や立ち居振る舞いが変わっていく。そんな相当に難易度が高いはずの表現を、全くそうとは感じさせずにさりげなくやってのけてしまう「俳優・村井良大」の力量の高さを改めて感じさせた。

そして、物語展開をリードしていくローズにしか見えないウォルシュの亡霊の別所哲也が、適度な浮遊感を持って作品に位置している。それこそ日本の怪談話のように足がないとか、如何にもこの世の者ではない装束を身にまとっているとかいう訳ではない、ローズと暮らしていたままの姿のウォルシュが、たった四人の登場人物の中で現世に生きる人ではない。この表現もまた非常に難しいものだと思うが、別所が軽やかに演じていると本当にウォルシュが壁をすり抜けているように見えてくるのが不思議なほど。ローズが忘れられないのも無理がないと思える紳士な雰囲気も、別所ならではの味わいだった。

 

そんなカルテットが奏でる物語は、やがて急展開を見せていくが、その最後の最後、戯曲としては終わったあとの謂わばカーテンコールで、四人が歌う場面がまるで作品に元からあったように感じさせるのにもハッとさせられる。せっかくミュージカル作品もできてしまう四人のキャストが揃ったのだから、最後にお客様にプレゼントを…というような、サービスシーンには全く見えない、ドラマのひと続きに歌があるような自然な流れは、観劇後の感触をよりハッピーにするだけでなく、演出の小山の優れた力量も感じさせる貴重な小粋さで、こうした「フィナーレ」の可能性が高まるのを感じた。乗峯雅寛の美術、半田悦子の衣装もカラフルで、キャスト、スタッフの力量が揃った舞台になっている。

また、作品の初日前日の2月5日に舞台挨拶も行われたが、この日は奇しくも大地真央の誕生日で、サプライズでお祝いの薔薇の花束が神田沙也加から贈られると「こんな風にお祝いしてもらえるとは思ってもいなかった」と感極まった大地が涙ぐむ一幕も。その様子に大地を祝福する神田も思わず涙を浮かべ、そんな二人を別所哲也と村井良大が微笑んで見守り、舞台さながらのカンパニーの雰囲気の良さがそのまま伝わってくる温かな時間だった。

【公演情報】
『ローズのジレンマ』
作◇ニール・サイモン
翻訳・演出◇小山ゆうな
出演◇大地真央 神田沙也加 村井良大 別所哲也
●2/6~25◎シアタークリエ
〈料金〉11.000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777

[全国公演スケジュール]
●2/27~3/1◎大阪・新歌舞伎座
〈お問い合わせ〉新歌舞伎座 06-7730-2121
●3/3◎愛知・刈谷市総合文化センター アイリス
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466
〈公式サイト〉https://www.tohostage.com/rose/

 

【取材・文・撮影/橘涼香】

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