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ミュージカル『マチルダ』に出演! 霧矢大夢&咲妃みゆ インタビュー

英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが2010年に製作し、瞬く間にウエストエンドで最も人気のある作品となり愛され続けている大ヒットミュージカル『マチルダ』が、東急シアターオーブで、2023年3月22日~24日のプレビュー公演、3月25日~5月6日の本公演で待望の日本初演の幕を開ける(5月28日~6月4日大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演)

ミュージカル『マチルダ』は、「チャーリーとチョコレート工場」で知られる英国の国民的作家ロアルド・ダールによる小説「マチルダは小さな大天才」をミュージカル化した作品。図書館にある難解な本も全て読みつくしてしまうほど、高い知能と豊かな想像力を持った5歳の少女マチルダ。にもかかわらず両親に全く関心を示されず、辛い境遇に置かれている彼女が、図書館に居場所を求めたことから教師ミス・ハニーに出会い、様々な困難を機知と勇気で乗り越えていく物語だ。ローレンス・オリヴィエ賞において、ミュージカルとしては過去最多の7部門受賞。2013年にはブロードウェイに進出し、トニー賞で5部門の受賞を果たし、全世界で1100万人以上を動員。99もの国際的な演劇賞に輝いている。

そんな大ヒット作品の日本初演でマチルダの母ミセス・ワームウッドを演じる元宝塚歌劇団月組トップスターの霧矢大夢と、マチルダの才能にいち早く気づく教師ミス・ハニーを演じる同じく元宝塚歌劇団雪組トップ娘役の咲妃みゆが、作品への意気込みや、互いに感じる魅力を語り合ってくれた。

霧矢大夢 咲妃みゆ

子供と大人の境目ってどこなんだろう

──まず、シンプルにこの作品の1番の魅力はどこだと思っていらっしゃいますか?

霧矢 1番と言えば、それはもうマチルダですね。

咲妃 そうですね!

霧矢 最後はマチルダに全部持っていかれるというかね(笑)。私はブロードウェイで実際に公演を観ているのですが、日本でもこれまで皆様に親しまれてきた少年や、少女が主人公のミュージカルはたくさんありますし、それぞれにもちろん個性も違いますが、大きく言うと恵まれない環境のなかで少年、少女が健気に頑張って幸福をつかんでいく、という作品が多いのかなと思います。マチルダは、ある意味とんでもない域のスーパー少女、天才児なんですね。その天才少女のヒロインが、個性的で面白くて強烈な大人達に挑んでいって、やられたら様々な方法でどんどん仕返しもして勝ち誇る。でもラストシーンでハニー先生と手を繋いで去っていく時には、普通の女の子に戻っている。そういうマチルダの個性に心をわしづかみにされるところが魅力ですね。

咲妃 霧矢さんのおっしゃる通りで、この作品って、悪と言い切ってしまうと語弊があるかと思うのですが、マチルダや子供たちにとって、必ずしも良いお手本ではない大人達が大勢出てきて、その大人たちが子供たちによってギャフンと言わされる。そこがやっぱりご覧になる皆様にとって痛快に感じていただけるポイントではないかなと思います。特に私が演じさせていただくミス・ハニーは子供達に助けてもらう立場なので、私はこの台本を読ませていただいて、大人と子供の境目ってどこなんだろう、とわからなくなりました。

霧矢 そうだね。マチルダの家の複雑な家庭環境や、学校、社会そのものが、色々な場所や、大人の世界にも置き換えられているところがあるから、その境目があやふやになる、という気持ちはすごくわかる。

オーディションを経て一層演じたい思いが膨らんだ

──親子の関係が難しくなっている家庭と言うのは、大昔からずっとあったはずだと思いますが、特に日本でそれをちゃんと表明していい、という風潮になったのはここ10年くらいではないかと思うので、そういう意味でも様々に今日的な作品になりそうですが、お二人共オーディションを受けられての参加とお聞きしています。

霧矢 はい、受けさせていただきました。それぞれに課題がありまして、私は歌とダンスと芝居だったのですが、準備してきたものをみていただいて終わりなのかな?と思っていたら、まるでほぼ稽古のような状態になって!

咲妃 はい、そうでした。

霧矢 すごく丁寧に一つひとつのセクションをやっていただいて、自分が作っていったミセス・ワームウッドがどんどん肉付けされていく感じがしました。だからとても楽しかったですし、自分がこの役はこうだと思い込んでやっていたものが、作り手側のアドバイスを聞くことで短い時間の中ですごく変わっていく部分もありました。だからこそ、この時間に作り上げたものを絶対にやりたい!という気持ちになりましたね。

咲妃 私も本当にそうでした。正直に言うと、私は不合格かもしれないと、結果を待っている間には思っていたんです。と言うのも、やはり難しい役どころである上に技術も必要で、様々な面をオーディションでもチェックして下さっていて、自分としはていまひとつ、不完全燃焼で終わってしまったというか……。もっとああ出来たな、こう出来たなというのが湧き出て来ていたので。

霧矢 私ももちろんそれはあったよ。もっとできたんじゃないかな、と考えたりもしていて、だからこそ、肉付けされたものをもっと舞台で生かしたい、この人達と一緒に作品に取り組みたいという気持ちがすごく膨らんできたから。

咲妃 そうなんです。色々ともっとできたんじゃないか、という思いが募ったからこそ、叶うならこの作品に挑戦したいという気持ちがどんどんと湧いていた矢先に合格のお知らせをいただいたので本当に嬉しかったですし、もう一度挑戦をさせていただける、認めていただけたんだということが、とても幸せでした。

霧矢 私も結果を聞くまでは、結構ドキドキしていて、この作品の一部になりたいという感覚があったから、決まった時にはとても嬉しかった。だからそれは二人共一緒ですね。

──その役柄については、何を大切に演じたいと思っていらっしゃいますか?

霧矢 ビジュアル撮影をしている時に、海外プロデューサーの方から「ミセス・ワームウッドは自分が世界で一番美しいと思っている、でも実は違うんだよ」(笑)という意味のことを何度も言われたので「なるほど、そういう役なんだな」と思うようにしました。あとは、ミセス・ワームウッドは社交ダンスに夢中で、役柄のシーンとしてはそこが見せ場でもあるんですが、マチルダの事はほったらかしで顧みない母親が、社交ダンスに夢中というのは、お客様から見れば自己中心的でひどい母親と言えます。でも大人になってそれだけ熱中するものがあって、一生懸命に取り組んでいる姿を愛おしいな、憎めないなと思って観ていただけたら良いなと思っています。

咲妃 基本的にミス・ハニーは良くも悪くも人を否定しない女性なのかなと思っています。良い意味ではマチルダの才能を見出して、彼女の素晴らしさを認めている。一方で校長のミス・トランチブルには逆らえないところがある。それは、何かを諦めている彼女の弱さでもあると思います。そんなミス・ハニーが果たしてどう変わるか?が、演じさせていただく上ではキーになると思っています。ですからこのお話の中での彼女の旅路だけではなくて、バックボーンもより深く追究しておかないと、ただの優しい先生になってしまいそうで。それは違うなと。心のなかにある怯えみたいなものや、自信のなさがワームウッド夫人との対比として現れたらいいなと思っています。

敢えて役者さんと言わせていただきたい

──お二人は、宝塚退団後にミュージカル『ニュージーズ』でも共演されていらっしゃいますが、お互いの魅力についてはどう感じていらっしゃいますか?

咲妃 私から話してもいいですか?

霧矢 いいよ!

咲妃 宝塚在団中ももちろんなのですが、卒業後も霧矢さんの舞台はたくさん拝見していて。その時にあくまでも客席から私が感じることなのですが、霧矢さんのお芝居には不必要な間がないんです。感情が湧き上がってくると、大事にしたい台詞を言うまでにちょっと時間がかかったり、自分で自分の心地良い間を作ってしまったりすることがあります。私自身にもその癖があるので、直していきたいなと思っているのですが、霧矢さんは湧き上がった感情をその瞬間に発していらして。だからお芝居を拝見していて、一観客として不必要な力が入らないんです。役の人物が、何を思って、どう行動して、今のあの表情になったんだ、など明瞭に伝わってくる。演じているのが霧矢さんだということを良い意味で忘れてしまうくらいで。だからこそ色々なお役に染まれるし、『ニュージーズ』『ピピン』『薔薇と海賊』等々、本当に多彩な舞台に出られているので、すごいなぁ、こうありたいなぁと思っています。

霧矢 ゆうみちゃん(咲妃の愛称)こそ大活躍じゃないですか!

咲妃 とんでもないです。霧矢さんがご出演なさる作品なら是非観てみたいと思えています。敢えて「役者さん」と言わせていただきたい、私自身がこうありたいと思える役者さんです。純粋に尊敬しているし大好きです!

霧矢 ありがとう! ゆうみちゃんは、宝塚時代は、既に若手のホープで、早い頃から役もついていましたし、よく知っていたのですが、そこから私、申し訳ないことにゆうみちゃんの歴史がポンと空いちゃっているんです。もちろん雪組でトップ娘役になって、大活躍されていることは知っていたし、とても素敵だという声もたくさん聞いていましたが、タイミングが合わずに拝見できていなくて。『ニュージーズ』で共演した時が役者としての「咲妃みゆ」さんと、10年越しぐらいかな?の再会だっんです。彼女は宝塚の娘役として大事なものをたくさん持っていましたが、退団してからそれだけじゃないものがね。まぁ元々娘役って、男役よりずっと中身は強いんですけど(笑)女優という職業に一本芯を通して、本気で取り組んでいる、もちろん誰しも本気ですけれども、それがよりしっかりと伝わってきました。特に『ニュージーズ』は20世紀初頭の、女性が職業を持つ、新聞記者とか編集者になるってすごく難しい時代にぐいぐいやっていく、進歩的な考えを持った女性の役でしたが、宝塚で培った舞台度胸を如何なく発揮していて。何しろ研2、研3のイメージからいきなりそこに飛んだので「しっかりしてるわ~」と。

咲妃 あ~嬉しいです!

霧矢 やっぱり宝塚で一緒だったということがあって、芝居のことをたくさん話すこともできたしね。

咲妃 色々ご相談させていただきました。

霧矢 私は見守っている役だったから余計に、そういうポジションでいけたからね。もちろん役者としての実力もそうですけど、人としての中身がしっかり詰まってる人という感覚です。

咲妃 ありがとうございます。すごく嬉しいです。

──そんなお二人が、再びこの期待の日本初演のミュージカル『マチルダ』で共演されるのを楽しみにしています。では改めて、舞台を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

咲妃 きっとご観劇前と、終演後とでは、この作品に抱かれる印象がガラッと変わる。それぐらい驚きの詰まった、びっくり箱のような作品と私自身思っています。これからお稽古をさせていただくのが本当に楽しみですし、早くお客様にこのワクワク、ハラハラ、ドキドキを体感していただきたいです。是非劇場におこしください!

霧矢 ミュージカル『マチルダ』は、とにかくすごい少女マチルダが主役です。何がすごいかは劇場でご確認ください。大人も子供もマチルダから必ず勇気をもらえる作品です。お待ちしています!

咲妃みゆ 霧矢大夢

■PROFILE■

きりやひろむ〇大阪府出身。1994年宝塚歌劇団に入団。2009年月組トップスターに就任。『THE SCARLET PIMPERNEL』『ME AND MY GIRL』『エリザベート』など数々のミュージカル作品に出演。2009年第64回『文化庁芸術祭賞』演劇部門新人賞受賞。2012年退団後も舞台を中心に多彩な活躍を続けている。退団後の主な出演作品に『バイ・バイ・バーディ』『ピピン』『薔薇と海賊』『ニュージーズ』『メアリー・ステュアート』『ビッグ・フィッシュ』『ラ・マンチャの男』『I DO! I DO! 』『マイ・フェア・レディ』などがある。2014年第22回『読売演劇大賞』優秀女優賞受賞。1月に『悪魔の毒毒モンシターREBORN』に出演予定。

さきひみゆ〇宮崎県出身。元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。17年退団後は舞台を中心に、映像・音楽面でも活躍中。退団後の主な出演作品はドラマドラマ『津田梅子~お札になった留学生~』、『まだ結婚できない男』、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』、舞台『千と千尋の神隠し』『ニュージーズ』『衛生~リズム&バキューム~』『ゴースト』『NINE』『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』『ラブ・ネバー・ダイ』などがある。2021年第46回『菊田一夫演劇賞』演劇賞受賞。

【公演情報】
ミュージカル『マチルダ』
脚本:デニス・ケリー
音楽・歌詞:ティム・ミンチン
脚色・演出:マシュー・ウォーチャス
振付:ピーター・ダーリング
デザイン:ロブ・ハウウェル
オーケストレーション・追加音楽:クリストファー・ナイチンゲール
照明:ヒュー・ヴァンストーン
音響:サイモン・ベーカー
イリュージョン:ポール・キーヴ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
出演:
マチルダ:嘉村咲良、熊野みのり、寺田美蘭、三上野乃花(クワトロキャスト)
ミス・トランチブル校長:大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成(トリプルキャスト)
ミス・ハニー:咲妃みゆ、昆夏美(Wキャスト)
ミセス・ワームウッド:霧矢大夢、大塚千弘(Wキャスト)
ミスター・ワームウッド:田代万里生、斎藤司(トレンディエンジェル)(Wキャスト)
ミセス・フェルプス:岡まゆみ/ 池田有希子(Wキャスト)
●2023/3/22~24◎東京プレビュー公演 東急シアターオーブ
●2023/3/25~5/6◎東京本公演 東急シアターオーブ
〈料金〉プレビュー公演 S席12,500円  A席10,000円  B席5,000円(全席指定・税込)
〈料金〉本公演 S席14,000円  A席10,000円  B席5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ホリプロチケットセンター:03-3490-4949 受付/11:00~18:00(平日*土日祝休)
●2023/5/28~6/4◎大阪公演 梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席14,000円  A席9,500円  B席5,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00~18:00)
〈公演サイト〉https://matilda2023.jp/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】

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