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至近距離で堪能するミュージカルスター圧巻のパフォーマンス!『Living Room MUSICAL』1周年記念公演レポート!

若者の街として、また近年ではハロウィンパーティに人々が集結する街としても注目を集めている渋谷。2020年東京オリンピックに向けての再開発事業も佳境を迎えていて、ほんの数週間ぶりに訪れただけで、街の様子が変わっているという、現代に生きて成長し続けている東京を象徴する街のひとつだ。

この渋谷で若者たちが集う場所として名高い「109」を横に見ながら道玄坂をほんの少し上がった位置に建つ商業ビル渋谷プライム、小劇場としての認知の高い「シブゲキ!」も入るこのビルの5階に、eplus LIVING ROOM CAFE & DININGがあるのをご存知だろうか。エレベーターを上がると、外の賑やかな喧噪がまるで嘘のように、邸宅のLIVINGROOMにも似たオシャレな空間が突然出現する様には、入口からすでにちょっとした非日常感が満載。貴族のお屋敷の図書室にも似たソファー席、外が望めるテラス席、オシャレなバーテンダーの動きも見えるカウンター席、等eplus LIVING ROOM CAFE & DININGの中だけでも、様々なコンセプトの座席が選べ、場所柄を考えればリーズナブルなお値段のお食事やお酒を堪能できるここには、もうひとつの顔がある。

それはグランドピアノもあり、ちょっとしたダンスもできるステージが中央に位置していること。このステージを観る為には、最適のセンター席にも数があり、ワンコインのチャージ料金で、30分のクラシックコンサートが楽しめる日曜日の昼間のブランチコンサート「サンデー・ブランチ・クラシック」をはじめ、ジャズやポップスのライブも定期的に行われて、飲んだり食べたりしながらパフォーマンスも楽しめるライブハウスとして、刺激的な企画が発信されているのだ。

そんなひとつに、2018年2月にはじまった『Living Room MUSICAL』がある。これは普段は劇場のステージと客席という、遠く離れた空間で観客と交流している実力派ミュージカルスターが、劇場を飛び出し手を伸ばせば届くと思えるほど至近の、eplus LIVING ROOM CAFE & DININGのステージで、ホットなミュージカルナンバーを繰り広げるという企画で、夢咲ねね、川口竜也、青野紗穂ら豪華メンバー達が出演した第1回以来、好評が好評を呼び、回を重ねる人気企画に成長した。構成・演出を手掛けるのは、演出家・脚本家の岡本寛子。テレビの放送作家を経て、2008年から宝塚歌劇団演出部に所属、『エリザベート』『ロミオとジュリエット』『愛と青春の旅立ち』など多くの作品の演出助手を務めた他、『ロミオとジュリエット』『モンテ・クリスト伯』などの新人公演の演出も手掛けて活躍。2013年退団後はフリーで活動中で、そんな縁からこの企画には宝塚OGの出演も多く、毎回注目を集めている。

その『Living Room MUSICAL』1周年を記念した今回の公演は、『Living Room MUSICAL』〜スターのいるレストランvol.8 ぼくがここに、と題された、謂わば『Living Room MUSICAL』の原点を彷彿とさせるもので、1周年のプレゼントとして、Special Guestに、劇団四季所属時代に『ジーザス・クライスト=スーパースター』『ウェストサイド物語』『コーラスライン』『エビータ』『CATS』等、数々のミュージカル作品に主演し、退団後もミュージカル界に欠かせぬ存在として活躍している久野綾希子。さらに特別出演として、『RENT』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『あなたの初恋探します』等、現代のミュージカル界を牽引するスターの1人である村井良大、というビッグスターの参加が実現。2月25日〜27日、3日間4ステージの規模での開催となった。

ここのところ『Living Room MUSICAL』では、どうやら出演者たちがこのCAFEに勤める店員であり、店内のステージのパフォーマ—でもある、という設定が設けられている模様で、今回も「シガレットガールS」との設定の宝塚OG、彩花まり、星乃あんり、伶美うららがまずステージに登場。「わたしたち宝塚では『花の95期』と呼ばれて、退団後も『花の95期』として見られるけれど、何も『花の95期』になりたくてなった訳じゃないじゃない? ただ宝塚に入ったら95期だっただけで」と嘆きあう。宝塚歌劇団のファンの方にはお馴染みだと思うが、95期生は元トップ娘役の愛希れいか、実咲凜音、妃海風から、現役男役の柚香光、礼真琴など、次代を担うエースがひしめく大当たり年。その95期生の一員である彩花、星乃、伶美が「こんなに美しく生まれたくて生まれたわけじゃない」と嘆いている。そう、今回のテーマは自ら選んだのではなく、それぞれが与えられた運命と、生かされている命を全うしましょうというもの。

今回の「店長」荒木里佳、男性店員たちの大塚たかし、岡本悠紀、荒田至法、「マネージャー」のやはり宝塚OGの元男役スターで、近々に活動を再開したばかりという十輝いりす、「出入りの生花業者」設定の山田元、ミュージカル『オン・ユア・フィート!』で見事なラテンダンスを披露したスペシャルダンサーの須藤大迪&橋莉湖、そして特別出演の村井良大が「特別出演の村井本人だと気づかれず、新人バイトだと思い込まれた男性」設定で加わり、大ヒットミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』のオープニングナンバー「Another Day of Sun」が歌い踊られる。この曲は『Living Room MUSICAL』 のテーマソングともなっていて「ここは渋谷!」で決まるエンディングも楽しい。

そのまま第1部はテーマに沿って、歌い手がやりたいことをやる!という趣旨で選ばれたミュージカルナンバーが続いていく。

岡本、荒田、山田、村井で『ロミオ&ジュリエット』の「世界の王」で盛り上げた後、岡本がソロで歌う「僕は怖い」では「死のダンサー」として黒のドレスの伶美が登場。フランスオリジナル版では「死」が女性名詞なことから、この役柄は女性の持ち役で、日本では珍しい原点に還った「死のダンサー」がとても新鮮。続いて『Ernest in Love』の、とても仲良しの歌から大げんかの歌に発展する「はじめて見た時から」を彩花と星乃が表情豊かに歌い、大塚が『ジーザス・クライスト=スーパースター』の「熱心党シモン」を迫力の歌声で。『Me and My Girl』 の「街頭に寄りかかって」では、フラワーアレンジメントを特技としていることが、今回フューチャーされている山田が花屋、十輝が警官になり、更にテーマ曲は荒木と大塚が「やりたいことをやるのよ!」と、振り切った歌唱を披露して、大いに盛り上がる。

ここで「新人バイト」に間違われている村井に、彼のこれまでのキャリアの「仮面ライダー」からはじまるあれこれを次々にセンターで披露させるというムチャぶりがあり、客席から爆笑が湧いた後は、『オン・ユア・フィート!』の「Anything For You」を、ヴァイオリン担当の向江陽子が熱唱し、スペシャルダンサーの須藤&橋の見事なダンスが続いて、いよいよ久野綾希子が登場。『Living Room MUSICAL』1周年に祝意を述べたあと、『コーラスライン』の「愛した日々に悔いはない」が歌われる。

「愛した日々に悔いはない」は、舞台に立つ、しかもアンサンブルを選ぶオーディションそのものをミュージカルとして描いた『コーラスライン』の中で、競い合っていた仲間の1人が怪我の為脱落したあと「もし踊れなくなったらどうするか?」との問いかけに、例えこの日々が報われずに終わったとしても、舞台に立つ為に生きた日々に悔いはない、と、全員が歌い上げる作品の根幹を為すナンバーだ。この作品の本邦初演のオリジナルキャストである久野の歌唱には、久野がミュージカル界と共に歩んできた人生丸ごとが乗せられた説得力があり、まさに圧巻のパフォーマンス。その空気を受け、「ぼくがここに」と村井良大が村井として登場し、全員を引き連れてのラストは『ヘア・スプレー』の「You Can’t Stop The Beat 」。これぞスター!!の格を見せつけた、村井の求心力と共に第1部は終了となった。

この日の各テーブルには岡山県にある社会福祉施設内の「うらやすガラス工房」の皆さんによる手作りの一輪挿しと、山田元セレクトの生花がそれぞれに個性豊かに飾られている趣向もあり、写真を撮り合うお客様も多く見られる中、休憩後の第2部はミュージカル『RENT』からスタート。しかも、村井が主演を務めたマーク役ではなく、ロジャー役で登場というビッグサプライズで、岡本マークとの「RENT」、ロジャーのソロで「One Song Glory」が歌われたあと、岡本がコリンズに、村井がエンジェルに早替わりしての「I’ll Cover You」と続き、これはとびきりレアな聞きものになった。

そこにゴージャスな美女に変身して十輝が登場。宝塚時代「まさこ様」と呼ばれた愛称が物語る通りのおおらかでのんびりしたテンポで「まさこの部屋」と題したトークが。これは各回で出演者が異なったが、会話がどんなに盛り上がっている最中でも、時間がきた途端「ありがとうございました」と唐突に締めくくる、「まさこ様節」のさく裂に爆笑が湧き起こる

そんな十輝が「カワイ子ちゃんたちお願い!」と振って、色違いの花柄ワンピース姿で登場した彩花、星乃、伶美が『オン・ユア・フィート!』の「1.2.3」を華やかに披露したあとは、各出演者十八番のミュージカルナンバーをじっくり聞かせるコーナーに。
山田が『リトル・マーメード』のエリック王子のナンバー「あの声」。荒田と彩花で『モーツァルト!』の「愛していれば分かり合える」。岡本が海外ドラマ『glee/グリー』から「Sway」。荒木が英語で『ガイズ&ドールズ』の「Luck be a Lady」を歌うと、十輝がソフト帽で小粋に踊るプレゼントも。

その熱気の中に、密やかに登場した久野が『CATS』の「メモリー」を歌い上げる。日本にロングランという概念を根付かせたキャッツ・シアターの出現は、確実に日本のミュージカルの歴史を進ませた「事件」となったが、その初代キャッツ・シアターのステージに立った久野が、今の久野にしか歌えない、人生を投影させた「メモリー」を歌い上げることで、その背景に日本のミュージカル史、更に帰らぬ人となった浅利慶太氏の姿さえもが蘇り、涙を禁じえない時間となった。余韻が長く残る中『RENT』の「フィナーレB」を全員で。最後に村井が一端退場していた久野を迎え入れて、カーテンコールでは、ピアノ&バンドマスター伊藤辰哉、ベースの内田大輔、ドラムの坂入康仁、そして大活躍のヴァイオリンの向江のソロパフォーマンスで盛り上がり、アンコールの熱い拍手の中、『オン・ユア・フィート!』の「Conga」を、出演者が客席を練り歩いて披露され、『Living Room MUSICAL』1周年記念公演の幕は閉じた。

今回からステージの一部が死角になる客席にはモニターが設置される等、ますます見易さも追求されている『Living Room MUSICAL』。やはり至近距離でスターのベストパフォーマンスに接することができる醍醐味は、ここにしかない興奮を呼び覚ます。1周年を迎えたこの企画は更に発展していくに違いない。次の機会には、是非、この渋谷のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGの空間で、特別な時間を体感して欲しい。

 

【公演データ】※開催終了

『Living Room MUSICAL』〜スターのいるレストランvol.8 ぼくがここに

構成・演出◇岡本寛子
振付◇AYAKO
出演◇久野綾希子
荒木里佳/大塚たかし/岡本悠紀/荒田至法/十輝いりす/彩花まり/星乃あんり/伶美うらら
山田元/橋莉瑚/須藤大迪
村井良大
●2/2〜27◎eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
〈料金〉VIPアリーナ12,000円、アリーナ9,800円、ステージフロント8,800円、バーカウンター7,800円、リビング7,800円、バーカウンターバック5,500円、ダイニング5,500円、リビングバック5,500円、ステージサイドバック1,800円 (税込、飲食代1フード1ドリンク別途、「プチスイーツ付き」)
〈特設ページ〉https://eplus.jp/sf/play/lrm

 

【取材・文/橘涼香 撮影/宮川舞子】

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