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音楽劇『ライムライト』で再び老芸人カルヴェロを演じる! 石丸幹二インタビュー

映画でおなじみ名作『ライムライト』。かつて一世を風靡した老芸人は、人生を悲観し自殺を図った若いバレリーナを助け、再び舞台に立たせる。しかし、スターに上り詰める彼女と入れ替わるように、老芸人は人生の舞台から退場しようとしていた……。

この作品を舞台化した音楽劇『ライムライト』で、再び主人公の老芸人カルヴェロを演じる石丸幹二。豊かな歌唱力と甘いマスクでミュージカル界のフロントランナーであり続ける彼にとって、時代の趨勢の中でもがき苦しみながら、次の世代に想いを託して表舞台から退場していくカルヴェロ役は、俳優石丸幹二の幅を更に広げる役柄でもあった。

そんな石丸が、初演の舞台の思い出、また新たに取り組む再演の舞台への意気込みを語ってくれた。

自ずと舞台ならではのものに育っていった音楽劇

──初演で大好評を博した音楽劇『ライムライト』待望の再演となりますが、今改めて初演を振り返っていかがですか?

初演時は不朽の名作映画を初めて舞台化するということで、演出の荻田(浩一)さんはじめ全員が、映画の素晴らしさを損なうことなく、いっぽうで舞台ならではのものにしなければならない、と意識しながら、稽古に取り組んでいったんです。稽古が進み、作品が立体化していくにつれ、自ずと映画とは違うもの、僕たちらしい舞台が創られていくんだな、と実感を持てるようになって。また音楽劇と銘打ったこともあり、映画版の名曲「エターナリー」はもちろん入っていますが、チャップリンが次の映画の為に用意していたのに、彼が他界したために未発表となっていた楽曲も加えられたんです。それがあたかもこの作品の為に書かれたもののようだった、というお声をたくさん頂戴できたのも、嬉しかったですね。

──「絵」として見た舞台空間もとても美しいものでしたね。

シアタークリエという中劇場にふさわしい舞台美術でしたから、盛り込んでいくというよりはそぎ落としていって、一筋の照明だけで「ステージ」を表現したり等、お客様の想像力に委ねる部分も多くありました。想像力を喚起するには、演じる側が存分にイマジネーションを膨らませていかないと届きません。我々は、日々お互いにチェックしながら芝居を練り込んでいったことが、より演劇らしい表現になったと思います

自分の人生を編み込んでいったカルヴェロ役

──その中で、演じたカルヴェロという役柄についてはどのように?

この作品の根底には、「喜劇王」と呼ばれたチャップリン自身の、次の世代にバトンを渡していかねばという想いがあったと思います。劇中、カルヴェロというかつて一世を風靡した芸人が、若いバレリーナや作曲家に光を当てようとします。もちろんそこには自分が時代に取り残されているという哀しい自覚もあれば、バレリーナへの愛情もありますので、決して綺麗なだけの感情ではなく、人間臭いリアルなものが絡んでいます。でもカルヴェロはそういう負の感情との闘いにも決着をつけて、自分が浴びていた「ライムライト」を、後の世代に当てていく。その芯の部分がブレないように、というのを一番大切にしていました。

──石丸さん自身が表現者であることで、よりカルヴェロに感じるものもあったのでは?

それはありましたね。わたし自身がいずれカルヴェロの立場になっていくのだろう、という気持ちもありましたし、一方でこれまで自分が経てきた道のりを振り返ってみたり。そのように役柄に自分の人生を編み込んでいくようにしていました。

──その重み故に、カルヴェロに幸せになって欲しい! と強く感じました。

そう感じて頂けたのなら嬉しい。

新たに加わるメンバーから受ける刺激を貪欲に取り込んで

──今回の再演に際して、改めて取り組んで行こうと思っていることは?

やはりまず何と言っても、ヒロインのテリー役が実咲凜音さん、作曲家・ネヴィル役が矢崎広さんに代わったので、この二人との芝居のやりとりから、必ず新しいものが生まれてくると思います。わたし自身も二人からどんな影響を受けて、カルヴェロを立ち上げていくかが、楽しい課題になりますね。

──お二人の印象はいかがですか?

実咲さんは宝塚歌劇出身の方なので、舞台に必要な基礎はしっかり持っていらっしゃいますし、また退団後男優との舞台を経験されてきた中で、今、どんな役作りをされるのかに期待しています。話していてもフランクで明るい方ですし、芯に確固としたものをお持ちなのも見えるので、一緒に芝居をするのがとても楽しみですね。矢崎君とはミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』でご一緒しています。とても芝居が好きなんだろうな、常に色々なチャレンジをしてくるんです。今回も僕をびっくりさせるようなことをしてくるだろうなと、ワクワクします。二人独自のカップル像が出てくることによって、僕もより刺激を受けると思うので、貪欲に受け入れながら芝居作りに励もうと思っています。

──「荻田ワールド」とも呼ばれる、荻田演出についてはどうですか?

前回の舞台で初めてご一緒したのですが、彼の頭の中には僕らが想像もできない世界が広がっていて、その発想に驚かされることも多々ありました。彼は自身の美学や美意識を舞台の中にイメージとして広げてくれたので、そのビジョンを共有できることが刺激的でしたし、再演に際してまたどう深めていくのかにも期待しています。

──では改めて、公演への意気込みをお願いします。

チャップリンの生誕130年にあたる今年、音楽劇『ライムライト』を再演できることを幸せに思います。この作品には、舞台を愛している人間たちの、魂のリレーが描かれています。それは同時に演じる僕たちの想いでもあり、舞台からそれが透けて見えれば、チャップリンが作品に込めたメッセージが必ず伝わると思っています。

■プロフィール 

いしまるかんじ〇愛媛県出身。90年東京藝術大学音楽学部声楽科在学中にミュージカル『オペラ座の怪人』(劇団四季)でデビュー。以後、劇団四季の看板俳優として活躍、07年退団。09年より俳優活動を再開。舞台、映像、音楽と活動範囲を広げ、現在「題名のない音楽会」6代目の司会者としても親しまれている。近年の主な舞台作品に『スカーレット・ピンパーネル』『キャバレー』『パレード』『ジキル&ハイド』『シークレット・ガーデン』『ラブ・ネバー・ダイ』などがある。

 

【公演情報】

音楽劇『ライムライト』

原作・音楽◇チャールズ・チャップリン

上演台本◇大野裕之

音楽・編曲◇荻野清子

演出◇荻田浩一

出演◇石丸幹二 実咲凜音 矢崎広 

「吉野圭吾 植本純米 保坂知寿 ほか

●4/9~24◎日比谷・シアタークリエ

〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半~17時半)

[全国ツアー]

4/27~29◎大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

5/2~3◎福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール

5/5~6◎愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

https://www.tohostage.com/limelight/

 

【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

 

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