【植本純米vsえんぶ編集長、戯曲についての対談】ヴィニシウス・ヂ・モライス『オルフェウ・ダ・コンセイサォン 三幕のリオデジャネイロ悲劇』
植本 今月は『オルフェウ・ダ・コンセイサォン 三幕のリオデジャネイロ悲劇』作者がヴィニシウス・ヂ・モライスさんです。
坂口 ブラジルの作品ですね。映画の原作にもなってます。
植本 『黒いオルフェ』っていうカンヌ国際映画祭パルム・ドールやアカデミー賞外国語映画賞も獲ってますね。
坂口 ちょっとさわりだけ観ました。
植本 俺もYouTubeで短いのを何本か。古い映画だしね。
坂口 とても面白そうな映画ではあったんですけど・・・
植本 好きな人は好きって言うか、曲も有名だしね『カーニバルの朝』。
坂口 絵柄も綺麗です。
植本 リオのカーニバルの場面もいっぱいでてくるから、極彩色なんだよね。
ただ、この原作者が映画を気に入ってないんだよね。試写会でとっとと途中で退席したって書いてあった。
坂口 異国情緒を売り物にした作品だって言ってね。
植本 ブラジルの人達にとっては「なんじゃこれ」って思ったらしいです。
坂口 断片だったけど面白そうな映画だなと思いました。
植本 確かにあれ観ると「ブラジルってこういう所なのかな」って思っちゃう危険性はある(笑)。
坂口 でもフィクションだからね。で、戯曲の話にしましょうか。
植本 はい。
【登場人物】
オルフェウ・ダ・コンセイサォン 音楽家
ユリディス その恋人
クリオ オルフェウの母
アポロ オルフェウの父
アリステウ ミツバチ飼い
ミラ某 丘の女
黒い婦人
プルタォン 冥府の悪魔たちの王
プロゼルピナ その女王
セルベロ(ケルベロス)
丘の人びと
冥府の悪魔たち
合唱隊と合唱隊長
舞台 リオの丘
時代 現代
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
坂口 この戯曲はギリシャ神話『オルフェウス』が元ネタになってます。
植本 読んでるだけでも色彩とか湿度とか匂いとか・・・あと音楽指定や楽器の指定とかもあるから賑やかですね。
坂口 台詞も結構ダイレクトで愛とか死とかが生々しく出てくる。
植本 もしかしたら日本人から一番遠い感じかね(笑)。
坂口 中身の話をしないうちに言っちゃうのはアレだけど、現地の俳優がやるのが一番面白いかな。
植本 作者も一応黒人でやってくれって書いてますね。別に白人でやってもかまわないけど、黒人指定になってますね。
坂口 日本でやるならバリバリ宝塚ですね。
植本 確かに〜リオのカーニバルも宝塚も羽を背中にしょってるわ。
坂口 しかもメタメタ愛と憎しみだから。もうこのまま台本持って行けば素敵な作品になるかと。
植本 なるほどね、日本でやるの難しいと思ってたけどその手がありますか(笑)。
坂口 (笑)。って思いながら読みました。
【第一幕】
舞台
丘は、街を見下ろす櫓のようにそびえ立ち、街の光は遠くに煌めく。高台の背景には家家が建ち並び、崖と隣り合わせになっている。高台の左側は半円を成す小さな石壁に守られていて、その上からひとすじの階段が下りてきている。月明かりの夜、動くものはなく、完璧。オルフェウの掘建小屋がまんなかにあり、小さなランプがいくつかちらちらと明滅している。幕が開くとき、舞台には誰もいない。長い静寂のあと、遠くで、啜り泣くようにワルツ*を奏でるギターの音が聞こえはじめ、それが少しずつ近づいてくるが、その弾きざまはまるで愛を語らうように神々しく単純で、心に直に響く。合唱隊長が姿を現す。
*この戯曲ではかならず、わたしの作ったワルツ《ユリディス》が演奏されなければならない——ヴィニシウス・ヂ・モライス。
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
坂口 芝居は三幕で、一幕目はリオデジャネイロの貧しい場所・・・
植本 まあ、そこでの家族の話ですね。お母さんが主人公の息子オルフェウのことを「あんたは女ったらしだから」って言ってるのが面白くて・・・本当に女たらしなんですよね。
坂口 あと、やさしい父親とオルフェウの恋人ユリディスがメインの登場人物ですね。
植本 ちょっと予言めいてるのかな。ギリシャ神話になぞらえてるのか。あなたの彼女となる人はユリディスですよって言われていて。
坂口 ギリシャ神話にある程度のせていってるから唐突って言えば唐突。なんで好きになったとかはあんまりない。見た目が美しかろうってことで。
植本 ギリシャ神話だったら竪琴なんですけど、これではギター。主人公はギターの名手なんですわ。すごく指定があって、ここで甘いメロディとか。弾きながら音色で感情を表現しなきゃいけないから。
坂口 台詞とかぶったりしてます。
植本 時に激しくかき鳴らしたりとか。音楽劇だから歌も結構でてきます。
坂口 だからギターが弾けて、立ち振る舞いが良くて、歌も上手っていう。
植本 そして、サンバフィーリングも持ってなきゃダメなんですね。
坂口 日本のミュージカルスターだと難しい?
植本 いやいやできるできる、と思いますけど。
坂口 どうでしょう?
植本 血だね、血(笑)。
坂口 ・・・
*
植本 まあそんなこんなで一幕は恋人同士がいるんですけど、なぜかお母さんが結婚を反対してますね。
坂口 結婚自体を反対。貧乏人が結婚するなって言ってます。
植本 結婚という制度が。
坂口 「結婚なんて金持ちのすることさ、結婚なんてしないでおくれ。結婚したら家がほしくなるし、食い扶持もほしくなる。貧乏人は一緒に住むだけで充分さ。あの子と一緒に暮らせばいいさ。結婚はしないでおくれ」って。
植本 そうなんだよね。これから感じるのはお母さんの溺愛ぶり、手元においておきたいかわいいかわいいを感じるし、でも結婚しなければ一緒に暮らしても良いって言ってるけど、かなり恋人の女の子に対して罵詈雑言ですよね(笑)。
坂口 (笑)。自分の息子をたぶらかしてるみたいな言い方になってますよね。
植本 女ったらしなんだよ、息子は(笑)。
坂口 (笑)。てめえの息子が一番ダメじゃんって思う。
植本 最初だからこの主人公のオルフェウにはなかなか感情移入ができません(笑)。こいつぅ!って思いながら読んでた。
坂口 しかもこの地域をある部分音楽で取り仕切ってるみたいな。彼がいれば大丈夫みたいな存在って言われてますよね。
植本 すごいね。
*
坂口 でもそれちょっと神話の方ひっぱり過ぎじゃねえのって。そんな奴普通に考えたら1950年代でいないよね。
植本 でもさ、足の速い男子はモテるみたいな。ギターが超うまくて愛のささやきが上手なんでしょ?
坂口 う〜ん・・・そうなんだよね。そういう奴がモテるってのはしょうがないか・・・
植本 (笑)。それでなんていうの、二人は結ばれたりするんですけど、この一幕の最後に出てくる“黒い夫人”がね、ギリシャ神話っぽく二人の暗い運命を告げますね。
坂口 作家は現代演劇風にやれって基本的には言ってるけど。
植本 でね、オルフェウは何人も女の子と付き合ってるから、嫉妬する女の子が出てきますね。それの代表がミラって女性ですね。
坂口 前に付き合ってた女の人ね。それが一つのポイントになるね。
植本 一方ではユリディスを好きなミツバチ飼いのアリステウっていう男がいて、ミラが「あの二人はもう寝ちゃったよ」ってアリステウに告げ口すると、アリステウがなんとユリディスを殺しちゃいますよね(笑)。
坂口 ここら辺はけっこう簡単に話が済んじゃいますよね。神話では直接殺したりはしないんだけど、ここではもう、本当に簡単に殺しちゃう。
植本 そんなこんなで早くもユリディスは一幕で死んでしまいまして・・・
*
坂口 ユリディス出番少ないですよねえ。
植本 そうですね。
坂口 だからかわいくて存在感がある女の子であればこれはもうオッケーっていう。
植本 ああ、そんな風に読みましたか(笑)。
坂口 そんなことない?
植本 いやいや、そうですよ(笑)。
坂口 見てすぐ魅力的なら、ちょっとくらい芝居が下手でもいいじゃんっみたいに思いません?
植本 説得力があればね、そうね。
坂口 それが大切なことだとは思う。
植本 上手すぎる演技力はいらないかもしれないですね。
坂口 全然いらない。むしろ邪魔。
植本 あっはっはっは(笑)!
坂口 ここで彼女が芝居したらもうウザい。
植本 (笑)。透明感があったほうがいいんでしょ?
坂口 はい。
【第二幕】
舞台
クラブ〈冥府の悪魔たち〉のなか、肥えた火曜日(ルビ:テルサフェイラ・ゴルダ)のパーティの終わり頃。この名にふさわしい背景と雰囲気が、バレエを仄めかす。しかし、劇の展開のなかで維持すべき古典らしい調和は乱してはならない。ペアあるいはソロでそれぞれがばらばらに、音楽もないまま、反射装置による火の存在を仄めかす赤と黒の影のあいだで、サロンのなかで踊っている。脇役たちは男も女もみな、カーニヴァル集団のユニフォームを着ており、女たちの衣装はユリディスを強く想い起こさせる。ギリシャのオルギア(古代ギリシアの一部で行われた礼拝形態。礼拝者の陶酔感・高揚感を高め、神との交感をはかる)のように、男たちは女たちを追い回し、彼女たちは動きに身を任せて、彼らを受け入れたり拒んだりする。みながボトルに口をつけて、敬虔な様子で、酒を飲む。奥にある悪魔の玉座にはプルタォンとプロゼルピナが着いていて、侍女たちに取り巻かれている。メフィストフェレスのようなその夫妻は、背が高く太っている巨大な人物で、よく笑う、惜しげない性格で、ひとりでいる端役たちに近づいて叫んだり飲んだりし、パーティの雰囲気を醸し出し、作り出す。
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
植本 そして、二幕。ガラッと変わりますね。これ冥界? 夢として片付けてもいい場面ですが。
坂口 夢かどうかはともかくとして、別の世界なんですかね。
植本 なんだけど、これ1幕と3幕だけでも話は成り立つなと思った。
坂口 でもここは見せ場ですよね。カーニバルみたいなシーンがずっと続いていて。
植本 そう。ずっと音楽鳴ってるし、皆踊ってるし酒飲んでるし。その冥府、冥界にオルフェウが死んだ恋人のユリディスを探しにきますね。
坂口 ここも神話の話にそっていくわけですね。
植本 とにかく色彩が豊かなシーンで、その、編集長が見せ場って言いましたけど、これが音楽劇として一番でてる部分だなと思った。
坂口 こここそが異国情緒っていうか、見せ場になるんじゃないですかね。
植本 ずっと主人公が死んだ彼女を探してるっていうシーンですね。
坂口 息の抜けない見せ場が続くって感じですかね。
植本 二幕こそ宝塚的ですね(笑)。
坂口 主人公の混乱ぶりを見せてるって場なんですかね。
植本 まああとは冥界の登場人物達なんだけど。冥府の人達が意外と人間臭い。
【第三幕】
舞台
第一幕と同じ。夜明け。オルフェウの掘建小屋の前に集まっている人びとが、泣き声の高まりに耳を澄ましながら、沈痛な声音で、アドリブで会話する。時折、家のなかにいるクリオが発する、動物の声のような痛ましい呻き声が聞こえる。合唱隊が入場する。
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
坂口 で、三幕になるんですね。場面は一幕と同じ様子ですね。
植本 人間界に戻るんですけど、始めに第一の声第二の声とか色んな登場人物、少年とか老女とかでてきて。この辺ギリシャ劇っぽくないですか、コロスみたいな。
坂口 割台詞みたいになってるんですね。第一幕でも合唱隊長の台詞から入ってますね。
植本 うんうん。
坂口 まぁでも別に大したことは言ってない。
植本 (笑)う、うん、まあ、主人公の解説みたいなこと言ってますね。
坂口 これ舞台で聞いてもあんまり頭に入ってこないと思うんですよね。「なんか言ってんな」みたいな感じかなあ。
植本 ギリシャ悲劇のすり鉢状のコロスを想像したけどね。
坂口 それも当然意識してるんでしょうね。
植本 で、ここでもお母さんがたいへんです。息子が狂っちゃったからね。
坂口 恋人が死んじゃってね。それをお母さんが嘆いてる。その嘆き方も尋常じゃないです。
植本 死んじゃった息子の恋人のことも悪く言ってるし(笑)。
坂口 これすごいよね。「もう一度世に生まれてみろ、私がお前の目を食ってやる。」すげえ〜。魚じゃないんだから目玉は食えない。で、お父さんがなだめてます。
植本 これオルフェウとユリディスという恋人同士の話だけど、お母さん主役にもできんじゃないのっていう感じがしますよね。そういう。親子の関係のギリシャ劇あるもんね。
坂口 お母さんがかなりおかしくなっちゃって救急車呼んだりしてますね。でそれが落ち着くと酒場のシーンになります。
【酒場の場面】
丘の高みの、小さな森。木々はばらばらに散って立っている。満月の夜。「酒場」と書かれた小さな看板の掛かった掘建小屋。中から、話し声、高笑いする声が聞こえ、少し前に歌っていたサンバの節が時折、高音で口ずさまれる。酔っぱらった女が何人か、前の広場に飛び出てくるが、そのなかにミラもいる。
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
植本 もう終わっちゃうけどね。酒場の場面に行っちゃうと。
坂口 ・・・
植本 最後にほら、なぜかこれ神話にそってだけど、女達に殺されるって場面があるから。八つ裂きにされる。
坂口 酒場のシーンはそれなりに派手ですね。
植本 二幕のカーニバルのシーンが冥界の人間じゃない人達なのに人間臭いのに対して、三幕の方がコロスみたいに神話っぽい作りになってるのが面白いなと思った。
坂口 酔っ払い女・・・ミラっていうのが、こんなに出てこなくてもいいじゃんみたいな感じですけど・・・
植本 本っ当に編集長の読み方面白いね、そうね、今更って感じ。
坂口 ミラの気持ちとか喧嘩相手の女もオルフェウが好きだったっていうのがあってね。終盤になってさ、そんなにやんなくてもいいんじゃないのかな。
植本 俺もそうは思うけど、実際にやってみると何かわかることあるのかな?女達はミラにそそのかされて取り憑かれた様にナイフやカミソリでオルフェウスに飛びかかるって。なんだろうそそのかされるって。
坂口 う〜ん。
植本 その前に、女達は錯乱したオルフェウに「消え失せろ雌犬ども」とか罵詈雑言を言われるんだけど。それもきっかけなのかもしれないけど、大勢の女達にナイフとかで殺されちゃうのね。
坂口 酔った上での集団ヒステリーみたいな感じですかね、元々サンバのリズムってそんな感じしません?それは乱暴すぎるか。
植本 まあ、たしかに(笑)。
*
坂口 オルフェウは・・・ふらふらしてるところを刺されちゃうの?
植本 もう正気じゃないので。錯乱してって書いてありますよ。
坂口 ああ。
植本 まぁとにかく数々の女たちと綺麗な別れ方をしてないってことですよね。ゴミのように扱ったからこんな風になったんですよって話。
坂口 植本さんの経験はさておき、きれいに女の人と別れられるなんてことあります?
植本 (笑)ないですね。
坂口 でもこれすごいよね、せめてさ、ナイフはいいけどさ、カミソリは厳しいよね。
植本 嫌だって事?
坂口 痛いぃ。
植本 ナイフだって痛いわ(笑)。
坂口 カミソリはやめてほしいなあ。
植本 とってつけたようにって編集長言うかもしれないけど“黒い夫人”が再び、ユリディスの声で話す。
坂口 ああそれは気づかなかった。
植本 面白い効果になると思いますけど。ユリディスの女優さんがやればいいだけのことだから。
坂口 彼は死んで、彼女のいる世界に行けるっていうこと?
植本 そうそう。オルフェウはユリディスのものになった、みたいな、こと、だよね。
坂口 へ〜〜〜。
【最後の場面】
オルフェウの掘建小屋のある場所。もぬけの殻。強い月光。
オルフェウ(血まみれで走ってくる)
ユリディス! ユリディス! ユリディス!(倒れる)
(黒い婦人が闇から現れる。)
黒い婦人(ユリディスの声で話す)
わたしはここにいるわ、オルフェウ。あとほんの少しで
あなたは永遠にわたしのもの。
オルフェウ(憔悴して)
おれを連れていってくれ、愛するひとよ……。
(女たちが、服はぼろぼろ、血まみれで、逆上して、走って舞台に入ってくる。倒れたオルフェウを見ると、殺到して、狂ったように、野蛮に彼に切りかかる。この虐殺のあと、女たちのなかからミラが立ち上がる。手にオルフェウのギターを持っている。それを思いきり、石壁越しに、遠くに投げる。楽器が当たる、怪物めいた恐ろしい音が聞こえる。だがすぐに、震えるような、神秘に満ちた、不確かな音楽が聞こえはじめる。女たちは恐怖に駆られて逃げ出す。黒い婦人がオルフェウの体に近づき、長いマントで彼を覆う。そのあいだにもオルフェウの音楽ははっきりとした、澄んだ、純粋なものになってゆく。オルフェウの死体をマントで覆う黒い婦人の姿は、しだいに消えてゆく。合唱隊の朗唱が始まる。)
(『オルフェウ・ダ・コンセイサォン』松頼社刊より引用)
植本 最後は合唱で終わります。
坂口 そうだね・・・
植本 女と死と月っていうのが3つ最後でてきて・・・
坂口 こういうさ、具体的な話の流れの中で女と死と月がオルフェを殺すために集まって云々っていうのはさ、なんか卑怯だよね。
植本 (笑)どうして?
坂口 だって女と死と月が集まってさ、なんとかってそりゃ書いてる人はいいけどさ、なんのこっちゃって。あ、でも違うのか、僕が思ってることが即物的すぎるのか・・・
植本 最初にも言いましたけど、日本人には難しいんだろうなって思って読みました。
*
植本 この作品を書いたヴィニシウスさんって、ボサノバの創始者(?)アントニオ・カルロス・ジョビンと組んで「イパネマの娘」とか「おいしい水」の作詞してるからそっちの方が有名なんだって。
坂口 は〜〜ん。でもこれに流れてる音楽はサンバでしょ?
植本 ボサノバを世に送り出した人なんだってよ。自分でも歌ってたりとか。上手ではないけど味わいがある歌をYouTubeでみましたよ(笑)。
坂口 ボサノバってずるいよね。ちょっと良い感じが。
植本 ごまかせちゃう感じ?気だるさとかで?(笑)。
坂口 ちょっとずるい(笑)。
植本 ・・・ボサノバずるいっていう人いないよ?!(笑)。
坂口 なんか聞いちゃうし、なんか心地良さにいっちゃうからずるいって思っちゃうんだな〜。
植本 ふ〜〜ん・・・カフェとかで流れてるからね?(笑)。
坂口 そうそう。
植本 (笑)。日本人にサンバとかボサノバって合うと思う。好きな人はいっぱいいるよね。
坂口 サンバって誤解してたけど、強い音楽だけじゃなくて静かな音楽もあるっていうのが読むことでイメージを喚起されて、改めてわかった。
植本 読んでてだから耳とか脳にうるさかったこの本。ガンガン鳴ってる感じがするから。この場面でも鳴ってるのか〜って思うから。
坂口 これだったらさ、言葉なんてわかんないでいいじゃないですか。
植本 うんうんわかる。
坂口 戯曲読む対談をしてて言葉なんてわかんなくてもいいなんて・・・
植本 (爆笑)。
*
植本 これね、読んで本当に良かった。矢﨑さん(編集担当)どうやってこれを見つけたの?
矢﨑 すごい簡単なんですけど、戯曲 人気 で検索して、南米でやったらでてこなくて、ブラジルって押したらでてきた。
植本 わりと簡単(笑)。
矢﨑 あと、これを探していて分かったんですけど、サンバとかボサノバについてのうんちくを書いてる人が言ってたのは、サンバっていうのは人生の悲しみとかを明るいメロディにのせて皆で歌って共有する、だから大きい声でって。そういう音楽だって。サンバは貧乏な地帯の人達の場所から生まれた音楽で大人数、大所帯でやるのだけど、それのアンチテーゼでボサノバは中流階級の少人数でぽそぽそ唄うっていう。本国ではサンバとかの方があれで、ボサノバはあんまり受け入れられてないっていう。日本の方がよく聴く機会があるんですよ、って。(参考にした記事はこちら▶http://psansmusic.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-1aa4.html)
植本 編集長の気に入らない感じが合ってた。
坂口 (笑)。
植本 これでもあった、悲しい場面で明るい音楽が鳴ってるシーンとかがあった。それ効果的、演劇的ですよね。
坂口 おもしろい戯曲だと思います。
植本純米
うえもとじゅんまい○岩手県出身。89年「花組芝居」に入座。以降、女形を中心に老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。外部出演も多く、ミュージカル、シェイクスピア劇、和物など多彩に活躍。同期入座の4人でユニット四獣(スーショウ)を結成、作・演出のわかぎゑふと共に公演を重ねている
坂口眞人(文責)
さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。
▼▼▼今回より前の連載はこちらよりご覧ください。▼▼▼
Tweet